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1章 悪役貴族は屈しない
第20話 等価交換(ケジメ)
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「バレない方法があったら、楽しいと思いませんか?」
そこで、カラスが一旦言葉を切った。
顔全体を覆う黒いマスクのせいで、どのような表情をしているかが窺えない。
だが今彼が笑っていることは、その雰囲気でよくわかった。
彼はこの計画を、楽しんでいる。
あるいは、悦んでいる。
「エルヴィン様の母上――奥方が亡くなった原因は、化粧品に含まれる毒だったようですね」
「そうね。まさかファンデーションに毒が含まれているとは、考えもしなかったわ。……それで?」
「その化粧品に毒が含まれていることを、奥様が亡くなるより前に知っている人物が居たとしたら――それも、我が家と親しい間柄の者が知っていとしたら?」
「まさか……それってッ!」
「ええ、ヴァルトナー婦人は奥様が亡くなる一年前から、その化粧品の使用をやめていたようです。毒が入っていることを認識していたのでしょう」
「まさか、ヴァルトナー婦人はそのことを、奥様に黙ってたってのか!?」
「おそらくは」
次の瞬間、ハンナとユルゲンが、キレた。
「ユルゲン。止めないでくださいね」
「ああ、止めねぇよ。貴族はテメェの縄張りだろ。むしろ俺の手で殺りてぇくらいだわ」
「ふふふ。久しぶりのお仕事ですね。腕が鳴ります」
「二人とも落ち着いてください」
「落ち着く? カラス、あなたは落ち着いているの? ヴァルトナー婦人がファンデーションに毒が入ってることを知っていたのに、情報を伝えず、奥様を見殺しにしたのに?」
あまりに頭に来たせいで、笑いがこみ上げてくる。
ああ、どうやって殺してあげよう。
一瞬で殺すなんてもったいない。
自分が持てる技術すべてを駆使し、時間をかけて命を削り取っていこうではないか。
「ふふふ」
あまりに強烈な殺意に、窓ガラスの一部に亀裂が入った。
ハンナがこれだけの殺意を露わにするのも、当然だ。
ファンケルベルク婦人とヴァルトナー婦人との関係はとても良好だった。
親友といっても過言ではないほど、頻繁に交流を持っていた。
にも拘わらず、ヴァルトナー婦人は死に繋がる情報を隠した。
これはファンケルベルク家への敵対的行動といっても過言ではない。
さらにハンナは、ファンデーションを製造した商人を、それとは知らずに利用していた。
エルヴィンが丁寧に種明かしをしてくれたが、感情をぶつける前に商人はこの世から消えた。
その行き場を失った怒りが、すべてヴァルトナー婦人へと向けられていた。
「ヴァルトナー婦人には、きちんと対価を払わせますよ。エルヴィン様が、ねぇ」
エルヴィンの名が出ると、途端に殺気がかき消えた。
爆発寸前だった会議室に、ぞっとする静けさが漂う。
まるで、嘘だったら許さないと言わんばかりの沈黙だった。
「……続きをどうぞ」
「化粧品の交渉時に、エルヴィン様はヴァルトナー婦人が奥様を見殺しにしたことを知っているぞ、と圧力をかけております。もしこれが国王に知られれば、ヴァルトナー家は良くて即刻代替わり、最悪降格まであるでしょう。もしこの件について手ぬるい対応をすれば、ファンケルベルクとヴァルトナーとで、全面抗争が始まりかねませんからねぇ」
もし2家が対立したとしても、平時であれば他の貴族が必死に和解を進めるはずだ。
しかし、此度のヴァルトナー婦人の行動による犠牲者は、ファンケルベルク家だけでは収まらない。他の貴族も体調を崩したり、乳飲み子が亡くなったりしている。
おそらく、実際に抗争が始まってしまえば、ヴァルトナーを擁護する貴族はいないだろう。
もし当主が和解を進めようものなら、後ろから奥様に尻を蹴られるに違いない。
ヴァルトナー婦人は、それだけの事をおこしたのだ。
「エルヴィン様の主張はこうです。この一件を黙っておいてほしければ、こちらの言う通りに動け」
「……ふふふ。実にファンケルベルクらしい交渉術。さすがはエルヴィン様ですね」
「今朝方まで、大将はファンケルベルクらしくねぇって憤ってた奴がよく言うな」
「もう忘れました」
しらっととぼける。
ハンナは既に、エルヴィンに忠誠を誓った。
反省はしているが、口にはしない。
口にした途端に、贖罪が終わったように錯覚するからだ。
だから己の過ちは、今後の行動で挽回する。
「話を戻しますが、資材や食糧の購入についてはヴァルトナーを利用出来ます。事情を〝丁寧に説明〟すれば、きっと理想通り仕事を行ってくれるでしょう」
「さすがはエルヴィン様。ここまで道筋を付けてくださっていたとは……」
信頼度――もとい信仰度がうなぎ上りだ。
誓った忠誠の外側が、ガチガチに固められていく。
もう何があってもエルヴィンを裏切ることはないだろう。
今なら死ねと言われれば悦んで死ねる。
「次は人足についてですが、人件費についてのみ、男女年齢問わず、相場通り支払うようにと詳細が書かれています。問題はどうやって人を集めるか、ですね。秘密を守るのであれば、ファンケルベルクの使用人のみで行うべきでしょうけど、それでは本業が回らなくなってしまいます」
ファンケルベルク家は使用人の数は決して十分とは言いがたい。
出来れば増やしたいが、仕事の性質上、易々と人を補充出来るものではないし、増やしたとて使えるようになるまでに相応の時間がかかる。
今回新たな事業を興すが、そこに投入できる戦力はせいぜい2人か3人だ。
事業規模からいって、人足は最低でも百名はほしい。
使用人を全員かき集めてもまったく足りない。
「ああ、そういうことか……」
「ユルゲン、なにかわかったのですか?」
そこで、カラスが一旦言葉を切った。
顔全体を覆う黒いマスクのせいで、どのような表情をしているかが窺えない。
だが今彼が笑っていることは、その雰囲気でよくわかった。
彼はこの計画を、楽しんでいる。
あるいは、悦んでいる。
「エルヴィン様の母上――奥方が亡くなった原因は、化粧品に含まれる毒だったようですね」
「そうね。まさかファンデーションに毒が含まれているとは、考えもしなかったわ。……それで?」
「その化粧品に毒が含まれていることを、奥様が亡くなるより前に知っている人物が居たとしたら――それも、我が家と親しい間柄の者が知っていとしたら?」
「まさか……それってッ!」
「ええ、ヴァルトナー婦人は奥様が亡くなる一年前から、その化粧品の使用をやめていたようです。毒が入っていることを認識していたのでしょう」
「まさか、ヴァルトナー婦人はそのことを、奥様に黙ってたってのか!?」
「おそらくは」
次の瞬間、ハンナとユルゲンが、キレた。
「ユルゲン。止めないでくださいね」
「ああ、止めねぇよ。貴族はテメェの縄張りだろ。むしろ俺の手で殺りてぇくらいだわ」
「ふふふ。久しぶりのお仕事ですね。腕が鳴ります」
「二人とも落ち着いてください」
「落ち着く? カラス、あなたは落ち着いているの? ヴァルトナー婦人がファンデーションに毒が入ってることを知っていたのに、情報を伝えず、奥様を見殺しにしたのに?」
あまりに頭に来たせいで、笑いがこみ上げてくる。
ああ、どうやって殺してあげよう。
一瞬で殺すなんてもったいない。
自分が持てる技術すべてを駆使し、時間をかけて命を削り取っていこうではないか。
「ふふふ」
あまりに強烈な殺意に、窓ガラスの一部に亀裂が入った。
ハンナがこれだけの殺意を露わにするのも、当然だ。
ファンケルベルク婦人とヴァルトナー婦人との関係はとても良好だった。
親友といっても過言ではないほど、頻繁に交流を持っていた。
にも拘わらず、ヴァルトナー婦人は死に繋がる情報を隠した。
これはファンケルベルク家への敵対的行動といっても過言ではない。
さらにハンナは、ファンデーションを製造した商人を、それとは知らずに利用していた。
エルヴィンが丁寧に種明かしをしてくれたが、感情をぶつける前に商人はこの世から消えた。
その行き場を失った怒りが、すべてヴァルトナー婦人へと向けられていた。
「ヴァルトナー婦人には、きちんと対価を払わせますよ。エルヴィン様が、ねぇ」
エルヴィンの名が出ると、途端に殺気がかき消えた。
爆発寸前だった会議室に、ぞっとする静けさが漂う。
まるで、嘘だったら許さないと言わんばかりの沈黙だった。
「……続きをどうぞ」
「化粧品の交渉時に、エルヴィン様はヴァルトナー婦人が奥様を見殺しにしたことを知っているぞ、と圧力をかけております。もしこれが国王に知られれば、ヴァルトナー家は良くて即刻代替わり、最悪降格まであるでしょう。もしこの件について手ぬるい対応をすれば、ファンケルベルクとヴァルトナーとで、全面抗争が始まりかねませんからねぇ」
もし2家が対立したとしても、平時であれば他の貴族が必死に和解を進めるはずだ。
しかし、此度のヴァルトナー婦人の行動による犠牲者は、ファンケルベルク家だけでは収まらない。他の貴族も体調を崩したり、乳飲み子が亡くなったりしている。
おそらく、実際に抗争が始まってしまえば、ヴァルトナーを擁護する貴族はいないだろう。
もし当主が和解を進めようものなら、後ろから奥様に尻を蹴られるに違いない。
ヴァルトナー婦人は、それだけの事をおこしたのだ。
「エルヴィン様の主張はこうです。この一件を黙っておいてほしければ、こちらの言う通りに動け」
「……ふふふ。実にファンケルベルクらしい交渉術。さすがはエルヴィン様ですね」
「今朝方まで、大将はファンケルベルクらしくねぇって憤ってた奴がよく言うな」
「もう忘れました」
しらっととぼける。
ハンナは既に、エルヴィンに忠誠を誓った。
反省はしているが、口にはしない。
口にした途端に、贖罪が終わったように錯覚するからだ。
だから己の過ちは、今後の行動で挽回する。
「話を戻しますが、資材や食糧の購入についてはヴァルトナーを利用出来ます。事情を〝丁寧に説明〟すれば、きっと理想通り仕事を行ってくれるでしょう」
「さすがはエルヴィン様。ここまで道筋を付けてくださっていたとは……」
信頼度――もとい信仰度がうなぎ上りだ。
誓った忠誠の外側が、ガチガチに固められていく。
もう何があってもエルヴィンを裏切ることはないだろう。
今なら死ねと言われれば悦んで死ねる。
「次は人足についてですが、人件費についてのみ、男女年齢問わず、相場通り支払うようにと詳細が書かれています。問題はどうやって人を集めるか、ですね。秘密を守るのであれば、ファンケルベルクの使用人のみで行うべきでしょうけど、それでは本業が回らなくなってしまいます」
ファンケルベルク家は使用人の数は決して十分とは言いがたい。
出来れば増やしたいが、仕事の性質上、易々と人を補充出来るものではないし、増やしたとて使えるようになるまでに相応の時間がかかる。
今回新たな事業を興すが、そこに投入できる戦力はせいぜい2人か3人だ。
事業規模からいって、人足は最低でも百名はほしい。
使用人を全員かき集めてもまったく足りない。
「ああ、そういうことか……」
「ユルゲン、なにかわかったのですか?」
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