クマの短編ホラー小説

クマミー

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No more 映画泥棒

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 今日は久しぶりの休日!朝からの映画館は格別だ。仕事のことを忘れれられる趣味の時間だ。

 しかし毎度のことのように、映画館には映画泥棒が出没する。観て楽しむ訳でもなく、YouTubeやSNSに投稿して金儲けの為に、許可なく、撮影しているのだ。そいつが今日は隣に座っている。赤いTシャツの男だ。テンションが下がってきた。

 上映前の他の映画の予告も終わり、いよいよ上映が始まった。今回はホラー映画だ。連続殺人鬼の館に迷い込んだ主人公たちが何度も死にかけながらも脱出する話だ。

 隣の赤いTシャツの男はスマホをスクリーンに向けている。現行犯確定。監督や俳優たちが何年もかけ、作り上げてきたものを許可なく自分の金儲けに利用するなんて、映画泥棒なんてこの世から消えればいいんだ。しかしそいつばかり気にしていられない。今日は映画を見に来たんだ。

 中盤に差し掛かったとき、隣の赤いTシャツの男がいなくなっていた。知らない間にトイレにでも行ったのか?ふとスクリーンを観ると、男が殺人鬼から逃げ惑っていた。しかしあえなく殺されてしまった。その後、無事主人公たちは脱出し、エンディングを迎えた。

 映画館を出るとき、隣の座席にスマホが落ちていた。あの映画泥棒のスマホだ。多分途中までの映画が撮影されているはずだ。気が進まなかったが、スタッフに届けた。

 帰り際にスタッフの会話が耳に入ってきた。
「本当に大丈夫なんですか?あんなことして…。」
「映画という著作物を守る為だ。映画界全体の方針だよ。これで映画泥棒が減るなら、関係者も喜ぶってもんよ。」
「それで今日は何人ですか?」
「こちらで確認出来たのは1人みたいだな。」
「赤いTシャツの男性ですか?」
「そうだな。」

 映画館を後にしようとしたら、入口に張り紙があった。来るときは気づかなかった。


「当館は映画泥棒を許しません。最新鋭のカメラで発見次第、映画内に取り込みます。現実世界には2度と戻れません。」

 
 そういえば、途中殺人鬼に殺された男も赤いTシャツを着ていた。隣に座っていた男は映画内に取り込まれ、殺されてしまったというのか…

「まさかな…。」
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