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廃病院の噂 〜消えない十字架〜
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X県Y市には30年以上前に閉院した廃病院がある。
老朽化も進み、今では立ち入り禁止となっている。
その廃病院には真夜中に人影が入っていく、幽霊がいると気味が悪い噂が立っている。人が近寄るような場所ではないのに、ここ数年、人影の目撃情報が増えている。
以前その病院は評判こそ良かったが、ある事件をきっかけに、経営が大きく傾いたという。看護師による医療ミスによって患者が亡くなってしまったのだ。
新人週刊誌記者の清田は記事のネタに困っていた。藁をも掴む思いで、SNSからこの廃病院の情報を手に入れた。何とか記事にしたいと思い、夕方から廃病院の入口の物陰で張り込んだ。
深夜1時頃、その人影は現れた。清田は人影の後を追った。その人影はよろよろと廊下を歩き、階段を上がり、3階の個室らしきところへと入った。
物陰に隠れて見ていると、その人影はひざまづいて、ボロボロになったベッドに頭をこすりつけ、何かブツブツ言っている様に見えた。清田は恐怖心よりも好奇心の方が勝り、懐中電灯でその人影を照らした!
その人影の正体は老婆だった。懐中電灯で照らしたことでこちらを認識したのか、清田と目があった。場所が場所なだけに、その老婆が一層不気味に見えた。
「ここで何をしてるんです?」
「…。」
「あなたお名前は?」
「…。」
その女性はボーっとこちらを見るばかりで、返事がない。
「話せないの?困ったな…。」
清田は警察に通報した。
通報からまもなく、警察が到着した。警察によると、その老婆は木田由里子、89歳。認知症と診断されているらしく、夜徘徊してしまい、度々家族から捜索願が出ていたようだ。
警察に保護された木田由里子は、ずっと病院の方を見ながら、
「私がやってしまった…私がやってしまった…ごめんなさい…許しておくれ…。」
涙を浮かべながら、言い続けていた。まるで今までの自分の行いを懺悔するかのように…。
「もしかしてあのおばあさんが…?あの事件の看護師だったのか?」
彼女が話せない今、真相はわからない。
認知症になって、自分や家族の名前を言えなくなっても、自分の過去の十字架だけは頭からは決して消えないというのか。度々深夜の廃病院にたった1人で通ってまで懺悔するのは、過去の行いの償いのつもりだったのだろうか…。
清田は足は自然と会社のデスクへと向かっていた。
老朽化も進み、今では立ち入り禁止となっている。
その廃病院には真夜中に人影が入っていく、幽霊がいると気味が悪い噂が立っている。人が近寄るような場所ではないのに、ここ数年、人影の目撃情報が増えている。
以前その病院は評判こそ良かったが、ある事件をきっかけに、経営が大きく傾いたという。看護師による医療ミスによって患者が亡くなってしまったのだ。
新人週刊誌記者の清田は記事のネタに困っていた。藁をも掴む思いで、SNSからこの廃病院の情報を手に入れた。何とか記事にしたいと思い、夕方から廃病院の入口の物陰で張り込んだ。
深夜1時頃、その人影は現れた。清田は人影の後を追った。その人影はよろよろと廊下を歩き、階段を上がり、3階の個室らしきところへと入った。
物陰に隠れて見ていると、その人影はひざまづいて、ボロボロになったベッドに頭をこすりつけ、何かブツブツ言っている様に見えた。清田は恐怖心よりも好奇心の方が勝り、懐中電灯でその人影を照らした!
その人影の正体は老婆だった。懐中電灯で照らしたことでこちらを認識したのか、清田と目があった。場所が場所なだけに、その老婆が一層不気味に見えた。
「ここで何をしてるんです?」
「…。」
「あなたお名前は?」
「…。」
その女性はボーっとこちらを見るばかりで、返事がない。
「話せないの?困ったな…。」
清田は警察に通報した。
通報からまもなく、警察が到着した。警察によると、その老婆は木田由里子、89歳。認知症と診断されているらしく、夜徘徊してしまい、度々家族から捜索願が出ていたようだ。
警察に保護された木田由里子は、ずっと病院の方を見ながら、
「私がやってしまった…私がやってしまった…ごめんなさい…許しておくれ…。」
涙を浮かべながら、言い続けていた。まるで今までの自分の行いを懺悔するかのように…。
「もしかしてあのおばあさんが…?あの事件の看護師だったのか?」
彼女が話せない今、真相はわからない。
認知症になって、自分や家族の名前を言えなくなっても、自分の過去の十字架だけは頭からは決して消えないというのか。度々深夜の廃病院にたった1人で通ってまで懺悔するのは、過去の行いの償いのつもりだったのだろうか…。
清田は足は自然と会社のデスクへと向かっていた。
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