クマの短編ホラー小説

クマミー

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壁の中のアイツ①

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 壁の奥から声が聞こえるんだが。ブツブツ何か話し声が聞こえる。4月から引っ越しして新生活が始まったというのに…壁が薄いのか、安い物件を見つけたと思ったらこれだ。
 
 隣の部屋に文句を言おうとしたが…出来なかった。なぜならここはアパート2階の1番端の部屋、壁の裏は外なのだ。
 
 ある夜、壁の奥の「アイツ」が突然、
「おい。出してくれ。」
ハッキリとわかる言葉で俺に話しかけてきた。俺は驚き過ぎて、声が出なかった。壁に耳をすますと、
「出してくれよ。聞こえてるだろ?」
「俺に…言ってるのか…?壁の中からか?」
「そうだよ。やっと理解したか。」
ドッキリ?最近流行りの迷惑系YouTuber?それとも事故物件なのか?いずれにせよ気味が悪い。
「すぐ大家さんを呼んできますよ。」
「おい!ちょっと待て!大家だけはやめろ!!」
俺は耳を貸さず、大家のところへ向かった。

 大家は話を聞いてくれたが、気味悪がって、部屋まで来たがらない。
「とうとうおかしくなったのかい…」
「は?」
「あの部屋の住人はみんな家賃を納めずにばっくれるからね。あんたは家賃頼むよ。」
家賃ぐらい払うさ。何言ってんだよ…。
 
 警察にも相談した。部屋を捜索してくれたが、こんなときに限って何も聞こえない。すると警官からは困った表情で、
「この部屋からはここ最近行方不明者が出てます。3人だったかな…」
「えっ?!完全に事故物件じゃないですか!」
「それが元気な状態で発見されているんですよ。半年後、1年後とか、期間はバラバラですが。1人はまだ発見されてませんけど…。」
どうしても我慢出来ないときは引っ越しも検討してみてはと提案された。金がないからこの部屋にいるのに、簡単には引っ越せない。
 
 
 仕事から戻り、趣味のゲームを楽しもうとしたら、アイツはまた俺に話しかけてくる。
「僕もゲームしたいな。ここはジメジメする。早く出たいな、こんなところ。」
俺は壁に向かいあった。
「出してくれる気になったのか?」
「お前さ、俺が仕事から帰るなり話しかけてきてさ、疲れてるのにゆっくり休めやしない。」
「それは悪かったね。こちらにも事情があってね。」
慣れ慣れしい奴だ。早く黙らす方法はないものか。
「どうやったら出ていってくれるんだ?」
「そんな冷たい言い方するなよ。簡単な材料さえ集めてもらえれば良いんだ。」
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