上 下
9 / 12

反省しても手遅れです

しおりを挟む
フェリシアはお前らの思い通りに動く人形じゃないんだよっ!
意思も感情もある人間なんだよ、感情あるから人間ヒトなんだよ!
「そもそも王族だからとか婚約者だからとか以前に、人として間違ってますわ。王太子専用サロンで子爵令嬢と二人の世界を繰り広げるのを目の前で見せつけられる事ほど不快かつ無意味な時間を私は知りませんわ、詫びる気があるなら返して頂きたいです、あの無為な時間を。一応お聞きしますが殿下、目の前で同じ事をされたら殿下はどう思われますか?」
「っ!」
にっこり笑うフェリシアに対し、リカルドは罰が悪そうに口を噤む。
が、これは既に学内では有名な出来事だーー例え公爵達が知らなくても、私の知った事ではない。
「君は、そんな愚かな真似はしないだろう」
「あら、愚かな真似という自覚はあるのですね」
「フェリシア!殿下になんてことを」
上の兄が割って入るが、
「良いのだ!__私が悪い。嫌な、気分になるだろうな、そんなことをされたら」
「おわかりいただけて嬉しいですわ__殿下に限らず、ですが。皆さま子供の頃『人の嫌がることはしてはいけない』と教わりませんでしたか?」

!!!!!

フェリシアの言葉に、皆が息を呑んだ。
それは、思ってはいても誰もが相手の身分を慮って口にすることが出来なかった、我が身可愛さに諫言することが出来なかった言葉だからだ。
それは、フェリシア自身もう己の身などかえりみていないということ。
この後処罰を受けようと、婚約破棄も辞さない覚悟でこの場に臨んでいることがわかったからだ___誤解だが。

単に紫亜は許せなかっただけだ、彼らのフェリシアへのやりようというか、あり方が。あまりにもフェリシアという個人を無視しすぎている。

だが、フェリシアのこの宣言に“政略結婚には良くあること”と静観してた父も、対して大ごとに捉えてなかった兄たちに至ってはショックで倒れそうなほど衝撃を受けた。
妹との仲は悪くなかった、はずだ。
だが、確かに王子が子爵令嬢にうつつをぬかし妹が蔑ろにされている現状に対して何もしてこなかった。
娘が、妹がここまで追い詰められていることに全く気が付かなかった__黙ってしまった公爵家に代わり、
「ついでじゃ、ない…」
声をあげたのは王太子だった。
「フェリシナは可愛いけど、王妃の器じゃない」
器として愛でる気だったんかい、花器かなんかか。
「君と結婚して国をおさめていく傍らで可愛いがろうと思って、癒しが欲しくて」
私には癒しなんて必要ないと思ってんのか、確かに花器ならいらんがな!
「ついでにじゃなく、どれが君に似合うだろうかって、考えて、生地を選んで、作らせた……」
なんでだろう、全然嬉しくない。
「シア、僕が悪かった__お願いだ、捨てないで」
捨てたのはお前だ!お前の行動のせいで本物もうこの世界にいないんだよっ!
「シアが一番好きだよ。君が僕から離れていって、楽しそうに笑うのを見て…、帰って書類の山を見て自分がどれだけシアに助けられていたか思い知らされた」
始めの方はともかく結局終着点はお手伝いそこかっ!
この、クズ野郎……!
紫亜は心の中で叫ぶ。
「お願いだ、昔みたいにそばにいて」
くっ…、クズなのに顔面偏差値が高すぎて破壊力が凄まじすぎるっ!
キラキラ美形の王子様が捨てないでって泣きそうに縋って来るとかヤバい!
庇護欲そそられるけどっ、でもアンタが求めてるのは私じゃないでしょ?!
__その時、心の奥底で何かが揺らぐのを感じた。
「……?……」
まさか、フェリシアもこの揺らぎを感じてる……?
今、繋がってるの……?
__それなら。
“フェリシア!王子反省したよ!貴女に会いたがってる……!だからお願い___戻ってきて……!”
紫亜は瞳を閉じてそう強く呼びかけた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

そんな事も分からないから婚約破棄になるんです。仕方無いですよね?

ノ木瀬 優
恋愛
事あるごとに人前で私を追及するリチャード殿下。 「私は何もしておりません! 信じてください!」 婚約者を信じられなかった者の末路は……

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...