<完結済>画面から伸びて来た手に異世界へ引きずりこまれ、公爵令嬢になりました。

詩海猫

文字の大きさ
上 下
7 / 12

仕上げは卒業パーティーで。

しおりを挟む
そして迎えた卒業パーティーの日、フェリシアにドレスを贈り「迎えに行く」とメッセージを添えたところ「お迎えもドレスも結構です」と箱ごと返って来た__どういう事だ?!とリカルドは憤ったが、母に「貴方から贈られたドレスが気に入らなかったというなら、仕方ないでしょう。エスコートだって今までの貴方が酷すぎたから断られたのではなくて?」とあっさり斬られた。

そんな馬鹿な。

フェリシアがお気に入りのデザイナーに特注して誂えたものだ、気に入らないはずが__僕からはもう、何も受け取る気がないという事か?
それはつまりーー。
ここに来て、リカルドは漸く事の重大さを理解した。



その上、
「何故卒業パーティーにエスコートしてくださらないのっ?!今まではフェリシア様を差し置いて私を連れてってくれたじゃないですか!」
と叫ぶフェリシナに、
「何故って…、学生じゃなくなる席だからだ。婚約者がいるのに他の女性をエスコートするなんて許される筈がない」
と常識を説けば、
「そんなのおかしいわ!今までリカルド様だっていつもフェリシア様の事なんて夜会でも無視していたくせに!皆だって思ってるわ!私とリカルド様が並ぶと金の王子様と金の姫君みたいだって!」
「!」
自分とフェリシアは金の王子と銀の姫君と呼ばれていた。
リカルドはようやく、フェリシナのこの言について考え始めた。
フェリシナは自分と一緒にいることで、金の姫君と呼ばれる存在になりたかっただけなのではないか?__と。
フェリシアはわかっていて注意をしてくれていたのに自分はそれを聞かなかった?
だから自分に一瞥もくれなくなったのか?
未だキャンキャン喚くフェリシナを放置してリカルドは頭を抱えた。



仕方なくパーティー会場にリカルドは一人で入場したが、フェリシアは既に会場入りし学友たちと談笑していた。
ーー実に楽しそうだ。エスコートがなくても、自分がいなくても。
面白くないとリカルドは鼻を鳴らしフェリシアの方に向かう。
途中からフェリシナも寄ってきて勝手についてきたが放置した。
「シア、話がある」
「まあなんでしょう?」
フェリシアは笑みをたたえたまま聞き返す。
「今までの事を謝りたい」
「えっ?」
フェリシアをはじめ、会場中の皆が驚いた。
「今までのこと__と申しますと?」
「フェリシナと出会ってからの、全てだ。私は君を蔑ろにし、公然とパートナーでない女性を連れ歩き、君の苦言に耳を傾けず酷い態度をし続けた事を、謝らせてほしい」
「お言葉を聞く限りでは大変殊勝なお話ですけれど、その後ろに張り付いてるのは__」
フェリシアはちら とリカルドの背後に視線をやる。
フェリシナがぴったりとくっついているのだ、とても謝罪にきた態ではない。
「ああ、離れてくれと言ったのだが離れなかったんだ。済まない」
「その状態での謝罪がほんとに伝わると思ってましたの?」
「君は寛大で聡明だし__それに僕のことが好きだろう?」
「いいえ?」
フェリシアの返しに会場中が凍りついた。



寛大で聡明で、殿下の事が好きだったフェリシアはもういないのだ。
他ならぬ目の前の男こいつのせいで。
「我慢し続けて、妃教育という建前での執務の手伝い、それをさせている本人は別の女性を寵愛している席に同席させるという無神経さ。その先に、どんな未来がありましょう?更に酷い絶望しか見えませんわ。だから、もうやめましたの」
コイツのせいで私はこんな事になってるのだ、フェリシア本人より元凶であるこの男の方が腹立たしい。
それに、フェリシナは今日も分不相応な装いを身に付けていた。
「貴女のその装いは、殿下からの贈り物かしら?」
と訊けば、
「そうよ!リカルド様は私が強請れば何だって買ってくれるわ!」
自慢げなフェリシナを放置して、
「失礼ですが殿下、その費用はどこから?」
私は殿下に向き直る。
「!」
リカルドの顔がさっと青ざめた。
「やっぱり……」
私が盛大にため息を吐くと、
「な、何よ?!自分が贈ってもらえないからって、」
「贈られていますわ。おそらく貴女と同じ頻度で。いえ、交互に と 言った方が正しいしら?」
フェリシアの言葉に、皆息を呑んだ。
「まさか……」
「嘘でしょう、ご婚約者のフォルトナ様への予算を使って子爵令嬢に贈り物を…?」
「それ、犯罪なんじゃ……?」
近くにいた生徒が呟き、それはさざ波のように会場中に広まっていった。
石のように固まったリカルドをよそに私はこの証拠を手に入れた日の事を思い返していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

【完結】私の馬鹿な妹~婚約破棄を叫ばれた令嬢ですが、どうも一味違うようですわ~

鏑木 うりこ
恋愛
 エリーゼ・カタリナ公爵令嬢は6歳の頃からこの国の王太子レオールと婚約をしていた。 「エリーゼ・カタリナ!お前との婚約を破棄し、代わりに妹のカレッタ・カタリナと新たに婚約を結ぶ!」  そう宣言されるも、どうもこの婚約破棄劇、裏がありまして……。 ☆ゆるっとゆるいショートになります( *´艸`)ぷくー ☆ご都合主義なので( *´艸`)ぷくーと笑ってもらえたら嬉しいなと思います。 ☆勢いで書きました( *´艸`)ぷくー ☆8000字程度で終わりますので、日曜日の暇でも潰れたら幸いです( *´艸`)

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

ポンコツ悪役令嬢と一途な王子様

蔵崎とら
恋愛
ヒロインへの嫌がらせに失敗するわ断罪の日に寝坊するわ、とにかくポンコツタイプの悪役令嬢。 そんな悪役令嬢と婚約者のゆるふわラブコメです。 この作品は他サイトにも掲載しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

前世の記憶がある伯爵令嬢は、妹に籠絡される王太子からの婚約破棄追放を覚悟して体を鍛える。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】殺された聖女は逆行し魔王の伴侶となる〜何故私があなた達の世界を救う必要があるんですか?〜

ウミ
恋愛
 地球から聖女として神に召喚された莉子。しかし、魔王はいないとされていた。次第に莉子は異常な魔力量を、疎ましがられ異界の魔女として神の生贄にされてしまう。しかし、この世界の神はそれを許さなかった。 ーー何故なら魔王は誕生していたからーー  目を覚ますと莉子は聖女としてこの世界にきた当日に戻っていた。 『許さない、魔王なんか倒すものか。世界が崩壊するなら勝手に崩壊すればいい』 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  是非ともお気に入り登録、よろしくお願いいたしますm(_ _)m

処理中です...