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仕上げは卒業パーティーで。
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そして迎えた卒業パーティーの日、フェリシアにドレスを贈り「迎えに行く」とメッセージを添えたところ「お迎えもドレスも結構です」と箱ごと返って来た__どういう事だ?!とリカルドは憤ったが、母に「貴方から贈られたドレスが気に入らなかったというなら、仕方ないでしょう。エスコートだって今までの貴方が酷すぎたから断られたのではなくて?」とあっさり斬られた。
そんな馬鹿な。
フェリシアがお気に入りのデザイナーに特注して誂えたものだ、気に入らないはずが__僕からはもう、何も受け取る気がないという事か?
それはつまりーー。
ここに来て、リカルドは漸く事の重大さを理解した。
その上、
「何故卒業パーティーにエスコートしてくださらないのっ?!今まではフェリシア様を差し置いて私を連れてってくれたじゃないですか!」
と叫ぶフェリシナに、
「何故って…、学生じゃなくなる席だからだ。婚約者がいるのに他の女性をエスコートするなんて許される筈がない」
と常識を説けば、
「そんなのおかしいわ!今までリカルド様だっていつもフェリシア様の事なんて夜会でも無視していたくせに!皆だって思ってるわ!私とリカルド様が並ぶと金の王子様と金の姫君みたいだって!」
「!」
自分とフェリシアは金の王子と銀の姫君と呼ばれていた。
リカルドはようやく、フェリシナのこの言について考え始めた。
フェリシナは自分と一緒にいることで、金の姫君と呼ばれる存在になりたかっただけなのではないか?__と。
フェリシアはわかっていて注意をしてくれていたのに自分はそれを聞かなかった?
だから自分に一瞥もくれなくなったのか?
未だキャンキャン喚くフェリシナを放置してリカルドは頭を抱えた。
仕方なくパーティー会場にリカルドは一人で入場したが、フェリシアは既に会場入りし学友たちと談笑していた。
ーー実に楽しそうだ。エスコートがなくても、自分がいなくても。
面白くないとリカルドは鼻を鳴らしフェリシアの方に向かう。
途中からフェリシナも寄ってきて勝手についてきたが放置した。
「シア、話がある」
「まあなんでしょう?」
フェリシアは笑みをたたえたまま聞き返す。
「今までの事を謝りたい」
「えっ?」
フェリシアをはじめ、会場中の皆が驚いた。
「今までのこと__と申しますと?」
「フェリシナと出会ってからの、全てだ。私は君を蔑ろにし、公然とパートナーでない女性を連れ歩き、君の苦言に耳を傾けず酷い態度をし続けた事を、謝らせてほしい」
「お言葉を聞く限りでは大変殊勝なお話ですけれど、その後ろに張り付いてるのは__」
フェリシアはちら とリカルドの背後に視線をやる。
フェリシナがぴったりとくっついているのだ、とても謝罪にきた態ではない。
「ああ、離れてくれと言ったのだが離れなかったんだ。済まない」
「その状態での謝罪がほんとに伝わると思ってましたの?」
「君は寛大で聡明だし__それに僕のことが好きだろう?」
「いいえ?」
フェリシアの返しに会場中が凍りついた。
寛大で聡明で、殿下の事が好きだったフェリシアはもういないのだ。
他ならぬ目の前の男のせいで。
「我慢し続けて、妃教育という建前での執務の手伝い、それをさせている本人は別の女性を寵愛している席に同席させるという無神経さ。その先に、どんな未来がありましょう?更に酷い絶望しか見えませんわ。だから、もうやめましたの」
コイツのせいで私はこんな事になってるのだ、フェリシア本人より元凶であるこの男の方が腹立たしい。
それに、フェリシナは今日も分不相応な装いを身に付けていた。
「貴女のその装いは、殿下からの贈り物かしら?」
と訊けば、
「そうよ!リカルド様は私が強請れば何だって買ってくれるわ!」
自慢げなフェリシナを放置して、
「失礼ですが殿下、その費用はどこから?」
私は殿下に向き直る。
「!」
リカルドの顔がさっと青ざめた。
「やっぱり……」
私が盛大にため息を吐くと、
「な、何よ?!自分が贈ってもらえないからって、」
「贈られていますわ。おそらく貴女と同じ頻度で。いえ、交互に と 言った方が正しいしら?」
フェリシアの言葉に、皆息を呑んだ。
「まさか……」
「嘘でしょう、ご婚約者のフォルトナ様への予算を使って子爵令嬢に贈り物を…?」
「それ、犯罪なんじゃ……?」
近くにいた生徒が呟き、それはさざ波のように会場中に広まっていった。
石のように固まったリカルドをよそに私はこの証拠を手に入れた日の事を思い返していた。
そんな馬鹿な。
フェリシアがお気に入りのデザイナーに特注して誂えたものだ、気に入らないはずが__僕からはもう、何も受け取る気がないという事か?
それはつまりーー。
ここに来て、リカルドは漸く事の重大さを理解した。
その上、
「何故卒業パーティーにエスコートしてくださらないのっ?!今まではフェリシア様を差し置いて私を連れてってくれたじゃないですか!」
と叫ぶフェリシナに、
「何故って…、学生じゃなくなる席だからだ。婚約者がいるのに他の女性をエスコートするなんて許される筈がない」
と常識を説けば、
「そんなのおかしいわ!今までリカルド様だっていつもフェリシア様の事なんて夜会でも無視していたくせに!皆だって思ってるわ!私とリカルド様が並ぶと金の王子様と金の姫君みたいだって!」
「!」
自分とフェリシアは金の王子と銀の姫君と呼ばれていた。
リカルドはようやく、フェリシナのこの言について考え始めた。
フェリシナは自分と一緒にいることで、金の姫君と呼ばれる存在になりたかっただけなのではないか?__と。
フェリシアはわかっていて注意をしてくれていたのに自分はそれを聞かなかった?
だから自分に一瞥もくれなくなったのか?
未だキャンキャン喚くフェリシナを放置してリカルドは頭を抱えた。
仕方なくパーティー会場にリカルドは一人で入場したが、フェリシアは既に会場入りし学友たちと談笑していた。
ーー実に楽しそうだ。エスコートがなくても、自分がいなくても。
面白くないとリカルドは鼻を鳴らしフェリシアの方に向かう。
途中からフェリシナも寄ってきて勝手についてきたが放置した。
「シア、話がある」
「まあなんでしょう?」
フェリシアは笑みをたたえたまま聞き返す。
「今までの事を謝りたい」
「えっ?」
フェリシアをはじめ、会場中の皆が驚いた。
「今までのこと__と申しますと?」
「フェリシナと出会ってからの、全てだ。私は君を蔑ろにし、公然とパートナーでない女性を連れ歩き、君の苦言に耳を傾けず酷い態度をし続けた事を、謝らせてほしい」
「お言葉を聞く限りでは大変殊勝なお話ですけれど、その後ろに張り付いてるのは__」
フェリシアはちら とリカルドの背後に視線をやる。
フェリシナがぴったりとくっついているのだ、とても謝罪にきた態ではない。
「ああ、離れてくれと言ったのだが離れなかったんだ。済まない」
「その状態での謝罪がほんとに伝わると思ってましたの?」
「君は寛大で聡明だし__それに僕のことが好きだろう?」
「いいえ?」
フェリシアの返しに会場中が凍りついた。
寛大で聡明で、殿下の事が好きだったフェリシアはもういないのだ。
他ならぬ目の前の男のせいで。
「我慢し続けて、妃教育という建前での執務の手伝い、それをさせている本人は別の女性を寵愛している席に同席させるという無神経さ。その先に、どんな未来がありましょう?更に酷い絶望しか見えませんわ。だから、もうやめましたの」
コイツのせいで私はこんな事になってるのだ、フェリシア本人より元凶であるこの男の方が腹立たしい。
それに、フェリシナは今日も分不相応な装いを身に付けていた。
「貴女のその装いは、殿下からの贈り物かしら?」
と訊けば、
「そうよ!リカルド様は私が強請れば何だって買ってくれるわ!」
自慢げなフェリシナを放置して、
「失礼ですが殿下、その費用はどこから?」
私は殿下に向き直る。
「!」
リカルドの顔がさっと青ざめた。
「やっぱり……」
私が盛大にため息を吐くと、
「な、何よ?!自分が贈ってもらえないからって、」
「贈られていますわ。おそらく貴女と同じ頻度で。いえ、交互に と 言った方が正しいしら?」
フェリシアの言葉に、皆息を呑んだ。
「まさか……」
「嘘でしょう、ご婚約者のフォルトナ様への予算を使って子爵令嬢に贈り物を…?」
「それ、犯罪なんじゃ……?」
近くにいた生徒が呟き、それはさざ波のように会場中に広まっていった。
石のように固まったリカルドをよそに私はこの証拠を手に入れた日の事を思い返していた。
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