上 下
6 / 12

愚かな王子様への教育的指導、開始。

しおりを挟む
さらには自室に戻ってぼやくと、
「そりゃそうでしょう。正直いつ爆発するかと思ってましたけど~」
と侍従に追い打ちをかけられた。
「お前、知ってたのか…?」
「そりゃあ、フェリシア様有能でしたし?そのご婚約者の有能さに助けられてるのを全く気付かなかったの、殿下ぐらいじゃないですかね~」
「ぐっ…!」
「従兄弟のレナード殿と、お似合いでしたね。」
「!」
確かに、銀髪の二人は似合いだった。月の光に輝く大地とそれを照らす女神のように。

リカルドとフェリシアも並ぶと金の王子と銀の姫君だと、似合いだと言われていたが__、今日の二人は以前よりずっと打ち解けて仲が良さげだった。
今までフェリシアがあんな打ち解けた笑みを浮かべた事などあったろうか?

それを見て侍従は「漸く気が付いたか」と息を吐く。
侍従はじめ家来たちはこの件について王子が自分から何か尋いてきた時のみ答えるように言われていた。
「自分で気付けないようならそれまで」という事だ。
侍従も尋かれないので黙っていたし、知らぬ者達も王子の婚約者に対する態度に思うところがあったので誰も自ら進言しようとはしなかった。
「ご令嬢の言う通り、どれだけ殿下が無関心だったかがよくわかります」
と冷たく侍従に言われ、リカルドはうな垂れた。




一方紫亜は先程のリカルドの態度に腹が立って仕方なかった。
もう、〝何が彼女といると癒される〟よ。面倒な淑女教育にお妃教育、未来の王太子妃だからって執務の手伝いまでさせといて労いの言葉ひとつなくそれで無条件に好かれるなんてどうして思えるのかしら?そんなんだから、「もう、嫌」てフェリシアに逃げられたのに。

その日以降もフェリシアはリカルドに近付かず、リカルドも絡んでくることはなかった。サロンに行かなくなったので二人がどうしているか知らないし知ろうとも思わなかった。

一方リカルドはサロンにフェリシアが全く近づかなくなったのを訝しく思い、そこでいつも料理やお茶をサーブしていた者に尋くと「フォンタナ家のご令嬢にはずっと以前に“今までありがとう”とのお言葉を頂戴しております。もうこちらには来られないおつもりではないでしょうか」と無表情に言われ凍りついた。
「それは、いつ…?」
「殿下が子爵令嬢を隣に同席させてお昼をとっておられた時です」
「………」
そうだ。婚約者でもない令嬢と二人は不味いため必ずフェリシナと約束した時にだけフェリシアも同席させた。
最初に政務の報告や挨拶がすむとフェリシナとばかり楽しく喋り、フェリシアは…_どうしていた?

見ていなかった。

いつも可愛らしく声をあげて笑うフェリシナばかり見て、フェリシアを見ていなかった。
だから、フェリシアも僕を見なくなった?
いや、でも婚約者だぞ?
幼い頃からずっと一緒で__フェリシア以外と結婚するなんて考えた事がない。
フェリシナは愛妾として可愛がるつもりだった。
どうせ将来そうなるのだから、今のうちからそうしたって同じだと思っていたのだ。
だってフェリシアは聡明で強いから、王妃として不足はない。
だが、聡明すぎて可愛げに欠ける。
やはり無条件で可愛いがれる存在が必要だ。
その点、フェリシナは理想的だった。
王妃になれる程の身分でもなければフェリシアほどの美貌も才覚もない、だからフェリシアも脅威に感じる事は無いはずだし、妾の一人や二人普通だろ?




「__とか、思ってるんでしょうねぇ」
紫亜の部屋で、紫亜の中でフェリシアは一人ごちた。
あいにく生粋の貴族なら耐えたかもしれないが、紫亜は現代っ子だ。
公爵家の父も母も彼女にとって親ではない。
「見られないのが、ちょっと残念ね…。」
あのバカ太子が、慌てふためく様を。フェリシアは紫亜の顔で楽しそうに笑った。



フェリシアの豹変に慄いたリカルドはフェリシナと一旦距離を置いたが、
「どうして急に冷たくするのっ?!酷い!!」
と好みのフェリシナに泣かれれば弱くて、ズルズルと前ほどではない距離感でフェリシナを側に置いていた。
フェリシアが態度を変えて以降、周囲からも距離を置かれたリカルドは単純に寂しかったからだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令嬢は限界です

まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」 何言ってんだこの馬鹿。 いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え… 「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」 はい無理でーす! 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。 ※物語の背景はふんわりです。 読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?

かのん
恋愛
 わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!  私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。  妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?  ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。  全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。

hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。 義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。 そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。 そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。 一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。 ざまあの回には★がついています。

私が我慢する必要ありますか?

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? 他サイトでも公開中です

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

気弱な公爵夫人様、ある日発狂する〜使用人達から虐待された結果邸内を破壊しまくると、何故か公爵に甘やかされる〜

下菊みこと
恋愛
狂犬卿の妻もまた狂犬のようです。 シャルロットは狂犬卿と呼ばれるレオと結婚するが、そんな夫には相手にされていない。使用人たちからはそれが理由で舐められて虐待され、しかし自分一人では何もできないため逃げ出すことすら出来ないシャルロット。シャルロットはついに壊れて発狂する。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...