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愚かな王子様への教育的指導、開始。
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さらには自室に戻ってぼやくと、
「そりゃそうでしょう。正直いつ爆発するかと思ってましたけど~」
と侍従に追い打ちをかけられた。
「お前、知ってたのか…?」
「そりゃあ、フェリシア様有能でしたし?そのご婚約者の有能さに助けられてるのを全く気付かなかったの、殿下ぐらいじゃないですかね~」
「ぐっ…!」
「従兄弟のレナード殿と、お似合いでしたね。」
「!」
確かに、銀髪の二人は似合いだった。月の光に輝く大地とそれを照らす女神のように。
リカルドとフェリシアも並ぶと金の王子と銀の姫君だと、似合いだと言われていたが__、今日の二人は以前よりずっと打ち解けて仲が良さげだった。
今までフェリシアがあんな打ち解けた笑みを浮かべた事などあったろうか?
それを見て侍従は「漸く気が付いたか」と息を吐く。
侍従はじめ家来たちはこの件について王子が自分から何か尋いてきた時のみ答えるように言われていた。
「自分で気付けないようならそれまで」という事だ。
侍従も尋かれないので黙っていたし、知らぬ者達も王子の婚約者に対する態度に思うところがあったので誰も自ら進言しようとはしなかった。
「ご令嬢の言う通り、どれだけ殿下が無関心だったかがよくわかります」
と冷たく侍従に言われ、リカルドはうな垂れた。
一方紫亜は先程のリカルドの態度に腹が立って仕方なかった。
もう、〝何が彼女といると癒される〟よ。面倒な淑女教育にお妃教育、未来の王太子妃だからって執務の手伝いまでさせといて労いの言葉ひとつなくそれで無条件に好かれるなんてどうして思えるのかしら?そんなんだから、「もう、嫌」てフェリシアに逃げられたのに。
その日以降もフェリシアはリカルドに近付かず、リカルドも絡んでくることはなかった。サロンに行かなくなったので二人がどうしているか知らないし知ろうとも思わなかった。
一方リカルドはサロンにフェリシアが全く近づかなくなったのを訝しく思い、そこでいつも料理やお茶をサーブしていた者に尋くと「フォンタナ家のご令嬢にはずっと以前に“今までありがとう”とのお言葉を頂戴しております。もうこちらには来られないおつもりではないでしょうか」と無表情に言われ凍りついた。
「それは、いつ…?」
「殿下が子爵令嬢を隣に同席させてお昼をとっておられた時です」
「………」
そうだ。婚約者でもない令嬢と二人は不味いため必ずフェリシナと約束した時にだけフェリシアも同席させた。
最初に政務の報告や挨拶がすむとフェリシナとばかり楽しく喋り、フェリシアは…_どうしていた?
見ていなかった。
いつも可愛らしく声をあげて笑うフェリシナばかり見て、フェリシアを見ていなかった。
だから、フェリシアも僕を見なくなった?
いや、でも婚約者だぞ?
幼い頃からずっと一緒で__フェリシア以外と結婚するなんて考えた事がない。
フェリシナは愛妾として可愛がるつもりだった。
どうせ将来そうなるのだから、今のうちからそうしたって同じだと思っていたのだ。
だってフェリシアは聡明で強いから、王妃として不足はない。
だが、聡明すぎて可愛げに欠ける。
やはり無条件で可愛いがれる存在が必要だ。
その点、フェリシナは理想的だった。
王妃になれる程の身分でもなければフェリシアほどの美貌も才覚もない、だからフェリシアも脅威に感じる事は無いはずだし、妾の一人や二人普通だろ?
「__とか、思ってるんでしょうねぇ」
紫亜の部屋で、紫亜の中でフェリシアは一人ごちた。
あいにく生粋の貴族なら耐えたかもしれないが、紫亜は現代っ子だ。
公爵家の父も母も彼女にとって親ではない。
「見られないのが、ちょっと残念ね…。」
あのバカ太子が、慌てふためく様を。フェリシアは紫亜の顔で楽しそうに笑った。
フェリシアの豹変に慄いたリカルドはフェリシナと一旦距離を置いたが、
「どうして急に冷たくするのっ?!酷い!!」
と好みのフェリシナに泣かれれば弱くて、ズルズルと前ほどではない距離感でフェリシナを側に置いていた。
フェリシアが態度を変えて以降、周囲からも距離を置かれたリカルドは単純に寂しかったからだ。
「そりゃそうでしょう。正直いつ爆発するかと思ってましたけど~」
と侍従に追い打ちをかけられた。
「お前、知ってたのか…?」
「そりゃあ、フェリシア様有能でしたし?そのご婚約者の有能さに助けられてるのを全く気付かなかったの、殿下ぐらいじゃないですかね~」
「ぐっ…!」
「従兄弟のレナード殿と、お似合いでしたね。」
「!」
確かに、銀髪の二人は似合いだった。月の光に輝く大地とそれを照らす女神のように。
リカルドとフェリシアも並ぶと金の王子と銀の姫君だと、似合いだと言われていたが__、今日の二人は以前よりずっと打ち解けて仲が良さげだった。
今までフェリシアがあんな打ち解けた笑みを浮かべた事などあったろうか?
それを見て侍従は「漸く気が付いたか」と息を吐く。
侍従はじめ家来たちはこの件について王子が自分から何か尋いてきた時のみ答えるように言われていた。
「自分で気付けないようならそれまで」という事だ。
侍従も尋かれないので黙っていたし、知らぬ者達も王子の婚約者に対する態度に思うところがあったので誰も自ら進言しようとはしなかった。
「ご令嬢の言う通り、どれだけ殿下が無関心だったかがよくわかります」
と冷たく侍従に言われ、リカルドはうな垂れた。
一方紫亜は先程のリカルドの態度に腹が立って仕方なかった。
もう、〝何が彼女といると癒される〟よ。面倒な淑女教育にお妃教育、未来の王太子妃だからって執務の手伝いまでさせといて労いの言葉ひとつなくそれで無条件に好かれるなんてどうして思えるのかしら?そんなんだから、「もう、嫌」てフェリシアに逃げられたのに。
その日以降もフェリシアはリカルドに近付かず、リカルドも絡んでくることはなかった。サロンに行かなくなったので二人がどうしているか知らないし知ろうとも思わなかった。
一方リカルドはサロンにフェリシアが全く近づかなくなったのを訝しく思い、そこでいつも料理やお茶をサーブしていた者に尋くと「フォンタナ家のご令嬢にはずっと以前に“今までありがとう”とのお言葉を頂戴しております。もうこちらには来られないおつもりではないでしょうか」と無表情に言われ凍りついた。
「それは、いつ…?」
「殿下が子爵令嬢を隣に同席させてお昼をとっておられた時です」
「………」
そうだ。婚約者でもない令嬢と二人は不味いため必ずフェリシナと約束した時にだけフェリシアも同席させた。
最初に政務の報告や挨拶がすむとフェリシナとばかり楽しく喋り、フェリシアは…_どうしていた?
見ていなかった。
いつも可愛らしく声をあげて笑うフェリシナばかり見て、フェリシアを見ていなかった。
だから、フェリシアも僕を見なくなった?
いや、でも婚約者だぞ?
幼い頃からずっと一緒で__フェリシア以外と結婚するなんて考えた事がない。
フェリシナは愛妾として可愛がるつもりだった。
どうせ将来そうなるのだから、今のうちからそうしたって同じだと思っていたのだ。
だってフェリシアは聡明で強いから、王妃として不足はない。
だが、聡明すぎて可愛げに欠ける。
やはり無条件で可愛いがれる存在が必要だ。
その点、フェリシナは理想的だった。
王妃になれる程の身分でもなければフェリシアほどの美貌も才覚もない、だからフェリシアも脅威に感じる事は無いはずだし、妾の一人や二人普通だろ?
「__とか、思ってるんでしょうねぇ」
紫亜の部屋で、紫亜の中でフェリシアは一人ごちた。
あいにく生粋の貴族なら耐えたかもしれないが、紫亜は現代っ子だ。
公爵家の父も母も彼女にとって親ではない。
「見られないのが、ちょっと残念ね…。」
あのバカ太子が、慌てふためく様を。フェリシアは紫亜の顔で楽しそうに笑った。
フェリシアの豹変に慄いたリカルドはフェリシナと一旦距離を置いたが、
「どうして急に冷たくするのっ?!酷い!!」
と好みのフェリシナに泣かれれば弱くて、ズルズルと前ほどではない距離感でフェリシナを側に置いていた。
フェリシアが態度を変えて以降、周囲からも距離を置かれたリカルドは単純に寂しかったからだ。
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