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そうよ、正統な王女である私が正しい。
そう信じるレベッカは、
「確かに私に言い寄って来る殿方に情けをかけてしまったことはありますけれど__エドワード様が悪いのですよ?貴方が私を放っておくから寂しくなってしまって……けれどそれはあくまで一時的に臣下の想いに報いただけのこと。それだけですわ。それに、それが問題視されるのだとしたら__フェンティ夫人の方が問題ではありませんこと?」
と姿勢を正して言い放った。

「どういう意味かな?」
言葉の代わりに剣先を突きつけそうなエドワードに代わり、国王が問う。
「フェンティ夫人はエドワード様がこちらに戻られるまで地方領主の方のところにお世話になっていたと聞きましたわ。えぇ、もちろん私その辺に関する理解はあるつもりですわ。夫が長く戦から帰らず、生家も地位が低く頼りにならないとなれば女性が生きていく手段は限られますもの。フェンティ夫人は妾をしていらしたのでしょう?」

____は?

と突っ込んだのが大半だろう、中には「え?そうなの?」と近くに確認をとる者もいたが、チャキ、とエドワードの手元からした音に身を竦ませ、辺りは静寂に包まれた。

「皆様敢えて口を噤むのもわかりますわ。けれどそのかたが騎士伯を賜ったエドワード様に相応しいかと言われれば答えは否、明らかに無理がありますわ。ですから私、お父様に頼んでフェンティ夫人に相応しい縁談をご用意いたしましたの」
「おぉ、手紙で頼まれていた件だな。ちゃんと見繕ってきたぞ」
得意げに愛娘に紙の束を渡すミレスナの王に先程の音は聞こえていないらしい。

便利な耳である。

この二人のいる場所だけ、次元の違う異空間のようだ。

パラパラと受けとった紙をめくり、
「まあ__○○○伯爵まで候補に入れられたのですか?由緒ある名家なのに」
「うむ。あの家も奥方が亡くなって長いからな。当主は五十過ぎだが子爵令嬢の再婚先としては妥当かと思ってな」
「それはそうかもしれませんが……」
「なに、じきに当主の座を息子に譲って隠居するそうだから夫人はそれについて行けば良い。今更社交界に出たいなどと言える身分でもなかろう」
「それもそうですわね。あとは△△△子爵に□□□男爵令息、隠居した辺境伯に__、流石お父様ですわ」
「そうだろうそうだろう!子爵も男爵令息も少々評判の悪い人物だが金には困っておらぬし辺境伯はご老体だが、貧相な子爵家の出で、領主の妾あがりの娘には勿体ないほどの縁だ。エドワード殿の体面を保つためにもそこそこの家との縁を結ばせてやりたいとお前がいうから厳選してきた」

この時点で、(元々彼らの周りには空間ができていたが)周囲の人々が目に見えて距離を取り始めた。
血飛沫でも浴びせられたら堪らない。

「つまり、ミレスナの王。貴方は勝手にフェンティ夫人を離婚させ、自国のろくでなし貴族の誰かと結婚させようとしていると?」
「それは邪推というものです、王妃陛下。私は娘にエドワード殿を奪われてしまった娘が憐れで手を差し伸べているのです。ところで、そのフェンティ夫人はどこにおられるのですかな?」
すぐ近くに立つエドワードの後ろにいるのだが、エドワードの立派な体躯に隠れてアルスリーアの姿はミレスナの馬鹿の目には入っていない。

王妃の肝煎りデザイナーズに飾り立てられた今のアルスリーアを見て“貧相“と思う人間はいないだろうが、見せてやるつもりもない。

今ミレスナの二人はそう思う人々に囲まれているのだが、止められないということは自分たちは正しいと信じているさまは、どこまでも滑稽だった。














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