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王妃様から寄越されたのは“お針子“などという可愛いものではなかった。
「うぅ~ん、胸元の布はもう一センチカットすべきかしら」
「いや、むしろずらしては?ここをこう……」
私に仮縫いであてがわれた布をああでもないこうでもないと切ったり変えたりしてる人は有名なデザイナーらしい。

「ダメよ!夫人の髪の鮮やかさを際立たせるのにこの色では弱いわ……あゝそれも駄目よ、派手なら良いわけではないわ」
「先生!こちらならどうでしょうか?」
「あら良いわね。これの色違いでもう少し濃い色はある?」
「はい。付ける位置はこの辺りで?」
「一.五センチくらい下でやってみてちょうだい。結ってみて微調整するわ」
こちらはヘアデザインの専門家とそのお弟子さんらしい。
(そんな職業もあるのね……)

少し離れた場所で待機しているのはジュエリー専門の方々。
「ドレスが決まらないと付ける宝石は決められない」
と仮縫いのドレスを見ながら候補だけ選んでる段階らしい。
(王妃様っていつもこんな準備してるのかしら……)
身分の高い人は大変だな と自分も“身分の高い人“の括りに入っている自覚のないアルスリーアはため息を漏らす。

そう、翌日やって来たのはデザイン画を描く人から布の裁断・縫製担当、ヘアデザインの担当に身に付ける小物までを“全て完璧に仕上げる“ために送り込まれた“お針子も含む専門チーム“御一行様で、その数総勢十二名。
迎えた私とエドワードは顔を見合わせたが、国王夫妻連名の書状を見せられ、(諦めて)一行を中へと迎え入れ__今に至る。
因みに、エドワードは採寸だけして「奥様と対になるように仕上げますので」と早々に解放された。

ズルい。
 なんで私だけ?

いや、こういうことは女性の方が何倍も時間も手間もかかるものだと、理解してはいるけれど。
(宝石も布も、キラキラし過ぎてて目が眩みそう……)
と目をパチパチさせていると、
「フェンティ夫人、お疲れですか?」
とお針子助手の女性から声がかかる。
「申し訳ありません、立ちっぱなしですものね。丈の調整は終わったので、あとはこちらに掛けた状態でいたしましょう」
と背もたれのない椅子を示される。
(あとどれくらいで終わるんだろ……)
アルスリーアは遠い目をした。

__終わったのは日がとっぷり暮れた、少し夕食にも遅い時間(間にティータイムはあった)だった。
デザイナー御一行の皆様を送り出した後、夕食の席に着いた私は「お疲れ様、リーア。その、食欲はありそうかい?」と労われた。
「なくはないですが……」
(こういう時は、ひとりで部屋で食べたいな~とか、言ったらダメなんだろうな)
アルスリーアはどこまでいってもアルスリーアマイペースだった。

夜会の前日に出来上がってきたドレスは素晴らしいもので、私もこういったことに無頓着なエドワードも息を呑んだ。

















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