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年齢は二十前後くらいだろうか、黒髪に金の衣装が良く似合っているが昼の庭園での茶会では浮いて見える。
ふんだんに金をあしらった衣装は夜会なら映えそうだが、この時と場所を鑑みれば場違いとも思える。
腰まである黒髪に金の額飾りを光らせたその女性は王妃様たち同様、侍従の声に振り向き、私の存在に気付くとおもむろに扇子を取り出しバサッと広げて顔の下半分を隠すと、頭のてっぺんから爪先までじぃ~っと検分してきた。

そう、検分。
本来なら「見てきた」でいいのかもしれないが、このじっとりねっとり絡みつく視線はどう捉えたって“検分“だ。
それも、優位の肉食獣が劣位の獲物にどこから噛みつこうか思案している時の。

「レベッカ王女」
そこへ王妃様の声が低く、しかしはっきりと割って入った。
その声には、と顔をあげたレベッカは、
「し失礼いたしましたわ王妃様。初めまして、フェンティ伯夫人。私はミレスナ王国の第一王女・レベッカと申します。エドワード様には遠征中我が家に滞在していただき、大変親しくさせていただいております」
(うわぁ。めんどくさい)

私をフェンティ夫人と呼んでおきながら、自分はエドワード呼び。
遠征中ひとつ屋根の下(といっても城だから屋根はあまり繋がっていなさそうだが)にいた+“親しかった“じゃなく“親しくしてる“って現在進行形。

__つまり、喧嘩を売られている。

買うべきか、買わざるべきか?
それが問題だ。

しかし王妃様、こんな席を用意したってことは“これは見もの“だと思ってるってことだろうか。
そんな悪趣味な方だったの?

ちら、と王妃に目をやると とても冷たい目でレベッカを見やり、次いで私に向かって微笑んだ。
「まあまあまあ、レベッカ王女ったら主催である私より先にフェンティ夫人に挨拶してしまうなんて__ミレスナ王国ではそれが普通なのかしら?」
言い方こそ優しいが間違いなく含みがある。
「!そ、そんなことは!失礼致しました王妃様」
レベッカも感じとったらしく、慌てて頭を下げる。
(まあ、当然か)

ミレスナはエドワードが行っていた戦地の通り道である。
戦争の相手国と我が国の間には国境だけでなくその国に至るまでに幾つかの小国が点在する。
小さくても、数百人しか住んでいない集落であっても、人が集まり、国家を建てればそこは国である。
大国同士の戦争の際はその立地上、どうしたって巻き込まれる。
望もうと、望むまいと大国の兵が大挙して来たら小国になす術はない。
畑は荒らされ、下手すると食い散らかされて終わる__人も、物も。

ミレスナはそのうちのひとつ、要するに小国だ。
小さい集落ではないが、特別大きくもない。
我が国の辺境伯よりひと回り小さい程度の領地は有していたはずだし、然程大きくはなくとも城も構えている。
そこに滞在していたということは、ミレスナは賭けに出て我が国に味方し、事なきを得たということ。
いずれにしろ、その小国の姫と我が国の王妃とでは格が違う。
下手に出るのが当然なのだ。

(あれ?それにミレスナって確か__)
アルスリーアが脳内で習った内容をおさらいしていると、
「ごめんなさいねフェンティ夫人。今日のお茶会の開始が遅れたのは突然レベッカ王女がやって来て、この茶会に飛び入り参加したいと言ってきたからなの」

__は?













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