38 / 73
37
しおりを挟む
「き、騎士団長としてのお仕事はどうされるのですか?」
「戦争がなければ書類仕事と団員の訓練ぐらいだ、俺でなくても務まる」
「騎士の方が鍛錬を怠るのは不味いのでは?」
「ん?自分の鍛錬だけならどこでも出来る。ガゼル子爵領の兵士たちに混ぜてもらっても良いかもしれん」
よろしくないと思います、主に先方の精神に。
そんな会話をしながら着いたのは宝石店の前だ。
店構えからしてハイジュエリー専門店なのがわかる。
流石に銘打ってはないが『一見様お断り』感がプンプンする。
__皆、ここで気軽に買い物するんだろうか??
そんなリーアの心中に構わず、エドワードはアルスリーアを扉の中へとエスコートする。
「いらっしゃいませ」
いかにも高級品の取扱いに慣れているといった紳士から声をかけられると、
「フェンティの名で頼んでおいたものだが」
「ご用意してあります。こちらへ」
とさらに奥まった部屋へと案内される。
お得意先専用の個室なのだろう、高級ホテルのラウンジのようだ。
内装の見事さに見惚れていると、
「どうぞ」
と、支配人らしき人が差し出したビロードの張られたトレイには数点の宝石が載っている。
真っ青なサファイア、真っ赤なビジョン・ブラッド、イエローダイヤモンドにレッドダイヤモンド。
昨夜のドレスと同じ色合いだ。
言葉を失っていると、
「リーアは、どれが好き?」
とまるで“どのお菓子が食べたい?“という気楽さで宝石選びを薦めてきたエドワードにくらくらしながら、
「あの、これは……?」
「デビュタントのお祝いに贈った品から今まで、ひとつも君に届いてなかったと聞いた。それまでの分と、その__書類上はもう結婚してるわけだし変かもしれないけどこ、婚約指輪として贈らせて欲しい。ほんとは指輪にした状態で贈りたかったけど、サイズがわからないし勝手に測るわけにもいかないから、ここで君に選んでもらってから指輪に加工してもらおうかと」
“婚約指輪“のところで吃って赤くなるとか乙女か、可愛いか!
この顔面偏差値にその中身のギャップ反則すぎるでしょう、無敵か!
「リーア、もしかしたらこの中には欲しいものがない?」
そんな私の心中に構わず私の機嫌を気にするとか__うん、無敵だった。
戦場の常勝将軍で、国王のお気に入りで、部下からの人望も厚くて、本人も情の深い人で。
戦場で強いのに社交はからっきしで、乙女心が分からなくてそのくせ中身は乙女で、顔も綺麗で血筋も良くて、おまけに今や金も権力もある。
このまま一緒にいたらきっと苦労する。
この人を狙ってる人は多くて、私には何の後ろ盾もなくて。
この人の想いだっていつ変わってしまうか、失ってしまうかわからないのに。
一番いて欲しい時にいなくなってしまったけれど、幼い時一番欲しい言葉を、温かさをくれた人でもあって。
「過去の私はもうどこにもいない」と勝手に姿を消した私を探して今の私を見つけてくれた人。
「このサファイアが良いですわ、エディの瞳と同じ色で、とても綺麗。私、指輪にするならこれがいいです」
「戦争がなければ書類仕事と団員の訓練ぐらいだ、俺でなくても務まる」
「騎士の方が鍛錬を怠るのは不味いのでは?」
「ん?自分の鍛錬だけならどこでも出来る。ガゼル子爵領の兵士たちに混ぜてもらっても良いかもしれん」
よろしくないと思います、主に先方の精神に。
そんな会話をしながら着いたのは宝石店の前だ。
店構えからしてハイジュエリー専門店なのがわかる。
流石に銘打ってはないが『一見様お断り』感がプンプンする。
__皆、ここで気軽に買い物するんだろうか??
そんなリーアの心中に構わず、エドワードはアルスリーアを扉の中へとエスコートする。
「いらっしゃいませ」
いかにも高級品の取扱いに慣れているといった紳士から声をかけられると、
「フェンティの名で頼んでおいたものだが」
「ご用意してあります。こちらへ」
とさらに奥まった部屋へと案内される。
お得意先専用の個室なのだろう、高級ホテルのラウンジのようだ。
内装の見事さに見惚れていると、
「どうぞ」
と、支配人らしき人が差し出したビロードの張られたトレイには数点の宝石が載っている。
真っ青なサファイア、真っ赤なビジョン・ブラッド、イエローダイヤモンドにレッドダイヤモンド。
昨夜のドレスと同じ色合いだ。
言葉を失っていると、
「リーアは、どれが好き?」
とまるで“どのお菓子が食べたい?“という気楽さで宝石選びを薦めてきたエドワードにくらくらしながら、
「あの、これは……?」
「デビュタントのお祝いに贈った品から今まで、ひとつも君に届いてなかったと聞いた。それまでの分と、その__書類上はもう結婚してるわけだし変かもしれないけどこ、婚約指輪として贈らせて欲しい。ほんとは指輪にした状態で贈りたかったけど、サイズがわからないし勝手に測るわけにもいかないから、ここで君に選んでもらってから指輪に加工してもらおうかと」
“婚約指輪“のところで吃って赤くなるとか乙女か、可愛いか!
この顔面偏差値にその中身のギャップ反則すぎるでしょう、無敵か!
「リーア、もしかしたらこの中には欲しいものがない?」
そんな私の心中に構わず私の機嫌を気にするとか__うん、無敵だった。
戦場の常勝将軍で、国王のお気に入りで、部下からの人望も厚くて、本人も情の深い人で。
戦場で強いのに社交はからっきしで、乙女心が分からなくてそのくせ中身は乙女で、顔も綺麗で血筋も良くて、おまけに今や金も権力もある。
このまま一緒にいたらきっと苦労する。
この人を狙ってる人は多くて、私には何の後ろ盾もなくて。
この人の想いだっていつ変わってしまうか、失ってしまうかわからないのに。
一番いて欲しい時にいなくなってしまったけれど、幼い時一番欲しい言葉を、温かさをくれた人でもあって。
「過去の私はもうどこにもいない」と勝手に姿を消した私を探して今の私を見つけてくれた人。
「このサファイアが良いですわ、エディの瞳と同じ色で、とても綺麗。私、指輪にするならこれがいいです」
510
お気に入りに追加
2,838
あなたにおすすめの小説
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる