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領主館の応接室の中でも一番立派な設の一室で、ガゼル子爵でありまた辺り一帯を治める領主でもあるハワード・ガゼルとその夫人エミリアは先日叙勲され騎士伯となったエドワード・フェンティ伯と副官・ディーンの訪問を受けていた。
「せっかくお越しいただきましたが、書面でも報告しました通りフェンティ夫人らしき方は我が領地にはいらっしゃらないかと……」
「何度も申し訳ない、ガゼルどの。だが、実際彼女らしき人物の手掛かりや目撃証言などを追ってみるとこの辺りで途切れているのだ。報告書を読む限り貴公が最も真摯に取り合ってくれていることもわかっている。だからこそお聞きしたい、名前や髪の色などは変えているかも知れないから一旦忘れて下さって良い。その上で数年前にこの地に住み着いた、またはほんの数日でも滞在した娘はいなかったろうか?年の頃は十五から二十代前半くらいと仮定して」
とエドワード・フェンティは頭を下げた。
ディーンはそれを止めることなく静かに背後に控えていた。

言っては難だがエドワード・フェンティは今国内で一番影響力のある人物である。
そのエドワードの号令のもとあらゆる人脈や人数を総動員しての大捜索をしても“アルスリーア“らしき人物は見つからず、エルドア子爵家を訪れてから早二ヶ月、号令を出すだけでなく自らも方々を走り回ったエドワードはすっかりやつれていた。

そんな上司の後ろ姿を見やり、
「恐れながら団長、数年前の滞在を調べても意味はないのでは?」
「……何故だ?」
「それが判明したとしても次の行き先に繋がる可能性は低いからです。それよりも同じ年、少なくとも同年代に見える女性を何か名目をつけて一箇所に集めて頂いて団長自らご覧になっては?我々はアルスリーア嬢の顔を存じ上げません、肖像画も八年前のものまでしかございませんし」
「それは__、確かにそうだが」
そう答えるエドワードの顔には怯えが滲んでいた。

気持ちはわからなくもない、ここまでくれば最悪の想像などいくらでもついてしまうからだ。
ここまで大々的に探して見つからない・本人が名乗り出ても来ないとしたら既に亡くなっているのか、それとも出てこれない理由があるのか__後者だとしたら不慮の事故でベッドから起き上がれなくなっているか、若しくは娼婦に身を落としているか……それよりも恐ろしいのは既に別の男性と家庭を持ち、子供も抱いていたりした場合だろう。
おそらく一番マシに見えるこの結果が今のエドワードには一番堪えるのかも知れない。














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