記憶が戻った伯爵令嬢はまだ恋を知らない(完結) レジュール・レジェンディア王国譚 承

詩海猫

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彼女に声をかけてみたのは、彼女が所謂特権派なのか中立派なのか確認する為でもあったのだが、好奇心でもあった。

セイラ・ローズ伯爵令嬢。
この国の重鎮であり、王室においても最も発言力のあるローズ伯の娘であり、兄は王子の側近、母は現王妃の妹、王子達とは従兄弟で幼馴染。
てどんだけ?王子妃の筆頭候補と呼ばれて当たり前である。

尤も、セイラの相手と目されているのは同じ年のラインハルト王子ではなく五歳上のレオンハルト殿下であったが。
だが、当のセイラ本人に関しては情報通を称する自分でも入学するまで良くわからないままだった。
子供も集まる貴族同士のお茶会には出て来ないし、うちとローズ伯爵領は取引があるのだから会った事があってもおかしくないのだが、うちも先方も特に子供同士を引き合わせようとはしなかった。
デビュー前の自分は夜会にも王城にも縁がなかったし、わかったのはセイラ嬢は王妃様に気に入られていて、「姪っ子の顔が見たい」と頻繁に王城に呼び出されており、既に門番には顔を覚えられているらしい事と、金髪の兄弟と違いローズ伯そっくりの黒髪黒瞳の持ち主だということくらいだ。

ローズ伯は家格が高きも低きも平等な判断を下す方として有名で、臣民の言葉に耳を傾ける一方で、国王の叔父としても忌憚なく意見を述べる王家と民の天秤だというのは有名で、後継たる嫡男もそれに相応しく成長しているときく。
弟の方はまだ幼いし情報がなくても当然だが、彼女は違う。
魔法学園に入るとなれば全寮制の学園内で多くの人と関わる事になるのだから、大体入学一年ほど前からお茶会などを頻繁に行い、「魔法学園でもよろしくね」的な子供同士の交流を計るのが一般的である。
だが、自分はそういった集まりに出来る限り出席したにもかかわらずお目にかかった事がない。正しくは私だけでなく〝誰も〟だ。
入学直前になってもそれは変わらず、そのまま入学式を迎えることとなった。



噂だけでいくと、
「王妃の姪なのをかさにきた鼻持ちならない令嬢」とか、「兄と王子が友人なのを良い事に王子に纏わりつく令嬢」
又は、
「財務大臣である父に頼んで美しくもないのに王子の婚約者にしてとせがんでいる真っ黒小娘」
 等々。
いや、最後のはその年で婚約者もいないの?といわれる年上令嬢がたの僻みだろうってのはわかるのだが__肝心の本人の印象が見えない。

現王妃の姪で、王子の従姉妹で、財務大臣の愛娘。
だが、社交界には顔を出さない。
子供同士を引き合わせるのが当たり前の集まりにすら一切来た事がない。
身体が丈夫でないとも、単に王城への出入りが自由なためお高くとまっているとも言われる真偽不明の噂だけ。
尤もとっくに婚約者がいておかしくない年齢なのに父伯が断り続けているというから、箱入りには違いない。

それとも他に何か特別な理由があるのか?

しかも、入学式当日に門で倒れ、二週間遅れての登校と入寮。
初めて教室に入ってきた彼女の顔色は元々が人より色白なのを差し引いてもお世辞にも良いとは言えず、「病弱という噂は本当だったのか?」とも思った。
(どちらにしても自分で見極めるしかない)と思って声をかけた。
が、初めて声をかけた時ぴんときた。
少なくとも特権派ではない。
それだけなら中立の代表たるローズ家の娘だから当然とも思うが、それだけではなかった。
幼い頃から社交に関わって来なかった彼女はわかってなかった。
 
この学園のバランスがどちらに傾くかに自分がいかに重要な存在か。
わかっていないのに、特権派に斬り込んだ。
わかってないのに、間に立って奴らをどんどん糾弾していった__それはもう、見ていて爽快なくらいに。

彼女とは、気が合いそう。
私の第一印象はそれだった。
 
そうして声をかけた彼女はやはり最初の印象通り高慢さなんか欠片もなくて、私と彼女は親友になった。



 *・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*
 「所作全てが優雅で無理がない」
初めてのマナーレッスンで痛感したのはそれだった。
厳しくて有名なマダム・エッセルさえ認めた。

どうやったら社交デビュー前にこんな令嬢が出来上がるのか?
彼女セイラへの興味は尽きない。

が、その一旦が垣間見えたのは生徒会主催の交流会の時だ。
特権派・中立派の生徒数名の代表が一堂に会し意見交換かつ交流を深める……効果があるかは別にして、半月に一度行われる定例イベントである。

そこで、事件は起こった。

交流会であるから、お茶を入れるのは特権派と中立派のメンバーが交代で行う。
派閥の垣根無しに、相手を心からもてなす心持ちで。
その日の当番はヴァニラ・アーバンテイル公爵令嬢だった。
彼女は部屋に入って来るなり伴ってきた令嬢の一人に言ったのだ。
「貴女、よろしくね」
 と。
周囲がざわつく中、言われた令嬢は軽く頭を下げてお茶をいれようとしたが、
「お待ちになって」
セイラの制止が入った時には当のヴァニラは席に着いていた。
「?」
ざわつく室内に訝しげに眉を顰めるヴァニラに、
「アーバンテイル公爵令嬢、この定例会の意味を理解されていて?」
「なっ……!」
馬鹿にされたと感じたのだろう、ヴァニラの頬が紅く染まる。
そう、この時のヴァニラはまさに〝公爵令嬢らしい公爵令嬢〟__どちらかといえば特権派に属する令嬢だったのだ。
 
ついでに気の合わない特権派はけちょんけちょんに落とすセイラだがこの時は大真面目に言ったのであって決して馬鹿にしてはいない。
「この定例茶話会は特権派と中立派が歩み寄るため、その第一歩として“互いをもてなす“という意味での持ち回りの当番制という事を理解されているかと訊いているのです」
「そんな事説明されなくてもわかっているわっ「では何故他人に言いつけているのです?」!っは?」
「自分は公爵令嬢だからやる必要がない?前回は公爵家嫡男である生徒会長がやって下さっていたのに?」
「っそれは……!」
 ばつが悪そうに言葉に詰まるヴァニラにさらにセイラはたたみかけた。
「やりたくないのに無理にやる必要はございません。ここは強制の場ではないのですから。ですが〝自分がやるつもりがない〟方は〝この席に着く資格もない〟という事ですのよ?」
口調は優しく、幼子に言いきかせるようで、セイラにしては優しい。
だが、言われたヴァニラは立ち上がったまま凍りついた。
「わ、私はただ……」
「__手ずから淹れた事なんかないから、わからなかった?」
 セイラの台詞に図星だったのだろう、かぁっと更に真っ赤になる。
「でしたら、経験のある方に手伝いをお願いするなり教えを乞うなりすれば良いのですよ?」
「わ、私は!公爵令嬢たるものが自らお茶を淹れて振る舞うなど恥だと!そう、」
「お家でそう教育されたのですね。確かに身分が高いほどそう教育された方は多いでしょう」
あっさり肯定されてヴァニラが呆ける。
「ですが、この学園内には専用の侍女侍従がいるわけではありません。喉が渇いたら自分で動くしかないし、 アーバンテイル公爵令嬢?貴女は親しい友人の為にそれをする事すら厭うのですか?」
「そ、そんな事ないわ!私だって友人が具合が悪くなったりしたら心配もするし付き添ったり飲み物を取りにだって行くわ!」
「でしたら今その友人にする様になされば良いのです。何故出来ないのですか?」
「……家格の違う友人に、すべきではないと」
「そう教わったのですね。貴女はそれが正しい事だと思いますか?この平等を謳う学園に於いて」
「っ……」
「全てが間違いだとは言いません。お家でやったらそれこそメイド達の仕事の妨げになってしまうかもしれません。ですから学園にいる間だけでもその家格云々とやらを取っ払ってはみませんか?」
「え?」
 俯いていたヴァニラが弾かれるように顔をあげた。
「自分が心からもてなしたい、一緒にいて楽しい、そんな相手には手ずからお茶を淹れて共にいる時間を楽しむ。ここはその練習をする場だと思えばよろしいのです」
「え?で、でも、」
 戸惑ったヴァニラは視線を宙に彷徨わせる。

無理もない。

公爵令嬢ともなればこういった場面に出てきたなら完璧な振舞いを求められるし、 本人もそのつもりでいたのにいきなり「練習しろ」と来たのだから。
ヴァニラが根は素直なのを見抜いていたからこそなのだろうがあまりにも予想斜めな話にヴァニラの方はショートしていた。

固まったヴァニラを見かねてだろう、特権派の一人が「いくらローズ伯令嬢といえど理想論をふりかざし過ぎでは?」と発言し賛同する声も上がりはじめ、定例会がカオスになりかけたが、
「あら?おかしいですわね。〝本当にもてなしたい相手にはこうするのが当然、そうできないのであれば誰とも本音で語り合う事など出来ないわ〟と、私マリエル伯母さまに教わったのですけれど。勿論その時はマリエル伯母さま手ずからお茶をご馳走して下さいましたわ」
「貴女の伯母さまの話が何だって言うのっ?王妃さまならともかく!」
 そこまで言った女生徒を隣の男子生徒が青い顔で止める。
「?」
訳がわからない女生徒が口を開く前に、
「そういえばマリエル王太后はローズ伯の実の姉君でしたね。幼い頃ローズ家に養子に出されたので姓は違いますが」
生徒会長が面白そうに発し、場が凍りつく。
「王太后さま?じ、じゃあその話のマリエル伯母さまって……」
「離宮で隠棲している王太后様におかれましては時々話相手に招んでいただくのです。その席上でのことですわ」
当の女生徒が卒倒しそうになったが周りが寸でのところで席に座らせる。

セイラが現王妃の姪なのは有名だが、前王妃にとっても姪だという事を知る者は少ない。
ローズ伯が表立って武器に使わないように、子供達も普段は使わないからだ。
情報通を自認する私は知っていたし生徒会長も勿論知っていたはずだ。
だって肩を震わせて笑うの堪えてるのよね?あれ。全く人が悪い。
「王太后様の……教え」
由緒正しいお嬢様のヴァニラはそれですんなり納得し、
「納得出来ない方はどうぞご退室を。お引き止めは致しません。アーバンテイル公爵令嬢はどうなさいますか?」
「勿論、全力でやらせていただきます!!」
と一転勢いよく言ったので、
「では、お手伝い致します」
「よろしくお願いしますわ!」
そうしてセイラに手ほどきを受けたヴァニラはその後何故かすっかりセイラに懐いた。
特権派とも距離を取り、私達と行動を共にするようになった。
とにかく根が素直で真っ直ぐなので「育て方さえ間違わなければまず敵になり得ない」とは後のセイラの談なのだが__セイラ、貴女精神年齢いくつなのよ?
そんな突っ込みと共に私のここ数年の疑問が氷解した。
それだけ城に頻繁に呼び出されていたら他の貴族の集まりに来ている暇などなかったのだろう。

若しくは他の貴族と必要以上に親しくなって欲しくないから__とか?

この出来事以降、ヴァニラも交えて三人で行動するのが当たり前になったある日、私は教室移動の際前々から彼女に思っていた疑問をぶつけてみた事がある。
「王妃様や王太后陛下の話相手に招ばれるって聞いたけど、例えばどんな話をするの?」
そもそも話相手に呼ばれるなら普通同年代の女性のはずだ。
その時点でおかしい とは思っていたのだが。
「うーん、王妃さまや王太后さまの外交での失敗談とか?あとそうなった時私はこうして乗り切ったのよー、とか色々笑い話を聞かせていただいたり?」
「「………」」
 この返しには横で興味津々で耳を傾けていたヴァニラも黙る。
「それって、」
「多分私が固くならないように毎回気を使ってくださってるんだと思うんだけど」
「__毎回?」
 仮にも王妃が、外に知られてはならない外交の席での失敗談を面白おかしく?

(……あり得ない)
いくら姪でも、普通話さない。軽くお茶の話題にするようなネタではない。
というか、これは敢えて聞かせているのだろう。
つまり「貴女が妃になった暁には失敗しないようにね?」という意味としか思えない。
私は深く納得した。
所作にしたって、子供のうちから城で王妃や王太后の所作を普通に見、一緒の席に着く事によって吸収しているのだ、なんの疑問も持たずに。

(確実に次期王妃としてロックオンされてるじゃない)
なのになんて無自覚な。
あの時は隣のヴァニラも同じ感想に達したようで黙り込んでいた。

その後、生徒会役員専用の休憩室で (いまここにいる面子は信頼できる仲間ばかりなので問題ない )と判断したタイミングで、
「この間聞いた話以外はどんな事を話すの?後学の為に聞いておきたいわ」
とそれとなく水をむけてみたら返ってきたのは、
「うん?えーと、大体他愛も無い会話だと思うけどそうね、珍しい菓子を頂いてる時とかに〝これは崩れやすいからこうして食べると綺麗にいただけるのよ。この国ではあまり見ないから知っている人は殆どいないでしょうけれど覚えておいて損はないわよ〟って教えていただいたり」
「へぇ……」
訊いた自分の顔が微妙に引き攣る。
「あとは__あゝ、今まで人気だけど栽培本数が少なく輸入が僅かだった果物が品種改良に成功して大量生産が可能になったから来年からは沢山頂けるわね楽しみよね?とか」
「そうなのっ?!」
最速情報網伝達に自信があるエヴァンズ商会ですら知らない情報である。
やっぱりそれとなーくどころか思いっきり王妃教育されてるじゃない!
しかもやっぱり本人自覚してないし!
「それ、重要機密じゃないの?」
「そんな事はないと思うけど?」
という本人は何とも気の抜けた返事だったが、周囲にいた役員仲間はヴァニラと同じ反応だった。皆微妙な顔をしていた。

(いや、あるでしょ?!)
王妃様がセイラを気に入ってるのはもちろん、あの人嫌いと呼ばれる王太后までが個人的に招いて手ずからお茶を淹れる相手なんてそうそういるワケない。
現国王の手綱を握っているのはステラ王妃なら前国王の手綱を握っていたのはマリエル王太后だ。
その両方の姪にあたる財務大臣の娘。
どう考えたって次の王の手綱を握るのはこの子だ。

まあ、生粋の令嬢であるのにここまで庶民に寄り添うタイプとは思わなかったけれど、次代も悪くはならなそうだと安堵すると共に私は寂しさを覚えた。



そんな私の親友はデビュタントの夜会の当日、次期王太子に一番近いとされる第二王子レオンハルト殿下に鮮やかに攫われていき、あれよあれよという間も無く婚約発表され、国の未曾有の危機に聖竜の加護を顕現し、夏休みが明けて二ヶ月経つかたたないかのうちに結婚してしまった。

王子の婚約者候補とはいえ本人が「ただの候補の一人にすぎない」と(はたから見たら筆頭である事を)態度には一切出していなかった為、「王子の婚約者候補から外れた暁には……!」と一縷の望みを抱いていたのにあの夜絶望の淵に落とされた男子生徒の数がどれだけいたことか。
本人無自覚なんだろうけど。
きっと今夜だけでもダンスに誘おうと決心していた生徒だって大勢いたろうに、レオンハルト殿下も酷な事をなさる。

この国は結婚に年齢制限はないが適齢期は十六~二十くらいとされている。
入学前に婚約が決まってなくとも在学中に婚約し、卒業式と共に結婚する者は多い。
要するに王族の婚約者〝候補〟も引っ張っても最低でも十九になるまでに決めるのが礼儀だ。男性はこの限りではないが。
つまり、在学中の十五での結婚はいくら王族でも例外中の例外、というかもはや異常だ。
レオンハルトのセイラへの独占欲がいかに強いかを感じずにいられない。

(まあわかるけど)
あれだけ学園内で男女問わず衆目と羨望を集めれば心配にもなるのだろう。
因みに当の本人はといえば夏休み中ひと通り私に弁解(というか説明)した後、次に会った新学期ではため息の嵐の後「いきなり王太子妃って何よ聞いてないっ!」と珍しく叫んでいた。

気持ちはわかる。
彼女からすれば社交デビューと同時に婚約と結婚と立后を一気に決められたようなものだ、十四歳の身で。
いや、一般的には女性の栄華をきわめている状態なのだが、当の本人はいきなりがらりと変わった周囲にショックを受けたようで、
「誰も名前で呼んでくれなくなった……夏休み前と同じ様に接して、て頼んだだけなのに恐れ多いって逃げられた……」
それは恐れてるんじゃなくて畏れ多いのだと思う、多分。
「歩くだけで人が割れて道を空けられる……私、そんなに偉そうにしてるかしら?」と落ち込むことしきり。
“貴女が“じゃなくて肩書きとか成し遂げた事とか色々、が偉大すぎるだけだと思うけどね?
「もうっ!学生としての夏休みと冬休みは二年間だけなのにっ!夏休みはあの騒ぎで冬休みは公務詰めなんて酷い!」
うん。
それ私も言いたい。
レオン殿下だってこの学園の生徒時代それは女たら、いや奔放な悪ガk、いや自由に過ごされていたクセにこの子の事はこんなうちから縛るの?



夜会当日は素で訳がわからない、という顔をしていた親友。
レオンハルト殿下のあそこまであからさまな溺愛と執着心に何故気付かなかったのか不思議に思うくらい、婚約パーティーでのレオンハルト殿下のデレデレ具合は凄まじかった。
そう、結婚しても学園は続けるつもりの彼女を懐妊させて自分の手元に囲い込むつもりなんじゃ?と思うくらいに。
幸いうちは国イチの品揃えを誇るエヴァンズ商会である。
結婚祝いの中にこっそり避妊の効果がある魔法薬を混ぜておくべきか、割と本気で悩んだ。

悩み抜いた私は親友の結婚祝いに用意した沢山の品物の中に(幸いにもセイラの兄君が私と同じ心配をされていたので)、大量の魔法薬を紛れこませておく事に成功した。

だって、魔法学園での寮生活は二年きり。結婚したって親友なのは変わらないけれど卒業したら今みたいに一緒にはいられなくなる。
だから、残りの学園生活を全力で楽しみましょう?
そう誓った私はスキあらばセイラを何かにつけ城へ連れ攫おうとするレオンハルト殿下にちょくちょく遭遇する事になる。

結婚式のセイラはとても綺麗だった。
ちょっと複雑だけれど__ドラゴンフラワーのシャワーに顔を引きつらせたレオン殿下の顔も見られた事だし、まあいいか___おめでとう、私の親友。

*・゜゜・*:。. .。:*・゜゜・*



因みにセイラが芭蕉扇(仮)と呼んで使っていた扇子をセイラに因んで薔薇扇と名付け、もちろん魔力増幅効果はないが似た仕様でもっと安価に手に入る材料で作られたものをエヴァンズ商会から発売させてもらった。
渋るセイラに「結婚式に合わせて人が沢山集まる時が一番売上倍増効果が見込めるのよ!協力して!」と強行に許可を取り付け、庶民に手が出るお土産感覚から貴族が夜会で持てるレベルのものまでパターンを四段階に分けて揃え、どれも一度セイラに使ってもらってから品数を揃えて売り出したのだ。

エヴァンズ商会の未来は明るい。

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