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白い光に見えたのは、声の主が長い雪白の髪の持ち主だったからだ。
「っ殿下!!」
「兄上っ?!」
現れたのはこの国の第2王子。白い髪と紅いルビーの瞳、見るものを凍りつかせる程の美貌と滅多に崩れない表情から別名・氷の貴公子とも呼ばれている。
最も、氷の貴公子バージョンてむしろ私は見た事がないーーレオンハルト殿下。
さっきから目の前で騒いでるのはこの国の第3王子・ラインハルト。
金髪碧眼でアポロンの如き陽性の美しさを持つ(ただし頭はちょっと残念な)王子。
「う、嘘……」
キャロルが呟く。
不本意ながら、ここでの私とヒロインの思考はおそらく一緒だ。
ーー何故殿下がここに?“この学園は今第3王子ルートの筈なのに”?第2王子の乱入イベントなんて発生しないはず__
というか、殿下は第3王子より5才上で、とっくに学園を卒業している。
その殿下が学園に来る理由なんてーー?
「怪我はないか?」
こちらに歩いてきながら開口一番に訊かれ、
「はい、ございません」
指一本触れられてませんから。
ならいい、と殿下は弟王子に向き直った。
「な、なぜ兄上がここに……、」
「ああ、急遽国王夫妻が来れなくなってな?私が代理を仰せつかった」
「そ、そうなのですか……」
ラインハルトもさすがに5才上の兄を前にして縮こまっている。
「ついでに婚約者を迎えにきた」
ーーーーえ?
と
私だけじゃなく会場中がなった、多分。
「そうしたら、バカな弟が馬鹿な真似をしていてな?すまん、余りにバカすぎて見入ってしまった」
バカバカ言い過ぎですよ殿下。
……私も言ってたけど(ココロの中で)。
「あ、兄上…」
余りの言い草にラインハルトもわなわな震える。
「殿下は何故こちらに?」
キャロルが親しげに声をかけながら腕を取ろうとする。
それを鮮やかに避けて、
「婚約者を迎えに来たと言ったろう?頭の悪い娘だな」
嫌悪感丸出しで返され、ヒロインが固まる。
まあ、そりゃそうか。
ーーてか、殿下の婚約者ってこの学園にいるの?ヒロインであるキャロルが却下されたって事はーー
学園に通ってるのは14~16の生徒だ。
殿下は2ヶ月後に20になられる。
その誕生祝いの席で、婚約者は発表されると聞いていた。
てっきり、18才のリリアス(公爵令嬢、リリアンヌの姉)様かルイーズ(侯爵令嬢)様辺りだと思ってたのに。
そんな考えが顔に出てたのかどうか、殿下は私の方に向き直り、
「思った通りだ、良く似合っている」
とはにかんだ様に微笑んだ。
私は手放しに褒められてぼっとなる。
いきなりその笑顔は反則だ__ていうか、やっぱり素敵だ。宝石みたいに。
と殿下のルビーの瞳を見て思う。
「ーーだがお披露目の場の面子が、今いちだったようだな?」
それは否定できない。
「申し訳ありません。」
私は心から謝罪する。確かにこのドレスのお披露目にこの場は最悪だ。
「其方が謝る必要はない。贈りたいと言い出したのは私だ」
「兄上が、贈った……?」
「そうだ。私が特注で作らせた、彼女の為にな」
ざわっ……と周りがどよめく。
ああ、バレてしまった。
いくらデビューのお祝いでも、こんな分不相応な物を殿下から贈られた事を__どうしよう?
「そんな!だったらなんであの時っ、」
呆然と言うキャロルに、
「それは君が城で私にいきなりまとわりついて自分にはどんなドレスが似合うと思うか、と話し掛けてきた時の事を言っている?」
「そうです!だってあの時はーー」
「自分の好きなのを着たらいいと言った、それが何か?」
「あんなドレスを作らせてるなんてひとことも仰っていなかったではないですか!あんな生地があるならーー」
キャロルが私の方を睨めつけながらなじる様に言う。
私はキャロルの言い草に眉を顰めた。
「何故私が君に教えなければならない?君は弟の友人として城に来ていたのだろう、なら弟に訊けば良かったろうに」
「そういう問題ではありません!殿下は女性に似合うドレスやアクセサリーを選ぶのがお上手だと伺っていたから!相談したのです!なのに、なんでーー」
自分には何もしてくれなかったのか、とでも続けたいのだろう。
殿下が口を開く前にラインハルトが、
「兄上!生憎ですが私はそんな生地の事など知りません!それより何故兄上がその女にーー「黙れ」え?」
口を開いたがまた言い切る前に遮られた。
殿下が私の腰に手をまわす。
「指も差すな。さっきから聞いていればお前達は揃って立ったまま寝てるのか?」
殿下がひんやりとした空気を纏う。
氷の貴公子降臨である。
ラインハルトは文字通り凍りついたように固まる。
「ーーまず、お前がこの生地を知らないとはどういう事だ?お前は以前、城でこの布を見てる筈だーーー王宮の御前会議でな?」
ラインハルトはえ?という顔になり、次に青ざめる。
「お前はまだ学生だから政務にはほとんど関わっていない。だが、城での御前会議は教育の一環として見学していたはずだな?」
「は、はい……」
「この布は先日議題にあがったもので見本も出席者全員に廻った物だ。何を見て、何を聞いていた?」
「お、思いだしました!確かにあの時…」
「ほう?で、その内容は?」
「え、た、確か!その布は人気が高いので付加税を付けるとか……」
出鱈目なのがバレバレだ。
殿下の双眸が冷たく細められる。
「__救えんな」
同感です、殿下。
「質問するだけ無駄なようだから教えてやろう。この布はな、異国の生地だが当の生産国でも非常に人気も稀少性も高く輸出制限のかかった代物だ。まだどこの国とも取引されておらず、この国でも見本すら見たことがある者もごく僅か、その見本も僅か20センチ四方のものに過ぎない。では、何故私がこの生地を使ってこのドレスを作らせることが出来たかわかるか?それはこの国に赴き、この話を纏めたのが私だからだ。逆にこの国でそんな真似が出来るのは私だけだ。まあ、このドレスをセイラが着てる時点で全く気付かないからこそこんな真似を仕掛けたんだろうがな?」
ーーー知らなかった。
お父様の所にも見本はもちろんあって、私は実家に帰った際に見せてもらった事がある。
近々取引が始まるが、とにかく生産数が少ないので当座はうちとエヴァンズ商会(リズの実家だ)のみでの取り扱いになりそうだと言っていた。
けど、リズも見た事があるようだったし、一部の貴族にはもう流通してるものだと思っていた。
だって、でないと変じゃない?
確かに殿下は昨年までその生産国に留学していた。
というか、ここ2年はあちこちの国に遊学という形で滞在しては現地の王族や職人と交流を深めこういった功績をいくつも挙げている。
そして8か月前、ちょうど私の14の誕生日に帰国されていた。
て、え……?
可能性に思いあたり、私は愕然となる。
扇子で顔半分を隠してはいるがーーまさか?
そんな私の脳内会議混乱を知ってか知らずか、
「ついでに君の質問にも答えよう。私が女性へのドレスやアクセサリーを選ぶのが得意だと聞いているそうだが全くの誤解だ、私は全く興味がない」
ーーーそうでしたっけ?
いつも滞在先からの手紙に”君に似合いそうな物を見つけたから”と珍しい簪や細工物などを贈られていた私は驚く。
「そんな!でもこのドレスを作らせたのは殿下なのでしょう?それともーーローズ伯令嬢が無理に殿下にお願いしたのでしょうか?」
精一杯、淑女らしく取り繕った言い方をしてはいるが明らかに私を口撃している。
「いいや?興味がないのは君だ。というか、セイラ以外には興味がないんだ。セイラは君みたいな平凡な容姿の子と違って美しいだろう?だから、セイラに似合いそうな物を見つければあれこれ検討するしそれを身に付けたご婦人に質問したりもする。 だがそれだけだ。逆にそういった事でもなければ今さっき話してた女性がどんな色のドレスを着ていたかすら覚えていない。正直、君が今ドラゴンの着ぐるみを着てようが裸で立っていようが何も感じない。目を離した途端忘れてしまうだろうね」
あまりな言い草に会場が凍り付く。因みに私もだ。
ーー言うに事欠いて、ドラゴンの着ぐるみって……
ツッコむとこはそこじゃない、とわかってはいるが脳がこれ以上踏み込まないほうがいい、と拒否している。
「ひどい…!」キャロルが泣きくずれる。
「い、いくら兄上でも今の言い草は酷いです!キャロルは僕の大切なーー」
必死に噛み付こうとするが、186センチの殿下と167センチのラインハルトではかなしいかな、どっしり構えたシベリアンハスキーに落ち着きのないチワワがきゃんきゃん吠えてるようにしか見えない。
「大切な何だ?」
「こ、婚約者の筆頭候補です!」
ーーーなんだそれは。
何の約束もしてないのか?この二人?
いや、しなかったのか。
どう見ても、手綱握ってるのキャロルっぽいし。ラインハルトはむしろ保険か?
「だったらちゃんと繋いでおけ。周りに迷惑だろう」
いや、だから犬じゃないんですから、殿下、私もちょっと思ったけど。
「で?お前たちはその私の大事な婚約者に今何をしてくれていた?」
「「「ーーっ!」」」
先程に続き不本意ながらこの3人分の驚愕に私もまた入っている。
初耳なんですけど!?
若干非難を込めて横にいる殿下の顔を見上げると、ニヤリと不敵な笑みがかえってくる。
お、面白がってる……!まさか婚約者候補辞退言い出した仕返しですかっ?
壮大なドッキリですか?!
「なぜ……」
「ん?」
「何故ローズ伯令嬢が兄上の婚約者なのですかっ?!だって彼女はーー「そうです!ローズ伯令嬢は男子生徒を階段から突き落として大怪我させたんですよ?!日頃自分につきまとって目障りだからという理由で!そんな人、レオン様に相応しくありません!」」
ーーまたしてもラインハルトのセリフはキャロルに遮られる。
うん、もう”セリフ全部言えなくて残念だったね賞”あげたくなってきた。
「っ殿下!!」
「兄上っ?!」
現れたのはこの国の第2王子。白い髪と紅いルビーの瞳、見るものを凍りつかせる程の美貌と滅多に崩れない表情から別名・氷の貴公子とも呼ばれている。
最も、氷の貴公子バージョンてむしろ私は見た事がないーーレオンハルト殿下。
さっきから目の前で騒いでるのはこの国の第3王子・ラインハルト。
金髪碧眼でアポロンの如き陽性の美しさを持つ(ただし頭はちょっと残念な)王子。
「う、嘘……」
キャロルが呟く。
不本意ながら、ここでの私とヒロインの思考はおそらく一緒だ。
ーー何故殿下がここに?“この学園は今第3王子ルートの筈なのに”?第2王子の乱入イベントなんて発生しないはず__
というか、殿下は第3王子より5才上で、とっくに学園を卒業している。
その殿下が学園に来る理由なんてーー?
「怪我はないか?」
こちらに歩いてきながら開口一番に訊かれ、
「はい、ございません」
指一本触れられてませんから。
ならいい、と殿下は弟王子に向き直った。
「な、なぜ兄上がここに……、」
「ああ、急遽国王夫妻が来れなくなってな?私が代理を仰せつかった」
「そ、そうなのですか……」
ラインハルトもさすがに5才上の兄を前にして縮こまっている。
「ついでに婚約者を迎えにきた」
ーーーーえ?
と
私だけじゃなく会場中がなった、多分。
「そうしたら、バカな弟が馬鹿な真似をしていてな?すまん、余りにバカすぎて見入ってしまった」
バカバカ言い過ぎですよ殿下。
……私も言ってたけど(ココロの中で)。
「あ、兄上…」
余りの言い草にラインハルトもわなわな震える。
「殿下は何故こちらに?」
キャロルが親しげに声をかけながら腕を取ろうとする。
それを鮮やかに避けて、
「婚約者を迎えに来たと言ったろう?頭の悪い娘だな」
嫌悪感丸出しで返され、ヒロインが固まる。
まあ、そりゃそうか。
ーーてか、殿下の婚約者ってこの学園にいるの?ヒロインであるキャロルが却下されたって事はーー
学園に通ってるのは14~16の生徒だ。
殿下は2ヶ月後に20になられる。
その誕生祝いの席で、婚約者は発表されると聞いていた。
てっきり、18才のリリアス(公爵令嬢、リリアンヌの姉)様かルイーズ(侯爵令嬢)様辺りだと思ってたのに。
そんな考えが顔に出てたのかどうか、殿下は私の方に向き直り、
「思った通りだ、良く似合っている」
とはにかんだ様に微笑んだ。
私は手放しに褒められてぼっとなる。
いきなりその笑顔は反則だ__ていうか、やっぱり素敵だ。宝石みたいに。
と殿下のルビーの瞳を見て思う。
「ーーだがお披露目の場の面子が、今いちだったようだな?」
それは否定できない。
「申し訳ありません。」
私は心から謝罪する。確かにこのドレスのお披露目にこの場は最悪だ。
「其方が謝る必要はない。贈りたいと言い出したのは私だ」
「兄上が、贈った……?」
「そうだ。私が特注で作らせた、彼女の為にな」
ざわっ……と周りがどよめく。
ああ、バレてしまった。
いくらデビューのお祝いでも、こんな分不相応な物を殿下から贈られた事を__どうしよう?
「そんな!だったらなんであの時っ、」
呆然と言うキャロルに、
「それは君が城で私にいきなりまとわりついて自分にはどんなドレスが似合うと思うか、と話し掛けてきた時の事を言っている?」
「そうです!だってあの時はーー」
「自分の好きなのを着たらいいと言った、それが何か?」
「あんなドレスを作らせてるなんてひとことも仰っていなかったではないですか!あんな生地があるならーー」
キャロルが私の方を睨めつけながらなじる様に言う。
私はキャロルの言い草に眉を顰めた。
「何故私が君に教えなければならない?君は弟の友人として城に来ていたのだろう、なら弟に訊けば良かったろうに」
「そういう問題ではありません!殿下は女性に似合うドレスやアクセサリーを選ぶのがお上手だと伺っていたから!相談したのです!なのに、なんでーー」
自分には何もしてくれなかったのか、とでも続けたいのだろう。
殿下が口を開く前にラインハルトが、
「兄上!生憎ですが私はそんな生地の事など知りません!それより何故兄上がその女にーー「黙れ」え?」
口を開いたがまた言い切る前に遮られた。
殿下が私の腰に手をまわす。
「指も差すな。さっきから聞いていればお前達は揃って立ったまま寝てるのか?」
殿下がひんやりとした空気を纏う。
氷の貴公子降臨である。
ラインハルトは文字通り凍りついたように固まる。
「ーーまず、お前がこの生地を知らないとはどういう事だ?お前は以前、城でこの布を見てる筈だーーー王宮の御前会議でな?」
ラインハルトはえ?という顔になり、次に青ざめる。
「お前はまだ学生だから政務にはほとんど関わっていない。だが、城での御前会議は教育の一環として見学していたはずだな?」
「は、はい……」
「この布は先日議題にあがったもので見本も出席者全員に廻った物だ。何を見て、何を聞いていた?」
「お、思いだしました!確かにあの時…」
「ほう?で、その内容は?」
「え、た、確か!その布は人気が高いので付加税を付けるとか……」
出鱈目なのがバレバレだ。
殿下の双眸が冷たく細められる。
「__救えんな」
同感です、殿下。
「質問するだけ無駄なようだから教えてやろう。この布はな、異国の生地だが当の生産国でも非常に人気も稀少性も高く輸出制限のかかった代物だ。まだどこの国とも取引されておらず、この国でも見本すら見たことがある者もごく僅か、その見本も僅か20センチ四方のものに過ぎない。では、何故私がこの生地を使ってこのドレスを作らせることが出来たかわかるか?それはこの国に赴き、この話を纏めたのが私だからだ。逆にこの国でそんな真似が出来るのは私だけだ。まあ、このドレスをセイラが着てる時点で全く気付かないからこそこんな真似を仕掛けたんだろうがな?」
ーーー知らなかった。
お父様の所にも見本はもちろんあって、私は実家に帰った際に見せてもらった事がある。
近々取引が始まるが、とにかく生産数が少ないので当座はうちとエヴァンズ商会(リズの実家だ)のみでの取り扱いになりそうだと言っていた。
けど、リズも見た事があるようだったし、一部の貴族にはもう流通してるものだと思っていた。
だって、でないと変じゃない?
確かに殿下は昨年までその生産国に留学していた。
というか、ここ2年はあちこちの国に遊学という形で滞在しては現地の王族や職人と交流を深めこういった功績をいくつも挙げている。
そして8か月前、ちょうど私の14の誕生日に帰国されていた。
て、え……?
可能性に思いあたり、私は愕然となる。
扇子で顔半分を隠してはいるがーーまさか?
そんな私の脳内会議混乱を知ってか知らずか、
「ついでに君の質問にも答えよう。私が女性へのドレスやアクセサリーを選ぶのが得意だと聞いているそうだが全くの誤解だ、私は全く興味がない」
ーーーそうでしたっけ?
いつも滞在先からの手紙に”君に似合いそうな物を見つけたから”と珍しい簪や細工物などを贈られていた私は驚く。
「そんな!でもこのドレスを作らせたのは殿下なのでしょう?それともーーローズ伯令嬢が無理に殿下にお願いしたのでしょうか?」
精一杯、淑女らしく取り繕った言い方をしてはいるが明らかに私を口撃している。
「いいや?興味がないのは君だ。というか、セイラ以外には興味がないんだ。セイラは君みたいな平凡な容姿の子と違って美しいだろう?だから、セイラに似合いそうな物を見つければあれこれ検討するしそれを身に付けたご婦人に質問したりもする。 だがそれだけだ。逆にそういった事でもなければ今さっき話してた女性がどんな色のドレスを着ていたかすら覚えていない。正直、君が今ドラゴンの着ぐるみを着てようが裸で立っていようが何も感じない。目を離した途端忘れてしまうだろうね」
あまりな言い草に会場が凍り付く。因みに私もだ。
ーー言うに事欠いて、ドラゴンの着ぐるみって……
ツッコむとこはそこじゃない、とわかってはいるが脳がこれ以上踏み込まないほうがいい、と拒否している。
「ひどい…!」キャロルが泣きくずれる。
「い、いくら兄上でも今の言い草は酷いです!キャロルは僕の大切なーー」
必死に噛み付こうとするが、186センチの殿下と167センチのラインハルトではかなしいかな、どっしり構えたシベリアンハスキーに落ち着きのないチワワがきゃんきゃん吠えてるようにしか見えない。
「大切な何だ?」
「こ、婚約者の筆頭候補です!」
ーーーなんだそれは。
何の約束もしてないのか?この二人?
いや、しなかったのか。
どう見ても、手綱握ってるのキャロルっぽいし。ラインハルトはむしろ保険か?
「だったらちゃんと繋いでおけ。周りに迷惑だろう」
いや、だから犬じゃないんですから、殿下、私もちょっと思ったけど。
「で?お前たちはその私の大事な婚約者に今何をしてくれていた?」
「「「ーーっ!」」」
先程に続き不本意ながらこの3人分の驚愕に私もまた入っている。
初耳なんですけど!?
若干非難を込めて横にいる殿下の顔を見上げると、ニヤリと不敵な笑みがかえってくる。
お、面白がってる……!まさか婚約者候補辞退言い出した仕返しですかっ?
壮大なドッキリですか?!
「なぜ……」
「ん?」
「何故ローズ伯令嬢が兄上の婚約者なのですかっ?!だって彼女はーー「そうです!ローズ伯令嬢は男子生徒を階段から突き落として大怪我させたんですよ?!日頃自分につきまとって目障りだからという理由で!そんな人、レオン様に相応しくありません!」」
ーーまたしてもラインハルトのセリフはキャロルに遮られる。
うん、もう”セリフ全部言えなくて残念だったね賞”あげたくなってきた。
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