47 / 47
月明かりの邂逅
しおりを挟む
深更、京の夜の明かりも雲に隠された僅かな月明かりのみとなった頃、そろそろ眠れる場所に移動しようとしたところで「こんばんは、お嬢さん」と声をかけられた。
シルエットですぐに誰か気付いた少女は「“お嬢さん“って、この時代の貴人は使わないわよね?やっぱりあなた達、この世界の人じゃないんだ?あ 人でもないか、正体知らないけど」
特段驚きもせずそう返した少女に月二人は息を呑む。
その時月を覆っていた雲が晴れ、明るい月明かりが少女を照らした。
「お前は……!」
「蓮花さま……?」
眩しそうに纏い付く視線を煩わしそうに払う仕草をした少女は、
「あなた達にはそう見えるのね?」
そう睨む少女の瞳に気付いて、
「その……瞳の色は……!」
「主の知り合いにいるのか?」
驚愕する月影にがらりと口調を変えた少女が問うと、
「いえ……そういうわけでは」
言葉を濁す月影に、
「全く相変わらずの狸っぷりじゃな、其方らは」
紫色の瞳の少女が挑発するように笑う。
「織羽もよくやったものだ、知らぬ世界で其方らとやり合うのは大変だったろうに」
「貴女は一体……」
「其方らに応える義務はない。妾を狩れるものなら狩ってみせよ」
そう言い放って少女は身軽に月の前から姿を消した。
「どう思う」
「死霊でも生霊でもないようです。かといって物の怪とも」
「なら何だ」
「織羽どのとも蓮花様とも違う、第三の魂とでも言えましょうか」
「だとしても何故体を持っている?幻術でああ見せているわけでもなさそうだったが」
「ええ。月光下で見せたあの姿は実体だと思われます」
「透夜の話では織羽のいた世界の知識もあるようだったと言っていたな?」
「ええ。そもそも今回の経緯をよくご存知でしたね」
「この世界では我らと織羽しか知らないはずなのだがな」
「生前の織羽どのに詳しく聞いたか、でなければ記憶だけ浚ったのか」
「浚ったとしたらどこのどいつだ?」
「たまたまこの世界に来た別の迷子と合わさったか、でなければ__」
「“敵“がなりすます為にそうしたか、か」
「そうは見えませんでしたが」
「だが“狩ってみろ“と言っていたぞ?」
「そうですが敵意や害意といったものは感じ取れませんでした」
「__身分が高い者のような物言いだったな」
「そうですね。動きも舞うように軽やかでした」
「ますますわからん。上にどう報告したものか……」
「何か騒ぎを誘発するような動きをしているわけでなし、とりあえず保留で良いかと」
「そうだな。とりあえず透夜にも伝えておくか、アイツが協力的かはわからんが」
「御意」
シルエットですぐに誰か気付いた少女は「“お嬢さん“って、この時代の貴人は使わないわよね?やっぱりあなた達、この世界の人じゃないんだ?あ 人でもないか、正体知らないけど」
特段驚きもせずそう返した少女に月二人は息を呑む。
その時月を覆っていた雲が晴れ、明るい月明かりが少女を照らした。
「お前は……!」
「蓮花さま……?」
眩しそうに纏い付く視線を煩わしそうに払う仕草をした少女は、
「あなた達にはそう見えるのね?」
そう睨む少女の瞳に気付いて、
「その……瞳の色は……!」
「主の知り合いにいるのか?」
驚愕する月影にがらりと口調を変えた少女が問うと、
「いえ……そういうわけでは」
言葉を濁す月影に、
「全く相変わらずの狸っぷりじゃな、其方らは」
紫色の瞳の少女が挑発するように笑う。
「織羽もよくやったものだ、知らぬ世界で其方らとやり合うのは大変だったろうに」
「貴女は一体……」
「其方らに応える義務はない。妾を狩れるものなら狩ってみせよ」
そう言い放って少女は身軽に月の前から姿を消した。
「どう思う」
「死霊でも生霊でもないようです。かといって物の怪とも」
「なら何だ」
「織羽どのとも蓮花様とも違う、第三の魂とでも言えましょうか」
「だとしても何故体を持っている?幻術でああ見せているわけでもなさそうだったが」
「ええ。月光下で見せたあの姿は実体だと思われます」
「透夜の話では織羽のいた世界の知識もあるようだったと言っていたな?」
「ええ。そもそも今回の経緯をよくご存知でしたね」
「この世界では我らと織羽しか知らないはずなのだがな」
「生前の織羽どのに詳しく聞いたか、でなければ記憶だけ浚ったのか」
「浚ったとしたらどこのどいつだ?」
「たまたまこの世界に来た別の迷子と合わさったか、でなければ__」
「“敵“がなりすます為にそうしたか、か」
「そうは見えませんでしたが」
「だが“狩ってみろ“と言っていたぞ?」
「そうですが敵意や害意といったものは感じ取れませんでした」
「__身分が高い者のような物言いだったな」
「そうですね。動きも舞うように軽やかでした」
「ますますわからん。上にどう報告したものか……」
「何か騒ぎを誘発するような動きをしているわけでなし、とりあえず保留で良いかと」
「そうだな。とりあえず透夜にも伝えておくか、アイツが協力的かはわからんが」
「御意」
5
お気に入りに追加
357
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
デリバリー・デイジー
SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。
これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。
※もちろん、内容は百%フィクションですよ!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
愛するお義兄様のために、『悪役令嬢』にはなりません!
白藤結
恋愛
「ふん。とぼけても無駄よ。どうせあなたも『転生者』なんでしょ、シェーラ・アルハイム――いえ、『悪役令嬢』!」
「…………はい?」
伯爵令嬢のシェーラには愛する人がいた。それが義兄のイアン。だけど、遠縁だからと身寄りのないシェーラを引き取ってくれた伯爵家のために、この想いは密かに押し込めていた。
そんなとき、シェーラと王太子の婚約が決まる。憂鬱でいると、一人の少女がシェーラの前に現れた。彼女曰く、この世界は『乙女ゲーム』の世界で、シェーラはその中の『悪役令嬢』で。しかも少女はイアンと結婚したくて――!?
さらに王太子も何かを企んでいるようで……?
※小説家になろうでも公開中。
※恋愛小説大賞にエントリー中です。
※番外編始めました。その後、第二部を始める予定ですが、まだ確定ではありません、すみません。
たまごっ!!
きゃる
キャラ文芸
都内だし、駅にも近いのに家賃月額5万円。
リノベーション済みの木造の綺麗なアパート「星玲荘(せいれいそう)」。
だけどここは、ある理由から特別な人達が集まる場所のようで……!?
主人公、美羽(みう)と個性的な住人達との笑いあり涙あり、時々ラブあり? なほのぼのした物語。
大下 美羽……地方出身のヒロイン。顔は可愛いが性格は豪胆。
星 真希……オネェ。綺麗な顔立ちで柔和な物腰。
星 慎一……真希の弟。眼光鋭く背が高い。
鈴木 立夏……天才子役。
及川 龍……スーツアクター。
他、多数。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
宝石ランチを召し上がれ~子犬のマスターは、今日も素敵な時間を振る舞う~
櫛田こころ
キャラ文芸
久乃木柘榴(くのぎ ざくろ)の手元には、少し変わった形見がある。
小学六年のときに、病死した母の実家に伝わるおとぎ話。しゃべる犬と変わった人形が『宝石のご飯』を作って、お客さんのお悩みを解決していく喫茶店のお話。代々伝わるという、そのおとぎ話をもとに。柘榴は母と最後の自由研究で『絵本』を作成した。それが、少し変わった母の形見だ。
それを大切にしながら過ごし、高校生まで進級はしたが。母の喪失感をずっと抱えながら生きていくのがどこか辛かった。
父との関係も、交友も希薄になりがち。改善しようと思うと、母との思い出をきっかけに『終わる関係』へと行き着いてしまう。
それでも前を向こうと思ったのか、育った地元に赴き、母と過ごした病院に向かってみたのだが。
建物は病院どころかこじんまりとした喫茶店。中に居たのは、中年男性の声で話すトイプードルが柘榴を優しく出迎えてくれた。
さらに、柘榴がいつのまにか持っていた変わった形の石の正体のせいで。柘榴自身が『死人』であることが判明。
本の中の世界ではなく、現在とずれた空間にあるお悩み相談も兼ねた喫茶店の存在。
死人から生き返れるかを依頼した主人公・柘榴が人外と人間との絆を紡いでいくほっこりストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
使うには難しい物語を基にされているのに、無理なく惹きつけられる作品で、感動しました❣️投票も、もちろんさせて頂きました。今後の展開を楽しみにしております。
紗矢香様
感想と投票ありがとうございます!
以降の物語も惹きつけ、ひっぱっていけるよう頑張ります!次の更新で漸く第一部エピローグの彼女が登場しますので、引き続きよろしくお願いします♪
作者様
面白くて一気読みしてしまいました😃
投票も、もちろんこちらの作品に
入れさせていたました💓💓💓
更新、楽しみにしております。
るりまま様
ありがとうございます!
大変励みになります&投票くださったとの事、本っ当に嬉しいです!
更新頑張りますので引き続きよろしくお願いします!