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監視者たちの呟き

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「京で随分と噂になってますね。顔を隠して妖や盗賊を倒してまわっている白装束がまた現れたと」
「俺じゃないぞ。俺は人に姿を見られてはいない」
「わかっていますよ。貴方が切っているのは妖だけであって人ではないことも、人の目に触れてはいないことも」
「蓮花どのにはあっさり見つかったがな」
面白そうに言う結月に透夜はふいと目を逸らす。
「五月蝿い……そもそもアイツはもういないだろう」
「確かに。蓮花様はお亡くなりになった……おそらくは織羽どのの魂を宿したまま」
「おそらく?」
「ええ。この世界に蓮花様の魂が戻った気配はありませんでした。が、死の刹那互いの魂が体に戻る現象が起きていたとしても不思議ではありません」
「なんだと?」
透夜が青い瞳を見開く。
「お前は専門家だろう!そんなことが起きてたら気付くんじゃなかったのか?!」
「常であれば。ですがまさに死に至る刹那、一瞬の出来事であった場合……そしてそのまま永遠の眠りにつかれた場合、亡くなった方の魂が誰のものであったかまでは判断しかねるのです」
食ってかかる透夜に、月影は冷静に告げる。
「馬鹿な……」
「まあ、蓮花様の魂が何処いずこであれ体が既に亡くなられているのは確かであろう。中の魂が本人のままであったならば、或いは長生きできたかもしれんが」
「左様ですね。言っても詮のないことですが」
「…………」
冷静に語りあう月二人に対し、きつい目を投げかけた透夜は黙って部屋を後にした。

それを見送って、
「……やれやれ」
と結月は息を吐いた。
「ショックを受けたようですね。無理もありませんが」
「あの白装束の娘が蓮花様とどういう関係なのかと訊きにきたのだろうに」
「まあ訊かれたところで答えられることなどありませんがね……我々はまだお会いしたことがありませんが見た目はそっくりだったとか」
「しかも織羽どののことも知っていた。これは一体どういう事だ?」
「我々にとっても初めての現象だとしか。少なくとも蓮花様が隠し子を出産しておられないのは確かです」
「ああ。人あらざる我らの目を盗んでそのような真似ができるはずがない__だとすると」
「敵が放った間者でしょうか?あの姿ならば我々には攻撃しづらいだろうと」
「間者ならば最初の接触で斬りつけてきそうなものだが」
「それも接触して確認してみないことには……我々はまだ一度もその白装束の少女と顔を合わせておりませんから」
「避けられておるのか?」
「かもしれません。だがそれなら夜にも目立つ白装束で京を走り回っているのが解せません」
「ふむ。ならばあちらも接触待ちか?」
「接触したいのは透夜にだけかもしれませんが_……」
「いずれにせよ、それも合わせて確認してみるしかないか」
結月は目を細めて月を見上げた。
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