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経緯 3

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この時代、十二はもう結婚していてもおかしくない歳だ。
そして貴族や皇族が親子ほど歳の違う相手と添う事も珍しくない。
光源氏と薫の母宮も四十過ぎと十四、五歳の結婚だったのだし、親が許可すれば結婚は可能である。
だが、蓮花への想いを持ったまま咲薇を溺愛する薫が蓮花と対立しがちだった匂宮はおろかその息子との結婚を望むはずもなく、また蓮花を慕う浮舟も一向に匂宮と咲薇を近づけようとはしなかった。

だが、許可はなくとも結婚できる方法はある。
既成事実を作ってしまうことだ。
褒められたことではないが実際源氏と紫の上の結婚もそれに近い。

「親のしっかりとした子を母の元からいきなり拐うなど……!いくら宮といえど」
「何を怒っている、俺はただこの子と花を愛でようとしただけだというのに」
「花を愛でるだけならば母である浮舟や中君、御付きの女房たちを遠ざける必要などないでしょう。わざわざご自身の寝室のある部屋に連れ込むなど……!まさかこれも源氏の君を真似たとでも?!」
「お前にしては洒落たことを言うじゃないか。そうだよ、そんなところだ」

飄々と「光源氏が紫の上にそうしたように」しただけだと宣う匂宮だったがそうはいかない。
紫の上は両親に育てられておらず、祖父母に預けられていたいわばしっかりとした後ろ盾のないわき腹の姫だったから源氏がいきなり手元に引き取ってもなんとかなったろうが咲薇は違う。
早くに病死しているとはいえ母は女二の宮、父は今東宮として内裏で大切に育てられている姫である。
ただの貴族の姫とはわけが違う。

匂宮に人払いされたからだろう、近くへは寄れないがかろうじて室内に入り込んで片隅で青くなっていた晶は薫の登場により漸く顔に色が戻ってきていた。
匂宮の膝の上にいた咲薇はすぐさま立ち上がり、「晶!」と信頼する乳母の元へ走った。
「姫さま……!」
と咲薇を抱きとめた晶は感涙に咽ぶが、「大げさな……、」と呟く匂宮に薫の怒りはより募った。

心を決めた薫は抱きあう二人に近付き、「怖い思いをしたろう?すまなかった咲薇、お父様の目算が甘かったばかりに」と愛娘を抱きしめた。

「晶もよくやってくれた。さ 二人は浮舟と共に内裏にお戻りなさい」
「はい、東宮様」
「お父様は?」
「私は宮にお話がある。すぐに戻るから浮舟の母君と先に戻っていなさい」
咲薇は実母を「お母様」、浮舟を「浮舟の母君」と呼んでいる。
他ならぬ浮舟がそう教えたからだ。

頷いた二人が去ると、
「話とはなんだ?」
憮然とした匂宮に、
「すぐに済みます。貴方は以後、私達家族に関わらないでいただきたい」
「おい__「それから」、」
「此度のことは事の次第を主上に報告し、しかと抗議させていただきます」
「なっ……?!」
流石に焦る匂宮を一顧だにせず、薫は二条院を後にした。

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