〈第一部完・第二部開始〉目覚めたら、源氏物語(の中の人)。

詩海猫

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相反する想いと魂

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月二人に訊いてみたことがある。
「他の“迷い子“の誰かと会って話すことは出来ないのか」
と。

返事は予想通り「出来ないNO」だった。
「互いに見知ってはいけないルール」
だとか、
「互いに身の危険を引き寄せることになりかねない」
とか、
「必要以上の干渉は監視者の領分を超える」
とも。

(私へのコレは過干渉に当たらないのか?)
身を守る体術を教えるだけでなく道術や特殊な服や御守りまで揃えて私が快適に暮らせるように何くれと世話を焼いてくれるが、もしこれが__……なら、確かめなければ。





「あなたが自分から私のところに来るなんて初めてね、トウヤ。いえ、私が蓮花だった頃には来てたのかしら?」
「お前……どういうつもりだ?」
「どうって?私はいつ帰れるかもわからないこんな世界でもなんとか楽しく生きていきたいと思ってるだけだけれど?」
「何故薫大将を受け入れた?お前は拒否していたはずだ」
「よく知ってるわね?そんなこと。理由なんかどうだっていいじゃない、結月達だって“上手くやれ“としか言わなかったし」
「あいつら……!蓮花の体をなんだとっ……!」
私の体よ、勘違いしないで」
「お前はこの体の持ち主ではないだろう」
「私だって“私をこの体に入れた誰か“によって自分の体を奪われたわ」
「!」
「その反応からして何か知ってるのよね?教えてよ、あなたと蓮花と結月たちとこの現象を起こした誰かさんを?」
「それは__」
「それは?」
「俺からは言えない」
「はぁ?じゃあ何しに来たのよまさか文句だけ言いに来たの?」
「違う、確認しに来ただけだ」
「確認?」
「お前、本当に懐妊してるのか」
「こっちの質問に何ひとつ答えない奴に教える義理はないわ、あなたに関係ない」
織羽は言い捨てて、閉じられた空間から出た。
瞬間、心臓がぎり、と痛んだ気がしたが織羽は気付かない振りをした。



自分のものであって自分のものではない体、けれど道術に酷く馴染んだ体。
この体に入れられた魂が織羽でなく違う誰かだったらどうだろう、「元の世界に返して、こんな所にいたくない」と嘆き悲しんでホームシックに陥った挙句、「死ねば元に戻れるかもしれない」と自ら命を絶つような人間だったら?
織羽の望みを出来るだけ叶えて自由に動けるようにしているのは織羽がそういった思考に陥らないよう、気を逸らせているとも言える。

そしてトウヤの存在を目にした途端、何故胸がざわめいたのか。
あれは、体の持ち主である“蓮花の心“が反応したからではないのか?
だからトウヤは月二人と同じような存在なのに自分の前に姿を見せないようにしているのだとしたら?

織羽はそれを確かめたかった。

結果、“自分の推測は概ね正しい“。
織羽はそう結論付けた。
















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