27 / 47
考察
しおりを挟む
「漸く……私と共に居る時にも笑顔を見せてくれるようになりましたね」
夏が終わる頃、薫が言った。
(え……?何でバレてるのかな、薫の姿がきっちり見えなくなるまで笑ったりしなかったはずだけど)
私が僅かに目を見張ったのに気付いたのか、
「貴女のお側近くに仕える女房達がこっそり教えてくれたのですよ、お方様は大将の君の前でこそあんな風ですが殿が帰られた後によく笑みを浮かべておられるのですよ、と。いつも貴女にすげ無くされる私を哀れに思ってくれたようです」
口調は優しげだが明らかに皮肉が込められている。
(蓮花付きの女房たちから薫は受けが悪かったはずだけど、絆されたってことかな?流石絶世の美男は違う)
もしかしたらかの小侍従みたいなのも沸いて出てくるかもしれない、気をつけないと。
小侍従とは薫の生母女三の宮の乳姉妹で、柏木の愛人の一人でもあった。
その情交の際、「何とか女三の宮に引き合わせてくれ」と柏木に頼み込まれた小侍従は柏木を女三の宮の寝室に引き入れてしまうのである。
__これで“裏切った“って源氏に責められる女三の宮も気の毒だよなぁ。
因みに女三の宮は出家してはいるが存命である。
十四かそこらで四十路の源氏に嫁いでいるのだから当然だが、薫は時々会いに行っているようだ。
(仕えてる女房達に既にコイツのお手付きの者がいるとすれば、第二の小侍従にもなりかねない。そこは気をつけないと)
「涼しくなってきたことですし秋はどこぞへ紅葉狩りにでも参りましょうか?それともここで管弦の宴でも催しましょうか」
「宴といえば、夏の蛍を愛でる宴は大層美しゅうございましたわ。集まってくださった皆さまの衣装も夏らしく爽やかで」
「ええ。嫁いで来られてから初めての女二の宮様の宴とあって皆様競うように華を添えてくださいました。中でも中君様や女一の宮様など……」
(やっぱそこに一番注目してんのね、宴もまさかその二人見たさに催したんじゃ?)
胡乱な目をした私に、
「蓮花様?あの宴の際何か不手際でもございましたか」
とこの男目端はきくのだが、
「いいえ?」
そういうとこだよっ!
「何やら眉根を寄せておられましたが」
「いえ、外出か宴かで悩んでおりましたの。どちらも惹かれるものですから」
外出どころか夜毎邸を抜け出しては走りまわっておいて(ついでに悪党退治までやっておいて)どの口が言うのか?
とこっそり覗き見ていた結月の突っ込みは当然織羽には届かない__届いても無視してたろう。
彼らの目的が“魂の迷子の保護“でなく“蓮花の器“の保護であるならそこに織羽の魂は含まれない。
だが、だったら何故入るのが織羽の魂でなければならなかったのか?
某世界的アニメのように「同調率が高いから」とか言われればどうしようもないが彼らは道術を使う。
織羽からみたら魔法のような能力だが、この蓮花の体は教われば直ぐに使えてしまうくらい馴染んでいる。
これが理由のひとつなのだとしたら、彼らの目的は一体なんなのだろう。
夏が終わる頃、薫が言った。
(え……?何でバレてるのかな、薫の姿がきっちり見えなくなるまで笑ったりしなかったはずだけど)
私が僅かに目を見張ったのに気付いたのか、
「貴女のお側近くに仕える女房達がこっそり教えてくれたのですよ、お方様は大将の君の前でこそあんな風ですが殿が帰られた後によく笑みを浮かべておられるのですよ、と。いつも貴女にすげ無くされる私を哀れに思ってくれたようです」
口調は優しげだが明らかに皮肉が込められている。
(蓮花付きの女房たちから薫は受けが悪かったはずだけど、絆されたってことかな?流石絶世の美男は違う)
もしかしたらかの小侍従みたいなのも沸いて出てくるかもしれない、気をつけないと。
小侍従とは薫の生母女三の宮の乳姉妹で、柏木の愛人の一人でもあった。
その情交の際、「何とか女三の宮に引き合わせてくれ」と柏木に頼み込まれた小侍従は柏木を女三の宮の寝室に引き入れてしまうのである。
__これで“裏切った“って源氏に責められる女三の宮も気の毒だよなぁ。
因みに女三の宮は出家してはいるが存命である。
十四かそこらで四十路の源氏に嫁いでいるのだから当然だが、薫は時々会いに行っているようだ。
(仕えてる女房達に既にコイツのお手付きの者がいるとすれば、第二の小侍従にもなりかねない。そこは気をつけないと)
「涼しくなってきたことですし秋はどこぞへ紅葉狩りにでも参りましょうか?それともここで管弦の宴でも催しましょうか」
「宴といえば、夏の蛍を愛でる宴は大層美しゅうございましたわ。集まってくださった皆さまの衣装も夏らしく爽やかで」
「ええ。嫁いで来られてから初めての女二の宮様の宴とあって皆様競うように華を添えてくださいました。中でも中君様や女一の宮様など……」
(やっぱそこに一番注目してんのね、宴もまさかその二人見たさに催したんじゃ?)
胡乱な目をした私に、
「蓮花様?あの宴の際何か不手際でもございましたか」
とこの男目端はきくのだが、
「いいえ?」
そういうとこだよっ!
「何やら眉根を寄せておられましたが」
「いえ、外出か宴かで悩んでおりましたの。どちらも惹かれるものですから」
外出どころか夜毎邸を抜け出しては走りまわっておいて(ついでに悪党退治までやっておいて)どの口が言うのか?
とこっそり覗き見ていた結月の突っ込みは当然織羽には届かない__届いても無視してたろう。
彼らの目的が“魂の迷子の保護“でなく“蓮花の器“の保護であるならそこに織羽の魂は含まれない。
だが、だったら何故入るのが織羽の魂でなければならなかったのか?
某世界的アニメのように「同調率が高いから」とか言われればどうしようもないが彼らは道術を使う。
織羽からみたら魔法のような能力だが、この蓮花の体は教われば直ぐに使えてしまうくらい馴染んでいる。
これが理由のひとつなのだとしたら、彼らの目的は一体なんなのだろう。
3
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる