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織羽、動きだす
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頭を抱えてひとしきり唸った織羽は、やがてばっと頭をあげ、
「いっそ出家でもする?術使って抜け出すなら、ここでも寺でも一緒よね?」
「織羽どの。それは流石に__」
「落ち着け、帝の姫がいきなり出家なぞ出来るはずがなかろう」
「出来るわよ。突然発心すれば誰でも出来るんでしょう?身体強化すれば誰かに寺まで連れてってもらう必要もないんだし__あ それなら出家じゃなく家出でいっか!連れ戻されたら面倒だし、」
「おい待て!」
「だって私は薫と夫婦ごっこする気なんかないんだから仕方ないでしょ、とっとと自分の体に戻らない蓮花が悪いのよ?」
「蓮花どのにも事情があるのでしょう」
「そりゃぁそうだろうけど、私の体だって今どうなってるかわかんないんでしょ?なのになんで私だけ我慢しないといけないの?いつ戻れるかも原因も不明なまま__なら今この身は私のものだもの、そっちが何もしてくれないなら、私の意思を優先させてもらうわ」
「「……っ!」」
月二人が同じ顔で固まった。
「……わかった、薫の方には暗示をかけておこう。其方の同意なく必要以上に近づけぬようにな」
「引き続き出来るだけ織羽どのが自由に動けるよう、他の術もお教えしましょう。我らは敵ではありませんよ」
それはどうだろ。
譲歩は引き出せたみたいだけど、やっぱり何か隠してるよね?
「敵じゃないっていうのなら__」
私はもうひとつ条件を付け加えた。
その後 京に夜ごと現れる白装束は相手が誰であっても、こう訊ねると言う。
「白頭巾で顔を隠した男を知らない?」
と若い女性の声で問うという。
「知らない」
と答えると、
「そう。ならもし見かけたら私が探していると伝えて頂戴」
と言って去ると言う。
普通の町人ならこれで終わりだが、中には襲い掛かる破落戸や、そこまでいかないまでも「噂の白装束の顔を拝んでやる」と手をのばしてくる輩もいる。
そういった連中は残らず昏倒させられ道端に転がっているのを明朝発見されることになる。
町の住人達は当初町に現れる白頭巾と白装束はどちらも破落戸退治をしていることから同じものだと思っていたが、片方は女で片方は男だと聞き、
「白装束は女で、白頭巾の男を探して彷徨っているらしい」
「妖かものの怪の類ではないか?見かけたら逃げないと呪われるらしいぞ」
「質問に答えなきゃいいんだろ?」
「いや、俺は答えるのを無視して逃げたら呪われるって聞いたぞ」
などと噂していたが、
「いや、どっちも破落戸退治をしてくれてるから最近野盗も出ねぇじゃねぇか。夜が物騒でなくなったってぇのは良いことじゃねぇか?」
「そういえば、野盗は皆捕まっちまって牢屋がいっぱいだってねぇ」
「そうそう、捕まらずに済んだ野盗も慌てて町を変えてるみてえだぜ?」
「ならあの白頭巾と白装束は義賊で、生き別れた兄弟姉妹かなんかなのかねぇ」
「ああ違ぇねぇ。今度白頭巾を見かけたら教えてやろうぜ」
という所に落ち着いた。
「いっそ出家でもする?術使って抜け出すなら、ここでも寺でも一緒よね?」
「織羽どの。それは流石に__」
「落ち着け、帝の姫がいきなり出家なぞ出来るはずがなかろう」
「出来るわよ。突然発心すれば誰でも出来るんでしょう?身体強化すれば誰かに寺まで連れてってもらう必要もないんだし__あ それなら出家じゃなく家出でいっか!連れ戻されたら面倒だし、」
「おい待て!」
「だって私は薫と夫婦ごっこする気なんかないんだから仕方ないでしょ、とっとと自分の体に戻らない蓮花が悪いのよ?」
「蓮花どのにも事情があるのでしょう」
「そりゃぁそうだろうけど、私の体だって今どうなってるかわかんないんでしょ?なのになんで私だけ我慢しないといけないの?いつ戻れるかも原因も不明なまま__なら今この身は私のものだもの、そっちが何もしてくれないなら、私の意思を優先させてもらうわ」
「「……っ!」」
月二人が同じ顔で固まった。
「……わかった、薫の方には暗示をかけておこう。其方の同意なく必要以上に近づけぬようにな」
「引き続き出来るだけ織羽どのが自由に動けるよう、他の術もお教えしましょう。我らは敵ではありませんよ」
それはどうだろ。
譲歩は引き出せたみたいだけど、やっぱり何か隠してるよね?
「敵じゃないっていうのなら__」
私はもうひとつ条件を付け加えた。
その後 京に夜ごと現れる白装束は相手が誰であっても、こう訊ねると言う。
「白頭巾で顔を隠した男を知らない?」
と若い女性の声で問うという。
「知らない」
と答えると、
「そう。ならもし見かけたら私が探していると伝えて頂戴」
と言って去ると言う。
普通の町人ならこれで終わりだが、中には襲い掛かる破落戸や、そこまでいかないまでも「噂の白装束の顔を拝んでやる」と手をのばしてくる輩もいる。
そういった連中は残らず昏倒させられ道端に転がっているのを明朝発見されることになる。
町の住人達は当初町に現れる白頭巾と白装束はどちらも破落戸退治をしていることから同じものだと思っていたが、片方は女で片方は男だと聞き、
「白装束は女で、白頭巾の男を探して彷徨っているらしい」
「妖かものの怪の類ではないか?見かけたら逃げないと呪われるらしいぞ」
「質問に答えなきゃいいんだろ?」
「いや、俺は答えるのを無視して逃げたら呪われるって聞いたぞ」
などと噂していたが、
「いや、どっちも破落戸退治をしてくれてるから最近野盗も出ねぇじゃねぇか。夜が物騒でなくなったってぇのは良いことじゃねぇか?」
「そういえば、野盗は皆捕まっちまって牢屋がいっぱいだってねぇ」
「そうそう、捕まらずに済んだ野盗も慌てて町を変えてるみてえだぜ?」
「ならあの白頭巾と白装束は義賊で、生き別れた兄弟姉妹かなんかなのかねぇ」
「ああ違ぇねぇ。今度白頭巾を見かけたら教えてやろうぜ」
という所に落ち着いた。
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