22 / 47
動きだした物語(に、困惑する織羽)
しおりを挟む
突然何を言い出すのだろう、出家でも決意したとか??
「これからは今まで以上にお側に仕え、いえ夫婦でこの言い方はおかしいですね。迷いが断ち切れた今、蓮花様とより近しい夫婦仲に。父と紫の上様のように、それこそ比翼の鳥とも連理の枝とも言われるような__」
言いながらいつの間にか手を取られ、やたら綺麗な顔が目の前に迫っている。
ちょっと待ってこれって。
これって、口説かれてるの?
いや“口説く“はおかしいか夫婦なんだし??
織羽もこの時代の結婚事情は知識として知っている。
この頃の貴族の結婚というのは“夜這い“から始まるのだ。
これにもパターンがあり、事前に(襲われる側の)女性が知らされているパターンもあれば、親が勝手に決めて知らされず、近くの女房たちを遠ざけられていきなりなパターンもある。
さらにはどちらも全く知らないうちに裏切り者の女房の手により、思いもかけぬ相手を引き入れられてしまうパターンまであり、コトがなったらどんな意に沿わない相手であれ(既婚者でない限りは)婿として迎えねばならない。
因みに薫の母・女三の宮と柏木は最後のパターンである。
女三の宮の乳姉妹がこっそり引き入れてしまったのだ、柏木を。
そういえば宇治で浮舟が匂宮に寝取られたのもこのパターンだな?
匂宮は扇で顔を隠してお付きの女房に自分を薫だと誤認させ、浮舟のもとへ案内させたのだが。
何とも悪知恵の働く__世間ではこれを素晴らしい情熱だと言うのかもしれないが、女性側に迷惑なことこの上ない。
(もっとも私が先に浮舟ちゃんをここに引き取っちゃったから、実際匂宮は彼女を見つけることは叶わなかったんだけど。未だに諦めてないふしがあるのが厄介なのよねぇ……)
「……ま、」
「え?」
「姫様!どこかお加減でも?」
「あ!えぇと、晶?私、今どうしてたのかしら?」
「突然固まったように動かなくなって、何を話しかけてもうんともすんともお答えがなかったのですわ!どこか具合でも?」
見れば晶を挟んだ向こうに戸惑ったような薫の姿がある。
晶が間に入って手を離さざるを得なかったのだろう、助かった。
「あ うん えぇと、悪いかもしれないわ。ちょっと(あり得ない雰囲気に気圧されて)気分が__」
「まぁなんてこと!直ぐに床の用意を!」
最近やや薫に絆されて来ているとしても、さすが“蓮花第一主義“の女房である。
晶はてきぱきと周囲の女房たちに指図し、
「__というわけですので大将の君、今宵はこれまでに」
と頭を下げた。
「__あいわかった。では蓮花様、次は春の花をあしらった袿など持参しましょう。花の残りは女房たちで分けなさい」
この言葉に、女房たちから歓声があがる。
「まあなんて素晴らしいお心遣い、私達にも分けて下さるなんて」
「薫大将の君は元々お優しい方だけれど、最近はとくに」
「女二の宮様のご機嫌窺伺いに余念がなくって、今この邸で一番華やいでるのは この部屋ね」
女房たちの歓談をよそに、
(……これは、困ったわね)
織羽は困惑していた。
「これからは今まで以上にお側に仕え、いえ夫婦でこの言い方はおかしいですね。迷いが断ち切れた今、蓮花様とより近しい夫婦仲に。父と紫の上様のように、それこそ比翼の鳥とも連理の枝とも言われるような__」
言いながらいつの間にか手を取られ、やたら綺麗な顔が目の前に迫っている。
ちょっと待ってこれって。
これって、口説かれてるの?
いや“口説く“はおかしいか夫婦なんだし??
織羽もこの時代の結婚事情は知識として知っている。
この頃の貴族の結婚というのは“夜這い“から始まるのだ。
これにもパターンがあり、事前に(襲われる側の)女性が知らされているパターンもあれば、親が勝手に決めて知らされず、近くの女房たちを遠ざけられていきなりなパターンもある。
さらにはどちらも全く知らないうちに裏切り者の女房の手により、思いもかけぬ相手を引き入れられてしまうパターンまであり、コトがなったらどんな意に沿わない相手であれ(既婚者でない限りは)婿として迎えねばならない。
因みに薫の母・女三の宮と柏木は最後のパターンである。
女三の宮の乳姉妹がこっそり引き入れてしまったのだ、柏木を。
そういえば宇治で浮舟が匂宮に寝取られたのもこのパターンだな?
匂宮は扇で顔を隠してお付きの女房に自分を薫だと誤認させ、浮舟のもとへ案内させたのだが。
何とも悪知恵の働く__世間ではこれを素晴らしい情熱だと言うのかもしれないが、女性側に迷惑なことこの上ない。
(もっとも私が先に浮舟ちゃんをここに引き取っちゃったから、実際匂宮は彼女を見つけることは叶わなかったんだけど。未だに諦めてないふしがあるのが厄介なのよねぇ……)
「……ま、」
「え?」
「姫様!どこかお加減でも?」
「あ!えぇと、晶?私、今どうしてたのかしら?」
「突然固まったように動かなくなって、何を話しかけてもうんともすんともお答えがなかったのですわ!どこか具合でも?」
見れば晶を挟んだ向こうに戸惑ったような薫の姿がある。
晶が間に入って手を離さざるを得なかったのだろう、助かった。
「あ うん えぇと、悪いかもしれないわ。ちょっと(あり得ない雰囲気に気圧されて)気分が__」
「まぁなんてこと!直ぐに床の用意を!」
最近やや薫に絆されて来ているとしても、さすが“蓮花第一主義“の女房である。
晶はてきぱきと周囲の女房たちに指図し、
「__というわけですので大将の君、今宵はこれまでに」
と頭を下げた。
「__あいわかった。では蓮花様、次は春の花をあしらった袿など持参しましょう。花の残りは女房たちで分けなさい」
この言葉に、女房たちから歓声があがる。
「まあなんて素晴らしいお心遣い、私達にも分けて下さるなんて」
「薫大将の君は元々お優しい方だけれど、最近はとくに」
「女二の宮様のご機嫌窺伺いに余念がなくって、今この邸で一番華やいでるのは この部屋ね」
女房たちの歓談をよそに、
(……これは、困ったわね)
織羽は困惑していた。
3
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる