〈第一部完・第二部開始〉目覚めたら、源氏物語(の中の人)。

詩海猫

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動きだした物語(に、困惑する織羽)

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突然何を言い出すのだろう、出家でも決意したとか??

「これからは今まで以上にお側に仕え、いえ夫婦でこの言い方はおかしいですね。迷いが断ち切れた今、蓮花様とより近しい夫婦仲に。父と紫の上様のように、それこそ比翼の鳥とも連理の枝とも言われるような__」
言いながらいつの間にか手を取られ、やたら綺麗な顔が目の前に迫っている。

ちょっと待ってこれって。
これって、口説かれてるの?
いや“口説く“はおかしいか夫婦なんだし??

織羽もこの時代の結婚事情は知識として知っている。
この頃の貴族の結婚というのは“夜這い“から始まるのだ。
これにもパターンがあり、事前に(襲われる側の)女性が知らされているパターンもあれば、親が勝手に決めて知らされず、近くの女房たちを遠ざけられていきなりなパターンもある。
さらにはどちらも全く知らないうちに裏切り者の女房の手により、思いもかけぬ相手を引き入れられてしまうパターンまであり、コトがなったらどんな意に沿わない相手であれ(既婚者でない限りは)婿として迎えねばならない。

因みに薫の母・女三の宮と柏木は最後のパターンである。
女三の宮の乳姉妹がこっそり引き入れてしまったのだ、柏木を。
そういえば宇治で浮舟が匂宮に寝取られたのもこのパターンだな?
匂宮は扇で顔を隠してお付きの女房に自分を薫だと誤認させ、浮舟のもとへ案内させたのだが。
何とも悪知恵の働く__世間ではこれを素晴らしい情熱だと言うのかもしれないが、女性側に迷惑なことこの上ない。

(もっとも私が先に浮舟ちゃんをここに引き取っちゃったから、実際匂宮は彼女を見つけることは叶わなかったんだけど。未だに諦めてないふしがあるのが厄介なのよねぇ……)
「……ま、」
「え?」
「姫様!どこかお加減でも?」
「あ!えぇと、晶?私、今どうしてたのかしら?」
「突然固まったように動かなくなって、何を話しかけてもうんともすんともお答えがなかったのですわ!どこか具合でも?」
見れば晶を挟んだ向こうに戸惑ったような薫の姿がある。
晶が間に入って手を離さざるを得なかったのだろう、助かった。
「あ うん えぇと、悪いかもしれないわ。ちょっと(あり得ない雰囲気に気圧されて)気分が__」

「まぁなんてこと!直ぐにとこの用意を!」
最近やや薫に絆されて来ているとしても、さすが“蓮花第一主義“の女房である。
晶はてきぱきと周囲の女房たちに指図し、
「__というわけですので大将の君、今宵はこれまでに」
と頭を下げた。
「__あいわかった。では蓮花様、次は春の花をあしらった袿など持参しましょう。花の残りは女房たちで分けなさい」
この言葉に、女房たちから歓声があがる。

「まあなんて素晴らしいお心遣い、私達にも分けて下さるなんて」
「薫大将の君は元々お優しい方だけれど、最近はとくに」
「女二の宮様のご機嫌窺伺いに余念がなくって、今この邸で一番華やいでるのは この部屋ここね」
女房たちの歓談をよそに、
(……これは、困ったわね)
織羽は困惑していた。





























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