〈第一部完・第二部開始〉目覚めたら、源氏物語(の中の人)。

詩海猫

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織羽、武装服(?)を発注し、修行に励む

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「こんな格好じゃどこにも行けないし、第一動けないじゃない!__そういえば、貴方達どうやってここに来てるの?」
「「………」」
「馬とか車じゃないわよね、いつもどこからか音もなく現れるし」
「「………」」
浴衣ですら動きづらい現代人に、この時代の装束って最早拘束着だ。
基本自ら動かないから成り立ってんだろうけど、日にも風にも当たらないから寿命が短いんじゃないか とか 筋肉つけないから子供産む時死にそうになるんじゃ?とか突っ込みが脳内を渦巻いたが、とりあえずは自分の発狂を抑えるのが先だ。

聞けば“転移魔方陣”なるものがこの部屋と彼らの住まいや幾つかの出入り場所に引いてあるらしい。

なにそれズルい。



「__とりあえず、描いてみろ。どんな服なら良いんだ?」
Tシャツにジーパン出して。
て言っても通じないだろうなぁ、結月はこの世界の人間だって言うし。
うーん十二単は着れた(正装ではないけど充分重い)し、あとこの時代に違和感ないとしたら巫女服かなあ?
でもあの長さだとやっぱり動けないのでミニスカートバージョンとか……?
前世で見た吸血姫美夕とか神風怪盗ジャンヌとか、可愛くて憧れてたんだよね実は。

漫画のキャラみたいに裸足や草履は無理だから、出来ればスニーカーが良いけど服と合わないからせいぜいブーツ?
ブーツって通じるかな?
出来るだけ図解してはみたがパッと見(エロくはないが)ミニスカ巫女なので二人は眉を八の字にしたまま無言だった。
「巫女服がベースというのはわかるが……」
「流石に脚を出しすぎでは?」
「だからそのためのブーツなんだってば。膝から下がブーツなら、脚は隠れるでしょ?」

「出来そうか?月影」
「全ては無理ですね。ベースが巫女服というなら、服の方はそのまま改造して近付ければ良いでしょう。問題は……」
「このブーツというものだな。この世界に近しいものは見たことがない」
だからって草履や足袋は嫌だ。
「そうですね、のはこれだけにして、後は扇と__顔を覆う布、ですね……」
「__え?」

顔を覆う布??
「……お主、自分の体の身分はわかっているか?」
「女二の宮、ですよね?」
「お主自身が幻術を使えるならばともかく、ずっと人目に触れずいるのは不可能であろう、扇でも布でも良い、とにかく顔を隠す癖を身に着けろ。後はそうだな、どうせ暇でやることもないのなら、体術の訓練でもするか」
「そんなこと出来るの?」
「まあ、どうせ貴女が外出されている間、不在を勘付かれない様に”影“を置いておかなければいけませんからね。転移魔方陣で訓練の出来る場所まで移動してなされるとよろしいかと」
「訓練てどんなことするの?」
「もちろん基礎体力を付けることからだ」
「……この重い装束を脱げば少しはマシになると思うけど」
「それだけではいざという時逃げきれん。その体は元々霊験あらかたの身だから魂が違っても多少の術は使えるようになるだろう。とりあえずはそうだ、なっ?!」
結月が言い終わる前に、
「今なんて言った??」
と織羽が結月の襟元を引っ掴んだ。

「体術だけではいざという時逃げきれん、」
「その後!」
「とりあえずは、」
「その前っ!!」
「その体は霊験あらかた__か?」
「そう!何この体って霊力とかあるの?!」
「そりゃ、日出ひいづる国の帝の姫だぞ?祭祀を務めることもあるし生まれつきあったところでおかしくもないだろう」
「そ、そうなの……?」
(物語にはそんなこと、全く書いてなかったけど?神仏の加護云々の描写はあったけどそれは光源氏が主役の頃だったような……)

まぁ裏設定みたいなものかと適当に納得した織羽は、
「じゃあ、訓練すれば陰陽師みたいなことが私にも出来るようになるの?」
「陰陽師とは、ちと違うが」
「呼び方は何でもいいから、とにかく術とか使えるのよね?」
「訓練すればな」
「じゃあお願い」
開き直った私に、
「……じゃじゃ馬すぎないか?」
「たくましくて良いのでは?」
二人の貴公子もどきが何か言っていたが、聞かないことにした。



数日後、私はとりあえず(月影がどっかから持ってきた)お小姓の服で修行とやらを始めることになった。
まずは結月の出した紙人形を私の影に変化させることから始め、体術も並行して教わることになった。
彼ら曰く、
「片方だけやっていては片方が鈍る。両方扱えてこそだ」
なのだそうだ。

元が運動嫌いなOLなため心配していたが、幸い蓮花の体は運動神経が良いようで動き易く(しかも若い!)、覚えも早かった。
今日も最初の走り込みを終え、続いて術の修行に入った。
「破っ!」
気合を込めた掌から、僅かだが衝撃波が発される。
「たった数日でここまでとは__織羽どのは筋がよろしいですね」
修行をつけてくれるのは主に道術が月影、体術が結月だ。
二人一緒に来ることもあれば一人の時もある。
今日は月影だけだ。
褒められて悪い気はしないが、私は以前から気になっていたことを聞いてみた。
「この、元の__蓮花は、自分に霊力があるって知ってたの?」
「さあ?私は蓮花さまにはお会いしたことがないので。」
「結月の大将なら知ってるのかしら?」
「どうでしょう、蓮花どのの夫薫君と親しいとはいえ蓮花さまは元々皇女、しかも成人後すぐにご降嫁された身。接点があったとは思えませんが……」
「そうよね」
蓮花には晶以外親しい友と呼べるような相手も近くにいない。
その晶も霊力云々について何も語らないことから、知らないのだと思う。
母も夭逝して、父の命で降嫁して、その夫は滅多に顔を見せなくて。
体に霊力があっても、相談する相手もなく自分一人で出来ることは限られる。

蓮花は、どれだけ孤独だったんだろう。

__彼女はどうして、体と魂が離れてしまったのだろう?
























その他詳しい説明を聞き、使い方の練習を見届けて二人は帰って行った。

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