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織羽、御簾の中で無理と叫ぶ

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私はふた月ほど大人しくしていたが、
「女二の宮様に何かあっては主上に申し訳がたちません」
「やんごとないご身分なのですから、くれぐれも軽はずみな行動は__」
「今は私の妻でもあるのですから、供の者は二十人以上はお付け下さい」
だの、いっそう薫が鬱陶し……、いや口やかましくなった。

当分外出の許可は降りそうにない。
薫は見かけによらず中身はジジむさ、いや老成(?)したヤツだが、私は現代人だ。
よって、
「むーりー!!」
と金の飾りに向かって叫び、
「お前なぁ……、」
__やってきた二人を呆れさせた。

呆れられたが、無理なのである。
「私は本来こんな育ちの人間じゃないんだから当たり前でしょっ?!もう無理!息がつまるのっ、帰りたい!帰れないなら外出くらい出来るようにしてっ!」

二人は目を見合わせていたが、
「……仕方ねぇな」
「良くった方でしょう、織羽どのは元々この世界の住人ではないのですから__これをどうぞ、織羽どの」
と石の嵌った腕輪を渡してきた。

石は四つあって、赤と青と緑、それに透明なものがひとつ付いていた。

透明なものは、周囲に自分の存在が認識されなくなる。効果は自分の半径五メートルまで。ただし術者や物の怪には効かない場合もあるので注意が必要。

赤は危険な場所に近付いたら熱を持つので、速やかに離れ、石がひんやりしてくるまで距離をとること。

青は道に迷った時安全または行くべき方向に向かって光りで教えてくれるが、使用時人目につかない様に細心の注意をはらうこと。

どれも指先で触れれば発動するのだそうだ。

「この緑色の石は?」
「お守りだ」
「お守りって、具体的な効果は?」
「お守りはお守りだ、肌身離さず持っていろ」
神頼みか、そんなんアリか。

「結月、遊びすぎです。緑はいざという時に敵に投げつける用です。念じれば腕輪から外れます。一瞬敵の目を眩ませ動きを止められるはずですから、その隙に逃げてください」
違った、閃光弾だった。

___に しても凄いな、魔法みたい。いや、この世界風で言うと霊力?
「こんなの持ってるなら、最初から教えてくれたら良かったのに」
「そう言うと思ったから教えなかったんだよ」
結月が苦虫を噛み潰したように言い、
「けれどこちらとは異なる世界で育った織羽どのが耐えられなくなるのもまた必然でありますゆえ、用意だけはしていたのですよ」
月影が嫋やかに続けた。にこやかな笑顔に癒される、マイナスイオンとか出ていそう。

「これを使えば人に知られず密かに邸を抜け出して戻ってくることも可能でしょう、けれどこれはあくまで奥の手。石の魔力には限りがあります。くれぐれも乱用はお控えくださるよう」
そう言って握った手の平には紛れもなく本気が込められていて、確かな圧を感じた。

マイナスイオンが、氷粒てになったようだ。
けど、これを使えば彼にもう一度会えるかもしれない。

ごく、と息を飲みながら。
「具体的には、何回分くらい?あと時間制限とかあるの?」
「明確な時間制限などはありません。貴女が手を離して解除するまで効果は持続しますが、出来るだけ短い時間で発動を止めた方が長持ちはします。その都度減った魔力には差が出るので何回分かとも申し上げられません。石の魔力が枯渇してくれば私には感じ取れるので、その際にはこちらに確かめに参ります」
「わかったわ。あと、もうひとつお願いがあるんだけど」
「何だ?」
「服と移動手段!」




















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