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35 合流
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外でこんなことがあったとは知らないマリーローズは、
「賊は始末致しました。急ぎましょ「おい待て、ルイス」う?」
「座りっぱなしで腰にきた。お前変われ」
「は?」
「馬に怪我はなかったのだろう?俺がここからは騎馬で行くから、お前がこっちに乗れ」
「はぁ、まあ良いですけど」
と、カミユの代わりにルイスが馬車に同乗することになった。
馬車の中でのルイスは饒舌だった。沈黙よりいいけど。
「マリーローズ様は、ペンタスがどんな国かご存知ですか?」
「恥ずかしながら、一般的な知識だけですわ。魔法と技術が喧嘩することなく発展し続ける国、互いに偏見がなく、協力し合い、無駄な争いは好まない。帝国王は皇帝を名乗る事を好まず今の呼び方になったのだとか、、」
「ああ、まあ賞賛されるようなことじゃないけどね。かえって面倒が増えてるというか……」
ルイスは相変わらず辛辣だ。
「王子様が四人、王女様が五人いらっしゃって、上の王女様四人はもう他国に嫁がれているとか」
「多いよね。多いから早く嫁ってもらわないと婚期逃すしね」
ん?最早ただの悪口というか、愚痴になってる?
話題を変えようと、
「あ!あと王族がたは皆金の髪に瑠璃色の瞳が特徴なんだとか!その瞳は幸福を運ぶと言われていて_…え?」
と言い募る私の前で、
「よくできました」
そう嘯く彼の髪の色は、目の前で徐々に変わっていった。
そして、馬車の外から声がかかる。
「殿下!護衛団、合流しました!」
と扉の外からした声はカミユのもの。
「殿下……?」
と目の前のルイスをみればその髪は完全に自分とよく似た金色に、瞳は鮮やかな瑠璃色に変わっていた。
「あゝうん、ほんとは国境越えてから教えるつもりがちょっと早まっちゃったけど、あんまり長く変えてるのも体に良くないから?」
そう言って笑う顔の造作はルイスと同じなのだが、
(キ、キラキラ度が増してる……!)
と無意識に一歩引きそうになるマリーローズを、
「そんなあからさまに避けないで、っても無理か。こっちは黙って君を観察してたことになるんだし」
と手元に引き戻しながら、
「ペンタス帝国の第三王子、ルイスティリス・ローズド・ペンタス。あらためてよろしく。婚約者どの」
と続けた目の前の男に対し、無意識にハリセンを手探りしてしまったマリーローズだが、いつもはすぐに察して手渡してくれるハンナが固まったままでそれは叶わなかった。
「て、帝国の王子殿下……!」
(あちゃー…ハンナが恐縮しちゃってる)
いや、自分も驚いてはいる。
驚いてはいるのだが、この王子は私が婚約者になることを予め知っていた。
知っていたうえで一番近くで成り行きを見守っていたのだ、姿まで変えて。
「殿下の身分を知らなかったハンナやカールやファナは何ら罪には問われませんよね?」
マリーローズの語感に怒気を感じとったのだろう、
「あー…すまん。その、ロシエルとは親友でな?妹が困った立場に立たされていると相談されてだな。ならまあ王族としてこの国に諸々許可取りするのも面倒だし、連中への奇襲にもなるってことで直接俺が来たんだ」
「なぜわざわざ護衛騎士に?」
「ロシエルから自国の者でない護衛が欲しいんで、確かな人物を寄越してくれと言われて」
「それで王子殿下がおひとりで?」
「今合流した護衛団と一緒にだ、君の家の領内に入ったところで別れた。その後も彼らは国境近くの宿で待機してもらっていた。何かあった際にすぐ動いてもらえるようにだ__役に立っただろう?」
「ええ。ですが信書一枚で充分効果があるのをわかっていながら、わざわざ雇われた護衛として見た目まで変えて一連の騒ぎを見物しているだなんて、少々お戯れが過ぎるかと」
「その畏まった物言いはやめてくれ、頼むから」
「そういうわけにはいきませんわ?」
「もっとその、ガンガン言ってくれて構わないぞ?その、君の元夫_、と言っていいのかわからないが、アベル・ロードに対してしっかりやり返してた時みたいに」
「_…カミユ卿?」
マリーローズは馬車のすぐ外で耳を澄ませているであろうカミユ・ロースタス・ペンタスに向かって訊ねる。
「はい、何でしょう?マリーローズ様」
(さっきまで“嬢“だったくせに……)
「殿下はマゾっ気がおありですの?」
「いえ、単に何でも面白がる性格なだけですのでご心配なく。ついでに(敵に対しては)どちらかといえばサディストです」
「模範的な回答をありがとう」
「……模範的か?今の」
「ええ。あなたという人間の説明という点においては、非常に理にかなっているかと。ルイスティリス・ローズド・ペンタス殿下」
「一回で覚えてくれたのか、流石だな」
「褒め言葉に聞こえないのは何故でしょうか」
「君のその物言いが私は好きだよ、マリーローズ。俺のことはルイでいい」
そう言ってルイはマリーローズの髪をひと房掬いとって口づけた。
マリーローズは動けない。
こういう展開に耐性のない前世社畜な令嬢は、こういう時どう反応していいかわからない。
お兄さま……!帰ったら、ハリセンの一発ぐらい、覚悟してくださいね……!
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
昨日も沢山の感想ありがとうございます‼️
ルイスが相手の王子だと読んでいた方、多かったですね!
「王族は皆金の髪色~」あたりで「あれ?違った?」と一瞬思わせられていたら嬉しい💞
主人公視点のエピローグは明日12時の予定です。
「賊は始末致しました。急ぎましょ「おい待て、ルイス」う?」
「座りっぱなしで腰にきた。お前変われ」
「は?」
「馬に怪我はなかったのだろう?俺がここからは騎馬で行くから、お前がこっちに乗れ」
「はぁ、まあ良いですけど」
と、カミユの代わりにルイスが馬車に同乗することになった。
馬車の中でのルイスは饒舌だった。沈黙よりいいけど。
「マリーローズ様は、ペンタスがどんな国かご存知ですか?」
「恥ずかしながら、一般的な知識だけですわ。魔法と技術が喧嘩することなく発展し続ける国、互いに偏見がなく、協力し合い、無駄な争いは好まない。帝国王は皇帝を名乗る事を好まず今の呼び方になったのだとか、、」
「ああ、まあ賞賛されるようなことじゃないけどね。かえって面倒が増えてるというか……」
ルイスは相変わらず辛辣だ。
「王子様が四人、王女様が五人いらっしゃって、上の王女様四人はもう他国に嫁がれているとか」
「多いよね。多いから早く嫁ってもらわないと婚期逃すしね」
ん?最早ただの悪口というか、愚痴になってる?
話題を変えようと、
「あ!あと王族がたは皆金の髪に瑠璃色の瞳が特徴なんだとか!その瞳は幸福を運ぶと言われていて_…え?」
と言い募る私の前で、
「よくできました」
そう嘯く彼の髪の色は、目の前で徐々に変わっていった。
そして、馬車の外から声がかかる。
「殿下!護衛団、合流しました!」
と扉の外からした声はカミユのもの。
「殿下……?」
と目の前のルイスをみればその髪は完全に自分とよく似た金色に、瞳は鮮やかな瑠璃色に変わっていた。
「あゝうん、ほんとは国境越えてから教えるつもりがちょっと早まっちゃったけど、あんまり長く変えてるのも体に良くないから?」
そう言って笑う顔の造作はルイスと同じなのだが、
(キ、キラキラ度が増してる……!)
と無意識に一歩引きそうになるマリーローズを、
「そんなあからさまに避けないで、っても無理か。こっちは黙って君を観察してたことになるんだし」
と手元に引き戻しながら、
「ペンタス帝国の第三王子、ルイスティリス・ローズド・ペンタス。あらためてよろしく。婚約者どの」
と続けた目の前の男に対し、無意識にハリセンを手探りしてしまったマリーローズだが、いつもはすぐに察して手渡してくれるハンナが固まったままでそれは叶わなかった。
「て、帝国の王子殿下……!」
(あちゃー…ハンナが恐縮しちゃってる)
いや、自分も驚いてはいる。
驚いてはいるのだが、この王子は私が婚約者になることを予め知っていた。
知っていたうえで一番近くで成り行きを見守っていたのだ、姿まで変えて。
「殿下の身分を知らなかったハンナやカールやファナは何ら罪には問われませんよね?」
マリーローズの語感に怒気を感じとったのだろう、
「あー…すまん。その、ロシエルとは親友でな?妹が困った立場に立たされていると相談されてだな。ならまあ王族としてこの国に諸々許可取りするのも面倒だし、連中への奇襲にもなるってことで直接俺が来たんだ」
「なぜわざわざ護衛騎士に?」
「ロシエルから自国の者でない護衛が欲しいんで、確かな人物を寄越してくれと言われて」
「それで王子殿下がおひとりで?」
「今合流した護衛団と一緒にだ、君の家の領内に入ったところで別れた。その後も彼らは国境近くの宿で待機してもらっていた。何かあった際にすぐ動いてもらえるようにだ__役に立っただろう?」
「ええ。ですが信書一枚で充分効果があるのをわかっていながら、わざわざ雇われた護衛として見た目まで変えて一連の騒ぎを見物しているだなんて、少々お戯れが過ぎるかと」
「その畏まった物言いはやめてくれ、頼むから」
「そういうわけにはいきませんわ?」
「もっとその、ガンガン言ってくれて構わないぞ?その、君の元夫_、と言っていいのかわからないが、アベル・ロードに対してしっかりやり返してた時みたいに」
「_…カミユ卿?」
マリーローズは馬車のすぐ外で耳を澄ませているであろうカミユ・ロースタス・ペンタスに向かって訊ねる。
「はい、何でしょう?マリーローズ様」
(さっきまで“嬢“だったくせに……)
「殿下はマゾっ気がおありですの?」
「いえ、単に何でも面白がる性格なだけですのでご心配なく。ついでに(敵に対しては)どちらかといえばサディストです」
「模範的な回答をありがとう」
「……模範的か?今の」
「ええ。あなたという人間の説明という点においては、非常に理にかなっているかと。ルイスティリス・ローズド・ペンタス殿下」
「一回で覚えてくれたのか、流石だな」
「褒め言葉に聞こえないのは何故でしょうか」
「君のその物言いが私は好きだよ、マリーローズ。俺のことはルイでいい」
そう言ってルイはマリーローズの髪をひと房掬いとって口づけた。
マリーローズは動けない。
こういう展開に耐性のない前世社畜な令嬢は、こういう時どう反応していいかわからない。
お兄さま……!帰ったら、ハリセンの一発ぐらい、覚悟してくださいね……!
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
昨日も沢山の感想ありがとうございます‼️
ルイスが相手の王子だと読んでいた方、多かったですね!
「王族は皆金の髪色~」あたりで「あれ?違った?」と一瞬思わせられていたら嬉しい💞
主人公視点のエピローグは明日12時の予定です。
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