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33 佳境
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団欒のお邪魔虫(?)たちが去ると、
「__お兄さま?」
「今から話すから怒るな、妹」
「怒っていません。使者の方とは、はじめましてですね」
「はい。秘密裏に事を運んでいたのでご挨拶できずに申し訳ありませんでした。あらためてカミユ・ロースタス・ペンタスと申します。お会いできて光栄です」
これが偽名でなく本名ってこと……よね?
「では、ペンタスの「王族といっても傍系の傍系です。かろうじて血が繋がっていて家系図の端にいる程度ですが」…は、はぁ?」
「まあ傍系だろうとペンタス王家の者であることに変わりはない。はったりをかますにはちょうど良いだろう」
兄の言葉に、
「酷い言われよう、と言いたいところですがその通りです。実際それが私の役目でして」
と苦笑する勅使に気分を害した様子はない。
「役目……ですか」
(お兄さまって、こんなにペンタスに顔のきく人だったの……?!)
「マリーローズ様もお疲れでしょう、続きは応接間に場を移してからにしませんか?」
ルイスが言い、皆が移動してソファに腰をおろすと、ロシエルが口火を切った。
「お前は知らないだろうが、我が家はペンタスとの取引というか、親交が深い。俺も跡継ぎとしての視察や取引で何度かペンタスには足を運んでるし、向こうに知り合いも多い。だから今回、力を借りた。権力には権力が一番手っ取り早いからな」
確かに効果は抜群だったが、王家がそんな簡単に?
「あの、それで何故、私と第三王子殿下が婚約なんて話になるのですか?」
言っては難だが、ペンタスについて、本当に私はよく知らない。
最近のティータイムに読んだ本で多少詳しくなった程度だ。
後継者である兄と、他所に嫁ぐ自分で教育課程が違うのは当たり前だから、知らなくて当然と言われればそうかもしれないが。
「俺があちらで滞在してたのは主に王宮だ。第三王子とは最初の外遊で知り合ったんだが、年も同じせいか気があってな。仕事関係なしの手紙のやり取りもしていた。んで、その過程でコイツとも知り合った」
と親指でカミユを指し、カミユは苦笑して頷いた。
「こっちの事情を話したらすぐコイツを信書付きで寄越してくれてな。と、いうワケでお前はすぐここを出てペンタスに向かえ」
「え」
「あの王女バカ王が素直に引っ込むと思うか?この婚約はまだ公にされていない。もちろんこれからあちこちにふれ回るというか、もうそちらは別働隊が始めているが__国中に浸透するには時間がかかる。勅命が通じなかったとなれば、その次に来るのは武力行使だ」
「ぶ、武力行使っ?そこまでするほどのことでしょうか?」
「握ってる権力が高い分、プライドも高いからな。お前がペンタスに入ってしまえば手の出しようがないが、自国内にいるうちならどうとでもできるとか考えても不思議はない__お前がどうこうでなく、自分の負けを認めたくないんだろう」
「もの凄く無駄な使い方ですね……」
お金も、権力も。もっと他の事に使えばいいのに。
「ハンナと、護衛にはルイスと一緒に来たカミユの護衛が付いて行く。国境の近くまで行けばペンタスの護衛団が待機している。ここからはスピード勝負だ、すぐに向かえ」
「でも_…、」
それ、こちらに残った人が危険なのでは?
ここで、ファナとカールが声をあげた。
「待ってください!お嬢様の護衛はルイスだけということですか?!女性騎士の私もお供した方が!」
「ルイスは新参です!我々もお供させてください!」
「いや、お前たちの忠誠は嬉しいが機動力の問題だ。小人数の方が動きやすいんだ。馬車にマリーローズとハンナとカミユだけなら馬車馬の足も早い。カミユの護衛とルイスは騎馬で馬車に付き添う。心配するな、ルイスは俺がペンタスから呼び寄せた騎士だ」
__え?
「外国人だとは聞いていましたが_…、」
「お前、ペンタス人だったのか!」
ファナとカールが驚きの声をあげる。
「ああ。こう見えてもペンタスの王宮所属だ。身分は保証付きだし、ここからペンタスへの地形も詳しい。安心しろ」
「__そういう事でしたら」
「……失礼した」
「いえ、お二人がお嬢様を大事に思っていることは充分見てきましたし、お任せ下さい」
話が勝手に進んでいる。
「そんな顔をするな。何も結婚しろといってるわけじゃない、表向き第三王子の婚約者としてペンタスの城に預けるだけだ。そのまま王子が気に入ったら結婚すればいいし、嫌なら振って帰ってこい」
「振って…_帰って来て、良いのですか?」
「ああ。本人も承知している。カザムの王家にお前はさんざん振り回されたろ?あっちで好きなだけ療養して来い。俺が言うのも何だが、奴は王族にしてはまともで良い奴だ。好きに遊んで来い」
「お兄さま……」
「手紙のやり取りも検閲なしで届く。何かあったら知らせろ」
「でも_…もし王家が本当に武力行使に出たら、」
「心配いりません、ご令嬢。私と共に来た護衛は十名、そのうち八名はこちらに残していきますから」
にこやかに言ったカミユの台詞に、マリーローズとハンナは固まった。
使者ひとりに十名の護衛って……まさか?
「はい、ご令嬢の家族が無事に結婚式に出席するまで、お護りするようにとの下命を受けております」
とカミユが言い、
「残る護衛たちもペンタス帝国王の信書を持っていますから、それだけで引き下がるとは思いますが……少々ネジが緩んでいるようでしたから、念のためです」
とルイスが辛辣に続けた。
「えぇと、帝国王の信書ということは、第三王子殿下だけでなく、帝国王陛下も……」
最早頭を押さえながら訊ねるマリーローズに、
「はい、ご存知です。“面白そうだ“と仰っておりました」
とカミユは相変わらず笑顔で答えてくれ、
「そ、そうですか……」
もはや突っ込めないマリーローズだった。
「まあそういうわけだ。こっちのことは気にせず、ゆっくりして来い。それまでにこっちを片付けておく」
お兄さまって、こんなに妹に過保護で底の知れないの人だったのね……?
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
はい!予想通り終わらなかった( ̄▽ ̄;)!
というか今日はやらなきゃいけないことが多すぎて&指が腱鞘炎?目がチカチカする、頭痛もする?酷使しすぎ……?
という感じでなかなか始められませんでしたm(_ _)m
感想いっぱいありがとうございます❣️
次回こそ目指せ主人公目線の完結!
ハロウィンまでには他者視点も終わらせようね、私……うん、コメントでも言われましたが、コレモウ短編ジャナイネ……後で設定変更しようね?
「__お兄さま?」
「今から話すから怒るな、妹」
「怒っていません。使者の方とは、はじめましてですね」
「はい。秘密裏に事を運んでいたのでご挨拶できずに申し訳ありませんでした。あらためてカミユ・ロースタス・ペンタスと申します。お会いできて光栄です」
これが偽名でなく本名ってこと……よね?
「では、ペンタスの「王族といっても傍系の傍系です。かろうじて血が繋がっていて家系図の端にいる程度ですが」…は、はぁ?」
「まあ傍系だろうとペンタス王家の者であることに変わりはない。はったりをかますにはちょうど良いだろう」
兄の言葉に、
「酷い言われよう、と言いたいところですがその通りです。実際それが私の役目でして」
と苦笑する勅使に気分を害した様子はない。
「役目……ですか」
(お兄さまって、こんなにペンタスに顔のきく人だったの……?!)
「マリーローズ様もお疲れでしょう、続きは応接間に場を移してからにしませんか?」
ルイスが言い、皆が移動してソファに腰をおろすと、ロシエルが口火を切った。
「お前は知らないだろうが、我が家はペンタスとの取引というか、親交が深い。俺も跡継ぎとしての視察や取引で何度かペンタスには足を運んでるし、向こうに知り合いも多い。だから今回、力を借りた。権力には権力が一番手っ取り早いからな」
確かに効果は抜群だったが、王家がそんな簡単に?
「あの、それで何故、私と第三王子殿下が婚約なんて話になるのですか?」
言っては難だが、ペンタスについて、本当に私はよく知らない。
最近のティータイムに読んだ本で多少詳しくなった程度だ。
後継者である兄と、他所に嫁ぐ自分で教育課程が違うのは当たり前だから、知らなくて当然と言われればそうかもしれないが。
「俺があちらで滞在してたのは主に王宮だ。第三王子とは最初の外遊で知り合ったんだが、年も同じせいか気があってな。仕事関係なしの手紙のやり取りもしていた。んで、その過程でコイツとも知り合った」
と親指でカミユを指し、カミユは苦笑して頷いた。
「こっちの事情を話したらすぐコイツを信書付きで寄越してくれてな。と、いうワケでお前はすぐここを出てペンタスに向かえ」
「え」
「あの王女バカ王が素直に引っ込むと思うか?この婚約はまだ公にされていない。もちろんこれからあちこちにふれ回るというか、もうそちらは別働隊が始めているが__国中に浸透するには時間がかかる。勅命が通じなかったとなれば、その次に来るのは武力行使だ」
「ぶ、武力行使っ?そこまでするほどのことでしょうか?」
「握ってる権力が高い分、プライドも高いからな。お前がペンタスに入ってしまえば手の出しようがないが、自国内にいるうちならどうとでもできるとか考えても不思議はない__お前がどうこうでなく、自分の負けを認めたくないんだろう」
「もの凄く無駄な使い方ですね……」
お金も、権力も。もっと他の事に使えばいいのに。
「ハンナと、護衛にはルイスと一緒に来たカミユの護衛が付いて行く。国境の近くまで行けばペンタスの護衛団が待機している。ここからはスピード勝負だ、すぐに向かえ」
「でも_…、」
それ、こちらに残った人が危険なのでは?
ここで、ファナとカールが声をあげた。
「待ってください!お嬢様の護衛はルイスだけということですか?!女性騎士の私もお供した方が!」
「ルイスは新参です!我々もお供させてください!」
「いや、お前たちの忠誠は嬉しいが機動力の問題だ。小人数の方が動きやすいんだ。馬車にマリーローズとハンナとカミユだけなら馬車馬の足も早い。カミユの護衛とルイスは騎馬で馬車に付き添う。心配するな、ルイスは俺がペンタスから呼び寄せた騎士だ」
__え?
「外国人だとは聞いていましたが_…、」
「お前、ペンタス人だったのか!」
ファナとカールが驚きの声をあげる。
「ああ。こう見えてもペンタスの王宮所属だ。身分は保証付きだし、ここからペンタスへの地形も詳しい。安心しろ」
「__そういう事でしたら」
「……失礼した」
「いえ、お二人がお嬢様を大事に思っていることは充分見てきましたし、お任せ下さい」
話が勝手に進んでいる。
「そんな顔をするな。何も結婚しろといってるわけじゃない、表向き第三王子の婚約者としてペンタスの城に預けるだけだ。そのまま王子が気に入ったら結婚すればいいし、嫌なら振って帰ってこい」
「振って…_帰って来て、良いのですか?」
「ああ。本人も承知している。カザムの王家にお前はさんざん振り回されたろ?あっちで好きなだけ療養して来い。俺が言うのも何だが、奴は王族にしてはまともで良い奴だ。好きに遊んで来い」
「お兄さま……」
「手紙のやり取りも検閲なしで届く。何かあったら知らせろ」
「でも_…もし王家が本当に武力行使に出たら、」
「心配いりません、ご令嬢。私と共に来た護衛は十名、そのうち八名はこちらに残していきますから」
にこやかに言ったカミユの台詞に、マリーローズとハンナは固まった。
使者ひとりに十名の護衛って……まさか?
「はい、ご令嬢の家族が無事に結婚式に出席するまで、お護りするようにとの下命を受けております」
とカミユが言い、
「残る護衛たちもペンタス帝国王の信書を持っていますから、それだけで引き下がるとは思いますが……少々ネジが緩んでいるようでしたから、念のためです」
とルイスが辛辣に続けた。
「えぇと、帝国王の信書ということは、第三王子殿下だけでなく、帝国王陛下も……」
最早頭を押さえながら訊ねるマリーローズに、
「はい、ご存知です。“面白そうだ“と仰っておりました」
とカミユは相変わらず笑顔で答えてくれ、
「そ、そうですか……」
もはや突っ込めないマリーローズだった。
「まあそういうわけだ。こっちのことは気にせず、ゆっくりして来い。それまでにこっちを片付けておく」
お兄さまって、こんなに妹に過保護で底の知れないの人だったのね……?
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
はい!予想通り終わらなかった( ̄▽ ̄;)!
というか今日はやらなきゃいけないことが多すぎて&指が腱鞘炎?目がチカチカする、頭痛もする?酷使しすぎ……?
という感じでなかなか始められませんでしたm(_ _)m
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