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26 無神経という名の狂気にハリセンは効かない
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「まさか紙で出来たハリセン如きで王宮の警備に支障が出るわけがないでしょう、そもそもロード伯は警備の責任者側では?__あぁ、王女殿下のそばで我儘を叶えるのが仕事でしたっけ?」
「なっ……!そんなわけないだろう、おかしな邪推はやめてくれ!!」
「今回の事は明らかに護衛の任務から逸脱していると思いますけど?何なら最高責任者に尋ねてみましょうか」
てか、責任者って誰だろう。騎士団長?王族?それとも人事?
「それは……」
「それは?」
「と、とにかく!それは立派な凶器だろう!」
「まあ。ご立派な騎士様がこれを凶器だなんて_…心外だわ、ねぇハンナ?」
「全くです。これはお嬢さまが扇術の練習用に要らない紙で自ら作られた少し大きめの扇子というだけですのに」
「張り倒す専用だと言っていなかったか?」
「張り倒されるようなことをする方が悪いのです」
マリーローズの両側でハンナとルイスがうんうんと頷く。
「とにかく、これ以上私を疲れさせないでくださいませ。貴方は脳味噌まで筋肉で出来ているから良いかもしれませんが、あいにく私はそこまで丈夫ではありませんの」
と私は相手の反論を待たずに部屋を後にした。
これ以上の水掛け論は不毛で不要だ、やらない方がエコになる。
「お嬢様、広間にお戻りになりますか?」
歩きながら聞いてくるルイスに、
「いいえ。このまま帰るわ」
と迷いなく返した。
ただでさえいい見せ物だったのに、またあの場所に戻っても良いことはない。
「ではここから一番近い出口に馬車をつけさせましょう。先ほどより歩かなくて済みますし、招待客に出くわすこともなく出られると思います」
「そんな都合の良い出口があるの?」
「護衛騎士ですからね、王城の見取り図くらい頭に入っていますよ」
そりゃ、そうか。あれ?でも、
「それならあのケダモノ騎士擬きだって知っていたはずですよね?!なのにこんなにお嬢様を歩かせて……!」
と怒れるハンナに、
「いや、あの広間からだとさっきのが正規ルートだ。正装の令嬢が、使用人の通用口のようなところは通れないからね。ただこの部屋からはそれなりに近い出口があるってこと。招待された貴人がこっそり帰れるようにだろうね」
「成る程……、私も覚えておくべきですね」
私が社交をしていないので当然ハンナもしていないというか、こういった場に慣れていない。
(うーん、これは私が迂闊だったわね。小説の中ではアベルとマリーローズが一緒に貴賓室に行ったなんて場面はなかったもの)
「じゃあ一緒に覚えましょう、覚えておいて損はないわ。講師をお願いできる?ルイス」
「もちろん喜んで。扇術と一緒にお教えしましょう」
私のお願いに、ルイスが人好きのする笑みで答える。
何というか、美形の破壊力が半端ない。
(この人、色々万能すぎない?)
お父様の様子からただの護衛騎士ではなさそうだが、かといって敵ではなさそうなのでマリーローズはこれ以上突っ込まない。
誰にだって触れられたくない部分はあるだろう。
そのルイスが警備にあたっていた騎士のひとりに伝言を頼み、馬車の手配を済ませる。
自身は護衛対象から離れない。
(“騎士のお手本“てこういうのよね……なんで似非騎士が理想の騎士なのよ?アレはどっちかってーと悪い例じゃない?)
しょっちゅう襲撃される護衛対象を宮からほいほい連れ出しちゃうの、ヤバいんでは?
その護衛対象とマリーローズがいうところの似非騎士は、同じ頃、部屋でパニクっていた。
「ど、どうしましょう?!怒らせてしまったわ!そんなつもりじゃなかったのに……!」
「落ち着いてください、王女殿下。確かに妻は結婚してから人格が豹h、いえ気丈に振る舞うようになりましたがまだ結婚式での事が許せないようで、」
「そう、そうよね……だからこそ直に謝りたかったのに。ドレスのことで余計怒らせてしまったみたい」
《……当たり前だろ》
「いえ、あのドレスなら妻も喜ぶはずだと太鼓判を押したのは私です。それに妻も、実際に王女殿下にお会いして話をすればわかってくれると思ったのですが_…、」
「私の瞳の色と、貴方の色は似てるから。夫人も気付かないか、気付いても気にしないと思ったの」
《いや、そこは気にしろお前ら》
「……実際私もドレスを見た時は気付きませんでした。まさか王女殿下にお会いした事がない妻が気付くとは_…」
《お前も気付け。毎日見てんだろが》
デビュタント前なだけで、王女が隠されているわけではない。
お披露目式はされているし、同じ年頃の子息令嬢との交流茶会などには適度に出席していた。
「知っている人は知っているし、セントレイ伯爵ご夫妻にはお会いした事があるもの。きっと人に沢山聞いたり、調べたりしたんでしょうね……そこまでされるほど奥様は貴方のことを想って気にしておられたんだわ」
《いや、違うから》
「!そう_…でしょうか?」
《違うっつってんだろ》
「きっとそうよ!だからあんなにお怒りになられたんだわ。誤解だとお知らせしなければならなかったのに、失敗してしまったわ。ごめんなさいアベル」
しょぼんと涙ぐむ王女に、アベルが跪く。
《何やってんだお前ら?寸劇か?》
「どうか、お気になさらず。機会はまたありましょう__貴女が嫁がれるその日まで、お側でお護りしますから」
と手の甲にキスを落とした。
《……処置なしだな》
このやり取りを見て「誤解だった」と賛同してくれる人はいないだろうが、あいにく見ている人はいなかった。
が、
“聞いていた“人物はいた。
互いにきちんと“マリーローズ“という人物に敬意を払っているつもりの二人は知らない。
__そんな機会は、永遠に来ないことを。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
《》突っ込みは“聞いていた“人のもの☺️
当然周囲には聞こえていません😁
この後、ママ達合流。
すみません、そこまで書ききれませんでしたm(_ _)m
昨日~今日にかけても感想祭りありがとうございます!
「更新待ち時間に他の作品読みました」と他の投稿作にコメントくださる方もいて嬉しい楽しいヽ(´▽`)/♪
熱中症はガンガン運転中のフリして実は壊れていて全く効いてなかった職場のエアコンのせいらしい……労災請求していい(^◇^;)?
「なっ……!そんなわけないだろう、おかしな邪推はやめてくれ!!」
「今回の事は明らかに護衛の任務から逸脱していると思いますけど?何なら最高責任者に尋ねてみましょうか」
てか、責任者って誰だろう。騎士団長?王族?それとも人事?
「それは……」
「それは?」
「と、とにかく!それは立派な凶器だろう!」
「まあ。ご立派な騎士様がこれを凶器だなんて_…心外だわ、ねぇハンナ?」
「全くです。これはお嬢さまが扇術の練習用に要らない紙で自ら作られた少し大きめの扇子というだけですのに」
「張り倒す専用だと言っていなかったか?」
「張り倒されるようなことをする方が悪いのです」
マリーローズの両側でハンナとルイスがうんうんと頷く。
「とにかく、これ以上私を疲れさせないでくださいませ。貴方は脳味噌まで筋肉で出来ているから良いかもしれませんが、あいにく私はそこまで丈夫ではありませんの」
と私は相手の反論を待たずに部屋を後にした。
これ以上の水掛け論は不毛で不要だ、やらない方がエコになる。
「お嬢様、広間にお戻りになりますか?」
歩きながら聞いてくるルイスに、
「いいえ。このまま帰るわ」
と迷いなく返した。
ただでさえいい見せ物だったのに、またあの場所に戻っても良いことはない。
「ではここから一番近い出口に馬車をつけさせましょう。先ほどより歩かなくて済みますし、招待客に出くわすこともなく出られると思います」
「そんな都合の良い出口があるの?」
「護衛騎士ですからね、王城の見取り図くらい頭に入っていますよ」
そりゃ、そうか。あれ?でも、
「それならあのケダモノ騎士擬きだって知っていたはずですよね?!なのにこんなにお嬢様を歩かせて……!」
と怒れるハンナに、
「いや、あの広間からだとさっきのが正規ルートだ。正装の令嬢が、使用人の通用口のようなところは通れないからね。ただこの部屋からはそれなりに近い出口があるってこと。招待された貴人がこっそり帰れるようにだろうね」
「成る程……、私も覚えておくべきですね」
私が社交をしていないので当然ハンナもしていないというか、こういった場に慣れていない。
(うーん、これは私が迂闊だったわね。小説の中ではアベルとマリーローズが一緒に貴賓室に行ったなんて場面はなかったもの)
「じゃあ一緒に覚えましょう、覚えておいて損はないわ。講師をお願いできる?ルイス」
「もちろん喜んで。扇術と一緒にお教えしましょう」
私のお願いに、ルイスが人好きのする笑みで答える。
何というか、美形の破壊力が半端ない。
(この人、色々万能すぎない?)
お父様の様子からただの護衛騎士ではなさそうだが、かといって敵ではなさそうなのでマリーローズはこれ以上突っ込まない。
誰にだって触れられたくない部分はあるだろう。
そのルイスが警備にあたっていた騎士のひとりに伝言を頼み、馬車の手配を済ませる。
自身は護衛対象から離れない。
(“騎士のお手本“てこういうのよね……なんで似非騎士が理想の騎士なのよ?アレはどっちかってーと悪い例じゃない?)
しょっちゅう襲撃される護衛対象を宮からほいほい連れ出しちゃうの、ヤバいんでは?
その護衛対象とマリーローズがいうところの似非騎士は、同じ頃、部屋でパニクっていた。
「ど、どうしましょう?!怒らせてしまったわ!そんなつもりじゃなかったのに……!」
「落ち着いてください、王女殿下。確かに妻は結婚してから人格が豹h、いえ気丈に振る舞うようになりましたがまだ結婚式での事が許せないようで、」
「そう、そうよね……だからこそ直に謝りたかったのに。ドレスのことで余計怒らせてしまったみたい」
《……当たり前だろ》
「いえ、あのドレスなら妻も喜ぶはずだと太鼓判を押したのは私です。それに妻も、実際に王女殿下にお会いして話をすればわかってくれると思ったのですが_…、」
「私の瞳の色と、貴方の色は似てるから。夫人も気付かないか、気付いても気にしないと思ったの」
《いや、そこは気にしろお前ら》
「……実際私もドレスを見た時は気付きませんでした。まさか王女殿下にお会いした事がない妻が気付くとは_…」
《お前も気付け。毎日見てんだろが》
デビュタント前なだけで、王女が隠されているわけではない。
お披露目式はされているし、同じ年頃の子息令嬢との交流茶会などには適度に出席していた。
「知っている人は知っているし、セントレイ伯爵ご夫妻にはお会いした事があるもの。きっと人に沢山聞いたり、調べたりしたんでしょうね……そこまでされるほど奥様は貴方のことを想って気にしておられたんだわ」
《いや、違うから》
「!そう_…でしょうか?」
《違うっつってんだろ》
「きっとそうよ!だからあんなにお怒りになられたんだわ。誤解だとお知らせしなければならなかったのに、失敗してしまったわ。ごめんなさいアベル」
しょぼんと涙ぐむ王女に、アベルが跪く。
《何やってんだお前ら?寸劇か?》
「どうか、お気になさらず。機会はまたありましょう__貴女が嫁がれるその日まで、お側でお護りしますから」
と手の甲にキスを落とした。
《……処置なしだな》
このやり取りを見て「誤解だった」と賛同してくれる人はいないだろうが、あいにく見ている人はいなかった。
が、
“聞いていた“人物はいた。
互いにきちんと“マリーローズ“という人物に敬意を払っているつもりの二人は知らない。
__そんな機会は、永遠に来ないことを。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
《》突っ込みは“聞いていた“人のもの☺️
当然周囲には聞こえていません😁
この後、ママ達合流。
すみません、そこまで書ききれませんでしたm(_ _)m
昨日~今日にかけても感想祭りありがとうございます!
「更新待ち時間に他の作品読みました」と他の投稿作にコメントくださる方もいて嬉しい楽しいヽ(´▽`)/♪
熱中症はガンガン運転中のフリして実は壊れていて全く効いてなかった職場のエアコンのせいらしい……労災請求していい(^◇^;)?
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