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24 Ma jiで修羅場る5秒前
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広間では「カイゼル侯爵、並びに侯爵夫人」と「セントレイ伯爵、並びに伯爵夫人、ロード伯爵夫人、並びにルイス・ガーネット伯爵」と呼ばれて入場した。
ルイスは貴族の出だと聞いてはいたが、ガーネット伯爵という家はマリーローズの記憶にない。
外国人だと言っていたから、他国の貴族家なんだろう。
広間はざわりとなったが、カイゼル侯爵家とセントレイ伯爵家が娘を守るように睨みを利かせたのと、一瞬後にはルイスの美貌に目が眩んだようで、視線を集めてはいるものの、好奇心が勝って嘲笑する人間は見当たらない。
ヒソヒソと「あの美丈夫はどなた?」と言い合っているみたいだが、あいにく誰も正体はわからないらしい。
カールも見たことがないと言っていたし、外国から来てすぐセントレイ伯爵家に雇われたってこと?
(良い家の出っぽいのに、物見遊山とかしなかったのかしら?)
エスコートする仕草からして、育ちが良いのはよくわかる。
セントレイ伯爵も「確かに、ルイスならば問題ないが……」と言葉を濁してはいたが一切反対せず許可したし、この男性に限って路銀がないとかそんな事はあり得ない__ように見える。たぶん。
(一体何者なのかしら?)
小説の記憶を探っても、この騎士は出て来ない。
カールとファナを前にしたら“よくよく考えれば幼い頃から家にいた人たち“だったと思い出したり、“言われてみれば“と記憶を探ると確かにそんな記憶があるな、という感じだった前世社畜はだんだんマリーローズの記憶と融合しつつあり、この世界でマリーローズとして生きてきた知識や振る舞いも難しくなくなってきた。
異世界に転生や転移してきた場合、その世界の言語が話せはするけど読み書きが出来ない__なんてオチもあったりするが、自分には当てはまらなかったようだ。
自分とルイスを両家の当主夫妻が隠すように立ってくれているので、視線は気にならない。
もっともこの中で一番背の高いルイスは身長が頭ひとつ分抜けているので顔だけ見せびらかしている状態だが、本人は気にならないらしい。
因みにアベルの姿は見当たらない。
(夜会に出ない王女の護衛から抜けて、ってどのタイミングで来るのかしら?)
そんな事を思っているうちに国王の入場が告げられ、そのお付きの中にアベルの姿が見える。
(やっぱり国王のお気に入りなのね……まあ偽装結婚してまで王女を守ってくれる騎士なんてそうそういないから当たり前か)
護衛騎士は憧れの職業ではあるが、急な呼び出しが多く、勤務時間もバラバラなうえ長時間拘束されることもあるため、貴族令嬢の結婚相手としては微妙なところだ。
等級の高い騎士ほど給与も高いので玉の輿狙いの女性には絶好のターゲットだが、アベルの場合顔だけでそれなりの相手が釣れそうな見栄えの良さだ。
(そりゃ、王様もお姫様も連れて歩きたがるわよね……)
今自分の隣には負けない美形がいるし、それがなくともあの似非騎士は生理的に受け付けないが。
爵位まで授けられている大人なのに、どうしてあそこまでズレているのか……いや、護衛対象が非常識だからか?
などと考えていたらいつの間にか王の挨拶が終わっていたらしく、
「……と、いうわけでアベル・ロード伯、並びにロード伯夫人マリーローズ、前へ!」
という言葉が続き、
「えっ…」
と小さく声を上げるマリーローズの目の前の視界が一気に開けた。
「この二人が夫婦となったことを祝福してほしい」
とほざいた国王のせいで、国王の入場からは僅かにマリーローズの姿が見える程度の隙間を空けていた両親のさらに奥から扇子越しにしか広間の様子を見ていなかったマリーローズが、いきなりその場の中心に引っ張り出されたのだ。
当然、周囲の視線がマリーローズに集中する。
「…っ…!」
(あの王と姫と似非騎士……!よくもやってくれたわね!?)
そう心中で毒づいていると、「大丈夫です、お護りします」と横にいたルイスが私の手をとり、広間の中心へとエスコートする。
国王とその横に立つ似非騎士の前にルイスと共に着くと国王は訝しげに、
「其方は?」
とルイスを誰何するが、
「お嬢様の護衛をお父君であるセントレイ伯爵より命じられたものです。マリーローズ様にも護衛は必要ですので」
と涼しい顔で受け流した。
取りようによっては「アンタらは王女の護衛しか気にしてないみたいだが、こっちにも気を配るべきじゃないのか?」と皮肉ってるようにも聞こえる。
王も察したのだろう、一瞬眉を顰めたがすぐさま元の顔を取り戻し、
「それもそうだな。だが、今宵はロード伯夫妻の披露も兼ねた宴、ロード伯も今夜は護衛の任から外すこととし、ファーストダンスも其方らに託すこととする。互いにパートナーの手を取り、存分に踊るが良い」
と宣った。
「さあ、マリーローズ」
とアベルが初めてみる蕩ける笑顔で手を差し出すが、
(いやいや、ふざけるのはそのお髭だけにして?サンタクロースの失敗版みたいな王様!)
マリーローズはブレなかった。
その手を取らずに、
「せっかくこのような場を設けていただいたのに申し訳ありません、私は踊れませんのでファーストダンスは他の方でお願い致します」
と丁寧に頭を下げた。
「なっ?!」
「マリーローズ!式の前にあんなに練習したじゃないか!!」
目を剥く国王とアベルを前に、マリーローズはルイスの手元から一歩も離れない。
「何故じゃ?今の仕草をみる限り、足を痛めてるわけではなさそうだが_…、」
「そうだ!君が邸で怪我をしたことなどないはずだ!」
「はい。足を痛めているわけではございません。そしてロード伯?一応同じ邸にいてもほとんど顔も合わせずに過ごしているのですから、私の様子など知らなくて当然でございましょう?」
最初の台詞こそ貼りついた笑みを浮かべていたが、後に続くロード伯への言葉は表情も含め実に冷ややかで、広間の空気を凍てつかせた。
蛇に睨まれた両生類のようになったアベルの横で、たかだか伯爵家の小娘にここまではっきりと拒絶されると思わなかったのだろう、王も固まっていた。
「やっぱりね……」
「そりゃそうよ、あんな結婚式じゃ…、」
「形だけという噂はやっぱり本当のようね」
周囲もヒソヒソと言い出したのに気づいた王妃が慌てて間に入ると、
「まあ!ロード伯夫人は緊張してしまったのね!ロード伯は今日のことをきちんと説明していなかったのでしょう?こんなことなら邸から一緒に来させるべきだったわ。ごめんなさいねロード伯夫人、王女が出来るだけロード伯を側に置いておきたがるものだから……」
(フォローになってませんよ、王妃さま……)
実際この言葉に周囲が色めきたった。
前世でいう「只今からタイムセールを開始します!」と言われた時のように__つまり、悪い意味で。
今の王妃の対応で「やっぱりロード伯の結婚は王女の側にいる為の偽装で、夫人はとことん軽んじられている」という証明完了だ。
さすが元凶の母親、と言いたいとこだけどこの人、王女と血は繋がってないんだよね。
先の王妃は既に亡くなっていて、王妃と国王の子はあの王女のみ。
王子は二人の側妃からひとりずつ生まれていて、第一王子を生んだ方が王妃になった。
つまり、目の前の方は後妻であの王女の義母にあたるわけだが、今のをみる限り仲はあまり良くなさそう。
(王は姫だけを猫可愛いがりしてるって言ってたから、無理ないか)
だが、おかげでこっちはやりやすい。
「いいえ?確かに緊張はしていますがそれだけが理由ではありません」
確かに結婚式の準備期間にはダンスの練習も沢山した。
ダンスの講師より、「実際の相手とやった方が確かだろう?」というアベルの言葉に従って、互いに手を取り合って。
運動神経の良いアベルはリードも上手くて、マリーローズもかなり上手になった。
苦戦したステップも、今なら難なく踊れるだろうことをこの心と体は覚えている。
__けど、今はその相手はアンタじゃない。
「結婚式での出来事があまりにショックで、覚えたステップをすっかり忘れてしまいましたの」
結婚式で手を離した奴の手なんか、およびではない。
「っ、」
これには王妃も絶句した。
「あの後もロード伯が邸に帰ってくることはなく、帰ってきた時は“あんなことは朝の挨拶を忘れたのと変わらないことだ“という態度で_…それを呑み込むのが当たり前だと。私、ショックで……、」
と泣きそうな顔(泣けないけど)を扇子で隠すようにして顔を逸らす。
それが合図だったように、
「お嬢様、やはり無理をしてこられたのがいけませんでしたね。こちらへ、」
とルイスが動いて連れ出そうとしたが、ここでいち早くアベルのフリーズが溶けた。
慣れてきたのかもしれない。
「ま、待て!マリーローズ、体調が悪いなら特別にお借りした貴賓用の休憩室がある!そこに連れていく!!」
「それには及びません」
この男と休憩室なんて、嫌な想像しか浮かばない。
だが腐っても為政者のフリーズも溶けてしまったようで、
「いや、休んでいくといい」
「そうね、話しあった方がいいわ」
と有無を言わさない口調で言ってきた。
舌打ちを堪える私の横で、
「ではお連れします」
と返したのはルイスで、
「王宮の奥側は一定以上の身分がなければ入れない。それに彼女の夫は俺だ」
と言うアベルに、
「私は外国人ですが、実家の爵位は騎士伯以上です。セントレイ伯爵もよくご存知だからこそお嬢様のエスコートを私に任されたのです。何か問題でも?」
と切り返して黙らせた。
「っ__付いて来たければ勝手にしろ!マリーローズ、手をこちらへ」
仕方なしにちょこっと(あくまでほんのちょこっと!)似非騎士の手に指先を乗せると、颯爽と歩き出すアベルとピタッと後ろに張り付いたルイスに付き添われて私は広間を離れた。
広間を出て廊下を歩き出すと、音も無くハンナが合流した。
これは予め打ち合わせしておいたことだ。
もし広間を離れて別室に連れて行かれるような事があれば、必ずついてきてもらうこと。
「……呼んでいないぞ」
と唸るように言うアベルに、
「私に命令出来る主人はお嬢様だけです。それに、具合の悪くなったお嬢様を介抱できるのも私だけです」
ハンナはいつも通りの対応で、アベルは無言を貫いた。
動きにくいドレスで十五分ほど歩いた先で、明らかに煌びやかすぎる扉の前でアベルは立ち止まった。
「君たちはここまでだ。扉の前で待機していろ」
とハンナとルイスに命じた。
「なんですって?!」
いきり立つハンナと違い、ルイスは何も言わずに扉を観察する。
「ここには高貴な身分の方がおられる。わけあって今は人前に姿を見せられないのだがマリーローズ、君と話したいそうだ。私と二人きりではないので安心すると良い」
「わかりました。この件に関してだけは譲歩いたしましょう」
とルイスが引いたので、ハンナも察したのか不承不承それに倣った。
「さあ、マリーローズ」
そう手を取られて入った部屋の中には、予想通りの人物がいた。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
すみません、タイトル思いっきりふざけました……💦
&
まだまだ雛形だけど漸く完結(他キャラ視点閑話とか多分続くけど💧)が見えて来ました!
水分とって休む/寝る で大分回復しました。
万全ではないですが正直、これが脳内に残ったままだと脳が寝ないんです、吐き出さないと。だから書きます。
存外、ここに至るまで長くかかってしまって申し訳ありません!
個別に返信ができない状態なのでこちらから失礼します!
本っ当に沢山の「休んでください」「〇〇摂取してください」「回復と続き待ってます」他、心配や励ましのお言葉、アドバイスありがとうございました!
もの凄く元気づけられましたし回復アイテム等参考にさせていただきました!いただいたエールで動いてます。
ここから先も更新時間や文字数にバラつきがあると思いますが、引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m!
*また、《承認不要です》とコメントくださっている方の分は作者任意でなく自動承認とさせていただきますので、時間差ありで承認されますヽ(´▽`)
ルイスは貴族の出だと聞いてはいたが、ガーネット伯爵という家はマリーローズの記憶にない。
外国人だと言っていたから、他国の貴族家なんだろう。
広間はざわりとなったが、カイゼル侯爵家とセントレイ伯爵家が娘を守るように睨みを利かせたのと、一瞬後にはルイスの美貌に目が眩んだようで、視線を集めてはいるものの、好奇心が勝って嘲笑する人間は見当たらない。
ヒソヒソと「あの美丈夫はどなた?」と言い合っているみたいだが、あいにく誰も正体はわからないらしい。
カールも見たことがないと言っていたし、外国から来てすぐセントレイ伯爵家に雇われたってこと?
(良い家の出っぽいのに、物見遊山とかしなかったのかしら?)
エスコートする仕草からして、育ちが良いのはよくわかる。
セントレイ伯爵も「確かに、ルイスならば問題ないが……」と言葉を濁してはいたが一切反対せず許可したし、この男性に限って路銀がないとかそんな事はあり得ない__ように見える。たぶん。
(一体何者なのかしら?)
小説の記憶を探っても、この騎士は出て来ない。
カールとファナを前にしたら“よくよく考えれば幼い頃から家にいた人たち“だったと思い出したり、“言われてみれば“と記憶を探ると確かにそんな記憶があるな、という感じだった前世社畜はだんだんマリーローズの記憶と融合しつつあり、この世界でマリーローズとして生きてきた知識や振る舞いも難しくなくなってきた。
異世界に転生や転移してきた場合、その世界の言語が話せはするけど読み書きが出来ない__なんてオチもあったりするが、自分には当てはまらなかったようだ。
自分とルイスを両家の当主夫妻が隠すように立ってくれているので、視線は気にならない。
もっともこの中で一番背の高いルイスは身長が頭ひとつ分抜けているので顔だけ見せびらかしている状態だが、本人は気にならないらしい。
因みにアベルの姿は見当たらない。
(夜会に出ない王女の護衛から抜けて、ってどのタイミングで来るのかしら?)
そんな事を思っているうちに国王の入場が告げられ、そのお付きの中にアベルの姿が見える。
(やっぱり国王のお気に入りなのね……まあ偽装結婚してまで王女を守ってくれる騎士なんてそうそういないから当たり前か)
護衛騎士は憧れの職業ではあるが、急な呼び出しが多く、勤務時間もバラバラなうえ長時間拘束されることもあるため、貴族令嬢の結婚相手としては微妙なところだ。
等級の高い騎士ほど給与も高いので玉の輿狙いの女性には絶好のターゲットだが、アベルの場合顔だけでそれなりの相手が釣れそうな見栄えの良さだ。
(そりゃ、王様もお姫様も連れて歩きたがるわよね……)
今自分の隣には負けない美形がいるし、それがなくともあの似非騎士は生理的に受け付けないが。
爵位まで授けられている大人なのに、どうしてあそこまでズレているのか……いや、護衛対象が非常識だからか?
などと考えていたらいつの間にか王の挨拶が終わっていたらしく、
「……と、いうわけでアベル・ロード伯、並びにロード伯夫人マリーローズ、前へ!」
という言葉が続き、
「えっ…」
と小さく声を上げるマリーローズの目の前の視界が一気に開けた。
「この二人が夫婦となったことを祝福してほしい」
とほざいた国王のせいで、国王の入場からは僅かにマリーローズの姿が見える程度の隙間を空けていた両親のさらに奥から扇子越しにしか広間の様子を見ていなかったマリーローズが、いきなりその場の中心に引っ張り出されたのだ。
当然、周囲の視線がマリーローズに集中する。
「…っ…!」
(あの王と姫と似非騎士……!よくもやってくれたわね!?)
そう心中で毒づいていると、「大丈夫です、お護りします」と横にいたルイスが私の手をとり、広間の中心へとエスコートする。
国王とその横に立つ似非騎士の前にルイスと共に着くと国王は訝しげに、
「其方は?」
とルイスを誰何するが、
「お嬢様の護衛をお父君であるセントレイ伯爵より命じられたものです。マリーローズ様にも護衛は必要ですので」
と涼しい顔で受け流した。
取りようによっては「アンタらは王女の護衛しか気にしてないみたいだが、こっちにも気を配るべきじゃないのか?」と皮肉ってるようにも聞こえる。
王も察したのだろう、一瞬眉を顰めたがすぐさま元の顔を取り戻し、
「それもそうだな。だが、今宵はロード伯夫妻の披露も兼ねた宴、ロード伯も今夜は護衛の任から外すこととし、ファーストダンスも其方らに託すこととする。互いにパートナーの手を取り、存分に踊るが良い」
と宣った。
「さあ、マリーローズ」
とアベルが初めてみる蕩ける笑顔で手を差し出すが、
(いやいや、ふざけるのはそのお髭だけにして?サンタクロースの失敗版みたいな王様!)
マリーローズはブレなかった。
その手を取らずに、
「せっかくこのような場を設けていただいたのに申し訳ありません、私は踊れませんのでファーストダンスは他の方でお願い致します」
と丁寧に頭を下げた。
「なっ?!」
「マリーローズ!式の前にあんなに練習したじゃないか!!」
目を剥く国王とアベルを前に、マリーローズはルイスの手元から一歩も離れない。
「何故じゃ?今の仕草をみる限り、足を痛めてるわけではなさそうだが_…、」
「そうだ!君が邸で怪我をしたことなどないはずだ!」
「はい。足を痛めているわけではございません。そしてロード伯?一応同じ邸にいてもほとんど顔も合わせずに過ごしているのですから、私の様子など知らなくて当然でございましょう?」
最初の台詞こそ貼りついた笑みを浮かべていたが、後に続くロード伯への言葉は表情も含め実に冷ややかで、広間の空気を凍てつかせた。
蛇に睨まれた両生類のようになったアベルの横で、たかだか伯爵家の小娘にここまではっきりと拒絶されると思わなかったのだろう、王も固まっていた。
「やっぱりね……」
「そりゃそうよ、あんな結婚式じゃ…、」
「形だけという噂はやっぱり本当のようね」
周囲もヒソヒソと言い出したのに気づいた王妃が慌てて間に入ると、
「まあ!ロード伯夫人は緊張してしまったのね!ロード伯は今日のことをきちんと説明していなかったのでしょう?こんなことなら邸から一緒に来させるべきだったわ。ごめんなさいねロード伯夫人、王女が出来るだけロード伯を側に置いておきたがるものだから……」
(フォローになってませんよ、王妃さま……)
実際この言葉に周囲が色めきたった。
前世でいう「只今からタイムセールを開始します!」と言われた時のように__つまり、悪い意味で。
今の王妃の対応で「やっぱりロード伯の結婚は王女の側にいる為の偽装で、夫人はとことん軽んじられている」という証明完了だ。
さすが元凶の母親、と言いたいとこだけどこの人、王女と血は繋がってないんだよね。
先の王妃は既に亡くなっていて、王妃と国王の子はあの王女のみ。
王子は二人の側妃からひとりずつ生まれていて、第一王子を生んだ方が王妃になった。
つまり、目の前の方は後妻であの王女の義母にあたるわけだが、今のをみる限り仲はあまり良くなさそう。
(王は姫だけを猫可愛いがりしてるって言ってたから、無理ないか)
だが、おかげでこっちはやりやすい。
「いいえ?確かに緊張はしていますがそれだけが理由ではありません」
確かに結婚式の準備期間にはダンスの練習も沢山した。
ダンスの講師より、「実際の相手とやった方が確かだろう?」というアベルの言葉に従って、互いに手を取り合って。
運動神経の良いアベルはリードも上手くて、マリーローズもかなり上手になった。
苦戦したステップも、今なら難なく踊れるだろうことをこの心と体は覚えている。
__けど、今はその相手はアンタじゃない。
「結婚式での出来事があまりにショックで、覚えたステップをすっかり忘れてしまいましたの」
結婚式で手を離した奴の手なんか、およびではない。
「っ、」
これには王妃も絶句した。
「あの後もロード伯が邸に帰ってくることはなく、帰ってきた時は“あんなことは朝の挨拶を忘れたのと変わらないことだ“という態度で_…それを呑み込むのが当たり前だと。私、ショックで……、」
と泣きそうな顔(泣けないけど)を扇子で隠すようにして顔を逸らす。
それが合図だったように、
「お嬢様、やはり無理をしてこられたのがいけませんでしたね。こちらへ、」
とルイスが動いて連れ出そうとしたが、ここでいち早くアベルのフリーズが溶けた。
慣れてきたのかもしれない。
「ま、待て!マリーローズ、体調が悪いなら特別にお借りした貴賓用の休憩室がある!そこに連れていく!!」
「それには及びません」
この男と休憩室なんて、嫌な想像しか浮かばない。
だが腐っても為政者のフリーズも溶けてしまったようで、
「いや、休んでいくといい」
「そうね、話しあった方がいいわ」
と有無を言わさない口調で言ってきた。
舌打ちを堪える私の横で、
「ではお連れします」
と返したのはルイスで、
「王宮の奥側は一定以上の身分がなければ入れない。それに彼女の夫は俺だ」
と言うアベルに、
「私は外国人ですが、実家の爵位は騎士伯以上です。セントレイ伯爵もよくご存知だからこそお嬢様のエスコートを私に任されたのです。何か問題でも?」
と切り返して黙らせた。
「っ__付いて来たければ勝手にしろ!マリーローズ、手をこちらへ」
仕方なしにちょこっと(あくまでほんのちょこっと!)似非騎士の手に指先を乗せると、颯爽と歩き出すアベルとピタッと後ろに張り付いたルイスに付き添われて私は広間を離れた。
広間を出て廊下を歩き出すと、音も無くハンナが合流した。
これは予め打ち合わせしておいたことだ。
もし広間を離れて別室に連れて行かれるような事があれば、必ずついてきてもらうこと。
「……呼んでいないぞ」
と唸るように言うアベルに、
「私に命令出来る主人はお嬢様だけです。それに、具合の悪くなったお嬢様を介抱できるのも私だけです」
ハンナはいつも通りの対応で、アベルは無言を貫いた。
動きにくいドレスで十五分ほど歩いた先で、明らかに煌びやかすぎる扉の前でアベルは立ち止まった。
「君たちはここまでだ。扉の前で待機していろ」
とハンナとルイスに命じた。
「なんですって?!」
いきり立つハンナと違い、ルイスは何も言わずに扉を観察する。
「ここには高貴な身分の方がおられる。わけあって今は人前に姿を見せられないのだがマリーローズ、君と話したいそうだ。私と二人きりではないので安心すると良い」
「わかりました。この件に関してだけは譲歩いたしましょう」
とルイスが引いたので、ハンナも察したのか不承不承それに倣った。
「さあ、マリーローズ」
そう手を取られて入った部屋の中には、予想通りの人物がいた。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
すみません、タイトル思いっきりふざけました……💦
&
まだまだ雛形だけど漸く完結(他キャラ視点閑話とか多分続くけど💧)が見えて来ました!
水分とって休む/寝る で大分回復しました。
万全ではないですが正直、これが脳内に残ったままだと脳が寝ないんです、吐き出さないと。だから書きます。
存外、ここに至るまで長くかかってしまって申し訳ありません!
個別に返信ができない状態なのでこちらから失礼します!
本っ当に沢山の「休んでください」「〇〇摂取してください」「回復と続き待ってます」他、心配や励ましのお言葉、アドバイスありがとうございました!
もの凄く元気づけられましたし回復アイテム等参考にさせていただきました!いただいたエールで動いてます。
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