上 下
24 / 41

23 修羅場の前

しおりを挟む
夜会に着ていくドレスはフォレストグリーンを選んだ。
フォレストグリーンの一枚生地で作られたものだったら大人っぽすぎたろうが、これはスカート部分に薄いオーガンジーを重ね合わせたもので、動くたびにふわりと広がる感じがとても綺麗で即決だった。
デビュタントのようなドレスだがマリーローズだってデビューしてからまだ一年、見た目の少女っぽさもばっちりなのでとてもよく似合っている。

エスコートをかって出たルイスが黒髪黒目なので、トップスには黒のジレ(短くしたチョッキみたいなやつ)を羽織った。
胸元がチューブトップのような肩出しドレスなので露出が抑えられてちょうど良い。
胸元のブローチも黒にして、パートナーとの相性もばっちりだ。
ルイスは騎士の礼装で基本的に黒だが、胸元のチーフやカフス等の差し色にフォレストグリーンを入れてもらい、胸元のブローチもフォレストグリーンだ。

名目上は夫婦(なってないけど)のお披露目ということになっているので、ルイスと入場した後王女の護衛の任から一旦離れたアベルが迎えに来ることになっている。

嫌だけど。

うん、嫌だけど。

ものすごーく嫌だけど仕方ない、国王が“新しい騎士伯夫妻を祝福したい“とかほz、いや宣ってるそうだから(さすがあの王女の製造元!)

どうせ紹介終わったらあの似非騎士は王女の所に戻るのだろうし、このドレスでルイスと並んでいる所を見せれば夫婦仲なんて破綻しているのは一目瞭然だろう。



一方のアベルは、漸く夜会でマリーローズの手が取れると(経緯はどうあれ)喜んでいたが、父親たちから「いいか、決してマリーローズを怒らせるな」としつこく言い聞かされていた。
「わかっていますよ父上。それに今回の夜会ではマリーローズと合流した後護衛の任に戻る事はありません。親しくしている者たちにマリーローズを紹介してまわるつもりです」
「それは_…マリーローズ嬢が良しとしてくれればいいが、難しいだろうな」
「まあ覚悟しておくべきでしょうな」

“あの状態のマリーローズが大人しくアベルの言うままになるはずがない“と父親たちは確信していた。
そして両家の母親たちはそれを全力で援護するだろう。
とりあえず夜会で“離婚“という単語が飛び交う事態だけは避けたい父親たちは、
「いいか?!欲をかくな!とにかく挨拶だけでいい、挨拶だけ済ませたらマリーローズのことは夫人たちに任せろ!」
と諭す父親に、
「何故です?この夜会は」
やはりズレた反応をするアベルだが、マリーローズだけでなく妻も怖い男たちは続けた。
「お前がどう取ってるか知らんが、この夜会は私たち侯爵家とセントレイ伯爵家をも軽視したものだ。こちらが最低限の礼儀ですませても文句は言わせん」
「貴方が王女の婿でも愛妾狙いでも最早構わん、娘の前で王女の名前を出すな、王家を称賛するな!やりたきゃ他でやってくれ。でないと……」
「でないと?」
「「広間のど真ん中で、離婚宣言されるぞ」」

こう滔々と諭した父親たちの言葉がアベルに届いたかというと結果、届いてはいた__表面上は。

実直とはよく言ったもので、この男にその言葉の真意とか裏を読み取るとか、そんな芸当は不可能だったのだ。




*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*


すみません、この先まで書いてから投稿したかったのですが熱中症なのか風邪なのか、じわじわ発熱してダウン中です。
復活したらスパートかけますので少々お待ちをm(_ _)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

連帯責任って知ってる?

よもぎ
ファンタジー
第一王子は本来の婚約者とは別の令嬢を愛し、彼女と結ばれんとしてとある夜会で婚約破棄を宣言した。その宣言は大騒動となり、王子は王子宮へ謹慎の身となる。そんな彼に同じ乳母に育てられた、乳母の本来の娘が訪ねてきて――

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!

天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。 焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。 一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。 コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。 メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。 男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。 トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。 弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。 ※変な話です。(笑)

処理中です...