21 / 41
20 手紙 その5
しおりを挟む
別に似非騎士の脳天に叩きつけたわけではない(叩きつけても前世のバラエティタレントくらいの体力があれば多分問題ない)。
頭に置いた一輪挿しを横から薙ぎ払って壁に叩きつけて割っただけだ。
水と破片くらいは被ったろうが、直接全力で脳天を打たれなかっただけ感謝して欲しい。
紙とはいえ結構重いから、コレ。
「ご覧いただいた通り、ロード伯には女性に対してというか、対人関係全てに関してかは分かりませんが基本的に欠如してる部分がございます。まともな結婚生活が出来る方ではありません。ただでさえ状況が特殊ですから、王女との件も含め丸ごと知らぬフリを決めこんでくれる女性と契約婚をすべきです」
口調は落ち着いているが、そう言うマリーローズはよくしなるそれを手で弄んでいるので、親たちとロード家の使用人は口を引き結んだままだ。
ハンナはじめマリーローズのお付き(?)達は「おぉー」と拍手していたが。
「そのようだな。しかし、それは何だ?」
どうにか言葉を絞りだしたカイゼル侯爵に、マリーローズは至って平坦に答えた。
「先ほど申し上げたでしょう?悪意の手紙と格闘していたと。それらを貼り合わせて作りましたの。考えなしのお馬鹿さんの頭を張り倒す専用扇子、略してハリセンですわ」
と。
この世界には“ハリセン“なんて言葉はないからこじつけだけど、意味は合ってるよね?
張り倒す用扇子だから、略してハリセン。
そこで悩んだのが材料だ。
貴族の使う上質な紙をこんなものに使って良いものか?と。
けど安い紙だと強度が心配だし、あまり重くしてしまうと振り回しづらいし__、と考えていたところに目に入ったのが大量の要らない手紙。
送って来たのは貴族だから、紙も上等。
「よし、これで行こう」
と、軽くて芯が丈夫な今から張って仕上げる工程中のものを売ってもらい、その芯にこの手紙を貼り合わせた。
これならいくら叩きつけても破れても、気にならない……というか、ぶっちゃけ不幸の手紙と元凶ともども成敗した気分ですっきりした。
「張り倒す専用……?」
と眉根を寄せる侯爵の横で喝采をあげたのは侯爵夫人だ。
「素晴らしいわ、マリーローズ!貴女、扇術を習ったらどうかしら?」
と拍手する夫人に、
「なら私がお教えしましょう、扇術ならば心得があります」
とルイスが流れるように続く。
「え“」
なんでそんなに協力的なの??怒られるかと思った(その為の反論だって考えてた)のに。
「あなた!マリーローズに専用の“ハリセン“を贈りましょう!侯爵家の御用達職人に作らせますわ!」
いや、そんな上等なのは必要ないんですってば。コレ、使い捨てのつもりで作ってんだから。
「まあ……そこは好きにしなさい」
「へ?」
まさかの許可が降りた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
“結婚してからも急な呼び出しがあると思う。流石に結婚式にはないようにするつもりだが、もしそうなってもロード伯をあまり責めないでやって欲しい“と言われてはいたから、責めるわけにもいかず、代わりに披露宴のホスト役を務めたが_…あれだけでは足りなかったか。まさかここまで女性心に疎かったとは。
さらには「夫人には知られたくないというか、、時がきたら自分で話したいそうだから黙って見守ってやってくれ」
と言い含められていたから、つい「新婦まで披露宴に出ないなんて」と責める言葉を吐いてしまった。
本人の言った通り、マリーローズの落ち度ではないのに。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
親達の心に押し寄せる後悔など知らず、マリーローズはマリアにタオルで雫を拭われているアベルを見下ろす。
タオルで拭われていることに気付いているのかいないのか、
「気に入らなかった、か……?」
とだけ呟く。
「気に入る、気に入らない以前の問題です。ロード伯は私が“王女殿下が好きそうだから“と人を襲う危険のある食肉植物を渡したらそのまま王女殿下に渡すのですか?」
「そのような危険な植物がお好きだと聞いたことはないが、君がそうしたいな「てぇい!」らっ?!」
今度は侯爵夫人の扇子が先ほどの手刀と同じところに炸裂した。
「育て方を間違えたわね。離婚には全面的に同意・協力しましょう」
(__もしかして、マリアさんの手刀って侯爵夫人仕込み?)
と考えていたところにタイミングが良いのか悪いのか、王家の使いがやって来た。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
手紙の使い道、コレでした(笑)
昨日も感想祭りありがとうございます!
すみません、今日はここまででギリですm(_ _)m💧
頭に置いた一輪挿しを横から薙ぎ払って壁に叩きつけて割っただけだ。
水と破片くらいは被ったろうが、直接全力で脳天を打たれなかっただけ感謝して欲しい。
紙とはいえ結構重いから、コレ。
「ご覧いただいた通り、ロード伯には女性に対してというか、対人関係全てに関してかは分かりませんが基本的に欠如してる部分がございます。まともな結婚生活が出来る方ではありません。ただでさえ状況が特殊ですから、王女との件も含め丸ごと知らぬフリを決めこんでくれる女性と契約婚をすべきです」
口調は落ち着いているが、そう言うマリーローズはよくしなるそれを手で弄んでいるので、親たちとロード家の使用人は口を引き結んだままだ。
ハンナはじめマリーローズのお付き(?)達は「おぉー」と拍手していたが。
「そのようだな。しかし、それは何だ?」
どうにか言葉を絞りだしたカイゼル侯爵に、マリーローズは至って平坦に答えた。
「先ほど申し上げたでしょう?悪意の手紙と格闘していたと。それらを貼り合わせて作りましたの。考えなしのお馬鹿さんの頭を張り倒す専用扇子、略してハリセンですわ」
と。
この世界には“ハリセン“なんて言葉はないからこじつけだけど、意味は合ってるよね?
張り倒す用扇子だから、略してハリセン。
そこで悩んだのが材料だ。
貴族の使う上質な紙をこんなものに使って良いものか?と。
けど安い紙だと強度が心配だし、あまり重くしてしまうと振り回しづらいし__、と考えていたところに目に入ったのが大量の要らない手紙。
送って来たのは貴族だから、紙も上等。
「よし、これで行こう」
と、軽くて芯が丈夫な今から張って仕上げる工程中のものを売ってもらい、その芯にこの手紙を貼り合わせた。
これならいくら叩きつけても破れても、気にならない……というか、ぶっちゃけ不幸の手紙と元凶ともども成敗した気分ですっきりした。
「張り倒す専用……?」
と眉根を寄せる侯爵の横で喝采をあげたのは侯爵夫人だ。
「素晴らしいわ、マリーローズ!貴女、扇術を習ったらどうかしら?」
と拍手する夫人に、
「なら私がお教えしましょう、扇術ならば心得があります」
とルイスが流れるように続く。
「え“」
なんでそんなに協力的なの??怒られるかと思った(その為の反論だって考えてた)のに。
「あなた!マリーローズに専用の“ハリセン“を贈りましょう!侯爵家の御用達職人に作らせますわ!」
いや、そんな上等なのは必要ないんですってば。コレ、使い捨てのつもりで作ってんだから。
「まあ……そこは好きにしなさい」
「へ?」
まさかの許可が降りた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
“結婚してからも急な呼び出しがあると思う。流石に結婚式にはないようにするつもりだが、もしそうなってもロード伯をあまり責めないでやって欲しい“と言われてはいたから、責めるわけにもいかず、代わりに披露宴のホスト役を務めたが_…あれだけでは足りなかったか。まさかここまで女性心に疎かったとは。
さらには「夫人には知られたくないというか、、時がきたら自分で話したいそうだから黙って見守ってやってくれ」
と言い含められていたから、つい「新婦まで披露宴に出ないなんて」と責める言葉を吐いてしまった。
本人の言った通り、マリーローズの落ち度ではないのに。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
親達の心に押し寄せる後悔など知らず、マリーローズはマリアにタオルで雫を拭われているアベルを見下ろす。
タオルで拭われていることに気付いているのかいないのか、
「気に入らなかった、か……?」
とだけ呟く。
「気に入る、気に入らない以前の問題です。ロード伯は私が“王女殿下が好きそうだから“と人を襲う危険のある食肉植物を渡したらそのまま王女殿下に渡すのですか?」
「そのような危険な植物がお好きだと聞いたことはないが、君がそうしたいな「てぇい!」らっ?!」
今度は侯爵夫人の扇子が先ほどの手刀と同じところに炸裂した。
「育て方を間違えたわね。離婚には全面的に同意・協力しましょう」
(__もしかして、マリアさんの手刀って侯爵夫人仕込み?)
と考えていたところにタイミングが良いのか悪いのか、王家の使いがやって来た。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
手紙の使い道、コレでした(笑)
昨日も感想祭りありがとうございます!
すみません、今日はここまででギリですm(_ _)m💧
4,819
お気に入りに追加
6,659
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる