〈完結・12/5補完あとがき追加〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫

文字の大きさ
上 下
21 / 49

20 手紙 その5

しおりを挟む
別に似非騎士の脳天に叩きつけたわけではない(叩きつけても前世のバラエティタレントくらいの体力があれば多分問題ない)。
頭に置いた一輪挿しを横から薙ぎ払って壁に叩きつけて割っただけだ。
水と破片くらいは被ったろうが、直接全力で脳天を打たれなかっただけ感謝して欲しい。
紙とはいえ結構重いから、コレ。

「ご覧いただいた通り、ロード伯には女性に対してというか、対人関係全てに関してかは分かりませんが基本的に欠如してる部分がございます。まともな結婚生活が出来る方ではありません。ただでさえ状況が特殊ですから、王女との件も含め丸ごと知らぬフリを決めこんでくれる女性と契約婚をすべきです」
口調は落ち着いているが、そう言うマリーローズはよくしなるそれを手で弄んでいるので、親たちとロード家の使用人は口を引き結んだままだ。
ハンナはじめマリーローズのお付き(?)達は「おぉー」と拍手していたが。

「そのようだな。しかし、それは何だ?」
どうにか言葉を絞りだしたカイゼル侯爵に、マリーローズは至って平坦に答えた。
「先ほど申し上げたでしょう?悪意の手紙と格闘していたと。それらを貼り合わせて作りましたの。考えなしのお馬鹿さんの頭を張り倒す専用扇子、略してハリセンですわ」
と。

この世界には“ハリセン“なんて言葉はないからこじつけだけど、意味は合ってるよね?
倒す用だから、略してハリセン。

そこで悩んだのが材料だ。
貴族の使う上質な紙をこんなものに使って良いものか?と。
けど安い紙だと強度が心配だし、あまり重くしてしまうと振り回しづらいし__、と考えていたところに目に入ったのが大量の要らない手紙。
送って来たのは貴族だから、紙も上等。
「よし、これで行こう」
と、軽くて芯が丈夫な今から張って仕上げる工程中のものを売ってもらい、その芯にこの手紙を貼り合わせた。
これならいくら叩きつけても破れても、気にならない……というか、ぶっちゃけ不幸の手紙と元凶ともども成敗した気分ですっきりした。

「張り倒す専用……?」
と眉根を寄せる侯爵の横で喝采をあげたのは侯爵夫人だ。
「素晴らしいわ、マリーローズ!貴女、扇術を習ったらどうかしら?」
と拍手する夫人に、
「なら私がお教えしましょう、扇術ならば心得があります」
とルイスが流れるように続く。

「え“」
なんでそんなに協力的なの??怒られるかと思った(その為の反論だって考えてた)のに。
「あなた!マリーローズに専用の“ハリセン“を贈りましょう!侯爵家うちの御用達職人に作らせますわ!」
いや、そんな上等なのは必要ないんですってば。コレ、使い捨てのつもりで作ってんだから。
「まあ……そこは好きにしなさい」
「へ?」
まさかの許可が降りた。



*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*

“結婚してからも急な呼び出しがあると思う。流石に結婚式にはないようにするつもりだが、もしそうなってもロード伯をあまり責めないでやって欲しい“と言われてはいたから、責めるわけにもいかず、代わりに披露宴のホスト役を務めたが_…あれだけでは足りなかったか。まさかここまで女性おんな心に疎かったとは。

さらには「夫人には知られたくないというか、、時がきたら自分で話したいそうだから黙って見守ってやってくれ」
と言い含められていたから、つい「新婦まで披露宴に出ないなんて」と責める言葉を吐いてしまった。
本人の言った通り、マリーローズの落ち度ではないのに。

*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*

親達の心に押し寄せる後悔など知らず、マリーローズはマリアにタオルで雫を拭われているアベルを見下ろす。
タオルで拭われていることに気付いているのかいないのか、
「気に入らなかった、か……?」
とだけ呟く。
「気に入る、気に入らない以前の問題です。ロード伯は私が“王女殿下が好きそうだから“と人を襲う危険のある食肉植物を渡したらそのまま王女殿下に渡すのですか?」
「そのような危険な植物がお好きだと聞いたことはないが、君がそうしたいな「てぇい!」らっ?!」
今度は侯爵夫人の扇子が先ほどの手刀と同じところに炸裂した。
「育て方を間違えたわね。離婚には全面的に同意・協力しましょう」

(__もしかして、マリアさんの手刀って侯爵夫人仕込み?)
と考えていたところにタイミングが良いのか悪いのか、王家の使いがやって来た。




*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*


手紙の使い道、コレでした(笑)
昨日も感想祭りありがとうございます!
すみません、今日はここまででギリですm(_ _)m💧

しおりを挟む
感想 784

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】貴方の傍に幸せがないのなら

なか
恋愛
「みすぼらしいな……」  戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。  彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。  彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。  望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。  なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。  妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。  そこにはもう、私の居場所はない。  なら、それならば。  貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。        ◇◇◇◇◇◇  設定ゆるめです。  よろしければ、読んでくださると嬉しいです。

わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい

よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。 王子の答えはこうだった。 「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」 え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?! 思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。 ショックを受けたリリアーナは……。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

処理中です...