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20 手紙 その5

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別に似非騎士の脳天に叩きつけたわけではない(叩きつけても前世のバラエティタレントくらいの体力があれば多分問題ない)。
頭に置いた一輪挿しを横から薙ぎ払って壁に叩きつけて割っただけだ。
水と破片くらいは被ったろうが、直接全力で脳天を打たれなかっただけ感謝して欲しい。
紙とはいえ結構重いから、コレ。

「ご覧いただいた通り、ロード伯には女性に対してというか、対人関係全てに関してかは分かりませんが基本的に欠如してる部分がございます。まともな結婚生活が出来る方ではありません。ただでさえ状況が特殊ですから、王女との件も含め丸ごと知らぬフリを決めこんでくれる女性と契約婚をすべきです」
口調は落ち着いているが、そう言うマリーローズはよくしなるそれを手で弄んでいるので、親たちとロード家の使用人は口を引き結んだままだ。
ハンナはじめマリーローズのお付き(?)達は「おぉー」と拍手していたが。

「そのようだな。しかし、それは何だ?」
どうにか言葉を絞りだしたカイゼル侯爵に、マリーローズは至って平坦に答えた。
「先ほど申し上げたでしょう?悪意の手紙と格闘していたと。それらを貼り合わせて作りましたの。考えなしのお馬鹿さんの頭を張り倒す専用扇子、略してハリセンですわ」
と。

この世界には“ハリセン“なんて言葉はないからこじつけだけど、意味は合ってるよね?
倒す用だから、略してハリセン。

そこで悩んだのが材料だ。
貴族の使う上質な紙をこんなものに使って良いものか?と。
けど安い紙だと強度が心配だし、あまり重くしてしまうと振り回しづらいし__、と考えていたところに目に入ったのが大量の要らない手紙。
送って来たのは貴族だから、紙も上等。
「よし、これで行こう」
と、軽くて芯が丈夫な今から張って仕上げる工程中のものを売ってもらい、その芯にこの手紙を貼り合わせた。
これならいくら叩きつけても破れても、気にならない……というか、ぶっちゃけ不幸の手紙と元凶ともども成敗した気分ですっきりした。

「張り倒す専用……?」
と眉根を寄せる侯爵の横で喝采をあげたのは侯爵夫人だ。
「素晴らしいわ、マリーローズ!貴女、扇術を習ったらどうかしら?」
と拍手する夫人に、
「なら私がお教えしましょう、扇術ならば心得があります」
とルイスが流れるように続く。

「え“」
なんでそんなに協力的なの??怒られるかと思った(その為の反論だって考えてた)のに。
「あなた!マリーローズに専用の“ハリセン“を贈りましょう!侯爵家うちの御用達職人に作らせますわ!」
いや、そんな上等なのは必要ないんですってば。コレ、使い捨てのつもりで作ってんだから。
「まあ……そこは好きにしなさい」
「へ?」
まさかの許可が降りた。



*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*

“結婚してからも急な呼び出しがあると思う。流石に結婚式にはないようにするつもりだが、もしそうなってもロード伯をあまり責めないでやって欲しい“と言われてはいたから、責めるわけにもいかず、代わりに披露宴のホスト役を務めたが_…あれだけでは足りなかったか。まさかここまで女性おんな心に疎かったとは。

さらには「夫人には知られたくないというか、、時がきたら自分で話したいそうだから黙って見守ってやってくれ」
と言い含められていたから、つい「新婦まで披露宴に出ないなんて」と責める言葉を吐いてしまった。
本人の言った通り、マリーローズの落ち度ではないのに。

*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*

親達の心に押し寄せる後悔など知らず、マリーローズはマリアにタオルで雫を拭われているアベルを見下ろす。
タオルで拭われていることに気付いているのかいないのか、
「気に入らなかった、か……?」
とだけ呟く。
「気に入る、気に入らない以前の問題です。ロード伯は私が“王女殿下が好きそうだから“と人を襲う危険のある食肉植物を渡したらそのまま王女殿下に渡すのですか?」
「そのような危険な植物がお好きだと聞いたことはないが、君がそうしたいな「てぇい!」らっ?!」
今度は侯爵夫人の扇子が先ほどの手刀と同じところに炸裂した。
「育て方を間違えたわね。離婚には全面的に同意・協力しましょう」

(__もしかして、マリアさんの手刀って侯爵夫人仕込み?)
と考えていたところにタイミングが良いのか悪いのか、王家の使いがやって来た。




*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*


手紙の使い道、コレでした(笑)
昨日も感想祭りありがとうございます!
すみません、今日はここまででギリですm(_ _)m💧

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