〈完結・12/5補完あとがき追加〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫

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14 当事者なのでそういうわけにもいかない。

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理由を語らないくせに、離婚はしたくないと言う。
「はい、ふざけな~い」
といっそハリセンで頭を叩きたいがこの家というか世界にそんなものはない。
原理は貴婦人が持つ扇子と同じだから作るか、特注で。

そんな事を考えてしまうくらい、コイツの態度は煮えきらない。
単に王女に懸想してるとか恋に目が眩んでいるというわけでもないのなら、
「ロード伯が担っている秘密の任務とは、私との結婚に何か関係があるのですか?」
「いや、それは、直接には_…」
と答える目が泳いでいる。
「ならば妻の役は私でなくても良いのでは?」
「それは、駄目だ……」
「ではその任務とやらの内容をひと握りでもお話しください。話せる部分だけで構いませんから」
「話せる部分は……ない」
「では離婚ですね。行きましょう、ハンナ」
「はいお嬢様」
言うなり立ち上がる二人を、モンドが全力で止めにかかる。
「お、お待ちください、奥様っ!どうか、お考え直し、いや、猶予を!!」

「話すことがないのに猶予期間を設けても仕方ないでしょう」
「任務以外にも話すことはあるはずですわ!」
とマリアも参戦してきた。
「そう、例えば?」
「えぇと……、一緒にお出掛けになるとか…_そうですわ!旦那さまに何かおねだりして買っていただくのがよろしいかと!」
「それは良い考えですな!披露宴の埋め合わせにこちらでパーティーをするのもよろしいかと!」

__いや、それどうせ約束してもすっぽかされるやつ、と内心で突っ込む私の前には、
「ドレス選びや買い物なら結婚準備の時に散々したぞ?今から作るのは構わないが、それなら仕立て屋をこの家に呼べばいい」
使用人の必死のフォローを台無しにする主人がいた。

「つくづく、私の主人がお嬢様で良かったですわ」
ハンナがため息を吐く。

そのアベルの足を無言でモンドが踏みつけ、いつの間にかアベルの隣に移動していたマリアはこっそり尻をつねっていた。
アベルは必死に表情に出すまいと耐えていたのでテーブルを挟んだ二人は気付かなかったが、
「まともに話す気がないなら黙って頷いててください」
「モンドさんに同感です」
と二人が両側から(殺気を込めて)耳元で囁いていた。

「ロード伯に何かおねだりしたいとも、一緒に出掛けたいとも思っておりませんのでご心配なく。何なら一生王城に行ったままでも構いませんよ?毎日通うより楽なのでは?」
「……私が帰って来なければ君はここで待っててくれるのか?」
「まさか。何故一生ロード伯を待ってここで朽ちねばならないのです?」
「一生なんて言ってない!私の任務が終わるまで_…」
「具体的にいつですかそれは」
「わからない」
「ハンナ、そこの花瓶を」
「はいお嬢様」
「待、」
待つわけがなく素晴らしい速さで渡されたそれをマリーローズは一切の躊躇いなく目の前の美丈夫に浴びせた。
「モンドさんとマリアさんは避けてください!」
と叫びながら。

二人がさっと離れたのでまともに浴びたのはアベルだけだが、
「その頭は飾りですか?なら次は花でも活けて差し上げましょうか」
「俺は_…そこまで君を怒らせる事をしたのか?」
「ただ“怒らせる“なんてレベルはとっくに突破してますが?妙な薬でも常用してるんですか?」
「おかしな薬を服用していたらすぐにバレて懲戒免職だ、騎士はそんなことはしない」
大真面目に答える似非騎士に(次は脳天に花瓶コレ振り下ろそうかしら)と考えつつ、
「人の神経を逆撫ですることは出来ても察することが出来ないのも、騎士の標準装備ですか?」
「こんなに怒らせるつもりは__その、式の準備中の君は楽しそうだったから」
そりゃ結婚式で置き去りにされるなんて思わなかったからでしょうが。
お陰で国の珍事として未来まで語り継がれそうだわ、この阿呆。

だが、これでも激昂しないということは、マリーローズに情はあるってこと__王女の次に?それとも任務の次?何番目か知らないけど、付き合うの面倒だわ。
「離婚しま「半年、いや、三ヶ月の猶予をいただけませんか!」す」
「お断りします」
「では二ヶ月!」
「お断りします」
「では一ヶ月!一ヶ月間だけいただきたい!この阿h、いや主人を再教育させていただきます!その間奥様には指一本触れさせませんから!」
「__本当にこの人が私に近づかないようにできるんですか?」
「はっ!見送る必要も、出迎える必要もございません!ガードがうちの従僕だけでは不安ということでしたら、ご実家に今回の旨を連絡のうえ手配していただいても構いません!どうか一ヶ月の猶予を!その間奥様はこの邸にいていただくだけでよろしいのです!」
「何を言、ぶっ!」
言いかけたアベルの口元にマリアの裏拳がヒットした。

ちょっと痛そう。
「どうされますか、お嬢様」
「……実家に手紙を書きましょう。では、これで」

一ヶ月あれば、出て行く準備はそれなりに出来そう__さて、何と手紙に書いたものか。

この不毛なやりとりの顛末を。


*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*



すみません、色々ショートして更新遅くなりました。
毎日閲覧やいいね❣️や感想ありがとうございます!
毎日楽しくチェックさせていただいております。
ただ、
感想は確かに自由ですが、明らかにマウントな指示とばしてくるような文章は感想と見做せませんので、あしからずご了承くださいm(_ _)m

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