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11 まどろっこしいのは好みませんので。
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「とりあえず座ってきちんとお話を」
というモンドの提案に、
「あなた方が愚かなこちらのご主人が暴走しないようにきちんと見張ってくださるなら」
とハンナが頷き、一旦全員がソファの席についた。
マリーローズとアベルはもちろん対面で、アベルの隣にモンド、マリーローズの両側にハンナとマリア、そしてアベルの背後に屈強な従僕が二人。
先ほどの三人からひとり減ったが、完全に犯罪者な扱いにアベルが抗議するも「ならば話し合いの余地なしです」とハンナに一刀両断され、「ここはハンナ嬢の言う通りです」とマリアもこちらについたため、アベルは不承不承ながら受け入れた。
因みにハンナの手元には煮えたぎった油諸々を載せたワゴンが置かれたままである。
マリーローズにお茶を出した後は、ご丁寧に膝の上に花瓶を抱えて座っている。
それを苦々しげに見やりながら、
「大体、何故花瓶なんだ?」
とアベルが尋ねると、
「水差しに入っているのはきちんと適温に沸かされたお湯か大事な飲み水です。無駄にしてはいけません。油じゃないだけ感謝してください」
まるで「貴様にかけるのに真水では勿体無い」と言われているようでアベルは閉口したが、問題はその横で一切メイドを咎めず、むしろ積極的に指示しているマリーローズである。
結婚式前と違い、ハンナと同じく軽蔑に染まった瞳でアベルを睥睨している。
先ほどのやりとりといい、まるで人が変わったようなマリーローズにアベルは驚愕を隠せない。
「マリーローズ……」
「何か言いたいことがあるならどうぞ。今ならお聞きしますわ。私も言いたいことがございますので」
僅かに口角をあげたマリーローズにやや安心したアベルは、
「その、すまなかった」
と頭を下げるがこれがまた悪手だった。
「どれに対する謝罪ですの?それ」
心底不思議そうにマリーローズが言い、
「ありすぎて列挙したらキリがないんじゃないですか?まあ、どれも“すまなかった“のひと言で済む範疇は超えていますが」
「いや、俺、、私は君を粗略に扱ったつもりはなくて、」
「__アレが正解だったとでも?」
ハンナが再度花瓶を振りかぶるのを手で制したマリーローズは、
「ではお話はひとつです、離婚してください」
「なっ?!」
「王命での結婚は果たしました、離婚するなとは言われておりません。私はこんな風に扱われる生活は御免ですがロード伯はそれが正解だと仰る。話し合いの余地はありません。離婚しましょう」
絶句する主人に代わって、
「しし、しかし、結婚してすぐに離婚となられますと奥様の体面にも!」
とモンドが身を乗り出すも、
「良いのです。あの結婚式で既に私の体面など完全に潰されています。今更上乗せされたところでと痛くも痒くもありませんわ」
コイツに穢されて死ぬより遥かにマシである。
そもそも私はこの先、社交をするつもりもない。
「ご立派な決断です、お嬢さま!」
とハンナが拍手をすると手にしていた花瓶が落ちそうになるが、反対側にいたマリアがキャッチして事なきを得た。
その花瓶を手にしたマリアとモンドが顔を見合わせてから同時に主人の方に目をやると、“騎士の中の騎士“と呼ばれたその人は視線をマリーローズに固定したまま、完全にフリーズしていた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
引き続き感想祭りありがとうございます!楽しく読ませていただいております♪
すみません、更新少し遅れました!
毎日更新スタンスは変わりませんが時間がズレる日が出てくると思いますm(_ _)m
というモンドの提案に、
「あなた方が愚かなこちらのご主人が暴走しないようにきちんと見張ってくださるなら」
とハンナが頷き、一旦全員がソファの席についた。
マリーローズとアベルはもちろん対面で、アベルの隣にモンド、マリーローズの両側にハンナとマリア、そしてアベルの背後に屈強な従僕が二人。
先ほどの三人からひとり減ったが、完全に犯罪者な扱いにアベルが抗議するも「ならば話し合いの余地なしです」とハンナに一刀両断され、「ここはハンナ嬢の言う通りです」とマリアもこちらについたため、アベルは不承不承ながら受け入れた。
因みにハンナの手元には煮えたぎった油諸々を載せたワゴンが置かれたままである。
マリーローズにお茶を出した後は、ご丁寧に膝の上に花瓶を抱えて座っている。
それを苦々しげに見やりながら、
「大体、何故花瓶なんだ?」
とアベルが尋ねると、
「水差しに入っているのはきちんと適温に沸かされたお湯か大事な飲み水です。無駄にしてはいけません。油じゃないだけ感謝してください」
まるで「貴様にかけるのに真水では勿体無い」と言われているようでアベルは閉口したが、問題はその横で一切メイドを咎めず、むしろ積極的に指示しているマリーローズである。
結婚式前と違い、ハンナと同じく軽蔑に染まった瞳でアベルを睥睨している。
先ほどのやりとりといい、まるで人が変わったようなマリーローズにアベルは驚愕を隠せない。
「マリーローズ……」
「何か言いたいことがあるならどうぞ。今ならお聞きしますわ。私も言いたいことがございますので」
僅かに口角をあげたマリーローズにやや安心したアベルは、
「その、すまなかった」
と頭を下げるがこれがまた悪手だった。
「どれに対する謝罪ですの?それ」
心底不思議そうにマリーローズが言い、
「ありすぎて列挙したらキリがないんじゃないですか?まあ、どれも“すまなかった“のひと言で済む範疇は超えていますが」
「いや、俺、、私は君を粗略に扱ったつもりはなくて、」
「__アレが正解だったとでも?」
ハンナが再度花瓶を振りかぶるのを手で制したマリーローズは、
「ではお話はひとつです、離婚してください」
「なっ?!」
「王命での結婚は果たしました、離婚するなとは言われておりません。私はこんな風に扱われる生活は御免ですがロード伯はそれが正解だと仰る。話し合いの余地はありません。離婚しましょう」
絶句する主人に代わって、
「しし、しかし、結婚してすぐに離婚となられますと奥様の体面にも!」
とモンドが身を乗り出すも、
「良いのです。あの結婚式で既に私の体面など完全に潰されています。今更上乗せされたところでと痛くも痒くもありませんわ」
コイツに穢されて死ぬより遥かにマシである。
そもそも私はこの先、社交をするつもりもない。
「ご立派な決断です、お嬢さま!」
とハンナが拍手をすると手にしていた花瓶が落ちそうになるが、反対側にいたマリアがキャッチして事なきを得た。
その花瓶を手にしたマリアとモンドが顔を見合わせてから同時に主人の方に目をやると、“騎士の中の騎士“と呼ばれたその人は視線をマリーローズに固定したまま、完全にフリーズしていた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
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