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10 邸の主の呼び方色々。

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マリアはまさか「一番使い古されたタオル」がこの邸の主人であるアベル用だとは思わなかったが、古くても洗濯はきちんとされているし他になかったので、濡れ鼠になっている主をタオルで拭き、
「一体何をやらかしたのですか?」
「皆さんも見ていたでしょう、この男は帰ってくるなりいきなりお嬢様をベッドに連れ込んであらぬことをしようとしたのです」
「いや、俺は初夜をしようと……」
「同僚の皆さまと盛り上がって一杯引っ掛けてお酒くさい息で帰ってくるなり、ですね。私は買われてきた娼婦か何かですか」
「__は?そんな経緯で?」
ハンナ不在の間にした会話をここで報告すると、ハンナだけでなくモンドにもマリアにも呆れかえった目を向けられた。

「ご主人様、それはあまりにも……、」
「いくらなんでも、、」
と自身に長く仕える使用人にも言われてしまい、
「結婚式は済んでいるのだぞ……?」
と心外そうに言うアベルに、
「結婚式が済んでいるいないの問題ではなく……」
「女性はそのように扱って良いものではありませんよ?」
「披露宴と初夜をすっぽかして他所に行った奴が何を」
「あいにく結婚式で挨拶したのは私だけですわ」
四者四様の返しがされ、モンドの背後に控える使用人は「見てない、聞いてない」を貫こうと必死に空気になろうとしていた__ガタイが良すぎて無理だったが。

「大体、何故お前たちがここに?」
彼らは普段は侍従として働いているが、夜には邸内外の見張りとして門や玄関ホールの外側で目を光らせているはずなのである。
「……ハンナ嬢が奥様の身が危ないのでそうせよと」
「何だと?」
何故邸の主人である自分よりメイドであるハンナの意向が優先されるのだと言い募ろうとしたところで、
「水と白湯、どちらが良いですか?」
「ま、待て……!」
「温かいお茶が飲みたいわ、ハンナ」
「は「かしこまりました」?」
「貴方には訊いてません、お嬢様がお飲みになるものの温度をお訊きしたまでです」
と徐にティーポットからカップに注ぎはじめた。
「下半身けd、いえロード卿は冷たい水と氷、熱湯、煮えたぎった油のどれに致しましょうか?」
「なっ?!私にそんなものを飲めと言うのか!!」
「飲みたかったらご自分でいれてください、いかが致しましょうかお嬢様」
とお茶のカップを手渡しながらマリーローズにだけ問う。
「煮えたぎった油?あなたそんなものまで持ってきたの?」
「たまたま調理場で仕込み中だったそうで」
いや突っ込むとこはそこじゃない、とモンドもマリアも侍従たちも思ったが自分たちの主人が結婚式をブッチした挙句盛大にやらかしたことだけはわかるので何も言えずにいた。
「獣の下半身が暴走した時には荒療治が必要かと」

__邸の主人の呼称がついに獣になった。


*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*



引き続き感想祭りありがとうございます!
ひと言感想、誤字脱字報告何でもOKですよ~
こちらで承認しなくても一定の日数経てば承認されますし、頂いた感想は(本当に稀ですがただの悪口とかでない限りは)消したくないので……σ(^_^;)
まだ未知ですが、明日から更新時間が変わるかもしれませんm(__)m
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