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3 呼び方は似非騎士に決定
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そうでしょうそうでしょう、当事者は私だけじゃなくあなた達もですからね~?
「この上、まだ私に一人で恥をかけと?」
「それは、、」
とか、
「だ、だが…、」
と何やらモゴモゴと言っていたが、
「披露宴での接待とお客様のお見送りは、カイゼル侯爵夫妻とセントレイ伯爵夫妻にお任せします。私をあの男と結婚させたのは伯爵なのですから、これぐらいのフォローはしてくださいますよね?」
そう言ってさっさと私は控室に引っ込み、着替えて帰途についた__行き先は嫁入り先の家だけど。
(嫌だなぁ。あの男どうせ今夜帰ってこず初夜すっぽかすんだよなぁ。かといって実家にも帰れないし……ん?)
「今夜だけじゃなく、結婚してから殆ど家になんか帰ってこなかったよね?あの似非騎士」
アベルは王室から騎士伯を賜った立派な騎士だがマリーローズにとっては騎士どころか疫病神だ。
いや、最終的には死なせたから死神か?
夫でもなければ騎士でもない。
名前で呼び合うほど親しくもない。
内心では似非騎士とか馬鹿野郎で良いが今から住まう屋敷はあの男のテリトリーだ。
(使用人に虐められたりはしてなかったけど、味方でもなかったよね?あの馬鹿を誰も諌めなかったし__この実家から連れてきたハンナだけが頼りだった)
マリーローズは目の前に座る茶色い髪のメイドを見る。
マリーローズが三歳の時には既にセントレイ伯爵家に遊び相手として出入りしていたハンナは現在十七才のマリーローズより五才上の二十二才。
子爵家の令嬢だったがマリーローズが八才の時に両親が亡くなり実家は没落。
マリーローズが酷く懐いていた事もあり、正式にマリーローズ付きのメイドとなった。
悪くすれば娼館に売られていたかもしれないハンナはいたく感謝してマリーローズに忠誠を誓い、嫁ぎ先にも付いてきてくれたのだ。
(あの小説の中でも、アベルの所業に散々怒ってくれてたっけ……)
アベル・ロードは青い髪に青い瞳の美青年でカイゼル侯爵家の三男だ。
三男ということはつまり、継ぐ家督がない。
長男と次男が病弱短命だった場合は別だが、至って健康でありアベルに当主の座がまわってくる可能性はない。
それを幼少期から認識していたアベルは貴族が通う学園を一年で切り上げ、騎士団に入隊した。
ただの候補訓練から見習い騎士、見習い騎士から三級騎士(この国の騎士には等級があり、下から三級、二級、一級と勲功と実績にあわせて上がっていく。騎士団長クラスになるとこの等級呼びは適用されない)と順調に階級を上げていった彼はある日国境門の警備中、ひょんな事から王女を拉致して門を出ようとした犯人に気付き、犯人を捕縛、王女を救出した。
麗しの騎士に助けられた王女は深く感謝し、何かとその騎士を頼りにするようになる__というのがこの物語の筋書きだ。
まあ、筋が通っていなくもない。
十二才で騎士団に入った三等級の騎士がこの勲功により一級(王族の護衛任務は一級騎士しかなれないので)に弱冠二十才で任じられようが、アベル・ロードに騎士としての才覚は確かにあったのだろう。
この王女誘拐未遂の現場は国境の門通過待ちの民が大勢いる場での出来事だったから目撃者も多く、二人のロマンスは国民にも好意的に受け入れられた。
だが、そんな二人に壁が立ちはだかった。
助けられた王女はこの時十才、一方のアベルは二十歳の青年だ。
ロマンスになりようがないのだが、おままごとのような王女の初恋を周囲は温かく見守った。
年の差もさることながら、身分差もあるこの二人が結ばれる目はないからだ。
王女は何れ政略で他国の王族に嫁ぐ身であるし、アベルも王女には優しい兄のような態度で微笑み、聡し、仕えた。
だが、やがて二人が互いを見つめる瞳に変化が生じ_……
「この上、まだ私に一人で恥をかけと?」
「それは、、」
とか、
「だ、だが…、」
と何やらモゴモゴと言っていたが、
「披露宴での接待とお客様のお見送りは、カイゼル侯爵夫妻とセントレイ伯爵夫妻にお任せします。私をあの男と結婚させたのは伯爵なのですから、これぐらいのフォローはしてくださいますよね?」
そう言ってさっさと私は控室に引っ込み、着替えて帰途についた__行き先は嫁入り先の家だけど。
(嫌だなぁ。あの男どうせ今夜帰ってこず初夜すっぽかすんだよなぁ。かといって実家にも帰れないし……ん?)
「今夜だけじゃなく、結婚してから殆ど家になんか帰ってこなかったよね?あの似非騎士」
アベルは王室から騎士伯を賜った立派な騎士だがマリーローズにとっては騎士どころか疫病神だ。
いや、最終的には死なせたから死神か?
夫でもなければ騎士でもない。
名前で呼び合うほど親しくもない。
内心では似非騎士とか馬鹿野郎で良いが今から住まう屋敷はあの男のテリトリーだ。
(使用人に虐められたりはしてなかったけど、味方でもなかったよね?あの馬鹿を誰も諌めなかったし__この実家から連れてきたハンナだけが頼りだった)
マリーローズは目の前に座る茶色い髪のメイドを見る。
マリーローズが三歳の時には既にセントレイ伯爵家に遊び相手として出入りしていたハンナは現在十七才のマリーローズより五才上の二十二才。
子爵家の令嬢だったがマリーローズが八才の時に両親が亡くなり実家は没落。
マリーローズが酷く懐いていた事もあり、正式にマリーローズ付きのメイドとなった。
悪くすれば娼館に売られていたかもしれないハンナはいたく感謝してマリーローズに忠誠を誓い、嫁ぎ先にも付いてきてくれたのだ。
(あの小説の中でも、アベルの所業に散々怒ってくれてたっけ……)
アベル・ロードは青い髪に青い瞳の美青年でカイゼル侯爵家の三男だ。
三男ということはつまり、継ぐ家督がない。
長男と次男が病弱短命だった場合は別だが、至って健康でありアベルに当主の座がまわってくる可能性はない。
それを幼少期から認識していたアベルは貴族が通う学園を一年で切り上げ、騎士団に入隊した。
ただの候補訓練から見習い騎士、見習い騎士から三級騎士(この国の騎士には等級があり、下から三級、二級、一級と勲功と実績にあわせて上がっていく。騎士団長クラスになるとこの等級呼びは適用されない)と順調に階級を上げていった彼はある日国境門の警備中、ひょんな事から王女を拉致して門を出ようとした犯人に気付き、犯人を捕縛、王女を救出した。
麗しの騎士に助けられた王女は深く感謝し、何かとその騎士を頼りにするようになる__というのがこの物語の筋書きだ。
まあ、筋が通っていなくもない。
十二才で騎士団に入った三等級の騎士がこの勲功により一級(王族の護衛任務は一級騎士しかなれないので)に弱冠二十才で任じられようが、アベル・ロードに騎士としての才覚は確かにあったのだろう。
この王女誘拐未遂の現場は国境の門通過待ちの民が大勢いる場での出来事だったから目撃者も多く、二人のロマンスは国民にも好意的に受け入れられた。
だが、そんな二人に壁が立ちはだかった。
助けられた王女はこの時十才、一方のアベルは二十歳の青年だ。
ロマンスになりようがないのだが、おままごとのような王女の初恋を周囲は温かく見守った。
年の差もさることながら、身分差もあるこの二人が結ばれる目はないからだ。
王女は何れ政略で他国の王族に嫁ぐ身であるし、アベルも王女には優しい兄のような態度で微笑み、聡し、仕えた。
だが、やがて二人が互いを見つめる瞳に変化が生じ_……
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