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フェアルドとディオン 2
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この頃には自分がフローリアに惹かれているのだと自覚していた。
自覚してはいたが手中に収めることだけが重要で、フローリアの心を蔑ろにしているという自覚はなかった。
後宮に迎え入れ、名実ともに妃として遇してもフローリアの頑なな態度は解けなかった。
何も欲しがらなかったし何を与えても喜んではくれなかった。
まめに後宮に会いに行っても目すら合わせてくれず、まともな会話も成立しなかった。
“世話係“から“妃“に立場があがったというのに「顔も見たくない」と態度でも言葉でも言われてショックだったが、「それも初産を控えて神経質になっているから仕方ない」という周囲の声に慰められ、子が生まれれば彼女も落ち着くだろうと自分を納得させた。
そうしたらきちんと二人の時間を取ろう。
恋人同士らしいことを何もしてやれず後宮入りさせてしまったから怒っているのかもしれない。
実は君が学園に入学した時から気になっていたのだと、話してみよう。
子を抱けば彼女も笑顔を取り戻すだろう、肖像画も描かせよう。
そうすればきっと__そんな夢に逃避して不安に蓋をしたまま迎えたフローリアのお披露目は地獄絵図と化した。
他ならぬ、フローリア自身の手によって。
彼女はパーティーが行われていた広間で、俺とエディアル__いやこの制度そのものを糾弾したのだ。
命をかけて。
そして彼女を永遠に失った。
今世で記憶を持ったまま生まれたのは天罰なのか、それとも死に際の祈りが通じたのかわからない。
けれどひたすらフローリアの転生した姿を探した。
今世に生まれ落ちてから五年が過ぎ、十年経っても彼女は見つからなかった。
天が彼女の平穏のため同じ世界には転生させなかったのかもしれないとも思ったが、今世の自分は彼女以外に触れたいとは思わなかった。
当たり前のように側近として目の前に現れたエディアルの転生であるディオンと会う前も、会った後も。
ディオンも前世での後悔を抱いたまま転生していて、「できるものなら彼女たちに謝罪してから死を賜りたい」と常に言っており、女性を近づけることはなかった。
常に互いだけを側におき、女っ気のない皇弟とその側近。
当然、無責任な噂は数多くあったが気にしなかった。
一生独身でも構わない。前世での自分たちの所業を思えば、子孫など残すべきではない。
そう思っていたのに出逢ってしまった、見つけてしまった。
かつてのフローリアを。
彼女は前世よりずっと幼く、けれど美しく身分も今世の自分と釣り合う家の令嬢として大切に、大切に育てられていた。
自覚してはいたが手中に収めることだけが重要で、フローリアの心を蔑ろにしているという自覚はなかった。
後宮に迎え入れ、名実ともに妃として遇してもフローリアの頑なな態度は解けなかった。
何も欲しがらなかったし何を与えても喜んではくれなかった。
まめに後宮に会いに行っても目すら合わせてくれず、まともな会話も成立しなかった。
“世話係“から“妃“に立場があがったというのに「顔も見たくない」と態度でも言葉でも言われてショックだったが、「それも初産を控えて神経質になっているから仕方ない」という周囲の声に慰められ、子が生まれれば彼女も落ち着くだろうと自分を納得させた。
そうしたらきちんと二人の時間を取ろう。
恋人同士らしいことを何もしてやれず後宮入りさせてしまったから怒っているのかもしれない。
実は君が学園に入学した時から気になっていたのだと、話してみよう。
子を抱けば彼女も笑顔を取り戻すだろう、肖像画も描かせよう。
そうすればきっと__そんな夢に逃避して不安に蓋をしたまま迎えたフローリアのお披露目は地獄絵図と化した。
他ならぬ、フローリア自身の手によって。
彼女はパーティーが行われていた広間で、俺とエディアル__いやこの制度そのものを糾弾したのだ。
命をかけて。
そして彼女を永遠に失った。
今世で記憶を持ったまま生まれたのは天罰なのか、それとも死に際の祈りが通じたのかわからない。
けれどひたすらフローリアの転生した姿を探した。
今世に生まれ落ちてから五年が過ぎ、十年経っても彼女は見つからなかった。
天が彼女の平穏のため同じ世界には転生させなかったのかもしれないとも思ったが、今世の自分は彼女以外に触れたいとは思わなかった。
当たり前のように側近として目の前に現れたエディアルの転生であるディオンと会う前も、会った後も。
ディオンも前世での後悔を抱いたまま転生していて、「できるものなら彼女たちに謝罪してから死を賜りたい」と常に言っており、女性を近づけることはなかった。
常に互いだけを側におき、女っ気のない皇弟とその側近。
当然、無責任な噂は数多くあったが気にしなかった。
一生独身でも構わない。前世での自分たちの所業を思えば、子孫など残すべきではない。
そう思っていたのに出逢ってしまった、見つけてしまった。
かつてのフローリアを。
彼女は前世よりずっと幼く、けれど美しく身分も今世の自分と釣り合う家の令嬢として大切に、大切に育てられていた。
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