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「フェルディナンド様!!」
「すまなかった、ヘリオス」
最側近兼幼馴染でもあるヘリオスに短く答えながら、手早く着替える。
今から行く場所にこの格好では都合が悪いからだ。
ここは何かあった時に落ち合う為の小屋だ。
フェルディナンドの部下の中でも、ここの存在はヘリオスしか知らない。
高位魔法使いでもあるヘリオスが巧妙に魔法で隠しているからだ。
尤も、ヘリオスが高位魔法使いであることは周囲には知られていない。
このレジュールでは生活魔法は根付いているものの、魔物討伐に使われるような高火力魔法は既に失われているとされ、そこまでの魔法は忌避される傾向にあった。
それがわかっているからこそ、フェルディナンドもフェルディナンドの両親も、ヘリオス本人も秘匿してきた。
「あちらの様子はどうだ?」
「フェルディナンド様の行方がわからないので目立った動きは表向きありませんが、あちこち手をまわしているようです」
「俺の死体探しだろ?もう数日ほっとけば身代わりの死体の用意でもしてきそうだな」
「全く……無事だったからよかったものの、肝が冷えましたよ」
「奇遇だな、俺もだ」
もうダメかと思ったが、意外な所から助け手が現れた。
あのソレイユという老婆の言う通りに馬を走らせたらすぐに街が見えてきた。
「なんだ、やはりあまり離れていないんじゃないか」
と呟きながらこの隠れ家を目指した。
「敵の武器には毒が塗られていたようですが、これは……」
傷を診たヘリオスが驚いた声をあげる。
「どうした?」
「綺麗に解毒されています。助けてくれた方は治癒師だったのですか?」
「いや、薬師だと言っていた」
「薬師、ですか?確かに傷口に塗られた薬の効能はかなり高いもののようですがしかし、これだけの腕を持つ薬師など、聞いたことが」
「それが煩わしくて森の奥深くにいるんじゃないのか?下手に貴族のお抱えなんぞになったら毒薬を作らされかねん。材料自体は森に生えているし、街には薬草を売りに行く以外降りてこないそうだが新鮮な肉や卵なども物々交換で足りていると言っていたが、街以外に住んだことがないわけではなさそうだった。少なくとも若い頃はそれなりの所に勤めていたんじゃないか?孫娘はわからないが」
「孫娘?」
「ああ、十五~六くらいの孫娘と二人で暮らしていた。金の髪にエメラルドグリーンの綺麗な娘だったぞ」
「ほぉ?」
ヘリオスは目を細めた。
「……なんだその反応は」
「いえ、あなたがなんの含みもなく手放しでご令嬢を褒めるなど、聞いたことがないので」
「あんな何の含みも下心もなく初対面の血まみれの男を拾って傷の手当てをする娘を貶すほど俺は立派な人間じゃない。この件が済んだら、改めて礼を言いに行くつもりだ」
「今動くのは危険では?」
「だから片がついてからと言ってるだろう」
「いえ、それもですが私が言いたいのは……ゴニョゴニョ……いや、かえっていいのか?でm……」
「?何だ?!はっきり言え!!」
「いえ、何でもありまっせん」
「変なヤツだな、まあいい。外に繋いだ馬を“黒い谷“という宿に返しておいてくれ」
「“黒い谷“ですね、わかりました」
「あともうひとつ、調べて欲しいことがある」
「なんでしょう?」
「ソレイユという名の薬師を調べてくれ。今の年齢はおそらく__六十から七十代といったところか?若い頃どこかの貴族のお抱えとして働いていたと思うんだが、」
「前科があるとでも?」
「いや、単に気になるだけだ。ただの薬師とはどうしても思えない」
「かしこまりました」
「すまなかった、ヘリオス」
最側近兼幼馴染でもあるヘリオスに短く答えながら、手早く着替える。
今から行く場所にこの格好では都合が悪いからだ。
ここは何かあった時に落ち合う為の小屋だ。
フェルディナンドの部下の中でも、ここの存在はヘリオスしか知らない。
高位魔法使いでもあるヘリオスが巧妙に魔法で隠しているからだ。
尤も、ヘリオスが高位魔法使いであることは周囲には知られていない。
このレジュールでは生活魔法は根付いているものの、魔物討伐に使われるような高火力魔法は既に失われているとされ、そこまでの魔法は忌避される傾向にあった。
それがわかっているからこそ、フェルディナンドもフェルディナンドの両親も、ヘリオス本人も秘匿してきた。
「あちらの様子はどうだ?」
「フェルディナンド様の行方がわからないので目立った動きは表向きありませんが、あちこち手をまわしているようです」
「俺の死体探しだろ?もう数日ほっとけば身代わりの死体の用意でもしてきそうだな」
「全く……無事だったからよかったものの、肝が冷えましたよ」
「奇遇だな、俺もだ」
もうダメかと思ったが、意外な所から助け手が現れた。
あのソレイユという老婆の言う通りに馬を走らせたらすぐに街が見えてきた。
「なんだ、やはりあまり離れていないんじゃないか」
と呟きながらこの隠れ家を目指した。
「敵の武器には毒が塗られていたようですが、これは……」
傷を診たヘリオスが驚いた声をあげる。
「どうした?」
「綺麗に解毒されています。助けてくれた方は治癒師だったのですか?」
「いや、薬師だと言っていた」
「薬師、ですか?確かに傷口に塗られた薬の効能はかなり高いもののようですがしかし、これだけの腕を持つ薬師など、聞いたことが」
「それが煩わしくて森の奥深くにいるんじゃないのか?下手に貴族のお抱えなんぞになったら毒薬を作らされかねん。材料自体は森に生えているし、街には薬草を売りに行く以外降りてこないそうだが新鮮な肉や卵なども物々交換で足りていると言っていたが、街以外に住んだことがないわけではなさそうだった。少なくとも若い頃はそれなりの所に勤めていたんじゃないか?孫娘はわからないが」
「孫娘?」
「ああ、十五~六くらいの孫娘と二人で暮らしていた。金の髪にエメラルドグリーンの綺麗な娘だったぞ」
「ほぉ?」
ヘリオスは目を細めた。
「……なんだその反応は」
「いえ、あなたがなんの含みもなく手放しでご令嬢を褒めるなど、聞いたことがないので」
「あんな何の含みも下心もなく初対面の血まみれの男を拾って傷の手当てをする娘を貶すほど俺は立派な人間じゃない。この件が済んだら、改めて礼を言いに行くつもりだ」
「今動くのは危険では?」
「だから片がついてからと言ってるだろう」
「いえ、それもですが私が言いたいのは……ゴニョゴニョ……いや、かえっていいのか?でm……」
「?何だ?!はっきり言え!!」
「いえ、何でもありまっせん」
「変なヤツだな、まあいい。外に繋いだ馬を“黒い谷“という宿に返しておいてくれ」
「“黒い谷“ですね、わかりました」
「あともうひとつ、調べて欲しいことがある」
「なんでしょう?」
「ソレイユという名の薬師を調べてくれ。今の年齢はおそらく__六十から七十代といったところか?若い頃どこかの貴族のお抱えとして働いていたと思うんだが、」
「前科があるとでも?」
「いや、単に気になるだけだ。ただの薬師とはどうしても思えない」
「かしこまりました」
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