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第一章 エピローグ
しおりを挟む「母上!なぜアルフォンスなのですか?メイデン嬢の保護者なら僕だって良かったでしょう?!」
「あなたではダメよ。あの子に信用されていないもの。わかっているでしょう、自分でも」
「…っ!」
「本気であの娘の味方になりたかったのなら、いち番始めにするべきだったのよ。アッシュに同調するのではなく止めるべきだった。それにミリディアナ?なぜあんな真似を?私の知る貴女は弱い者虐めをするような女性ではなかったわ」
「っ、それは……、」
ミリディアナは言葉に詰まる。
「話したくないなら言わなくても良くってよ。何故あなたたちがあそこまでメイデン嬢を目の敵にしていたのかわからないけれど、
アルフォンスの家は代々“ドラゴンに関わる乙女を縛ることなかれ“という初代からの不文律を厳格に守り通している一族。メイデン嬢の後見人にはうってつけだわ。ミリディアナのことは素晴らしいレディーだと思っていたけど、考え直す必要がありそうね?」
王妃の言葉に、ミリディアナは小さくなるしかなかった。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
ドラゴンの出現により後手になったがあのオルフェレウス・ヴィオラはとんでもない色魔だった。
身元が確かで教師の資格も才覚もあり、加えてあの容姿に優雅な物腰。
故に今まで誰も気付かなかったのだ、あの男の正体に。
最初、調書に違和感を持ったのはアルフレッドだった。
「……?…」
これは、偶然か?あの男が渡り歩いてきた学園には必ず1人か2人、体調不良により学園を辞している生徒がいる。
しかも、全員女生徒だった。
疑問に思い共通点を探れば、それはあっさり表面化した。
全員が見事な金髪の、学内でも評判の美少女ばかりだったのだ。
(これが偶然だと?__あり得ない)
さらに詳しく調査していくと皆、〝空白の時間〟がある事がわかった。
数時間行方不明になり、意識のない状態であっさり発見される。
外傷はとくになく、いつ眠ったのか、どうしていたのか全く記憶にない。だから表立った騒ぎにはならなかった。
勿論眠っている間にあらぬ事をされているのだから身体に違和感や不調を訴える生徒もおり、それにより自分がいつのまにか傷物にされている事に気付いたのか、それとも単に体調が思わしくないからだけだったのか、、追求は出来ないが少なくとも数名は自分に何があったのか気付いた。
気付いて、そして自殺未遂さえした生徒もいた。
犯人が全くわからないのを良い事にあの男はあまつさえ優しくその生徒を慰める役までかって出ていたのだ__虫酸が走る。
そうして誰にも疑われず、自分の魅力と魔力に耽溺した男は油断しきっていた。
自分が作った異空間を看破する事など誰にも出来はすまいと高をくくっていたのだ。
彼には誤算だったろう。
自分は獲物にも他者にも信頼されていると言う絶対の自信、強い魔力、素晴らしく魅惑的な顔と声。
それらが全く通じない相手がいたこと、それが魔法大国と呼ばれる国の王族だったこと、獲物を巣に引き入れる際の小道具に魔力持ちの猫ノエルを選んでしまった事。
結果、自慢の異空間は突破され、獲物は取り返され、自分は捕縛されー…、ついでにノエルは覚醒した。魔獣として。
それでも他国の王家の血筋である自分を極刑には出来ないだろうと高を括っていたようだが、
「あー念のため言っとくけど、お前の父親には許可取ったから。罪状見せたら速攻で〝我が国とこの者は一切関係なき故、煮るなり焼くなり好きにして結構〟だとさ」
「バカな……!」
秀麗な顔に醜悪さを貼り付けた男にアルフレッドは、
「バカはてめーだ。ラクに死ねると思うな」
と八つ当たりを含めて告げ、一切振り返る事はなかった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「まさかあのオルフェ様が、婦女暴行の現行犯だなんて……」
ショックを受けるミリディアナには事の詳細は話していない。
先ほど王妃に叱責を受けたばかりであるし、女性にはデリケートな話題だからだ。
そのまた横で発言を控えるカミラは薄々察しているのだろうが、それを除けば概ねいつもの風景である。
「彼女が伝説の乙女に違いない事はわかったよね?で、今後についてなんだけど」
そう切り出すアルフレッド(というか全員)はわかっていなかった。
「名前で呼び合うこと」
「一緒にパーティーに出席して踊ること」
という約束は既に果たされている__“未来永劫“と約束したわけではないから、一度きりでも果たした事には変わりない。
始まった新学期、アリスティアとジュリアの姿は学園になかった。
「………やってくれるなぁ」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
第一章にこんなに手間取ってしまい、重ね重ね申し訳ありませんが、第二章ストックができるまで再度更新一旦ストップします、すみません……!
当初とは、変更部分が多すぎて……(ー ー;)
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