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レイド家の夜会、終幕

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前話が昨日の夕方に更新されています、ご注意下さいm(_ _)m



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「じゃあ、毎年夏の休暇か建国祭の時期だけでも遊びに来て頂戴ね?シーズン以外のいつでも構わなくってよ?」
「感謝しますわ、こ、いえ“おばさま“」
「よく出来ました」
鷹揚に頷いた夫人が去ると、アリスティアが扇子の奥で僅かに息を吐いた。

「少し休もうか。公爵家専用の休憩スペースに案内しよう」
「レイドさま?」
「そう怖い顔をしないでくれバーネット嬢。君の家に益のありそうな家の家長を招んでおいた。血統を重んじて今までバーネット家との取引は行っていなかった家だが今の君なら何とかなるのではないかな?」
「っ!」
「心配しないでくれ、プライベートといっても庭を案内するだけだ。君が同行しても問題ないよ」
「__庭?」
「参って欲しい人の墓があるだけの場所だよ」
「!」
その話は、ジュリアも聞いたことがある。
「__仕方ないですわね。ここはお譲りしますわ」
「感謝する、バーネット嬢。では行こうか、メイデン嬢」
「??」
意味がわからないまま、アリスティアは招待客には公開されていないエリアへとエスコートされて行く事になった。

「屋敷を少し案内しよう」
と連れて来られたのはギャラリーになっている一角だった。
いわゆるご先祖様の肖像画が展示されている場所である。
正面に一番大きなサイズで描かれた絵は髪と目は茶色だがアルフォンスに良く似た男性と、黒髪黒目の女性が並んだ肖像画があり、その両側にひと回り小さいサイズの肖像画が並ぶ。
「見てわかる通り彼が初代、隣にいるのが降嫁された王女殿下、セレナ様だよ」
この国ではっきりした黒髪黒目は今でも珍しい。
アルフォンスの黒もはっきりとした黒だが、絵の女性はさらに濃い__というか黒髪のひと房、ひと筋に煌々しい輝きでもあると言えばいいのか__ひと口に黒といっても色々あるのだな と感じずにはいられない絵だった。
(この王女が降嫁した事でレイド家が興されたって事は、)
「初代の父君が当時のローゼンタール公爵なのだが、彼はセレナ様の母君にあたる聖王妃殿下とは魔法学園で共に学んだんだそうだ。学年は違ったが、当時生徒会長だったローゼンタール公が新入生として入ってきた妃殿下__当時はまだ伯爵令嬢であられたが、生徒会にスカウトしたそうだ」
(……どっかで聞いた話だな?)
思いつつ、口に出すのは控えた。

が、
「何処かで聞いた話だと思わないかい?__似ているよね、私たちと」
アルフォンスは嬉しそうに微笑むが、
「えぇ…、まぁ」
スカウトに応じて生徒会入りするのと、騙し討ちで指名するのとでは大いに違うと思う。
曖昧に頷きながら心中で突っ込んだ。

「まぁ、君に無理を強いたのは褒められたことではないけれど__、ほっとしたよ」
「はい?」
「要は君に来て欲しかったということだよ、メイデン嬢」
不敵に笑った顔はアルフレッドを思い起こさせる__ローゼンタールも長く続く公爵家だ、やっぱりこの人も王族に近い人なのだなと改めて思った。

そして次に向かったのは邸の裏側に当たる庭園だった。
裏側ではあるがこちらも表側に負けじと沢山の花が咲き誇っている__というか、多過ぎる。
表側が計算された庭なら、こちらは無計画に好き勝手に植えまくったという感じだ。

「初代の父君にあたるローゼンタール公は次代に爵位を譲った後、こちらで隠棲されていたんだ__最期までね」
「そうなんですか……?」
跡目に爵位を譲った後息子の家に、とはあまり聞かない。ローゼンタールは名だたる公爵家で、領地も広大だ。
隠棲先に別の性を賜った王都の息子の屋敷を選んだというところに違和感を感じる。

「私は大お爺さまと呼んでいるけど、彼はこの庭が殊の外お気に入りだったらしい」
そうして案内された場所にはさらに所狭しと薔薇が咲き誇っていた__空色の薔薇が。
そしてその一番奥に隠れるように墓石が見える。
「綺麗……!」
墓地だという事を忘れ、私は思わず声をあげる。

空色の薔薇は学内にもあるが、ここまで大量に咲いているのは初めてだ。
夜の月明かりに光るそれは幻想的で、風に揺れるとふわりと甘い香りが漂ってまるで夢の中のような光景だ。
「……夢、みたいだな」
常にないアルフォンスの少年のような呟きは、アリスティアの耳に届く事はなかった。
代わりに、
「私も“義兄さま“と呼ばれる日を楽しみにしているよ?」
と耳元で囁いてアリスティアを吃驚させた。






*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

夜会後、ひっそりと件の墓石の前に立ったアルフォンスは、
「彼女が以前お話したドラゴンを倒し、国を救った少女です。綺麗な空色の瞳の__この薔薇と同じ色です、奇妙な縁ですね……いずれ彼女がセイラ妃殿下の遺言を受け取る日が来るかもしれません。我が家に迎えることは出来ませんでしたが、ここに連れて来ることができました。少しはお爺さまの遺言を果たせたでしょうか?」
まったく、もしその彼女が国を出たがったら全力で助けろとか、王家に無理矢理嫁がされるくらいなら我が家に迎えて一定の自由を確保しろだとか___、公爵家を何だと思っているのか。
現在いまの王妃様は人使いは荒いですが大事な根っこは揺るがない方です……お陰で最悪な事態は免れたといえるでしょう。慣例など蹴飛ばしてしまう所は、彼の方に似ているのかもしれませんね?」
そう呟きながら、アルフォンスは手にした花束をその墓に手向けた。





*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

↑気になった方は「記憶が戻った伯爵令嬢はまだ恋を知らない」最終話をご参照ください🌟
第一章、明日完結です♪当然続くけど……💧










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