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レイド家の夜会 2(到着)
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「それで?他にアイツら、じゃない王室はなんて?」
「えぇと……」
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
「しかし、参ったな…リ・ライト・オブ・リミテッドですら使える魔法使いは希少中の希少なのにリ・ライト・オブ・アン・リミテッドまで使えるとは…、」
「〝伝説の乙女〟とは良く言ったものですね」
「妃が無理ならいっそ王家の養女にするのはどうだろうか?」
「そうですね。そちらの方が可能性としては……」
唸る王太子に得たり、と頷くギルバートとその横で、
(ないと思うけど)
(あるわけないじゃん)
と顔と口には出さず心中で突っ込むカミラとアルフレッドだった。
実際、報告を受けた王家はその場で、
「王子妃になるつもりはないか」
「爵位や領地も希望があれば与える」
「アリスティア個人に名誉爵位と称号を授与する」
等々言ったのだがアリスティアの答えは「遠慮いたします」のみだった。
「で、では何が望みなのだっ?」
と声を上擦らせる国王の横で、王妃は無言を貫いていた。
それを不審に思ったアリスティアだったが、答えは決まっている。
「何も」
「は?何と申した?」
「何もいりませんので、今後私や私の家族領民友人たちに一切無用なちょっかいを出さないでくださいませ」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「__で?それを聞いた王太子たちの反応は?」
「面白い顔になってた」
(そりゃそうでしょうね)
「それで?」
「で、あのことを話そうと思ったら、」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「なっ、なっ……、」
顔を朱に染めて二の句が告げない国王に変わり、
「メイデン嬢、つまり今父上が言った内容では不服ということか?」
王太子が言う。
ぴき、とアリスティアの頬が引き攣る前に、
「メイデン嬢は君たちに自分に関わらないでくれと言ってるんだよ、アッシュバルト」
王妃の後ろに控えていたアルフォンスが割って入った。
「まさかメイデン嬢が王妃の座を、ひいては君の妃のなりたがってるなんて盛大な勘違いをしているんじゃないだろうね?言っておくが肝心なことは何も話さず、まともな思いやりも無く傲慢な態度を取り続けた挙句、なし崩し的にあんな戦いに巻き込んだ相手なぞ私が女性でもお断りだ。人の感情はそう単純ではないが、好きか嫌いかで言ったらむしろ嫌われていると思うが?」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「あら!わかってるじゃない会長ってば」
ジュリアが初めて感心したような声をあげる。
「それで?王様と王太子の反応はどうだったの?」
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
アルフォンスの言葉にざぁっと顔を青ざめさせた王太子は言葉が出て来ず、
「なんと無礼な!アルフォンス、いくら貴様が公爵家の嫡男と言え「だったらどうだと言うのです?」ど、お、王妃……?」
突如割って入った王妃の言葉に今度は国王が青ざめる。
「アルフォンスにはメイデン嬢とその周囲に目を光らせ、何かあればメイデン嬢を守るようにと私の名において命じていました。これ以上罪のないご令嬢を王子たちのやらかしで被害に遭わせるわけにいきませんからね。こちらが王室で相手が男爵であろうと、やっていいことと悪いことがあるのですよ。この子たちはやらかしすぎました。その責任は親である私達が正すべきです」
「い、いや、だが……!」
「四の五の言わずにメイデン嬢を早く親元に帰して差し上げなさい。後のことは私たちだけで解決すべき問題です!アルフォンス、頼みましたよ」
「御意。行こうか、メイデン嬢」
こうして私は王宮を後にした。
以降、今日に至るまで特に呼び出し等は受けていない。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「へぇー。生徒会に入れられた時は何してくれやがんだと思ってたけど……」
「……ジュリア、“やがんだ“はさすがに」
「貴女だって思ってたでしょ?」
「う“」
「私も貴女も表向きは完璧なんだからこんな場所でまで気を使うことないわよ。何はともあれ、」
「?」
「……お疲れ様。大変だったわね。貴女のお陰で学園も周囲の街も無事だった。それくらい言ってやって当然だわ」
そうやって頭を撫でる(髪を崩さないようにあくまでちょっとだけ)とアリスティアは嬉しそうに微笑む。
(か、可愛い……!)
全力で抱き締めたいのを、かろうじてジュリアは堪えた(偉い!)。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
レイド家に到着すると、嫡男であるアルフォンス自らが馬車の扉を開けて出迎えた。
「やあ、よく来てくれたねメイデン嬢」
「レイド様、このような」
流石に驚くアリスティアに、
「なに、王妃様に君の保護を任されている身としては当然のことだよ。バーネット嬢、よく来てくれた。今日は殊更美しいな二人とも」
(流石公爵家……)
目をぱちくりさせているアリスティアの背後で、
(ほんとに如才ない男ね……)
とジュリアは呆れた。
「えぇと……」
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
「しかし、参ったな…リ・ライト・オブ・リミテッドですら使える魔法使いは希少中の希少なのにリ・ライト・オブ・アン・リミテッドまで使えるとは…、」
「〝伝説の乙女〟とは良く言ったものですね」
「妃が無理ならいっそ王家の養女にするのはどうだろうか?」
「そうですね。そちらの方が可能性としては……」
唸る王太子に得たり、と頷くギルバートとその横で、
(ないと思うけど)
(あるわけないじゃん)
と顔と口には出さず心中で突っ込むカミラとアルフレッドだった。
実際、報告を受けた王家はその場で、
「王子妃になるつもりはないか」
「爵位や領地も希望があれば与える」
「アリスティア個人に名誉爵位と称号を授与する」
等々言ったのだがアリスティアの答えは「遠慮いたします」のみだった。
「で、では何が望みなのだっ?」
と声を上擦らせる国王の横で、王妃は無言を貫いていた。
それを不審に思ったアリスティアだったが、答えは決まっている。
「何も」
「は?何と申した?」
「何もいりませんので、今後私や私の家族領民友人たちに一切無用なちょっかいを出さないでくださいませ」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「__で?それを聞いた王太子たちの反応は?」
「面白い顔になってた」
(そりゃそうでしょうね)
「それで?」
「で、あのことを話そうと思ったら、」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「なっ、なっ……、」
顔を朱に染めて二の句が告げない国王に変わり、
「メイデン嬢、つまり今父上が言った内容では不服ということか?」
王太子が言う。
ぴき、とアリスティアの頬が引き攣る前に、
「メイデン嬢は君たちに自分に関わらないでくれと言ってるんだよ、アッシュバルト」
王妃の後ろに控えていたアルフォンスが割って入った。
「まさかメイデン嬢が王妃の座を、ひいては君の妃のなりたがってるなんて盛大な勘違いをしているんじゃないだろうね?言っておくが肝心なことは何も話さず、まともな思いやりも無く傲慢な態度を取り続けた挙句、なし崩し的にあんな戦いに巻き込んだ相手なぞ私が女性でもお断りだ。人の感情はそう単純ではないが、好きか嫌いかで言ったらむしろ嫌われていると思うが?」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「あら!わかってるじゃない会長ってば」
ジュリアが初めて感心したような声をあげる。
「それで?王様と王太子の反応はどうだったの?」
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
アルフォンスの言葉にざぁっと顔を青ざめさせた王太子は言葉が出て来ず、
「なんと無礼な!アルフォンス、いくら貴様が公爵家の嫡男と言え「だったらどうだと言うのです?」ど、お、王妃……?」
突如割って入った王妃の言葉に今度は国王が青ざめる。
「アルフォンスにはメイデン嬢とその周囲に目を光らせ、何かあればメイデン嬢を守るようにと私の名において命じていました。これ以上罪のないご令嬢を王子たちのやらかしで被害に遭わせるわけにいきませんからね。こちらが王室で相手が男爵であろうと、やっていいことと悪いことがあるのですよ。この子たちはやらかしすぎました。その責任は親である私達が正すべきです」
「い、いや、だが……!」
「四の五の言わずにメイデン嬢を早く親元に帰して差し上げなさい。後のことは私たちだけで解決すべき問題です!アルフォンス、頼みましたよ」
「御意。行こうか、メイデン嬢」
こうして私は王宮を後にした。
以降、今日に至るまで特に呼び出し等は受けていない。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「へぇー。生徒会に入れられた時は何してくれやがんだと思ってたけど……」
「……ジュリア、“やがんだ“はさすがに」
「貴女だって思ってたでしょ?」
「う“」
「私も貴女も表向きは完璧なんだからこんな場所でまで気を使うことないわよ。何はともあれ、」
「?」
「……お疲れ様。大変だったわね。貴女のお陰で学園も周囲の街も無事だった。それくらい言ってやって当然だわ」
そうやって頭を撫でる(髪を崩さないようにあくまでちょっとだけ)とアリスティアは嬉しそうに微笑む。
(か、可愛い……!)
全力で抱き締めたいのを、かろうじてジュリアは堪えた(偉い!)。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
レイド家に到着すると、嫡男であるアルフォンス自らが馬車の扉を開けて出迎えた。
「やあ、よく来てくれたねメイデン嬢」
「レイド様、このような」
流石に驚くアリスティアに、
「なに、王妃様に君の保護を任されている身としては当然のことだよ。バーネット嬢、よく来てくれた。今日は殊更美しいな二人とも」
(流石公爵家……)
目をぱちくりさせているアリスティアの背後で、
(ほんとに如才ない男ね……)
とジュリアは呆れた。
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