48 / 63
火のドラゴン、目覚める 1
しおりを挟む
いつもの時間に更新間に合わなくてすみません!!
GWの方が忙しい職種なのと他の予定とでへろへろです😅
時間はずれるかもしれませんが、GW中だけでも連投を、と思っておりますm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「謝罪は要らないよ。でも、感謝してくれたら嬉しい」
「?ありがとうございます。助けていただいてー…」
正式な礼を取ろうとするアリスティアに、
「何も正式に礼しろって言ってるわけじゃないよ」
アルフレッドは苦笑しながら言う。
(じゃあ何だ)
意味がわからず知らずしかめっ面になる私に、
「お願いを、きいてほしい」
命令でも、何かの強制力でもなく、自らの意思で。
「僕の、手を取って?」
*・゜゜・*:.。..。.:*・:.。. .。.:*・゜゜・*
(で、なんでこうなるのよ……?)
遠い目をしていたアリスティアがアルフレッドにエスコートされて会場に足を踏み入れると、騒めいていた会場がぴた と静まり、次いでぅわ、ともおぉ、ともつかない歓声が沸き起こった。
「アルフレッド殿下にアリスティア様…!」
「な、なんであ、あの、アリスティア、様、が殿下と?!」
「アルフレッド殿下素敵…!」
「アリスティア様、なんてお美しい…」
「お二人とも、なんてお似合い…」
「あのドレス素晴らしいわね。もしかして殿下が贈られたのかしら?」
概ね好意的だが、一部妬みや値踏みが混じっている_…まあ、想定通りの反応だ。
簡単に言うとあのアルフレッドの〝お願い〟は「自分のエスコートでパーティーに出て欲しい」だったのだ。
「今はまだパーティーの真っ最中だ。本来なら始まってる筈のヴィオラ先生の演奏披露も始まらないうえ、僕やアレックス、ギルバートも会場にいない事に皆がざわつき出してるところかな。国王夫妻も王城のパーティーを一旦抜けてお出ましになっている頃合いなのに予定の演目も、ファーストダンスはアレックスとユリアナ皇女が広間の中央で一曲踊ったあと、そのまま一年生達のダンスタイムに入る予定なのにアレックスの姿もパーティー会場にない。このままじゃ騒ぎになる」
それはそうだろうが、
「ですが、今夜は一年生の為のパーティーで」
だからこそ、ユリアナ姫の相手を(渋々ながら)アレックスが務める事になっていた筈だ。
「〝一年生在籍時、家庭の事情等でパーティーに出席出来なかった二年生は翌年出席する資格がある〟って校則は知ってるよね?」
「!!」
「君がそのドレスで僕と登場すれば会場の視線はこっちに集まるし、僕たちがそのまま中央で一曲踊れば周りもあゝそういう事かって何事もなく踊り始めると思うんだよね__そう思わない?」
思うが、心から遠慮したい。
「……一曲だけ、踊ればよろしいんですね?」
その後すぐに解放してくれますよね?
「あ 言い忘れてたけどそのドレス母上の見立てだから。踊り終わったら目の前行って良く見せてあげて?」
「~~っ!」
「で、その後王宮行って善後策話し合う事になると思うからよろしく、あと」
(この腹黒王子……!ん?あと?何?)
「良く似合っている。とても綺麗だ、アリスティア・メイデン……__無事で良かった」
本当に何の含みもなく言われた言葉に、
「っ!…_ありがとう、ございます」
あまりに予想外のところから来たので声がひっくり返ったアリスティアだった。
この腹黒王子、と心中で歯噛みしながらもぎこちなく微笑む様は可愛いらしくも初々しくも見る者には映り、
「そういえば昨年、アリスティア様は父男爵様のご病気でパーティーに出ておられなかったですものね」
「そういえば…そうでしたわ。ですからこのパーティーにアルフレッド殿下自らが手を引いて来られたのですね、流石ですわ」
「アレックス様は急用でお出ましになれなくなったとか…」
ちらり、と豪華ではあるが初々しい体型にはいささか背伸びし過ぎでは?と言いたくなるようなドレスで待ちぼうけをくわされた隣国の皇女様を見遣ればギリギリと歯軋りが聞こえてきそうな顔で会場の視線を総浚いしている2人を睨み付けている。
そんな様子を清々した様子で見遣り、
「ま、仕方ない事ですわね」
「アレックス様もあまり乗り気ではありませんでしたもの」
と周りはあっさりユリアナの存在を意識から追いやった。
いくら身分が高くとも、元々人望がなければこんなものなのだ。
その人望があり、もう一人の恩人である前生徒会長だが、先程オルフェレウス・ヴィオラが牢に収監されたのを見届けてから保健室にノエルを連れて来た時にその話を聞き、
「そういう理屈なら私にもメイデン嬢をエスコートする権利はあると思うが…_まあいい、ここはアルフレッドに譲ろう。メイデン嬢、渡した招待状のパーティーには出てくれるだろう?」
「……はい」
ここは仕方ない。
アルフォンス・レイドとはアルフレッドのいない所で話さなければならないことがある。
返事をしたところに、
「にゃー」
とアルフォンスの腕に抱かれたノエルがこちらに移ってこようとしたが、
「今はまだ駄目だ。パーティーが終わるまで抱っこは待ちなさいノエル」
と優しくノエルを抱き直す。
案外、猫の扱いに慣れている。
(意外……)
と思いつつ、
「助けてくれてありがとうノエル、もうちょっと待っててね?」
と撫でてやると、
「にゃー…」
当のノエルは『仕方ねーな』という感じのニャーで返し、撫でているアリスティアの手にゴロゴロと顔を押しつけるに留めた。
「王宮へは私も一緒に行くからこのままノエルと共に控え室で待っているよ、安心して行っておいで」
と送り出された。
その間、アルフレッドは何も言わなかったが切なげに金色の髪に目を落としていた。
そのうち2人が踊り出すとわぁ…!という感嘆の声とほぅ…、という吐息が広間を満たす。
アルフレッドは当然だが、そのパートナーを務めるアリスティアもまたデビュタントとは思えない可憐で見事なステップを披露したからだ。
それはもう初心者のステップではない。
ふわふわした生地が広間の床に花を咲かせる様に軽やかに舞い、アルフレッドはそれを余裕をもって受け流しつつ、時には危なげなくしかも軽やかに自分の腕に受け止めて。
楽団が熱を入れて演奏したのか途切れることなく1曲どころか3曲続けたので、2人はこれでもかと息の合ったダンスを見せつけてしまい、3曲目が終わると同時に大喝采が沸き起こり、2人に惜しみ無い称賛と拍手が送られた。
それをひと通り受けてから仕草ひとつで制し、
「遅くなってすまなかった。ヴィオラ先生が体調を崩して倒れてしまい、アレックスとギルバートがそれに付き添って王城に行ってしまったのでね」
「まあ……」
「そうだったのですか…、それでお姿が」
生徒達が合点がいった、と口々に頷き合う。
「ヴィオラ先生の演奏には及ばないだろうが今宵始めてパートナーの手を取る者達への祝いくらいにはなったと思う。これ以降は無礼講だ。寮の垣根など無視して思う存分楽しんでくれ。そして来年度入学してくる君達の後輩に同じように、__いや、それ以上に楽しい一夜となるよう尽力してくれるものと信じている…_音楽を!」
アルフレッドの合図に楽団が演奏を再開し、1年生達が少しずつ広間の中央に出てきて踊り出す。
最初ぎこちなかったそれは、曲が進むにつれスムーズな流れに乗っていく。見事な手腕である。
そんな様を壇上で見ていた国王夫妻とその傍らに立つ王太子とミリディアナは半ば感心、半ば呆れてその様子を見遣っていた。
そうしてやがてダンスを終えた2人が国王夫妻の前に膝を折る。
「報告は聞いているわ。災難でしたねメイデン嬢」
「お言葉、痛みいります。ですが自分の油断が招いたこと。アルフレッドで、…王子様の機転により事なきを得た次第、心より感謝しています」
「まあ 、貴女がそう思ってくれているなら良いのだけどね。あんなのを学園教師として迎え入れちゃったこっちとしては耳が痛いのよね……ねぇ?顔を上げて?真っ直ぐ立って見せて頂戴。あぁ~~やっぱり可愛いわ!」
王妃のテンションにアリスティアは一瞬硬直したものの、
「あ こ このドレスは王妃殿下のお見立てだとかっ…?申し訳ありません、私のような身分の者が、このような…」
「あら、何言ってるの?それ、元々貴女用にデザインして作らせたのよ?」
「はっ?」
「アッシュがキメラに襲われた時のお礼よ。メイデン領にはそれなりに優遇措置やら見舞いやら送ったけど、貴女個人にはなかったでしょう?だからせめて夏用のドレスくらい贈ろうと思ってたのよ」
「は…ぁ、でもこのドレスは私が着るにはいささかー…」
「気にいらなかったの?」
「いいえ。とても素敵です」
単に高価過ぎてビビってるだけです。
「じゃあ、踊りにくかった?」
「いえ、素材が軽くてとても踊りやすかったです」
「ではパートナーが不足だったのかしら?」
……もはや遊ばれている気がする。
「滅相もございません」
「なら!なんの問題もないわね?まあ、貴女のサイズにピッタリ合わせてあるから返品しようがないんだけど♪じゃあまた後でね~」
楽しそうに言って王妃殿下は退出していった。
このパーティーは国公行事の夏の祝祭と学生のデビューを兼ねており、王城では大規模な夜会が開かれているので元々国王夫妻は一年生のデビューの祝辞を軽く述べに顔を出すだけなのだ。
それを見送り、ジュリアには簡単な説明と謝罪をしてあとは予定通り2年生の役員はパーティーのサポートに着いた。
「因みに時間が押してるし人手もないから」とその時点での私の着替えは却下された。
その後一時間程してパーティーもお開きになり、皆三々五々帰路に着き始めた頃(そのまま馬車で実家に帰る生徒と、一旦寮に戻る生徒とに分かれるが殆どはそのまま自宅へと戻るパターンだ)、私達もそれを見届けて漸く今日のお勤めは終わり__の筈だったのだが、突如としてドゴォ…ン!という音と共に強い振動が建物全体を揺るがせた。
「なっ…!?」
咄嗟に横にいたアリスティアを庇いながらアルフレッドが周囲に目を走らせる。
この後王城に行くのはいつもの面子+アリスティアだったのでジュリアは不承不承ながら寮に戻っていて、今はギルバートが王家の馬車を近くまで誘導しに行っているところだったのだがー…、
「殿下がた、お逃げ下さい!」
走って戻ってきた忠実な番犬は切羽詰まってそう叫んだ。
「落ち着け、何があった?」
「は。学園の礼拝堂の屋根の上にドラゴンの頭が出現致しました」
__は?
GWの方が忙しい職種なのと他の予定とでへろへろです😅
時間はずれるかもしれませんが、GW中だけでも連投を、と思っておりますm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「謝罪は要らないよ。でも、感謝してくれたら嬉しい」
「?ありがとうございます。助けていただいてー…」
正式な礼を取ろうとするアリスティアに、
「何も正式に礼しろって言ってるわけじゃないよ」
アルフレッドは苦笑しながら言う。
(じゃあ何だ)
意味がわからず知らずしかめっ面になる私に、
「お願いを、きいてほしい」
命令でも、何かの強制力でもなく、自らの意思で。
「僕の、手を取って?」
*・゜゜・*:.。..。.:*・:.。. .。.:*・゜゜・*
(で、なんでこうなるのよ……?)
遠い目をしていたアリスティアがアルフレッドにエスコートされて会場に足を踏み入れると、騒めいていた会場がぴた と静まり、次いでぅわ、ともおぉ、ともつかない歓声が沸き起こった。
「アルフレッド殿下にアリスティア様…!」
「な、なんであ、あの、アリスティア、様、が殿下と?!」
「アルフレッド殿下素敵…!」
「アリスティア様、なんてお美しい…」
「お二人とも、なんてお似合い…」
「あのドレス素晴らしいわね。もしかして殿下が贈られたのかしら?」
概ね好意的だが、一部妬みや値踏みが混じっている_…まあ、想定通りの反応だ。
簡単に言うとあのアルフレッドの〝お願い〟は「自分のエスコートでパーティーに出て欲しい」だったのだ。
「今はまだパーティーの真っ最中だ。本来なら始まってる筈のヴィオラ先生の演奏披露も始まらないうえ、僕やアレックス、ギルバートも会場にいない事に皆がざわつき出してるところかな。国王夫妻も王城のパーティーを一旦抜けてお出ましになっている頃合いなのに予定の演目も、ファーストダンスはアレックスとユリアナ皇女が広間の中央で一曲踊ったあと、そのまま一年生達のダンスタイムに入る予定なのにアレックスの姿もパーティー会場にない。このままじゃ騒ぎになる」
それはそうだろうが、
「ですが、今夜は一年生の為のパーティーで」
だからこそ、ユリアナ姫の相手を(渋々ながら)アレックスが務める事になっていた筈だ。
「〝一年生在籍時、家庭の事情等でパーティーに出席出来なかった二年生は翌年出席する資格がある〟って校則は知ってるよね?」
「!!」
「君がそのドレスで僕と登場すれば会場の視線はこっちに集まるし、僕たちがそのまま中央で一曲踊れば周りもあゝそういう事かって何事もなく踊り始めると思うんだよね__そう思わない?」
思うが、心から遠慮したい。
「……一曲だけ、踊ればよろしいんですね?」
その後すぐに解放してくれますよね?
「あ 言い忘れてたけどそのドレス母上の見立てだから。踊り終わったら目の前行って良く見せてあげて?」
「~~っ!」
「で、その後王宮行って善後策話し合う事になると思うからよろしく、あと」
(この腹黒王子……!ん?あと?何?)
「良く似合っている。とても綺麗だ、アリスティア・メイデン……__無事で良かった」
本当に何の含みもなく言われた言葉に、
「っ!…_ありがとう、ございます」
あまりに予想外のところから来たので声がひっくり返ったアリスティアだった。
この腹黒王子、と心中で歯噛みしながらもぎこちなく微笑む様は可愛いらしくも初々しくも見る者には映り、
「そういえば昨年、アリスティア様は父男爵様のご病気でパーティーに出ておられなかったですものね」
「そういえば…そうでしたわ。ですからこのパーティーにアルフレッド殿下自らが手を引いて来られたのですね、流石ですわ」
「アレックス様は急用でお出ましになれなくなったとか…」
ちらり、と豪華ではあるが初々しい体型にはいささか背伸びし過ぎでは?と言いたくなるようなドレスで待ちぼうけをくわされた隣国の皇女様を見遣ればギリギリと歯軋りが聞こえてきそうな顔で会場の視線を総浚いしている2人を睨み付けている。
そんな様子を清々した様子で見遣り、
「ま、仕方ない事ですわね」
「アレックス様もあまり乗り気ではありませんでしたもの」
と周りはあっさりユリアナの存在を意識から追いやった。
いくら身分が高くとも、元々人望がなければこんなものなのだ。
その人望があり、もう一人の恩人である前生徒会長だが、先程オルフェレウス・ヴィオラが牢に収監されたのを見届けてから保健室にノエルを連れて来た時にその話を聞き、
「そういう理屈なら私にもメイデン嬢をエスコートする権利はあると思うが…_まあいい、ここはアルフレッドに譲ろう。メイデン嬢、渡した招待状のパーティーには出てくれるだろう?」
「……はい」
ここは仕方ない。
アルフォンス・レイドとはアルフレッドのいない所で話さなければならないことがある。
返事をしたところに、
「にゃー」
とアルフォンスの腕に抱かれたノエルがこちらに移ってこようとしたが、
「今はまだ駄目だ。パーティーが終わるまで抱っこは待ちなさいノエル」
と優しくノエルを抱き直す。
案外、猫の扱いに慣れている。
(意外……)
と思いつつ、
「助けてくれてありがとうノエル、もうちょっと待っててね?」
と撫でてやると、
「にゃー…」
当のノエルは『仕方ねーな』という感じのニャーで返し、撫でているアリスティアの手にゴロゴロと顔を押しつけるに留めた。
「王宮へは私も一緒に行くからこのままノエルと共に控え室で待っているよ、安心して行っておいで」
と送り出された。
その間、アルフレッドは何も言わなかったが切なげに金色の髪に目を落としていた。
そのうち2人が踊り出すとわぁ…!という感嘆の声とほぅ…、という吐息が広間を満たす。
アルフレッドは当然だが、そのパートナーを務めるアリスティアもまたデビュタントとは思えない可憐で見事なステップを披露したからだ。
それはもう初心者のステップではない。
ふわふわした生地が広間の床に花を咲かせる様に軽やかに舞い、アルフレッドはそれを余裕をもって受け流しつつ、時には危なげなくしかも軽やかに自分の腕に受け止めて。
楽団が熱を入れて演奏したのか途切れることなく1曲どころか3曲続けたので、2人はこれでもかと息の合ったダンスを見せつけてしまい、3曲目が終わると同時に大喝采が沸き起こり、2人に惜しみ無い称賛と拍手が送られた。
それをひと通り受けてから仕草ひとつで制し、
「遅くなってすまなかった。ヴィオラ先生が体調を崩して倒れてしまい、アレックスとギルバートがそれに付き添って王城に行ってしまったのでね」
「まあ……」
「そうだったのですか…、それでお姿が」
生徒達が合点がいった、と口々に頷き合う。
「ヴィオラ先生の演奏には及ばないだろうが今宵始めてパートナーの手を取る者達への祝いくらいにはなったと思う。これ以降は無礼講だ。寮の垣根など無視して思う存分楽しんでくれ。そして来年度入学してくる君達の後輩に同じように、__いや、それ以上に楽しい一夜となるよう尽力してくれるものと信じている…_音楽を!」
アルフレッドの合図に楽団が演奏を再開し、1年生達が少しずつ広間の中央に出てきて踊り出す。
最初ぎこちなかったそれは、曲が進むにつれスムーズな流れに乗っていく。見事な手腕である。
そんな様を壇上で見ていた国王夫妻とその傍らに立つ王太子とミリディアナは半ば感心、半ば呆れてその様子を見遣っていた。
そうしてやがてダンスを終えた2人が国王夫妻の前に膝を折る。
「報告は聞いているわ。災難でしたねメイデン嬢」
「お言葉、痛みいります。ですが自分の油断が招いたこと。アルフレッドで、…王子様の機転により事なきを得た次第、心より感謝しています」
「まあ 、貴女がそう思ってくれているなら良いのだけどね。あんなのを学園教師として迎え入れちゃったこっちとしては耳が痛いのよね……ねぇ?顔を上げて?真っ直ぐ立って見せて頂戴。あぁ~~やっぱり可愛いわ!」
王妃のテンションにアリスティアは一瞬硬直したものの、
「あ こ このドレスは王妃殿下のお見立てだとかっ…?申し訳ありません、私のような身分の者が、このような…」
「あら、何言ってるの?それ、元々貴女用にデザインして作らせたのよ?」
「はっ?」
「アッシュがキメラに襲われた時のお礼よ。メイデン領にはそれなりに優遇措置やら見舞いやら送ったけど、貴女個人にはなかったでしょう?だからせめて夏用のドレスくらい贈ろうと思ってたのよ」
「は…ぁ、でもこのドレスは私が着るにはいささかー…」
「気にいらなかったの?」
「いいえ。とても素敵です」
単に高価過ぎてビビってるだけです。
「じゃあ、踊りにくかった?」
「いえ、素材が軽くてとても踊りやすかったです」
「ではパートナーが不足だったのかしら?」
……もはや遊ばれている気がする。
「滅相もございません」
「なら!なんの問題もないわね?まあ、貴女のサイズにピッタリ合わせてあるから返品しようがないんだけど♪じゃあまた後でね~」
楽しそうに言って王妃殿下は退出していった。
このパーティーは国公行事の夏の祝祭と学生のデビューを兼ねており、王城では大規模な夜会が開かれているので元々国王夫妻は一年生のデビューの祝辞を軽く述べに顔を出すだけなのだ。
それを見送り、ジュリアには簡単な説明と謝罪をしてあとは予定通り2年生の役員はパーティーのサポートに着いた。
「因みに時間が押してるし人手もないから」とその時点での私の着替えは却下された。
その後一時間程してパーティーもお開きになり、皆三々五々帰路に着き始めた頃(そのまま馬車で実家に帰る生徒と、一旦寮に戻る生徒とに分かれるが殆どはそのまま自宅へと戻るパターンだ)、私達もそれを見届けて漸く今日のお勤めは終わり__の筈だったのだが、突如としてドゴォ…ン!という音と共に強い振動が建物全体を揺るがせた。
「なっ…!?」
咄嗟に横にいたアリスティアを庇いながらアルフレッドが周囲に目を走らせる。
この後王城に行くのはいつもの面子+アリスティアだったのでジュリアは不承不承ながら寮に戻っていて、今はギルバートが王家の馬車を近くまで誘導しに行っているところだったのだがー…、
「殿下がた、お逃げ下さい!」
走って戻ってきた忠実な番犬は切羽詰まってそう叫んだ。
「落ち着け、何があった?」
「は。学園の礼拝堂の屋根の上にドラゴンの頭が出現致しました」
__は?
410
お気に入りに追加
1,531
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします
猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。
元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。
そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。
そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。
ヒロインに転生したけどヒロインやる気はありません〜ピンクの髪ってバカっぽくてなんかヤだ。
詩海猫
ファンタジー
入学式の前日に前世の記憶が戻ったけど、私の性格はヒロインに向いてません。この乙女ゲームの世界観に馴染めなくて、すぐ投げちゃったもの。
*タイトル変えるかも知れません、仮のままなので*
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる