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火のドラゴン、目覚める 1

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いつもの時間に更新間に合わなくてすみません!!
GWの方が忙しい職種なのと他の予定とでへろへろです😅
時間はずれるかもしれませんが、GW中だけでも連投を、と思っておりますm(_ _)m



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「謝罪は要らないよ。でも、感謝してくれたら嬉しい」
「?ありがとうございます。助けていただいてー…」
正式な礼を取ろうとするアリスティアに、
「何も正式に礼しろって言ってるわけじゃないよ」
アルフレッドは苦笑しながら言う。

(じゃあ何だ)
意味がわからず知らずしかめっ面になる私に、
「お願いを、きいてほしい」
命令でも、何かの強制力でもなく、自らの意思で。
「僕の、手を取って?」






 *・゜゜・*:.。..。.:*・:.。. .。.:*・゜゜・*

(で、なんでこうなるのよ……?)
遠い目をしていたアリスティアがアルフレッドにエスコートされて会場に足を踏み入れると、騒めいていた会場がぴた と静まり、次いでぅわ、ともおぉ、ともつかない歓声が沸き起こった。

「アルフレッド殿下にアリスティア様…!」
「な、なんであ、あの、アリスティア、様、が殿下と?!」
「アルフレッド殿下素敵…!」
「アリスティア様、なんてお美しい…」
「お二人とも、なんてお似合い…」
「あのドレス素晴らしいわね。もしかして殿下が贈られたのかしら?」
概ね好意的だが、一部妬みや値踏みが混じっている_…まあ、想定通りの反応だ。

簡単に言うとあのアルフレッドの〝お願い〟は「自分のエスコートでパーティーに出て欲しい」だったのだ。
「今はまだパーティーの真っ最中だ。本来なら始まってる筈のヴィオラ先生の演奏披露も始まらないうえ、僕やアレックス、ギルバートも会場にいない事に皆がざわつき出してるところかな。国王夫妻も王城のパーティーを一旦抜けてお出ましになっている頃合いなのに予定の演目も、ファーストダンスはアレックスとユリアナ皇女が広間の中央で一曲踊ったあと、そのまま一年生達のダンスタイムに入る予定なのにアレックスの姿もパーティー会場にない。このままじゃ騒ぎになる」
それはそうだろうが、
「ですが、今夜は一年生の為のパーティーで」
だからこそ、ユリアナ姫の相手を(渋々ながら)アレックスが務める事になっていた筈だ。

「〝一年生在籍時、家庭の事情等でパーティーに出席出来なかった二年生は翌年出席する資格がある〟って校則は知ってるよね?」
「!!」
「君がそのドレスで僕と登場すれば会場の視線はこっちに集まるし、僕たちがそのまま中央で一曲踊れば周りもあゝそういう事かって何事もなく踊り始めると思うんだよね__そう思わない?」
思うが、心から遠慮したい。
「……一曲だけ、踊ればよろしいんですね?」
その後すぐに解放してくれますよね?
「あ 言い忘れてたけどそのドレス母上の見立てだから。踊り終わったら目の前行って良く見せてあげて?」
「~~っ!」
「で、その後王宮行って善後策話し合う事になると思うからよろしく、あと」
(この腹黒王子……!ん?あと?何?)
「良く似合っている。とても綺麗だ、アリスティア・メイデン……__無事で良かった」
本当に何の含みもなく言われた言葉に、
「っ!…_ありがとう、ございます」
あまりに予想外のところから来たので声がひっくり返ったアリスティアだった。



この腹黒王子、と心中で歯噛みしながらもぎこちなく微笑む様は可愛いらしくも初々しくも見る者には映り、
「そういえば昨年、アリスティア様は父男爵様のご病気でパーティーに出ておられなかったですものね」
「そういえば…そうでしたわ。ですからこのパーティーにアルフレッド殿下自らが手を引いて来られたのですね、流石ですわ」
「アレックス様は急用でお出ましになれなくなったとか…」
ちらり、と豪華ではあるが初々しい体型にはいささか背伸びし過ぎでは?と言いたくなるようなドレスで待ちぼうけをくわされた隣国の皇女様を見遣ればギリギリと歯軋りが聞こえてきそうな顔で会場の視線を総浚いしている2人を睨み付けている。
そんな様子を清々した様子で見遣り、
「ま、仕方ない事ですわね」
「アレックス様もあまり乗り気ではありませんでしたもの」
と周りはあっさりユリアナの存在を意識から追いやった。
いくら身分が高くとも、元々人望がなければこんなものなのだ。

その人望があり、もう一人の恩人である前生徒会長だが、先程オルフェレウス・ヴィオラが牢に収監されたのを見届けてから保健室にノエルを連れて来た時にその話を聞き、
「そういう理屈なら私にもメイデン嬢をエスコートする権利はあると思うが…_まあいい、ここはアルフレッドに譲ろう。メイデン嬢、渡した招待状のパーティーには出てくれるだろう?」
「……はい」
ここは仕方ない。
アルフォンス・レイドとはアルフレッドのいない所で話さなければならないことがある。
返事をしたところに、
「にゃー」
とアルフォンスの腕に抱かれたノエルがこちらに移ってこようとしたが、
「今はまだ駄目だ。パーティーが終わるまで抱っこは待ちなさいノエル」
と優しくノエルを抱き直す。
案外、猫の扱いに慣れている。
(意外……)
と思いつつ、
「助けてくれてありがとうノエル、もうちょっと待っててね?」
と撫でてやると、
「にゃー…」
当のノエルは『仕方ねーな』という感じのニャーで返し、撫でているアリスティアの手にゴロゴロと顔を押しつけるに留めた。
「王宮へは私も一緒に行くからこのままノエルと共に控え室で待っているよ、安心して行っておいで」
と送り出された。

その間、アルフレッドは何も言わなかったが切なげに金色の髪に目を落としていた。



そのうち2人が踊り出すとわぁ…!という感嘆の声とほぅ…、という吐息が広間を満たす。
 アルフレッドは当然だが、そのパートナーを務めるアリスティアもまたデビュタントとは思えない可憐で見事なステップを披露したからだ。

それはもう初心者のステップではない。

ふわふわした生地が広間の床に花を咲かせる様に軽やかに舞い、アルフレッドはそれを余裕をもって受け流しつつ、時には危なげなくしかも軽やかに自分の腕に受け止めて。
楽団が熱を入れて演奏したのか途切れることなく1曲どころか3曲続けたので、2人はこれでもかと息の合ったダンスを見せつけてしまい、3曲目が終わると同時に大喝采が沸き起こり、2人に惜しみ無い称賛と拍手が送られた。

それをひと通り受けてから仕草ひとつで制し、
「遅くなってすまなかった。ヴィオラ先生が体調を崩して倒れてしまい、アレックスとギルバートがそれに付き添って王城に行ってしまったのでね」
「まあ……」
「そうだったのですか…、それでお姿が」
生徒達が合点がいった、と口々に頷き合う。
「ヴィオラ先生の演奏には及ばないだろうが今宵始めてパートナーの手を取る者達への祝いくらいにはなったと思う。これ以降は無礼講だ。寮の垣根など無視して思う存分楽しんでくれ。そして来年度入学してくる君達の後輩に同じように、__いや、それ以上に楽しい一夜いちやとなるよう尽力してくれるものと信じている…_音楽を!」
アルフレッドの合図に楽団が演奏を再開し、1年生達が少しずつ広間の中央に出てきて踊り出す。
最初ぎこちなかったそれは、曲が進むにつれスムーズな流れに乗っていく。見事な手腕である。

そんな様を壇上で見ていた国王夫妻とその傍らに立つ王太子とミリディアナは半ば感心、半ば呆れてその様子を見遣っていた。

 そうしてやがてダンスを終えた2人が国王夫妻の前に膝を折る。
「報告は聞いているわ。災難でしたねメイデン嬢」
「お言葉、痛みいります。ですが自分の油断が招いたこと。アルフレッドで、…王子様の機転により事なきを得た次第、心より感謝しています」
「まあ 、貴女がそう思ってくれているなら良いのだけどね。あんなのを学園教師として迎え入れちゃったこっちとしては耳が痛いのよね……ねぇ?顔を上げて?真っ直ぐ立って見せて頂戴。あぁ~~やっぱり可愛いわ!」
王妃のテンションにアリスティアは一瞬硬直したものの、
「あ こ このドレスは王妃殿下のお見立てだとかっ…?申し訳ありません、私のような身分の者が、このような…」
「あら、何言ってるの?それ、元々貴女用にデザインして作らせたのよ?」
「はっ?」
「アッシュがキメラに襲われた時のお礼よ。メイデン領にはそれなりに優遇措置やら見舞いやら送ったけど、貴女個人にはなかったでしょう?だからせめて夏用のドレスくらい贈ろうと思ってたのよ」
「は…ぁ、でもこのドレスは私が着るにはいささかー…」
「気にいらなかったの?」
「いいえ。とても素敵です」
単に高価過ぎてビビってるだけです。
「じゃあ、踊りにくかった?」
「いえ、素材が軽くてとても踊りやすかったです」
「ではパートナーが不足だったのかしら?」
……もはや遊ばれている気がする。
「滅相もございません」
「なら!なんの問題もないわね?まあ、貴女のサイズにピッタリ合わせてあるから返品しようがないんだけど♪じゃあまた後でね~」
楽しそうに言って王妃殿下は退出していった。
このパーティーは国公行事の夏の祝祭と学生のデビューを兼ねており、王城では大規模な夜会が開かれているので元々国王夫妻は一年生のデビューの祝辞を軽く述べに顔を出すだけなのだ。
それを見送り、ジュリアには簡単な説明と謝罪をしてあとは予定通り2年生の役員はパーティーのサポートに着いた。
「因みに時間が押してるし人手もないから」とその時点での私の着替えは却下された。

その後一時間程してパーティーもお開きになり、皆三々五々帰路に着き始めた頃(そのまま馬車で実家に帰る生徒と、一旦寮に戻る生徒とに分かれるが殆どはそのまま自宅へと戻るパターンだ)、私達もそれを見届けて漸く今日のお勤めは終わり__の筈だったのだが、突如としてドゴォ…ン!という音と共に強い振動が建物全体を揺るがせた。



「なっ…!?」
咄嗟に横にいたアリスティアを庇いながらアルフレッドが周囲に目を走らせる。
この後王城に行くのはいつもの面子+アリスティアだったのでジュリアは不承不承ながら寮に戻っていて、今はギルバートが王家の馬車を近くまで誘導しに行っているところだったのだがー…、
「殿下がた、お逃げ下さい!」
走って戻ってきた忠実な番犬は切羽詰まってそう叫んだ。
「落ち着け、何があった?」
「は。学園の礼拝堂の屋根の上にドラゴンの頭が出現致しました」

__は?
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