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ヒロイン、攫われる(変態注意)
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改稿加筆した所が保存ミスで直す前に戻ってしまった…明日の更新はできない可能性が高いです。色々限界💦⛩
書籍版は全年齢向けに直してありましたが、この作品は18Rです。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
普段の優しげな仮面をかなぐり捨てたオルフェレウスはアリスティアの髪をひとすくい手に取って口付けると、続いて頰、顎、首筋へと順に手にとっては口付けを落としていく。
やがて手が胸元に触れると躊躇なく制服に手をかけ胸元を覗かせると首すじに赤い痕を付け、そのまま首から胸へと舌を這わせ始めた。
ぴちゃ、ぴちゃ と殊更ゆっくり響く音がいかにも味わっているのを感じさせ淫猥さを増大させる。
「ああ、思った通り素晴らしい味ですね君の肌は。それにこの甘く芳しい香り__私を誘っているのですか?」
髪に顔を埋めるようにしながら両手は少女の乳房を包み込み、さわさわと撫で始める。
「ふふ、初めて会った時よりさらに大きくなって……まるで触って欲しいとおねだりしているようですね。しかもほら、触れるとこんな弾力で跳ね返してきてー…いけない子ですね」
そう言って服の上からとはいえ撫でるのでなく揉みはじめ、段々と力強く鷲掴むように揉みしだいて胸の感触を楽しむさまはどう見ても欲望にまみれ滾る雄そのものだというのに、紡ぐ台詞が妙に冷静なのがかえって不気味だ。
やがて男は少女の靴と靴下を脱がせ裸足にすると、一旦離れて僅かに乱れた髪、印を付けた首元、僅かに乱した制服から覗く胸元から爪先まで舐めるように視線を這わせて満足そうに、
「ああ_…本当に君はまさに。神が作り給うた芸術品ですね。これから君を穢す事が出来るかと思うと天にも昇る心地です」
そう言って今度は少女の片方の足首を持ち上げ、爪先から徐々に舌を這わせ始めた。
そのまま足首、脛、膝から更に上__スカートの中へと躊躇いなく手と舌とを這わせていく。
やがて男の頭部が少女のスカートに触れると男は躊躇いなく少女のスカートの中に自らの頭を潜らせ少女の内腿を舐め始めた。
「あぁ……ここも勿論まだ誰にも触れられてはいませんよね?良い匂いだ。肌も滑らかで吸い付くようで、、ふふ」
ちろりと舌を這わせる。
乙女の部分には触れず、そこにほど近い足の付け根の部分をじっくりと丹念に味わう。
彼女のこの部分が無垢なのは今この時が最後だからだ。
あと少ししたらこの部分は愛液と自分が放つ白濁に塗まみれて二度と無垢には戻れないのだから。
舌を這わせる音に、時折肌を吸い上げる音が混じる。
室内に響く音はどんどん遠慮がなくなっていく。
やがて少女の足の間から顔をあげた男は、再度少女の顔を両手で包みこむと、
「誓いのキスをしましょう。これで貴女は私のものー…そう、私は貴女の美しさの僕です。私が貴女に飽きるまでは_……」
本当に誠実そうに、慈しむように。
優しい声音で紡がれる言葉は残酷だった。
「ふふ。__目覚めた時君のここと私のものが繋がってたら、君はどんな顔をするのだろうね?」
そう、少女の足の間に布越しに自身を擦りつけながら言う男の顔は美しかったが醜悪だった。
男の顔が少女に触れるか 触れないかまで近付いた刹那、
「__させるかよ、ンなこと」
声と共に、首に剣先が突き付けられた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
時間は少し遡り、1時間ほど前。
寮に戻ったジュリアがアリスティアに"伝魔法"を送ったところ〝受取相手不在〟になった。
アリスティアが襲撃されてから過保護になっていたジュリアは部屋に着いた時には『着いたよって必ず報告して!』と言ったところ〝過保護すぎる〟と一蹴されたのだがその時のジュリアが余りにも真剣だった為『それでジュリアの気が済むなら』と折れてくれ、受け取ったジュリアが『わかった、おやすみ』と返して1日が終わる。それは2人の日課になっていた。
だが、今日はそれがなく、気になったジュリアから『アリス?戻ってないの?何かあった?』と何度か送り、さらには時間差をつけて『アリス?何でもいいから返事して!』と何度送っても返信はなかった。
不安になったジュリアが南寮の寮監に"伝魔法"で確認したところ、アリスはやはり寮に戻っていなかった。
ならばまだ学舎のどこかにいる事になる。
嫌な感じがして自分の住まう東寮の寮監にも報告し、念のためパーティー会場に行ってみようとしたところでアルフレッドとギルバートの2人に出会でくわした。
ジュリアは開口一番、
「アリスがいないんです!ご存知ありませんか?!」
と叫ぶように尋ねた。
「__どういうこと?」
冷静に返すアルフレッドに事の次第を説明し、ひと言付け加えた。
「それと…、ヴィオラ先生はもう会場入りされていますか?」
「いやーー」
と口籠るアルフレッドには何か閃く事があったらしい。
不快げに眉根を寄せたところに、
「ギリギリまで仕上げたいから と出番の直前まで会場にはいらっしゃらない、と伺っていますが」
とギルバートが付け足した途端、
「「!!」」
2人の顔色が変わった。
__嫌な予感が的中した__
そうジュリアの顔にも出ていたのだろう、アルフレッドは即座に反応し、
「僕とギルとアレクで彼女を探す。ーーバーネット嬢は僕らの代わりにパーティーでの表のフォローを頼む。アッシュ達には僕から"伝魔法"で伝えておく」
「っ…、わかりました。お願いします」
一瞬逡巡したジュリアだったが、ここは自分1人で動くより得策だと判断したらしい。
大人しく引き下がってパーティー会場へと向かった。
そうしてジュリアと別れた後、
「あの男がいそうなのは音楽室、教員室、絵も描いているとか言ったな…?なら美術室もか」
「殿下?何故ヴィオラ先生の居場所なのです?メイデン嬢を探すのでは?」
「同じ場所にいる可能性が高いからだ、見つければわかる」
ギルバートの疑問に感情無く答えるアルフレッドはいつになく余裕がなさそうだった。
それに気付いたギルバートは以降口を噤んだ。
「ギルは音楽室に向かえ。僕は教員室に行って訊いてみる」
同じようにアレックスに美術室に向かうよう"伝魔法"で指示し三手に別れた。10分とかからずに2人からは「音楽室、人の気配はありません」
「美術室、誰もいません」という報告が入りアルフレッドは舌打ちする。
「ギル、1つききたいんだがー…」
ひと通り話し終えると、
「ーそうか。わかった。お前も美術室に向かえ。それと__」
やはり、あの男が演奏する筈だった楽器は音楽室に置かれたままだという。
と いう事は。
ギルバートへの指示を終えると、アルフレッドは再度今しがたオルフェレウスの不在を確認した教師陣に向き直り、
「度々すみません、先生がた。もう1つお訊きしたいんですがー…」
その答えを聞き、確信したアルフレッドは美術室へと向かう。
既にギルバートも到着しており、アレックスはその横で困惑気味に立ち竦している。
「殿下、先程報告した通り美術室にはー…」
「ああ別にお前の報告を疑ってるわけじゃないよ。俺は正面からいく。アレックスは教室の後ろの出入り口、ギルは準備室側からー魔法の痕跡がないか辿れ。__僅かな残滓も見逃すな」
「「!っはっ!!」」
そういう事か と納得すれば2人の動きは早い。
アルフレッドは注意深く、抜刀したまま魔法の痕跡を探りつつ歩を進めていく。
室内は綺麗に掃除されており、人がいた形跡もない。
「………」
現在魔法が発動されているなら発動元を、何か魔法が使われた痕跡があるならその元を辿って。
どんなに上手く消した所で、魔力の残滓は残る。そしてアルフレッドは幼少の頃よりそれを感じ取るのに長けていた。
その筈 なのだがーー…、
「…?…」
(魔力の気配がない…?)
それが全くない事に違和感を覚え、アルフレッドは立ち竦んだ。
そこへ反対側の入り口から辿ってきたアレックス、準備室から繋がる扉を通ってきたギルバートも合流する。
「殿下、準備室には何も」
「こちらもです。魔力を使った痕跡は一切…」
この2人もアルフレッド程ではないが魔力の痕跡を辿るくらいは軽くこなせる使い手だ。
「妙だと思わないか?」
「「は?」」
「ここは魔法学園だ。皆、日常的に魔力を使う。多少の魔力残滓はあって然るべきじゃないか?」
「っ、確かにー…!」
言われてギルバートも気付く。
今日は終業式だけだが、普段は様々な生徒や教師が使っている筈である。
「ですが、美術の授業に魔法を使う事はあまりないですし、使われた魔法がごく微小なものなら」
感知出来なくて当然だとアレックスは言いたいらしい。
「最後の授業のあとは念入りに清掃して閉めきる__常ならな。ここは夏期休暇中使われない筈だから。だが、開いていただろう?」
アルフレッドの疑問に2人もはっとなる。
「そういえば、音楽室も開いていました。ヴィオラ先生が調律に使うから とー…」
「そう、そしてここも。〝ヴィオラ先生が絵の仕上げをしたい〟と言って開けさせていたそうだ __妙じゃないか?」
「確かに。楽器の調律と絵画は一緒には出来ませんし、ヴィオラ先生はパーティーで自分の出番ぎりぎりまでは音楽室に居ると言っておられた」
アレックスも不審げに眉を顰める。
「それに、さっき職員室で確認してきたんだが誰もオルフェレウスの描きかけの絵を見た事はないそうだ 。本人が〝自分はプロではないので人に見せられるようなものではない〟とか言ってたそうだがな。それにしたって描いてる所を多少目撃されるくらい、あっても良さそうなものじゃないか?ーー本当に描いていたならな」
若しくは、職員寮の自室のみで描いていた可能性もある。
それなら目撃されていなくてもおかしくはない。
おかしくはないが、なら何故美術室を開けておく必要があった?
奴は美術室に用があった、若しくは美術室で何かする予定だった。
そこから導き出される結論は。
今現在何かしているのだ__人に知られては憚られる何かを。
ミリディアナからの情報だけではわからない。
否、わかったとしても全て鵜呑みにするのは危険だ。
だから、アルフレッドは調査させた。
オルフェレウスの生きた形跡を。
生国の事は義姉が知っていたのでそこからどのように他国へ流れ、生活し、この国へやってきたのか。
概ね義姉のいう通りではあったが中にひとつ、看過出来ない情報があった。
そして、行方不明になったアリスティア。
その2つを合わせて最悪の想像に行き着いたアルフレッドは歯噛みする。
「くそっ…!」
バン、と拳を壁に叩きつけた時、聞き覚えのある声が響く。
「落ち着け。不要に感情的になれば見えている手掛かりも見逃すぞ」
「か、アルフォンスどの……!」
どうしてここに、と訊く前にシッと沈黙の合図を出され、発しかけた言葉を呑み込むと、
「私も奴とメイデン嬢の事を注視していたひとりなのでね__何か聞こえないか?」
その時、微かに耳に届いたのは小さな猫の鳴き声だった。
書籍版は全年齢向けに直してありましたが、この作品は18Rです。
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普段の優しげな仮面をかなぐり捨てたオルフェレウスはアリスティアの髪をひとすくい手に取って口付けると、続いて頰、顎、首筋へと順に手にとっては口付けを落としていく。
やがて手が胸元に触れると躊躇なく制服に手をかけ胸元を覗かせると首すじに赤い痕を付け、そのまま首から胸へと舌を這わせ始めた。
ぴちゃ、ぴちゃ と殊更ゆっくり響く音がいかにも味わっているのを感じさせ淫猥さを増大させる。
「ああ、思った通り素晴らしい味ですね君の肌は。それにこの甘く芳しい香り__私を誘っているのですか?」
髪に顔を埋めるようにしながら両手は少女の乳房を包み込み、さわさわと撫で始める。
「ふふ、初めて会った時よりさらに大きくなって……まるで触って欲しいとおねだりしているようですね。しかもほら、触れるとこんな弾力で跳ね返してきてー…いけない子ですね」
そう言って服の上からとはいえ撫でるのでなく揉みはじめ、段々と力強く鷲掴むように揉みしだいて胸の感触を楽しむさまはどう見ても欲望にまみれ滾る雄そのものだというのに、紡ぐ台詞が妙に冷静なのがかえって不気味だ。
やがて男は少女の靴と靴下を脱がせ裸足にすると、一旦離れて僅かに乱れた髪、印を付けた首元、僅かに乱した制服から覗く胸元から爪先まで舐めるように視線を這わせて満足そうに、
「ああ_…本当に君はまさに。神が作り給うた芸術品ですね。これから君を穢す事が出来るかと思うと天にも昇る心地です」
そう言って今度は少女の片方の足首を持ち上げ、爪先から徐々に舌を這わせ始めた。
そのまま足首、脛、膝から更に上__スカートの中へと躊躇いなく手と舌とを這わせていく。
やがて男の頭部が少女のスカートに触れると男は躊躇いなく少女のスカートの中に自らの頭を潜らせ少女の内腿を舐め始めた。
「あぁ……ここも勿論まだ誰にも触れられてはいませんよね?良い匂いだ。肌も滑らかで吸い付くようで、、ふふ」
ちろりと舌を這わせる。
乙女の部分には触れず、そこにほど近い足の付け根の部分をじっくりと丹念に味わう。
彼女のこの部分が無垢なのは今この時が最後だからだ。
あと少ししたらこの部分は愛液と自分が放つ白濁に塗まみれて二度と無垢には戻れないのだから。
舌を這わせる音に、時折肌を吸い上げる音が混じる。
室内に響く音はどんどん遠慮がなくなっていく。
やがて少女の足の間から顔をあげた男は、再度少女の顔を両手で包みこむと、
「誓いのキスをしましょう。これで貴女は私のものー…そう、私は貴女の美しさの僕です。私が貴女に飽きるまでは_……」
本当に誠実そうに、慈しむように。
優しい声音で紡がれる言葉は残酷だった。
「ふふ。__目覚めた時君のここと私のものが繋がってたら、君はどんな顔をするのだろうね?」
そう、少女の足の間に布越しに自身を擦りつけながら言う男の顔は美しかったが醜悪だった。
男の顔が少女に触れるか 触れないかまで近付いた刹那、
「__させるかよ、ンなこと」
声と共に、首に剣先が突き付けられた。
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
時間は少し遡り、1時間ほど前。
寮に戻ったジュリアがアリスティアに"伝魔法"を送ったところ〝受取相手不在〟になった。
アリスティアが襲撃されてから過保護になっていたジュリアは部屋に着いた時には『着いたよって必ず報告して!』と言ったところ〝過保護すぎる〟と一蹴されたのだがその時のジュリアが余りにも真剣だった為『それでジュリアの気が済むなら』と折れてくれ、受け取ったジュリアが『わかった、おやすみ』と返して1日が終わる。それは2人の日課になっていた。
だが、今日はそれがなく、気になったジュリアから『アリス?戻ってないの?何かあった?』と何度か送り、さらには時間差をつけて『アリス?何でもいいから返事して!』と何度送っても返信はなかった。
不安になったジュリアが南寮の寮監に"伝魔法"で確認したところ、アリスはやはり寮に戻っていなかった。
ならばまだ学舎のどこかにいる事になる。
嫌な感じがして自分の住まう東寮の寮監にも報告し、念のためパーティー会場に行ってみようとしたところでアルフレッドとギルバートの2人に出会でくわした。
ジュリアは開口一番、
「アリスがいないんです!ご存知ありませんか?!」
と叫ぶように尋ねた。
「__どういうこと?」
冷静に返すアルフレッドに事の次第を説明し、ひと言付け加えた。
「それと…、ヴィオラ先生はもう会場入りされていますか?」
「いやーー」
と口籠るアルフレッドには何か閃く事があったらしい。
不快げに眉根を寄せたところに、
「ギリギリまで仕上げたいから と出番の直前まで会場にはいらっしゃらない、と伺っていますが」
とギルバートが付け足した途端、
「「!!」」
2人の顔色が変わった。
__嫌な予感が的中した__
そうジュリアの顔にも出ていたのだろう、アルフレッドは即座に反応し、
「僕とギルとアレクで彼女を探す。ーーバーネット嬢は僕らの代わりにパーティーでの表のフォローを頼む。アッシュ達には僕から"伝魔法"で伝えておく」
「っ…、わかりました。お願いします」
一瞬逡巡したジュリアだったが、ここは自分1人で動くより得策だと判断したらしい。
大人しく引き下がってパーティー会場へと向かった。
そうしてジュリアと別れた後、
「あの男がいそうなのは音楽室、教員室、絵も描いているとか言ったな…?なら美術室もか」
「殿下?何故ヴィオラ先生の居場所なのです?メイデン嬢を探すのでは?」
「同じ場所にいる可能性が高いからだ、見つければわかる」
ギルバートの疑問に感情無く答えるアルフレッドはいつになく余裕がなさそうだった。
それに気付いたギルバートは以降口を噤んだ。
「ギルは音楽室に向かえ。僕は教員室に行って訊いてみる」
同じようにアレックスに美術室に向かうよう"伝魔法"で指示し三手に別れた。10分とかからずに2人からは「音楽室、人の気配はありません」
「美術室、誰もいません」という報告が入りアルフレッドは舌打ちする。
「ギル、1つききたいんだがー…」
ひと通り話し終えると、
「ーそうか。わかった。お前も美術室に向かえ。それと__」
やはり、あの男が演奏する筈だった楽器は音楽室に置かれたままだという。
と いう事は。
ギルバートへの指示を終えると、アルフレッドは再度今しがたオルフェレウスの不在を確認した教師陣に向き直り、
「度々すみません、先生がた。もう1つお訊きしたいんですがー…」
その答えを聞き、確信したアルフレッドは美術室へと向かう。
既にギルバートも到着しており、アレックスはその横で困惑気味に立ち竦している。
「殿下、先程報告した通り美術室にはー…」
「ああ別にお前の報告を疑ってるわけじゃないよ。俺は正面からいく。アレックスは教室の後ろの出入り口、ギルは準備室側からー魔法の痕跡がないか辿れ。__僅かな残滓も見逃すな」
「「!っはっ!!」」
そういう事か と納得すれば2人の動きは早い。
アルフレッドは注意深く、抜刀したまま魔法の痕跡を探りつつ歩を進めていく。
室内は綺麗に掃除されており、人がいた形跡もない。
「………」
現在魔法が発動されているなら発動元を、何か魔法が使われた痕跡があるならその元を辿って。
どんなに上手く消した所で、魔力の残滓は残る。そしてアルフレッドは幼少の頃よりそれを感じ取るのに長けていた。
その筈 なのだがーー…、
「…?…」
(魔力の気配がない…?)
それが全くない事に違和感を覚え、アルフレッドは立ち竦んだ。
そこへ反対側の入り口から辿ってきたアレックス、準備室から繋がる扉を通ってきたギルバートも合流する。
「殿下、準備室には何も」
「こちらもです。魔力を使った痕跡は一切…」
この2人もアルフレッド程ではないが魔力の痕跡を辿るくらいは軽くこなせる使い手だ。
「妙だと思わないか?」
「「は?」」
「ここは魔法学園だ。皆、日常的に魔力を使う。多少の魔力残滓はあって然るべきじゃないか?」
「っ、確かにー…!」
言われてギルバートも気付く。
今日は終業式だけだが、普段は様々な生徒や教師が使っている筈である。
「ですが、美術の授業に魔法を使う事はあまりないですし、使われた魔法がごく微小なものなら」
感知出来なくて当然だとアレックスは言いたいらしい。
「最後の授業のあとは念入りに清掃して閉めきる__常ならな。ここは夏期休暇中使われない筈だから。だが、開いていただろう?」
アルフレッドの疑問に2人もはっとなる。
「そういえば、音楽室も開いていました。ヴィオラ先生が調律に使うから とー…」
「そう、そしてここも。〝ヴィオラ先生が絵の仕上げをしたい〟と言って開けさせていたそうだ __妙じゃないか?」
「確かに。楽器の調律と絵画は一緒には出来ませんし、ヴィオラ先生はパーティーで自分の出番ぎりぎりまでは音楽室に居ると言っておられた」
アレックスも不審げに眉を顰める。
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若しくは、職員寮の自室のみで描いていた可能性もある。
それなら目撃されていなくてもおかしくはない。
おかしくはないが、なら何故美術室を開けておく必要があった?
奴は美術室に用があった、若しくは美術室で何かする予定だった。
そこから導き出される結論は。
今現在何かしているのだ__人に知られては憚られる何かを。
ミリディアナからの情報だけではわからない。
否、わかったとしても全て鵜呑みにするのは危険だ。
だから、アルフレッドは調査させた。
オルフェレウスの生きた形跡を。
生国の事は義姉が知っていたのでそこからどのように他国へ流れ、生活し、この国へやってきたのか。
概ね義姉のいう通りではあったが中にひとつ、看過出来ない情報があった。
そして、行方不明になったアリスティア。
その2つを合わせて最悪の想像に行き着いたアルフレッドは歯噛みする。
「くそっ…!」
バン、と拳を壁に叩きつけた時、聞き覚えのある声が響く。
「落ち着け。不要に感情的になれば見えている手掛かりも見逃すぞ」
「か、アルフォンスどの……!」
どうしてここに、と訊く前にシッと沈黙の合図を出され、発しかけた言葉を呑み込むと、
「私も奴とメイデン嬢の事を注視していたひとりなのでね__何か聞こえないか?」
その時、微かに耳に届いたのは小さな猫の鳴き声だった。
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