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イベント回避、成功
しおりを挟むはぁ、無事回避出来てよかった…
何しろあのパーティーは、
〝声を掛けて来るのが早い順=ヒロインに対して好感度が高い〟とされ、またそれに
▶︎応じる
▶︎応じない
を選択する事により、後の好感度の調整が可能、且つそれに伴う数値の変動も大きいという、困ったイベントなのだ。
ゲームのイベントとしてはもちろんだが、それを抜きにしても声を掛けられたり踊ったりは面倒だ。
自分は婚約者を探しているわけではないのだから。
でも、そもそもこの場面で断るって現実にあり得なくない?
ゲームなら断っても「そっか、じゃあまた後で」とかにこやかに颯爽と去ってったりするけど…__現実でやったらアウトだろ、それ。
なので私は元々出ないつもりでいた。入学前から(だって対象が難だし)。
だからお父様はじめ家族には「こういう設定でいきますのでお願いしますね」とあらかじめお願いしておいたし、このイベントに向けての準備もしてなかった(学園では)。
学園側に断るのにちょっと苦労するかも?と思ったが予想外の襲撃にお父様が突撃してきてくれたので、存外簡単に許可は降りた。
ただ、ジュリアみたいな友人達が出来る事は想定してなかったのでちょっと迷った。
だが、日もなかったしジュリアには「良かったらうちの領地でのお披露目パーティーに来て?大したもてなしは出来ないと思うけど、予定があえば」と声を掛けるに留めた(因みにジュリアからは速攻「絶対行くわ!!」と返ってきた)。
イベントに参加せずに済んだことでアリスティアはご満悦だったがそうはいかなかったのが生徒会だ。
他の生徒会メンバーはもちろん会長であるアルフォンスも気になったようで、
「メイデン嬢は何故パーティーに出ないんだ?まさかまた何かあったのか?」
と確認してきたほどだ。
やらかしている自覚はあっても彼らも“ヒロインがパーティーイベントに出ない“などという行動は予測できず、調べる暇もなかったので、
「いえ、お父上が体調を崩されたので急ぎ実家に戻るとの事でした」
と目を白黒させながら知っている話を答える他なかった。
だが、彼らの試練は終わらない。
夏期休暇に入ってすぐ、予想通りミセス・ラッセルが王太子その他当事者らに確認したところアリスティアに仕出かした件は当たり前だが事実だったのでー…当然、怒りくるって特大の雷を落とされた。
「アレックスにギルバート、それにアルフレッド殿下。教師として非常に残念な事ですがーー貴方がたは女性に対しての振る舞いがまるでなっていらっしゃらないようですね?」
「申し訳ありません」
「…騎士としてあるまじき事だったと反省しきりです」
「ぼ、いや私はただー….!」
馬鹿、やめとけ。
とは周り全員の一致するところだったが残念ながらアレックスには届かなかったらしい。
「お黙りなさい!誰が発言して良いと言いました?!」
ーーこの女性には逆効果なのだから。
「アッシュバルト殿下。王太子ともあろう方が権力をふりかざして行儀見習いで預かったご令嬢に対して差別的な振る舞いをなさった事、非常に残念です」
と声だけは落ち着いているが纏うオーラが何ていうか段々ー…なんだろう、背中に炎がみえる。
「それにミリディアナ嬢にカミラ嬢!貴女がたも同時に城に滞在していたそうですね?何故フォローのひとつも入れて差し上げなかったのです?」
ピシリ、と手に持つ棒状の鞭がしなる。怖い。
「2人には口を出すな、と私が言ったのです。責任は私がー…」
「王太子という身分があるとはいえ、令嬢1人の人生にまだいち学生でしかない貴方がどんな責任を取れると言うのです!そもそも行儀見習いにあげるならどうして同じ釣り合いのご令嬢がた同士に分ける事くらいしなかったのです?そうすればアリスティア嬢だけが不当に扱われる事もなかったのではありませんか?」
「そ、それはー…、」
単に彼女を観察する為だったので考えてませんでした。
とは言えない。言えないから黙るしかない。
5人は姿勢良く立ったまま(アレックスに至っては途中から正座で)、ひたすらマダムの尤もな叱責を受け続けた。
そしてへろへろになった彼等に次に控えていた難題は"メイデン男爵家への謝罪"。
メイデン男爵への謝罪は加害者エレノアの父 ナノルグ伯爵、学園長、王家の順で行く事になったが先頭をきったナノルグ伯爵がやらかしてくれた。
さすが令嬢モドキの親ー…もとい アルフレッド言うところの〝権力志向の真っ黒ジジイ〟と呼ばれるだけあって謝罪モドキとしか言い様がなかった。
それはそれは金ぴか豪華な四頭立ての馬車で乗り付け、(筋肉より脂肪が多いので締まらない)胸を張って偉そうにメイデン男爵家の前に降り立ったが、
「娘を襲撃した者の親が謝罪に来るとは聞いていたが思い違いだったらしいですな。謝罪するつもりの人間がこんな勲章でも貰いに来たような格好で来るはずがないし私は貴方を知らん。訪ねる家をお間違いのようだ」
と門前払いをくった。
ナノルグ伯爵は地団駄を踏んで激怒したが周囲の領民の白い目に気付き不承不承引き返した。
メイデン男爵は速攻で学園に向けて、
「あんなに偉そうに踏ん反り返ってやって来る謝罪を受けるつもりはないので二度と来ないでくれ」
と伝魔法を入れ、それを受け取って仰天した学園長が慌てて伯爵に確認を取ると、
「舐められてはいけないと思いましてな」
などと抜かして凱旋した英雄みたいに偉そうにメイデン男爵領入りした事がわかり、頭を抱えて王室に報告したところ王太子達はまたも頭痛を覚えたが、即刻ナノルグ伯爵の元にマダム・ラッセルを派遣しナノルグ伯爵に〈きちんとした謝罪のしかた〉を叩き込み、「改めて謝罪したい」と訪問の意を伺うと、
「娘は学園を辞めさせるから謝罪はいらん。体調が余計に悪化するし迷惑なので来ないでくれ」
という返信と共に娘の退寮手続きと退園の意を学園の事務統括に伝えて来た為どうにかもう1度だけ、と頼み込んでナノルグ伯、学園長、マダム・ラッセル、それに王家の使者が纏めて謝罪に行くという構図になり、これにはさすがにナノルグ伯も縮こまるほかなかった。
何回も相手をするのが面倒だと思った男爵は「謝罪は受け取るが娘が学園を続けるかは本人に任せる」と とっとと追い返した。
そんな一連の出来事に深々と嘆息し、
「なんなんだ…、」
と独り呟く王太子に返ってくる声はなかった。
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