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「「え」」
と待ったをかけたのは当の二年生とゼノの二人。

「そこまで言うなら」と不承不承各々がソロで、となったうえ「オーナーに頼まれた以上“嫌がって帰っちゃった子がいる“て言うのは不味いんだ、悪いけどモニター体験のアルバイトだと思ってやってみてくれないかな?」と困り顔のゼノに断りきれなかったのと、「俺がすぐ後から入って合流するから下手に動かないで待ってろ」と零が囁いてくれたからでもある。

入る順番は他の部員が入った後にゼノ、瑠璃、零の順でそれぞれ五分おきだと説明を受け、瑠璃は恐る恐る選んだ杖を手に持ち、迷路の中へ足を踏み入れた。
杖は八種類あり、それぞれに強い属性が違った。
火、水、土、風の四大属性に光、闇と“攻撃特化“に“防御特化“があり、瑠璃は迷うことなく“防御特化“を選んだ。
(だって、攻撃されたら怖いじゃない……!)
殺られる前に殺れ、という言葉もあるがそれもどうかと瑠璃は思う。

現れた敵を防御しながらてくてく進んで広い場所に出たので瑠璃はそこで零を待つことにする。
ここなら敵の接近が見通しやすいし、他のプレイヤーからも見つけやすいだろうと思ってのことだったが見通しが甘かったらしい。
一向に零は現れず、瑠璃は時間もわからない中(ゲーム内には持ち込み禁止だった)待ちぼうけをくらい、気づけば来た道もわからなくなっていた。
エリアマップはゲームエリア内のあちこちにあるが、マップは灯りの魔法で照らさなければ見えず、かといって下手に暗がりで光っていると敵を誘き寄せる。
一瞬で消して移動すれば良いのかもしれないが一瞬ではマップの内容を把握出来ないし、長々灯しながらじっくり見ておき近付いて来た敵は倒す、というやり方もなくはないが、ソロでそれは怖い__と結局暗がりで途方に暮れていた。





同じ頃、瑠璃とは比較的離れたエリアで剣(もちろんゲームコントローラーとしての剣だが)を手にした零とゼノが向かい合っていた。
剣はもちろん本物ではないが、睨みあう二人の目線にはまるでこれから決闘でもするかのような凄みがあった。
「__こんなとこに誘い込んでなんのつもりだ」
「誘い込むってほどのことでもないだろう、ただのクラブ活動じゃないか」
「よく言う。ベルナルド役の部員が怪我したのは偶然じゃないだろう?」
「さあ?運が悪かっただけじゃないのかい?」
「どの口が__いや、そういや昔からか、卑劣なのは、」
「黙れっ!」
零が言い終わる前に、ゼノが剣を上段に構えて振り下ろす。
それを僅かな動きだけで避けながら、
「この剣でそういう使い方はダメなんじゃなかったか?」
「本来はね。プレイヤー同士で傷つけあうことは出来ない。けど、同じ宝箱を目指してプレイヤー同士がかち合った場合などにプレイヤー同士の戦闘は可能だ。今日はプレオープンだからその機能はオフになっているはずだけれどね。君と僕がいる間だけちょっと手を回してオンにしてもらったんだ。まあ本物の剣と違ってただのHPの削り合いだから命の危険はない。ああ心配しなくて大丈夫だよ他の部員はもう出口に辿りついてるはずだし彼女ジュリエットにも危険はない__というわけでお相手願おうか、薄汚いハイエナくん?」
「__そういうことなら遠慮なく」
零も剣を水平に構え、ゼノに斬りかかった。







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