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「橅木さん、今日の放課後は練習あるかい?」
「ええ、もちろん。学園祭まで一週間を切ったんだもの。完璧に仕上げていかないと」
剣城瀬音が入部したことで不純な動機の希望者が殺到してしまうかと思われたクラブ活動だったが、零が「学園祭が終わるまで入部は受付けない、学園祭終了後にまだ入部を希望する生徒がいた場合、改めて入部テストを行う」という旨を担当教師に根回しした上で告知したため混乱は起きなかった。
(こういうとこ、ほんと抜け目ないんだよなぁ。)
態度も口も悪いし、ゼノ様への無礼も甚だしいが、こういう時は「零が副部長で良かった。」と感謝した瑠璃だった。
そして、当初はどうしても(元が大ファンなだけあって)ゼノとの会話に緊張してしまう瑠璃だったが、ゼノ本人があくまで自然体なのと、「あ そっか普通の学園生活送りたくてうちに来たんだもんね、私も普通の同級生として接しなきゃ」と反省もした瑠璃は随分自然にゼノと会話できるようになった。
「今日亜城君は用事があって遅れるって。先に部室に行ってようか?」
放課後、ごく自然にそう言ってきたゼノに、
「そうなんだ。__うん、先に行ってよっか」
少し考えたものの、瑠璃はゼノと連れ立って教室を出た。
部室に着くと、まだ誰も来ていない。
瑠璃は手早く明かりを灯けて部員が揃ったらすぐに練習できるよう、準備を整えていく。
ゼノも手伝ったので準備は直ぐに終わり、
「まだ誰も来てないし、ちょっとだけ二人で練習しない?」
とゼノが言ったので瑠璃は固まった。
「え?でも__」
今回、ゼノは足りないギャングの手下や警官など、足りない役の分全てをこなしてくれることになった__声色を全部変えて。
演技力が凄まじいことは知っていたが、ここまでとは思わず初めて目にした部員達は瑠璃を含め絶句していた。
「勿体ない」
「ゼノ君に脇役やらせるなんて」
と部員たちも言っていたが、
「僕は新参なんだから当然だよ。参加できるだけで楽しいし」
と笑顔で言ってのけたので部員達も引かざるを得ず、
「けど、こんなに凄いんなら声優もやれるんじゃない?」
と尋ねた部員に、
「うん。実は夢なんだ、キャストボイスやるのって。だから練習してるんだよ、いつオファーが来てもいいように」
と答えたゼノを瑠璃は拝みたい気分だった。
(凄い……ゼノ様が努力家なのは知ってたけど、あれだけの仕事をしながら学生生活でも手を抜かず、更に高みを目指してるなんて……!)
その夜、久々に友人とのチャット会話に熱が入ったのはいうまでもない。
が、
それはさておき。
「二人だけで練習」とは??
固まる瑠璃に、
「いや、実は僕がいつかやってみたい役にトニーって入ってるんだ。もちろん亜城くんの役だってわかってるけど一度練習での代役くらいなら許されるかなって……ダメかな?」
(あ なるほど)
「そういうことなら……けど、私で良いんですか?」
「もちろん。君がいいんだ」
「ええ、もちろん。学園祭まで一週間を切ったんだもの。完璧に仕上げていかないと」
剣城瀬音が入部したことで不純な動機の希望者が殺到してしまうかと思われたクラブ活動だったが、零が「学園祭が終わるまで入部は受付けない、学園祭終了後にまだ入部を希望する生徒がいた場合、改めて入部テストを行う」という旨を担当教師に根回しした上で告知したため混乱は起きなかった。
(こういうとこ、ほんと抜け目ないんだよなぁ。)
態度も口も悪いし、ゼノ様への無礼も甚だしいが、こういう時は「零が副部長で良かった。」と感謝した瑠璃だった。
そして、当初はどうしても(元が大ファンなだけあって)ゼノとの会話に緊張してしまう瑠璃だったが、ゼノ本人があくまで自然体なのと、「あ そっか普通の学園生活送りたくてうちに来たんだもんね、私も普通の同級生として接しなきゃ」と反省もした瑠璃は随分自然にゼノと会話できるようになった。
「今日亜城君は用事があって遅れるって。先に部室に行ってようか?」
放課後、ごく自然にそう言ってきたゼノに、
「そうなんだ。__うん、先に行ってよっか」
少し考えたものの、瑠璃はゼノと連れ立って教室を出た。
部室に着くと、まだ誰も来ていない。
瑠璃は手早く明かりを灯けて部員が揃ったらすぐに練習できるよう、準備を整えていく。
ゼノも手伝ったので準備は直ぐに終わり、
「まだ誰も来てないし、ちょっとだけ二人で練習しない?」
とゼノが言ったので瑠璃は固まった。
「え?でも__」
今回、ゼノは足りないギャングの手下や警官など、足りない役の分全てをこなしてくれることになった__声色を全部変えて。
演技力が凄まじいことは知っていたが、ここまでとは思わず初めて目にした部員達は瑠璃を含め絶句していた。
「勿体ない」
「ゼノ君に脇役やらせるなんて」
と部員たちも言っていたが、
「僕は新参なんだから当然だよ。参加できるだけで楽しいし」
と笑顔で言ってのけたので部員達も引かざるを得ず、
「けど、こんなに凄いんなら声優もやれるんじゃない?」
と尋ねた部員に、
「うん。実は夢なんだ、キャストボイスやるのって。だから練習してるんだよ、いつオファーが来てもいいように」
と答えたゼノを瑠璃は拝みたい気分だった。
(凄い……ゼノ様が努力家なのは知ってたけど、あれだけの仕事をしながら学生生活でも手を抜かず、更に高みを目指してるなんて……!)
その夜、久々に友人とのチャット会話に熱が入ったのはいうまでもない。
が、
それはさておき。
「二人だけで練習」とは??
固まる瑠璃に、
「いや、実は僕がいつかやってみたい役にトニーって入ってるんだ。もちろん亜城くんの役だってわかってるけど一度練習での代役くらいなら許されるかなって……ダメかな?」
(あ なるほど)
「そういうことなら……けど、私で良いんですか?」
「もちろん。君がいいんだ」
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