8 / 20
7 似たもの親子に請求します
しおりを挟む
「ロ、ロザリンダ……」
「何故ここに……」
先程までの能天気さはどこへやら、一転顔を青くさせて異口同音に呟く二人を前に(この公爵も馬鹿その四って呼んだ方がいいかな?)と思うサツキは笑顔を崩さずに、
「もちろん苦情を言いに。あれだけ変な考えを起こさないように申し上げておきましたのに、私の飲み物に強力な睡眠薬を仕込むなんて」
困ったふうに呟くロザリンダはもちろん困っているのでなく怒っている。
「!?」(馬鹿な、あれは無味無臭のはずだっ!)
「わ、私は知らん、やってない!」(くそ!やっぱり使えんやつだ!)
「あら?それは通りませんわよ。確かにやったのは馬鹿s、いえお兄様の独断のようですが、それを知らされた時叱責するのでも止めるのでもなく、一緒に確かめに行こうと乗り気だったではありませんか」
「な、い、一体いつから……」
「ほんとにお馬鹿さんですねぇ、私が部屋にいなくても邸内のあらゆるところに目が届くことくらいわかっておられたでしょうに__まさかこの部屋に魔法耐性まで備わってると思いましたの?あいにくとここが見つけられないのは凡人だけですわ」
「ぼ、凡人だ……と……?」
「凡人……?」
いまいち言われた言葉に反応できなかった似た者親子は首を傾げる仕草までそっくりだが、こういう仕草はどうせなら可愛い美少女にやって欲しかった。
(見苦しいから認識阻害かけちゃおうかな……いや、駄目だ)
この二人をよく知っていて尚且つ高位の魔法使いである自分には効かない。
どう足掻いたところでロザリンダの目には馬鹿その二とその四である。
(私より強い魔法使いにかけてもらえれば効くかも?)
効いたところでしょうがない事を考えつつ、
「あの薬入りのお茶は邸内の誰かが飲んでいますわ、副作用がなければ良いですわね?ああそうそう、今回こんな真似をしたペナルティとしてお兄様付きのメイドと従僕に認識阻害をかけさせていただきました」
「何だとっ?!」
自分付きのメイドと従僕がロザリンダの姿になってたら笑えないとセルトは目を剥くが、ロザリンダの知ったことではない。
「そうそう、お父様も共犯ですからペナルティを付けさせていただきます。罰金と側近が違う姿に見えるのとどっちが良いですか?」
「な、なあぁ__?!」(セルトが勝手にやったことではないか!)
怒鳴りだそうとした公爵に、ロザリンダは据わった目を向ける。
「__何か文句がお有りで?」
「い、いや……」(くそっ……!)
「では金貨百枚、私の部屋まで届けさせてください」
「金貨を百だと!?冗談も休みやすみ言えっ!」
「あら?この公爵家の資産からすれば大した額ではありませんでしょう?現にお父様の手元にはもしもの時のために(娘が次期王妃なのをいいことに特別減税枠みたいなの無理矢理設けてさんざん利益得て貯め込んでたよね?)_「わかったあぁ!」_ではよろしくお願いしますね、使用人の顔が皆私に見えないうちに」
「くっ……!」
くるりと背を向けて出ていく娘に公爵は歯軋りするが、何も出来はしない。
ロザリンダが出ていくと、
「父上……、よろしいのですか?」
「良いわけなかろうがっ!慰謝料の半分はお前の予算からさっ引くからな!」
「そ そんな?!」
「元はと言えばお前がナタリアという娘に現を抜かしたせいであろうがっ!」
「父上だってナタリア嬢は素晴らしい娘だと称賛していたではないですか!!」
「それはあの娘が希少魔法の使い手で何れは王太子妃になると思ったからだっ!お前は適度な距離を保つべきだったのだ!まるで愛人のように側に侍りおって!その結果がこれだ!」
公爵は侯爵家からの書簡をセルトに突き出す。
受け取って見たセルトの顔が驚愕に染まる。
「な、何故……?」
「何故だと?書状に全て書かれているだろうが!お前が婚約者として失格だと烙印を押されたのだ、それでもこの公爵家の嫡男か?!」
「なっ、だが今までは、」
「今まではロザリンダが次期王妃と見做されていたから見逃されていたのだ。あの婚約破棄騒動はもう国中に広まっておる、他の取り巻き令息たちも同じ運命だろうよ」
「ロザリンダの……?そんな、馬鹿な……」
自分より魔力も学力も優れた妹。
隙がなさすぎて可愛げがないと、あれでは婚約者に相手にされなくても仕方がないと、引きずり下ろすことに何の躊躇もなく。
これでこの家の次期主としての立場も安泰だと思っていた、一番上に立てたのだと__それが、ロザリンダが婚約者の座から降りた途端、自分も婚約を破棄されるなどと、そんな馬鹿な。
「こ、侯爵家ごときがそんな真似を__そうだ、父上抗議してください!」
「できるわけがなかろう、お前が婚約者である令嬢を蔑ろにした証拠が山のように提出されておるわこの愚か者がっ!」
セルトはがっくりと項垂れた。
「何故ここに……」
先程までの能天気さはどこへやら、一転顔を青くさせて異口同音に呟く二人を前に(この公爵も馬鹿その四って呼んだ方がいいかな?)と思うサツキは笑顔を崩さずに、
「もちろん苦情を言いに。あれだけ変な考えを起こさないように申し上げておきましたのに、私の飲み物に強力な睡眠薬を仕込むなんて」
困ったふうに呟くロザリンダはもちろん困っているのでなく怒っている。
「!?」(馬鹿な、あれは無味無臭のはずだっ!)
「わ、私は知らん、やってない!」(くそ!やっぱり使えんやつだ!)
「あら?それは通りませんわよ。確かにやったのは馬鹿s、いえお兄様の独断のようですが、それを知らされた時叱責するのでも止めるのでもなく、一緒に確かめに行こうと乗り気だったではありませんか」
「な、い、一体いつから……」
「ほんとにお馬鹿さんですねぇ、私が部屋にいなくても邸内のあらゆるところに目が届くことくらいわかっておられたでしょうに__まさかこの部屋に魔法耐性まで備わってると思いましたの?あいにくとここが見つけられないのは凡人だけですわ」
「ぼ、凡人だ……と……?」
「凡人……?」
いまいち言われた言葉に反応できなかった似た者親子は首を傾げる仕草までそっくりだが、こういう仕草はどうせなら可愛い美少女にやって欲しかった。
(見苦しいから認識阻害かけちゃおうかな……いや、駄目だ)
この二人をよく知っていて尚且つ高位の魔法使いである自分には効かない。
どう足掻いたところでロザリンダの目には馬鹿その二とその四である。
(私より強い魔法使いにかけてもらえれば効くかも?)
効いたところでしょうがない事を考えつつ、
「あの薬入りのお茶は邸内の誰かが飲んでいますわ、副作用がなければ良いですわね?ああそうそう、今回こんな真似をしたペナルティとしてお兄様付きのメイドと従僕に認識阻害をかけさせていただきました」
「何だとっ?!」
自分付きのメイドと従僕がロザリンダの姿になってたら笑えないとセルトは目を剥くが、ロザリンダの知ったことではない。
「そうそう、お父様も共犯ですからペナルティを付けさせていただきます。罰金と側近が違う姿に見えるのとどっちが良いですか?」
「な、なあぁ__?!」(セルトが勝手にやったことではないか!)
怒鳴りだそうとした公爵に、ロザリンダは据わった目を向ける。
「__何か文句がお有りで?」
「い、いや……」(くそっ……!)
「では金貨百枚、私の部屋まで届けさせてください」
「金貨を百だと!?冗談も休みやすみ言えっ!」
「あら?この公爵家の資産からすれば大した額ではありませんでしょう?現にお父様の手元にはもしもの時のために(娘が次期王妃なのをいいことに特別減税枠みたいなの無理矢理設けてさんざん利益得て貯め込んでたよね?)_「わかったあぁ!」_ではよろしくお願いしますね、使用人の顔が皆私に見えないうちに」
「くっ……!」
くるりと背を向けて出ていく娘に公爵は歯軋りするが、何も出来はしない。
ロザリンダが出ていくと、
「父上……、よろしいのですか?」
「良いわけなかろうがっ!慰謝料の半分はお前の予算からさっ引くからな!」
「そ そんな?!」
「元はと言えばお前がナタリアという娘に現を抜かしたせいであろうがっ!」
「父上だってナタリア嬢は素晴らしい娘だと称賛していたではないですか!!」
「それはあの娘が希少魔法の使い手で何れは王太子妃になると思ったからだっ!お前は適度な距離を保つべきだったのだ!まるで愛人のように側に侍りおって!その結果がこれだ!」
公爵は侯爵家からの書簡をセルトに突き出す。
受け取って見たセルトの顔が驚愕に染まる。
「な、何故……?」
「何故だと?書状に全て書かれているだろうが!お前が婚約者として失格だと烙印を押されたのだ、それでもこの公爵家の嫡男か?!」
「なっ、だが今までは、」
「今まではロザリンダが次期王妃と見做されていたから見逃されていたのだ。あの婚約破棄騒動はもう国中に広まっておる、他の取り巻き令息たちも同じ運命だろうよ」
「ロザリンダの……?そんな、馬鹿な……」
自分より魔力も学力も優れた妹。
隙がなさすぎて可愛げがないと、あれでは婚約者に相手にされなくても仕方がないと、引きずり下ろすことに何の躊躇もなく。
これでこの家の次期主としての立場も安泰だと思っていた、一番上に立てたのだと__それが、ロザリンダが婚約者の座から降りた途端、自分も婚約を破棄されるなどと、そんな馬鹿な。
「こ、侯爵家ごときがそんな真似を__そうだ、父上抗議してください!」
「できるわけがなかろう、お前が婚約者である令嬢を蔑ろにした証拠が山のように提出されておるわこの愚か者がっ!」
セルトはがっくりと項垂れた。
677
お気に入りに追加
1,608
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

あなたが捨てた私は、もう二度と拾えませんよ?
AK
恋愛
「お前とはもうやっていけない。婚約を破棄しよう」
私の婚約者は、あっさりと私を捨てて王女殿下と結ばれる道を選んだ。
ありもしない噂を信じ込んで、私を悪女だと勘違いして突き放した。
でもいいの。それがあなたの選んだ道なら、見る目がなかった私のせい。
私が国一番の天才魔導技師でも貴女は王女殿下を望んだのだから。
だからせめて、私と復縁を望むような真似はしないでくださいね?
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

もう、あなたを愛することはないでしょう
春野オカリナ
恋愛
第一章 完結番外編更新中
異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。
実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。
第二章
ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。
フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。
護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。
一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。
第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。
ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!
※印は回帰前の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる