6 / 20
5 崩壊の足音
しおりを挟む この町、名前はムウリカ。辺境に近いため城壁のような石積みの壁に囲まれた、この辺りでは中くらいの町。冒険者ギルドは町の中心よりも南に続く門に近い方にあった。
看板も町の中に溶け込むようにあり、建物に厳しい雰囲気はない。
町の中の食堂のような佇まいで、二階以上は宿屋のような作りに見える。
このギルドでは、森の中で倒した魔獣も何頭か買取に出すつもりだ。
扉は建物に対して少し大きめ。ドアノブはついてないタイプか、外からも内側からも押して開けるようになっている。
肩で扉を押して入る。
入ったのが昼前だったからか、そう広くないフロアーも閑散としていた。
どこでも看板が同じように、内装も同じなんだろうか、フロアーの奥にはカウンターが据えられていて、天井からは案内板がぶら下がっている。
意識しないで見ると模様に見える案内板も、意識してみるとその模様が意味のある文字として頭の中に入ってくる。
入り口に一番近いところには、「依頼窓口」と書かれている。その隣には1番、2番と書かれている。そして1番奥に「買取窓口」とあった。
今回の用事は、魔獣を売る事と、この辺りの依頼事情を探る事。
まず買取窓口に魔獣を売りに出す。ストレージから直接出すと驚かれることも多いので、この国でもそれなりに冒険者の中で出回っているらしいマジックバックと呼ばれるカバンを使っているフリをして、この辺りで中級と言われるくらいの冒険者がよく狩っている、魔獣を数匹カウンターに置いた。
この買取窓口の受付は、女の子ではなくガタイのいいおじさんだった。
「んっ!」
やたら無口なおじさんで、一言唸って手を出すだけ。
「?……あぁ、ギルドカードね」
今回買い取ってもらう魔獣はこの辺りで常時討伐依頼が出ているはず。ギルドランクをあげる時にも討伐ポイントは結構重要で、依頼を受けての討伐の方がポイントは高いが、常時討伐でもポイントはつく。
俺はともかくキールはこれ以上ランクを上げる気はないが、その気があるフリはしないと、駆け出しの冒険者でそれは変に目立ってしまうから。
無口なおじさんは何も言わずに俺が出した魔獣を、カウンターの後ろにある扉から外に出て行った。その際には引き換え用なのか模様が描かれた使い古された木札を渡された。
査定は少し時間が掛かりそうだ、その間に依頼票の確認をする事にする。
カウンターの対面の壁近くに依頼票を張り出す掲示板が設置されている。
どこのギルドでも依頼票はランク別に張り出されている。今の自分のランク以上の依頼は受けることができない。
この世界のギルドランクも日本でよく見たランク付と同じで、何故かアルファベットのA~FとS。王立学園でも1番上のクラス所謂特別クラスはSだった。
下からFEDCBAでS。アミュレット王国ではその存在が居ないようで聞いたことがなかったが、Sの上にはSSとかSSSとか、聞くと化け物のように強い冒険者が居る?居たらしい。
タリスマン帝国は勇者が造った国。その勇者は元々冒険者でSランク。悪魔だか魔王だかを倒したことで建国したそうだが、その魔王を倒した事で普通のSランクじゃ無いっしょ、って事でSSランクを正式に認証されて、亡くなった時にそれに栄誉が加わってSSSランクになったらしい。
この国の正史にそう記されてるとのこと。もちろんもっと勿体ぶった難しい言葉で長々と書かれているらしいのだが、キールがサクッと略して訳してくれた。
だから、この国では冒険者が他の国に比べて尊ばれているようだ。
そういえばサウスエンドでも国の運営に携わっていたいたのは冒険者ギルドを中心とした人々だったか。
キールは一応この世界の中で通用する身分として冒険者になることが1番手っ取り早いことだと言っていた。
日本と比べて戸籍制度のようなきちんとした考え方があまり発達していないようなこの世界でも、国の中を移動するときはもちろんのこと、ましてや違う国に行くのならば、ある程度自身のことを証明する手立てがないとスムーズに進むことはできない。
友好国の貴族であれば結構簡単に国境も超えられるが、それが敵対する国であれば逆に難しくなるし、同じ国の中でも、町や村がほぼ外部からの侵入に備えるために壁で囲まれて、外と隔絶されている内側に入るのに、人となりが分からなければ警戒されるのは必然だ。
そこでこの世界に張り巡らされている独立した組織として、それぞれの国の状況に左右されない、とされている冒険者ギルドが後ろ盾になって発行する身分証は、流浪する冒険者にとってなくてはならないものだし、それぞれの町や国にとっても、一々一人一人その人となりを調べないで済むことは、労力的にも大変有難いものなのだ。
その冒険者ギルドカード、そもそもギルドは仕事を斡旋する組織が発展したものであるから、仕事を割り振る時の、個人の能力を見る判断材料としてランクというものをつけたと考えられる。
仕事を受ける人のことをそもそもよく知っているならば、その様なものは要らないはずだが、全く知らない人物にその人の度量にあった仕事を斡旋する為に、どこに居てもわかりやすく判断する材料としてランクが付けられた。
だから、そもそも冒険者のランクは、冒険者ギルド内での仕事を割り振りする時の目安以外の何物でもなかったはずだが、そのランクが冒険者ギルドの外でも、知らない人物の信用度を図る材料として使われるようになったことで、より一層冒険者ギルドのカードは、ほかに身分の証明をすることが難しい者に取って、そのランクとともに重要な物となったのだ。
看板も町の中に溶け込むようにあり、建物に厳しい雰囲気はない。
町の中の食堂のような佇まいで、二階以上は宿屋のような作りに見える。
このギルドでは、森の中で倒した魔獣も何頭か買取に出すつもりだ。
扉は建物に対して少し大きめ。ドアノブはついてないタイプか、外からも内側からも押して開けるようになっている。
肩で扉を押して入る。
入ったのが昼前だったからか、そう広くないフロアーも閑散としていた。
どこでも看板が同じように、内装も同じなんだろうか、フロアーの奥にはカウンターが据えられていて、天井からは案内板がぶら下がっている。
意識しないで見ると模様に見える案内板も、意識してみるとその模様が意味のある文字として頭の中に入ってくる。
入り口に一番近いところには、「依頼窓口」と書かれている。その隣には1番、2番と書かれている。そして1番奥に「買取窓口」とあった。
今回の用事は、魔獣を売る事と、この辺りの依頼事情を探る事。
まず買取窓口に魔獣を売りに出す。ストレージから直接出すと驚かれることも多いので、この国でもそれなりに冒険者の中で出回っているらしいマジックバックと呼ばれるカバンを使っているフリをして、この辺りで中級と言われるくらいの冒険者がよく狩っている、魔獣を数匹カウンターに置いた。
この買取窓口の受付は、女の子ではなくガタイのいいおじさんだった。
「んっ!」
やたら無口なおじさんで、一言唸って手を出すだけ。
「?……あぁ、ギルドカードね」
今回買い取ってもらう魔獣はこの辺りで常時討伐依頼が出ているはず。ギルドランクをあげる時にも討伐ポイントは結構重要で、依頼を受けての討伐の方がポイントは高いが、常時討伐でもポイントはつく。
俺はともかくキールはこれ以上ランクを上げる気はないが、その気があるフリはしないと、駆け出しの冒険者でそれは変に目立ってしまうから。
無口なおじさんは何も言わずに俺が出した魔獣を、カウンターの後ろにある扉から外に出て行った。その際には引き換え用なのか模様が描かれた使い古された木札を渡された。
査定は少し時間が掛かりそうだ、その間に依頼票の確認をする事にする。
カウンターの対面の壁近くに依頼票を張り出す掲示板が設置されている。
どこのギルドでも依頼票はランク別に張り出されている。今の自分のランク以上の依頼は受けることができない。
この世界のギルドランクも日本でよく見たランク付と同じで、何故かアルファベットのA~FとS。王立学園でも1番上のクラス所謂特別クラスはSだった。
下からFEDCBAでS。アミュレット王国ではその存在が居ないようで聞いたことがなかったが、Sの上にはSSとかSSSとか、聞くと化け物のように強い冒険者が居る?居たらしい。
タリスマン帝国は勇者が造った国。その勇者は元々冒険者でSランク。悪魔だか魔王だかを倒したことで建国したそうだが、その魔王を倒した事で普通のSランクじゃ無いっしょ、って事でSSランクを正式に認証されて、亡くなった時にそれに栄誉が加わってSSSランクになったらしい。
この国の正史にそう記されてるとのこと。もちろんもっと勿体ぶった難しい言葉で長々と書かれているらしいのだが、キールがサクッと略して訳してくれた。
だから、この国では冒険者が他の国に比べて尊ばれているようだ。
そういえばサウスエンドでも国の運営に携わっていたいたのは冒険者ギルドを中心とした人々だったか。
キールは一応この世界の中で通用する身分として冒険者になることが1番手っ取り早いことだと言っていた。
日本と比べて戸籍制度のようなきちんとした考え方があまり発達していないようなこの世界でも、国の中を移動するときはもちろんのこと、ましてや違う国に行くのならば、ある程度自身のことを証明する手立てがないとスムーズに進むことはできない。
友好国の貴族であれば結構簡単に国境も超えられるが、それが敵対する国であれば逆に難しくなるし、同じ国の中でも、町や村がほぼ外部からの侵入に備えるために壁で囲まれて、外と隔絶されている内側に入るのに、人となりが分からなければ警戒されるのは必然だ。
そこでこの世界に張り巡らされている独立した組織として、それぞれの国の状況に左右されない、とされている冒険者ギルドが後ろ盾になって発行する身分証は、流浪する冒険者にとってなくてはならないものだし、それぞれの町や国にとっても、一々一人一人その人となりを調べないで済むことは、労力的にも大変有難いものなのだ。
その冒険者ギルドカード、そもそもギルドは仕事を斡旋する組織が発展したものであるから、仕事を割り振る時の、個人の能力を見る判断材料としてランクというものをつけたと考えられる。
仕事を受ける人のことをそもそもよく知っているならば、その様なものは要らないはずだが、全く知らない人物にその人の度量にあった仕事を斡旋する為に、どこに居てもわかりやすく判断する材料としてランクが付けられた。
だから、そもそも冒険者のランクは、冒険者ギルド内での仕事を割り振りする時の目安以外の何物でもなかったはずだが、そのランクが冒険者ギルドの外でも、知らない人物の信用度を図る材料として使われるようになったことで、より一層冒険者ギルドのカードは、ほかに身分の証明をすることが難しい者に取って、そのランクとともに重要な物となったのだ。
685
お気に入りに追加
1,608
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

あなたが捨てた私は、もう二度と拾えませんよ?
AK
恋愛
「お前とはもうやっていけない。婚約を破棄しよう」
私の婚約者は、あっさりと私を捨てて王女殿下と結ばれる道を選んだ。
ありもしない噂を信じ込んで、私を悪女だと勘違いして突き放した。
でもいいの。それがあなたの選んだ道なら、見る目がなかった私のせい。
私が国一番の天才魔導技師でも貴女は王女殿下を望んだのだから。
だからせめて、私と復縁を望むような真似はしないでくださいね?
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

もう、あなたを愛することはないでしょう
春野オカリナ
恋愛
第一章 完結番外編更新中
異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。
実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。
第二章
ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。
フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。
護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。
一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。
第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。
ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!
※印は回帰前の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる