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1 目覚めた私はロザリンダじゃないので。
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「お嬢様っ!お目覚めになりましたかっ?!」
「早く旦那様と奥様にご報告をっ!」
目が覚めた途端聞こえたのはこんな声と、目に入ったのは漫画で見るようなメイドさんや執事みたいな格好をした人たち。
やがて私の周りに集まってきたのは高そうなスーツやドレスに身を包んだ人たち__この子、ロザリンダの家族たちだ。
「良かった……!心配したのよ。このまま目覚めないかと__……」
涙ぐむ公爵夫人はじめ、
「一週間も目覚めぬから肝を冷やしたぞ……」
「全く……あまり心配をかけるな」
と公爵、兄と続いたので(あれ?ちゃんと心配されてる?ロザリンダって生家で放置されてたとかじゃなかったんだ?)と思ったのは束の間。
「今回お前が倒れたことでジルデ公との婚儀は延期してくださるそうだ。お前の体調が整ってからとな」
「なっ……!ジルデ公との話はなかったことになったのではないのですかっ?」
「そんなわけないだろう」
淡々と言い返してきたのはロザリンダの二つ上の兄だ。
そういやコイツもヒロインに攻略され済みだった……!
「王家が纏めた縁談だ、そうそうなかったことにはできない」
「私との七年にも及ぶ婚約を勝手になかったことにしたのはあちらではないですかっ!?」
あの馬鹿は“本当の恋を知った“とかポエマーなことをほざいて長年の婚約者で国内貴族の中でも唯一王家の色を持つロザリンダを無実の罪で貶めたのだ。
たかだか“子爵令嬢に嫌がらせをした“などという馬鹿げた理由をつけて(その理屈で言ったら彼奴の存在そのものが嫌がらせである)。
ロザリンダの剣幕に一瞬ぐ、と詰まった公爵だが、
「王族の決定に意を唱えることはできない。それにナタリア・ペイン令嬢は聖属性魔法の持ち主だ」
「だからなんですっ?!」
聖属性持ちがいかに珍しかろうと、ロダリンダも国内屈指の魔力持ちだ。
どちらかといえば攻撃向きだが、あらゆる属性の魔法を使いこなす。聖属性を除いてだが。
この世界、別に聖属性=聖女とされているわけではない。
聖女は様々な奇跡を齎した者に教会が与える称号で、その点から言えばあのナタリアはまだ何の功績もあげていない。
ただ王太子はじめ高位の貴族子息の気を引いただけだ。
乙女ゲームのヒロインという立場を利用して。
「ナタリア様は王太子妃、ゆくゆくは王妃になられる方だ。口を慎みなさい」
苦々しげながらナタリアを認める発言をする公爵に、ロザリンダは怒鳴り返す。
「あんな何の教育も受けていない方が王妃になれるわけがないではありませんか!」
「いい加減にしろっ!見苦しい、お前がそんなだから殿下に見捨てられたんだ!」
今度は兄が怒鳴ってきた。
「お前がそんな風に高飛車で高慢ちきだから、殿下はお前に嫌気がさしたんだ!」
「何ですって?」
ロザリンダが高慢な振る舞いを身に付けたのは、「王太子妃たるもの周囲を常に圧倒していなければいけない」と教育されたからだ。
もちろん時と場所を選ぶ必要はあるが、親しみやすさだけで国交はまわせない。
だが、ロザリンダの家族はどこまでも愚かだった。
「兄上の言う通りだよ姉上。少しはナタリア様を見習えば良かったんだ」
新たに部屋に入ってきたのはロザリンダの二つ下の弟(コイツも攻略され済み)だ。
(王太子妃教育がどれだけ過酷なものか、知ろうとしたこともない癖に……!)
私は手元にある毛布をギュ、と握りこんだ。
この世界はとにかく男に、いや男とヒロインに都合のいい世界だ。
悪役令嬢役を振られているロザリンダにはとことん分が悪い。
だが、この馬鹿どもはともかく公爵夫人ならば或いは__「お母さま……」と弱々しく助けを請う娘にしかし夫人は寄り添うことはなかった。
「これも貴族の務めよ。殿下は王族の色をお持ちだけどナタリア嬢は違う。お二人が結婚しても王家の色が生まれるとは限らないわ。だからこそ、貴女が必要なの」と金髪青目の夫人は慈愛溢れる聖母のように手を取って娘に言い聞かせ、瞬間、バッとその手を振り払われた。
「私に、子供を産むためだけに下衆どもにひたすら犯される日々を送れと?よくもそんなことが言えるわね!それでも親っ?!ロザリンダが王太子の婚約者になった事で散々良い思いをしてきたくせにっ!」
「ロザ、」
振り払われてショックを受ける母親を庇いながら、
「それはお前もだろう、ロザリンダ」
と兄がカッコつけて宣う。
「私は“誰よりも気高くあれ“と教育されてきたんですわ!ただの可愛い馬鹿な娘を望むなら、最初から婚約も妃教育もしなければ良かったでしょう!なのに何故王太子の我が儘の犠牲に私がならなければならないのです?!こんなのただの貧乏くじではありませんか!!」
「っ、それは」
ペラペラな理屈しか頭にない公爵子息は言葉に詰まるが、公爵が「とにかくお前の体調が戻り次第、お前をジルデ公の元へ送る。日程は追って知らせるから準備しておきなさい」と踵を返し、皆それに続いた。
私は「人でなしっ!全員地獄に落ちるといいわ!」と叫び返した。
(そんな準備、誰がするか!するなら別の準備よ!)
「早く旦那様と奥様にご報告をっ!」
目が覚めた途端聞こえたのはこんな声と、目に入ったのは漫画で見るようなメイドさんや執事みたいな格好をした人たち。
やがて私の周りに集まってきたのは高そうなスーツやドレスに身を包んだ人たち__この子、ロザリンダの家族たちだ。
「良かった……!心配したのよ。このまま目覚めないかと__……」
涙ぐむ公爵夫人はじめ、
「一週間も目覚めぬから肝を冷やしたぞ……」
「全く……あまり心配をかけるな」
と公爵、兄と続いたので(あれ?ちゃんと心配されてる?ロザリンダって生家で放置されてたとかじゃなかったんだ?)と思ったのは束の間。
「今回お前が倒れたことでジルデ公との婚儀は延期してくださるそうだ。お前の体調が整ってからとな」
「なっ……!ジルデ公との話はなかったことになったのではないのですかっ?」
「そんなわけないだろう」
淡々と言い返してきたのはロザリンダの二つ上の兄だ。
そういやコイツもヒロインに攻略され済みだった……!
「王家が纏めた縁談だ、そうそうなかったことにはできない」
「私との七年にも及ぶ婚約を勝手になかったことにしたのはあちらではないですかっ!?」
あの馬鹿は“本当の恋を知った“とかポエマーなことをほざいて長年の婚約者で国内貴族の中でも唯一王家の色を持つロザリンダを無実の罪で貶めたのだ。
たかだか“子爵令嬢に嫌がらせをした“などという馬鹿げた理由をつけて(その理屈で言ったら彼奴の存在そのものが嫌がらせである)。
ロザリンダの剣幕に一瞬ぐ、と詰まった公爵だが、
「王族の決定に意を唱えることはできない。それにナタリア・ペイン令嬢は聖属性魔法の持ち主だ」
「だからなんですっ?!」
聖属性持ちがいかに珍しかろうと、ロダリンダも国内屈指の魔力持ちだ。
どちらかといえば攻撃向きだが、あらゆる属性の魔法を使いこなす。聖属性を除いてだが。
この世界、別に聖属性=聖女とされているわけではない。
聖女は様々な奇跡を齎した者に教会が与える称号で、その点から言えばあのナタリアはまだ何の功績もあげていない。
ただ王太子はじめ高位の貴族子息の気を引いただけだ。
乙女ゲームのヒロインという立場を利用して。
「ナタリア様は王太子妃、ゆくゆくは王妃になられる方だ。口を慎みなさい」
苦々しげながらナタリアを認める発言をする公爵に、ロザリンダは怒鳴り返す。
「あんな何の教育も受けていない方が王妃になれるわけがないではありませんか!」
「いい加減にしろっ!見苦しい、お前がそんなだから殿下に見捨てられたんだ!」
今度は兄が怒鳴ってきた。
「お前がそんな風に高飛車で高慢ちきだから、殿下はお前に嫌気がさしたんだ!」
「何ですって?」
ロザリンダが高慢な振る舞いを身に付けたのは、「王太子妃たるもの周囲を常に圧倒していなければいけない」と教育されたからだ。
もちろん時と場所を選ぶ必要はあるが、親しみやすさだけで国交はまわせない。
だが、ロザリンダの家族はどこまでも愚かだった。
「兄上の言う通りだよ姉上。少しはナタリア様を見習えば良かったんだ」
新たに部屋に入ってきたのはロザリンダの二つ下の弟(コイツも攻略され済み)だ。
(王太子妃教育がどれだけ過酷なものか、知ろうとしたこともない癖に……!)
私は手元にある毛布をギュ、と握りこんだ。
この世界はとにかく男に、いや男とヒロインに都合のいい世界だ。
悪役令嬢役を振られているロザリンダにはとことん分が悪い。
だが、この馬鹿どもはともかく公爵夫人ならば或いは__「お母さま……」と弱々しく助けを請う娘にしかし夫人は寄り添うことはなかった。
「これも貴族の務めよ。殿下は王族の色をお持ちだけどナタリア嬢は違う。お二人が結婚しても王家の色が生まれるとは限らないわ。だからこそ、貴女が必要なの」と金髪青目の夫人は慈愛溢れる聖母のように手を取って娘に言い聞かせ、瞬間、バッとその手を振り払われた。
「私に、子供を産むためだけに下衆どもにひたすら犯される日々を送れと?よくもそんなことが言えるわね!それでも親っ?!ロザリンダが王太子の婚約者になった事で散々良い思いをしてきたくせにっ!」
「ロザ、」
振り払われてショックを受ける母親を庇いながら、
「それはお前もだろう、ロザリンダ」
と兄がカッコつけて宣う。
「私は“誰よりも気高くあれ“と教育されてきたんですわ!ただの可愛い馬鹿な娘を望むなら、最初から婚約も妃教育もしなければ良かったでしょう!なのに何故王太子の我が儘の犠牲に私がならなければならないのです?!こんなのただの貧乏くじではありませんか!!」
「っ、それは」
ペラペラな理屈しか頭にない公爵子息は言葉に詰まるが、公爵が「とにかくお前の体調が戻り次第、お前をジルデ公の元へ送る。日程は追って知らせるから準備しておきなさい」と踵を返し、皆それに続いた。
私は「人でなしっ!全員地獄に落ちるといいわ!」と叫び返した。
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