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プロローグ

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「大人になったら、結婚しようね」
「うん、しよう」
幼い頃交わした子供の約束。
それは本当に子供同士のたわいないままごとみたいなひとときだったけれど。
それを生暖かく見守っていた両家の親は元々仲良く家族ぐるみの付き合いもあり、家柄的に釣り合いも取れていて。
二人は同じ年で、仲良しで、つまるところ障害は何もなく。
子供同士の約束は、いつしか両家の当主が認める本物の婚約になった。
成長しても二人の仲睦まじさは変わらず、魔法学園に入学し結婚を意識する年頃になっても変わらずに、ーー いる筈 だった。
  


あのヒロインさえ、現れなければ。





私だって元々記憶があったわけではない。
学園に入学してヒロインを目にした途端、思い出したのだ。
彼女がヒロインなこと、そして自分の婚約者が、攻略対象の1人であること。
そして私は悪役令嬢ですらないモブ、攻略対象の婚約者ではあるけれど、悪役令嬢の取り巻きですらない。




けれど、望みはあった。
攻略対象の中でメインはもちろん王太子だし、それを含めて攻略対象は全部で5人。その中でも彼は伯爵家ではあるが次男だし美形だけれど5人の中では1番筋肉質(それでも細身だけれど)で卒業後はおそらく騎士団入り というタイプ。
ヒロインのタイプが王道ど真ん中なら彼に手は出さないのではないだろうか?

というのは儚い望み 
もとい 大間違いだった。
彼女は逆ハー狙いだったのだ。
婚約者を含め、攻略対象はそれはもう面白いくらいあっさりヒロインに堕ちていった。

そして、断罪劇の幕はあがったのだ。

貴族や来賓が集う華やかな卒業パーティー。そこで、王太子はじめ彼等は次々と婚約者に婚約破棄を突き付けた。4人目が終わると、目の前で彼が言ったのだ。

「お前のように取り澄まして可愛げのない女との結婚は御免だ!婚約は破棄させてもらう!」
「ーーやはりそうですか」
「縋っても無駄だ!俺はミラルカを愛してーーん?やはりだと?」
「はい。せめてこの場ではない所にしてほしい、と願っておりましたが、無駄だったようですね」
…せめてこんな派手な場でなかったら、やりようもあったものを。




馬鹿なひと。
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