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プロローグ
プロローグ
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俺は自分の顔が嫌いだった。
外人みたく白い肌、色素の薄い金茶色の髪、鼻はそんなに高くないが鼻筋は通ってた。
幼稚園では天使みたいだと無駄に可愛がられ、小学校では「綺麗」「ハーフだよね?」と女子たちにキャピキャピされて靴箱にいつも何か入れられていた。
中学に入ると最初こそ見た目につられて話しかけて来る奴がそれなりにいたが、俺のテンションが自分と合わないと知ると段々遠巻きになっていった。
割と偏差値の高い学校だったので成績の良い俺は「孤高(と周りが勝手に言っていた、その後に付いてた美少年云々は無視だ、無視!)」を貫けて楽だった。
が、高校に入るとこの無駄に整った顔は碌でも無いことの引き金になった。
「話しかけても返事もしてくれない」
「告白したらこっぴどく振られた、酷い」
「あいつカラオケ誘っても来ない、ノリが悪い」
そうやって誰かが嘆く度、悪態を吐く度に周囲の纏う空気が冷たくなっていく。
話しかけたって、いきなり連絡先聞かれたら絶句するだろ?お前はほいほい教えんのか。
告白されたって好きじゃなかったら断るだろ?OK必須ってなに。
カラオケは好きじゃないしお前誰だよ、まずは自己紹介から入るの基本じゃねぇ?
お前らは違うの?
断られて泣いたり、嘆いたりしたら正義かよ?
仲間にしてくれって俺が頼んだかよ?
そんな適度に周囲との距離が開いていくのを俯瞰し始めて入学から三か月。
「お、乙宮くん、て、頭良いよねっ?!べ、勉強、教えてくださいっ!」
そう顔を真っ赤にして叫んできた女子がいた。
話しかけて、ではない。
これは最早怒鳴り声だ。
「誰?」
同じクラスでも同中でもない。
薄い茶色の髪を肩口でふわふわさせながら自分の声のデカさに俯いてしまってる女子は純朴そうな雰囲気ながら、ナチュラルメイクはきっちりしていた。
「さ、三組の戸沢美久って言います。あ、あの私入学当初から乙宮くんに憧れててっ……!」
「ふーん前回のテスト総合何位?」
「きゅ、」
「九位?凄ぇじゃん」
因みに俺は十九位だった。
「きゅ、九十九位ですっ!」
「あ、そ……」
この学年は二〇〇人が定数だからほぼ真ん中だ、べつに悪い方じゃない。
「!あ、そうって……」
戸沢美久がき、と顔をあげた。
やっぱり気が強いな。
純朴そうなのは見せかけだろう。
「それで、なんで俺に憧れてるのと勉強教えるのが繋がんの?」
「そ、それはっ、好きな人に教えてもらえたら頑張れるんじゃないかって!」
憧れ通り越していきなり“好き“とか軽いな。
「あり得ねー」
「なっ、」
「俺はアンタの存在なんて今まで知らなかったのにアンタが俺のこと好きになって俺に教えてもらったら成績もあがりそうだから教えろって?何そのアンタ得のみの提案」
戸沢美久の顔がかぁっと醜悪に染まる。
「せ、成績まで暴露させといて……」
「いきなり勉強教えろとかかますからよっぽど切羽詰まってんのかと思って。けど、口頭での自己申告なんてほんとかどうかわかんないし気にしなくて良いんじゃない?」
順位が張り出されるのは五十位までだ、それ以降の順位なんて本人以外知りようがない。
「酷い……」
戸沢美久がボロボロと泣きだした。
(女優な泣き方だな)と俺は思ったが周囲にはそう見えなかったらしい。
「乙宮くん、酷い……」
「断るにしても、もう少し言い方があるじゃない?」
「戸沢さん、かわいそう……」
じゃあお前らが勉強教えてやれよ?
俺の成績下がったら誰か無条件で面倒みてくれんの?
俺はいつものことだと流したが、それが良くなかったらしい。
戸沢美久は社交的で人気のある生徒だったらしく、俺への風当たりが強くなった。
それだけでなく、戸沢美久の幼馴染というのが三年生にいたらしく俺はソイツから呼び出しを受けた。
呼び出された場所に行くと三年生が五人でこっちを睨んでいた。
(一年ひとり相手に五人かよ……)
友達多いアピールか?
「美久に謝れ」
「謝らなきゃいけないようなことはしてません」
「あんなに恥をかかせてあれだけ泣かせておいて何を言っている!美久は入学して初めてのテストは百五十七位だったんだぞ?!それを俺が指導して前回の問題や予想問題を出して一〇〇位以内に入ったんだ!入ったらお前に告白すると言ってな!」
「は?」
「その美久の努力をお前は無駄にしたうえに泣かせたんだ、わかってるのかっ!」
わかりたくねぇ。
「あのー、先輩?」
ちょっとやばそうな気もするが、黙っていても埒があかない。
「なんだ」
「先輩は好きでもなんでもない女子にいきなり告られて勉強教えてって言われたら無条件で引き受けるんですか?」
「そんなわけないだろう、きちんと断る。相手にも失礼だからな」
あれ?常識あるじゃん。
これならちゃんと話せば__、
「だが美久ならば別だ。無条件で引き受ける。断る選択肢はない」
__通じねぇ。
「美久が俺じゃなく君を頼ったのだから、君は協力して然るべきだろう、違うか?」
「違うに決まってんでしょ、何考えてんですか?それ仲の良い幼馴染だけで通じるルールであって俺には関係ありませんよね?」
正論を言っただけのつもりだったがこれが不味かったらしい。
この後この先輩どもに俺はボコボコにされた。
喧嘩に強くはないが大人しく泣き寝入りするようなタチでもなかったから、そのまま病院に行って医師に記録してもらって、警察に届けも出した。
結果、先輩たちの親から多額の治療費と慰謝料を引き出したが本人たちが謝罪に来ることはなく、俺もそのまま怪我が治っても高校には行かなかった。
良い成績とって、大人しくしていればやり過ごせると思ったのに。
(もう、何もかも面倒だ……)
綺麗な顔だとか、肌が女の子より綺麗だとか、線が細くてお人形さんみたいだとか。
(お人形みたいだから、気に入らなかったらボコって捨てていいってか?)
__自分の容姿が、本当に嫌いだった。
そのまま引き篭もってひたすらパソコンのネット上でだけ生きていた俺は、その生活すらそう長くは続かず、若くして死んだ。
外人みたく白い肌、色素の薄い金茶色の髪、鼻はそんなに高くないが鼻筋は通ってた。
幼稚園では天使みたいだと無駄に可愛がられ、小学校では「綺麗」「ハーフだよね?」と女子たちにキャピキャピされて靴箱にいつも何か入れられていた。
中学に入ると最初こそ見た目につられて話しかけて来る奴がそれなりにいたが、俺のテンションが自分と合わないと知ると段々遠巻きになっていった。
割と偏差値の高い学校だったので成績の良い俺は「孤高(と周りが勝手に言っていた、その後に付いてた美少年云々は無視だ、無視!)」を貫けて楽だった。
が、高校に入るとこの無駄に整った顔は碌でも無いことの引き金になった。
「話しかけても返事もしてくれない」
「告白したらこっぴどく振られた、酷い」
「あいつカラオケ誘っても来ない、ノリが悪い」
そうやって誰かが嘆く度、悪態を吐く度に周囲の纏う空気が冷たくなっていく。
話しかけたって、いきなり連絡先聞かれたら絶句するだろ?お前はほいほい教えんのか。
告白されたって好きじゃなかったら断るだろ?OK必須ってなに。
カラオケは好きじゃないしお前誰だよ、まずは自己紹介から入るの基本じゃねぇ?
お前らは違うの?
断られて泣いたり、嘆いたりしたら正義かよ?
仲間にしてくれって俺が頼んだかよ?
そんな適度に周囲との距離が開いていくのを俯瞰し始めて入学から三か月。
「お、乙宮くん、て、頭良いよねっ?!べ、勉強、教えてくださいっ!」
そう顔を真っ赤にして叫んできた女子がいた。
話しかけて、ではない。
これは最早怒鳴り声だ。
「誰?」
同じクラスでも同中でもない。
薄い茶色の髪を肩口でふわふわさせながら自分の声のデカさに俯いてしまってる女子は純朴そうな雰囲気ながら、ナチュラルメイクはきっちりしていた。
「さ、三組の戸沢美久って言います。あ、あの私入学当初から乙宮くんに憧れててっ……!」
「ふーん前回のテスト総合何位?」
「きゅ、」
「九位?凄ぇじゃん」
因みに俺は十九位だった。
「きゅ、九十九位ですっ!」
「あ、そ……」
この学年は二〇〇人が定数だからほぼ真ん中だ、べつに悪い方じゃない。
「!あ、そうって……」
戸沢美久がき、と顔をあげた。
やっぱり気が強いな。
純朴そうなのは見せかけだろう。
「それで、なんで俺に憧れてるのと勉強教えるのが繋がんの?」
「そ、それはっ、好きな人に教えてもらえたら頑張れるんじゃないかって!」
憧れ通り越していきなり“好き“とか軽いな。
「あり得ねー」
「なっ、」
「俺はアンタの存在なんて今まで知らなかったのにアンタが俺のこと好きになって俺に教えてもらったら成績もあがりそうだから教えろって?何そのアンタ得のみの提案」
戸沢美久の顔がかぁっと醜悪に染まる。
「せ、成績まで暴露させといて……」
「いきなり勉強教えろとかかますからよっぽど切羽詰まってんのかと思って。けど、口頭での自己申告なんてほんとかどうかわかんないし気にしなくて良いんじゃない?」
順位が張り出されるのは五十位までだ、それ以降の順位なんて本人以外知りようがない。
「酷い……」
戸沢美久がボロボロと泣きだした。
(女優な泣き方だな)と俺は思ったが周囲にはそう見えなかったらしい。
「乙宮くん、酷い……」
「断るにしても、もう少し言い方があるじゃない?」
「戸沢さん、かわいそう……」
じゃあお前らが勉強教えてやれよ?
俺の成績下がったら誰か無条件で面倒みてくれんの?
俺はいつものことだと流したが、それが良くなかったらしい。
戸沢美久は社交的で人気のある生徒だったらしく、俺への風当たりが強くなった。
それだけでなく、戸沢美久の幼馴染というのが三年生にいたらしく俺はソイツから呼び出しを受けた。
呼び出された場所に行くと三年生が五人でこっちを睨んでいた。
(一年ひとり相手に五人かよ……)
友達多いアピールか?
「美久に謝れ」
「謝らなきゃいけないようなことはしてません」
「あんなに恥をかかせてあれだけ泣かせておいて何を言っている!美久は入学して初めてのテストは百五十七位だったんだぞ?!それを俺が指導して前回の問題や予想問題を出して一〇〇位以内に入ったんだ!入ったらお前に告白すると言ってな!」
「は?」
「その美久の努力をお前は無駄にしたうえに泣かせたんだ、わかってるのかっ!」
わかりたくねぇ。
「あのー、先輩?」
ちょっとやばそうな気もするが、黙っていても埒があかない。
「なんだ」
「先輩は好きでもなんでもない女子にいきなり告られて勉強教えてって言われたら無条件で引き受けるんですか?」
「そんなわけないだろう、きちんと断る。相手にも失礼だからな」
あれ?常識あるじゃん。
これならちゃんと話せば__、
「だが美久ならば別だ。無条件で引き受ける。断る選択肢はない」
__通じねぇ。
「美久が俺じゃなく君を頼ったのだから、君は協力して然るべきだろう、違うか?」
「違うに決まってんでしょ、何考えてんですか?それ仲の良い幼馴染だけで通じるルールであって俺には関係ありませんよね?」
正論を言っただけのつもりだったがこれが不味かったらしい。
この後この先輩どもに俺はボコボコにされた。
喧嘩に強くはないが大人しく泣き寝入りするようなタチでもなかったから、そのまま病院に行って医師に記録してもらって、警察に届けも出した。
結果、先輩たちの親から多額の治療費と慰謝料を引き出したが本人たちが謝罪に来ることはなく、俺もそのまま怪我が治っても高校には行かなかった。
良い成績とって、大人しくしていればやり過ごせると思ったのに。
(もう、何もかも面倒だ……)
綺麗な顔だとか、肌が女の子より綺麗だとか、線が細くてお人形さんみたいだとか。
(お人形みたいだから、気に入らなかったらボコって捨てていいってか?)
__自分の容姿が、本当に嫌いだった。
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