えっ!? こんなスキルって嘘でしょ!?

本編

74話『魔法は想像が大事です①』

彼に魔法の雑学を学びながら、体内を巡るマナを感じ取る練習をしている。


「全っ然！ 感じ取れないよ～」

「練習をし始めて、まだ30分も経過してないだろ。もう少し粘れよ･･･」


呆れるような溜息を吐く男に涙目で睨む僕の頭に手を伸ばしてきた。

僕が上手く出来ないと拗ねては諦めてしまうことに、いつも康煕がしてきた行動の一つだった。

懐かしい気持ちと同時に彼の口癖の「目を閉じて深呼吸をしてみると心が落ち着くよ。それから楽しいことや嬉しいことを思い浮かべるといいよ」と、千隼の頭に手を置いてポンポンしながら話してくれていたことを思い出していた。


「どうする？ ここで辞めるのか？」

「･･･ゃだ」

「ん？」


あまりにも小さな呟きで聞こえなかったのか聞き返した彼に、もう一度伝える。

今度は彼にも聞こえるように自分の気持ちを乗せて。


「やだ。変なスキルしか持ってない僕じゃ康煕の役に立つどころか足を引っ張っちゃうから辞めない！」

「そうか。 なら、弱音吐かずに練習あるのみだ」


千隼はいつも流され抗うこともせず生きてきた。

それが悪いことではないものの、人形のような生き方では生まれてきた意味を成さない。

長年そうやって生きてきた人間は、小さな壁に阻まれただけでも諦めが先にくる。

それを打開するのは、結局のところ千隼本人の強い意志しか解決しない。

そんな千隼を見る彼は、微かに口元に笑みを乗せ危機管理が出来ていない天然者に魔法を扱うコツを根気良く教えるのだった。


「まず、どの属性でもいいが簡単で想像しやすいのを思い浮かべてみるんだ。光なら電気を付ける動作、風なら扇風機の送風だな」

「そっか、うん。 そういう日本で過ごしてきた当たり前の日常生活を思い浮かべたらいいんだね。 それなら出来るかもしれない」

「他にヒントは必要なら声掛けろよ」

「うん。 でも、最初は自力で頑張ってみたい。 本当に分からなくなったら教えてね！ 」


一歩成長した千隼を眺めながら次のステップのことを考える男は、千隼の努力によって驚愕に直面することをまだ気付かない。