えっ!? こんなスキルって嘘でしょ!?

鴻上 紫苑

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本編

33話『微妙な空気』

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レベルアップした後、彼らはお互いの顔を見合わせ長い溜息を吐いた。


「「はあああああああ・・・・・・」」

「とりあえず確認するが、お前に何があったか教えてくれ」

「え・・・?え~っと・・・」


千隼は、羞恥のあまり頬を染め言い淀む。

(だって、恥かしいんだよ?スキルのこと言ってないってのも問題だけど・・・あ、あんな夢のことなんて口が裂けても言えない。というか言いたくない!)

一人頭を抱えながら悶々と考えていると、向かい側から康煕が話しかけてきた。


「俺に、秘密にしなければいけないような内容なのか?」

「康煕だって、スキルのこと秘密にしてるでしょ。僕だって、康煕に言いたくないことだってあるんだよ!」


思いの他、語尾が強くなり怒鳴ったようになってしまう。
途端、場の空気がピンと張り詰めるような感じがして僕はハッとし康煕の顔を見た。
怒らせたかもと思い見つめたのだが、普段と変わらぬ表情をみせた幼馴染がそこに居ただけだった。


「ふ~ん、心配する俺に言えないようなことなんだ」


別に秘密にしたいわけではない。幼い頃に知り合ってからずっと、一番安心できて心から落ち着ける相手は彼だけだし話せるものなら話したい。
でも、夢とはいえ実父に最後まで貫かれて、感じて喘いで何度も何度もイかされたことを知られたら嫌われるかもしれない。


・・・・・・それが、何よりも怖い・・・・・・


自分が淫らになるスキルを持っていると知られたら、そんなものなくても本当は淫乱なんじゃないかと疑われる。
千隼は話もしないで勝手に結論づけた。そのうち、心が痛くて辛くて康熙を見つめていた瞳から泪が静かに流れ落ちた。


「千隼?」


康熙は千隼の泪を親指の腹で拭ってやると、無理やり追いつめ言わせても心に傷を負い怯えるだけだと判断し諦めることにした。


「千隼、悪かった。もう、無理に問い詰めたりしないから許してくれ・・・」


僕が話せないからいけないのに、いつも康熙は先に謝ってくれる。彼が悪いわけじゃないのに・・・


「こうき・・・ご、めん、なさい・・・」


詰まりながら幼馴染に謝る僕に、彼は優しく抱きしめてくれる。
昔と変わらぬ愛情を与えてくれる。










(彼に甘えてる僕はズルい・・・)









===================

明けましておめでとうございます。
今年1年もよろしくお願い致します。

作品に関して行き詰ってる部分もありますので
今後の更新は不定期で投稿したいと思っています。
そんな私事ではありますが、これからも応援して下さい。


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エブリスタにも同じ作品を投稿しています。内容は同じなので読み返しの必要はありません。今後とも、のんびり執筆して投稿していくので応援よろしくお願いします。
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